学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程 作:ピーマン
「……夕くんったら、ホントにしょうがないんだから」
夕太の部屋からコピーとりよせ機を運び終えた美夜子。
探査ビデオは既に運搬済み。残ったそれなりの重さをしている端末をよいしょと床に置き、ベッドに腰を下ろす。そのまま、ボスッと仰向けに倒れて一息吐いた。
「はぁ……」
夕太はしつこく美夜子の足に縋りついて道具を取られまいと足掻いていたが、今は泣き疲れて自分のベッドで眠りこけている。
やっとこさ道具を運べると思ったら、今度は少し変な匂いが鼻を突いた。それで部屋を見回してみたら、小便の跡まで見つかる始末。一体何をどうしたらそうなるんだと仕方なく先にそちらを掃除したが、結局フローリングにシミが残る形となってしまった。
本当にどうしようもない子だ。
元々少しマセている印象はあったが、その頃は純粋な好奇心ゆえだろうと考えていた。それが3年前にワインを飲んで裸を晒した魔美を見てからというもの、性的欲求に拍車がかかってしまったのだ。
どうして魔美なのか? どうして伊藤つばさなのか? そこはいつも大好きと主張している私じゃないのか?
こんなことなら、家に迎えたばかりで満足に一人でお風呂に入れなかった頃、自分が一緒に入ってあげれば良かった。最初はそうしようと思っていたが、男の子のアソコを見て動揺を隠せず、父に任せてしまったのである。
「…………」
思わず顔を両手で覆ってしまう美夜子。
エッチなことが好きな弟のことを思い悩んでいたら、いつの間にか彼の欲求を独占したいという考えが表に出てきて膨れ上がってしまう。いつもこうだ。
『ねえ、そもそもの話なんだけど、美夜子はどうしてそんなにゆうのことが好きなの?』
魔美の家で、リームから質問された内容を思い出す。あの時は家族として好きなだけと答えたが、二人にモロバレだったように本心はもちろん違っていた。
美夜子はぼうっと天井を見つめていた目を閉じて、夕太と出会って間もない頃を回想する。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
夕太と出会ったのは、母が亡くなってから3年の月日が流れた頃。
10歳になった美夜子は、未だ心にぽっかり穴が空いているかのような気持ちで日々を過ごしていた。
理由はもちろん、死んだ母親のこと。
母は当時不治の病にかかっていた幼い美夜子を救うために、悪魔と契約を交わし、その代償として命を落としたのだ。
悲しみに暮れた美夜子は、あれだけ外で遊ぶのが好きだったにも関わらず、家に引きこもりがちになってしまった。あの頃は今では信じられないぐらい消極的で、小学校もろくに通わずに自宅学習で済ませていたのだ。
唯一、幼馴染の魔美が心配して何度も家を訪ねてきたので、父親以外でまともに話すのは彼女くらい。今考えると、自分と違って母親がいる彼女が羨ましくて、そっけない態度を取っていたことが多かったように思う。それでも魔美はめげずに遊びにきたので、あの子には感謝してもし切れない。
そんな日々を過ごしていた美夜子は、ある日、唐突に考えた。
そうだ、髪を切ろうと。
伸ばしっぱなしでいい加減重たく感じていたし、長い髪を見ているといつも自分の髪を梳いてくれた母のことを思い出してしまうから。
いつまでもこのままではいけないと、自分でも分かっていたのだ。
思い立った美夜子はすぐに家から適当な果物ナイフを持ち出し、外に出る。
左手をうなじ辺りに運び、腰まで伸びた髪を握ってまとめる。そして、右手に持ったナイフで一気に切り落とした。
「…………」
握ったままの切り離された髪を、しばしの間見つめる。
そして、意を決して瞼を瞑り、「チンカラホイ」と呟くように唱えた。
風が吹き込み、森の木々が到着を報せるようにざわめく。ゆっくりと瞼と共に右手を開くと、髪は風にすくわれて美夜子の元を離れ、運ばれていった。
その様はまるで流した涙を拭われたかのようで。悲しみはあれど、美夜子はどこかつかえが取れたような、透き通った気分になる。
(さよなら、ママ……)
心の中で母に別れを告げ、飛んでいく自身の髪に背を向ける。
「──ぶひゃッ!?」
その時だった。背中越しに何か変な声が耳に届いたのは。
「え? だ、誰!?」
慌てて振り返り、声が聞こえた方──森の入り口にある茂みへと足を進める。
美夜子にとっては庭みたいなものだが、正体不明の相手がいることが分かっていると、やはり不安の色は隠せない。
けれども、不思議と彼女の足取りに迷いはなかった。まるで誘われるように。待ち望んでいたものがそこにあることを予期しているかのように。
茂みを掻き分けて、その先を見る。
そこにいたのは、年下の小さな男の子だった。
どうやら、美夜子が切った髪をそのまま顔に被ってしまったらしい。身体に絡みついてもがいている。
蜘蛛の糸じゃあるまいし、恐らく精霊のイタズラだろう。先ほど使った風の魔法は念力ではなく精霊の力を借りた魔法なので、時にこうした気まぐれをしでかすのだ。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫?」
慌てて駆け寄り、髪を払ってあげる美夜子。
こんなことなら、家の中で切れば良かったと後悔しながら。
絡みついた髪の毛を取り除き終え、改めて彼の姿を目にする。
古めかしい緋色の衣を着た、不思議な魔力を感じる可愛らしい顔立ちの少年。緋色と言えば、昔の魔法使い達が定めた冠位における最高位の色だと、父の書物で読んだ記憶があった。
「…………」
男の子は何か言うでもなく、ぼ~っと美夜子のことを見つめ続けている。
「あなた、どこから来たの? お父さんお母さんは?」
「わかんない」
「ええ? そ、それじゃあ、名前は?」
「わかんない」
「……おウチはどこか、分かる?」
「わかんない」
何を質問しても「わかんない」と返され、美夜子は困り果てる。
その時は単に迷子だと思って、一旦満月邸に連れ帰ることにした。用事で出かけている父が帰ってくるのを待てば、きっと警察に相談してくれてこの子の家も見つかるだろうと。
「わあ、どうしたのその子!? み、美夜ちゃんの子供!?」
「そんなわけないでしょ、もう」
ちょうど遊びに来た魔美が見慣れない男の子を見て、ビックリした様子でそう声を上げた。普通なら冗談で言ってると思うだろうが、彼女の場合はそうでないことがほとんどだ。
「というか、美夜ちゃん髪切ったの? 綺麗だったのにもったいないなぁ」
「いいじゃない。ちょっと色々とスッキリさせたかったの」
「……美夜ちゃん?」
「あ、まだ名前言ってなかったわね。私は美夜子。で、こっちは魔美──」
「美夜ちゃん!」
男の子は感極まった様子で急に美夜子の身体に抱きついた。ちょっとビックリはしたが、5歳も年下の子だし、親とはぐれて不安なのだろうと思って素直に受け入れる。
母性本能をくすぐられたのか、不思議と彼の小さな身体と体温が心地良く感じて、その背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返してあげる。
「ああ、いいなぁ! ねね、こっちおいで! 次はあたしがぎゅってしたげる!」
「ダーメ。私とくっついてたいって」
そんな感じで、その日は父が帰ってくるまで男の子を魔美と取り合いっこしていた。
きっとすぐに両親が見つかって、名残惜しいがバイバイすることになるだろうと思いながら。
ところが、だ。
それから何日経っても、男の子の家は見つからなかった。
それらしい捜索願いも出ておらず、両親もどこにいるか分からない。一応病院に連れて行くと、記憶喪失らしいことも判明した。どうりで名前も分からないわけだ。
事件の犯人や行方不明者を何人も突き止めてきた警察ご自慢の占術課が占っても結果は芳しくなく、結局のところ彼は完全な身元不明者となったのである。
「可哀想に……」
ソファに座った美夜子は、自身の膝枕で眠っている男の子の頭を撫でた。
自分は母親がいなくなっただけでもあれだけ塞ぎ込んだというのに、この子は母親どころか父親もいない。そして、帰る家さえも。
「私が、あなたのママに……ううん、お姉ちゃんになってあげるからね」
こうして、男の子は満月家に養子として迎えられ、命名占いで"夕太"という名前が与えられた。
美夜子は姉として甲斐甲斐しく彼の世話を焼いた。引きこもっていたのが嘘のように元の明るさを取り戻し、学校も元通り登校するようになったのだ。
それからしばらく経ち、満月パパが論文発表のために出かけた日。
出前を取るように言われていた美夜子だったが、夕太に手料理を作ってあげようと考え、二人で森の奥へ材料を取りに出かけた。
「このキノコ、食べられるかしら? きゃっ、何か変な汁出てきたわ」
「それ、ハラマセダケだよ。ハラませるだけハラませて、セキニンとらない悪いヤツなんだ」
「……よく分からないけど、夕くん何でそんなに詳しいの?」
「わかんない」
そんな感じで森の中を散策していると、ガサガサッと二人の視線の先にある茂みが音を立てて揺れ始める。野犬だろうか? もしかすると、最近増え過ぎて問題になっているニホンオオカミかもしれない。森には普段危険な存在はいないが、稀にそういった動物が迷い込むことがあるのだ。
美夜子は夕太を背中に庇いながら足元に落ちていた木の棒を拾い上げ、警戒した様子で茂みを睨みつける。
「ギ、ギシ、ギシシ……」
茂みから出てきたのは、まるで影のように黒い四つ足で歩く生き物だった。鋭い牙と、やけに痩せ細った身体に大きな赤いギョロ目。どう見ても野犬やニホンオオカミではない。
引きこもっていた頃に父の蔵書を読み漁っていた美夜子でも今まで見たことがない出で立ちで、明らかに邪悪な魔力を漂わせている。その獰猛な視線は、まるでハイエナを思わせた。
ハイエナは美夜子達の存在を認めると、笑みを浮かべるようにその裂けた口を歪ませる。
そして、そのしなやかな身体をバッタのように跳ねらせて襲いかかってきた!
「た、立て! 火柱!!」
襲いかかってくるハイエナに対して、美夜子は覚えたての火柱の魔法を放つ。
が、相手は身体をくねらせるようにして器用にそれを避け、怯んだ様子もなく向かってくる。まだ未熟な火柱とは言え、火を前にしても全く怯えた様子がない。やはりただの動物ではないのだ。
「夕くん、逃げてッ!」
美夜子は後ろにいる夕太にそう投げかけ、木の棒を盾にする。
飛びかかってきたハイエナは棒に噛みつき、美夜子を押し倒す形でそのまま馬乗りになった。
「──ッ!」
盾にした棒も簡単に嚙み砕かれ、柔肌にハイエナの爪が食い込む。痛みに顔を歪ませる美夜子。
押し倒している不埒者はその裂けた口を開き、そんな彼女に何本も並んだ鋭い歯を見せつける。涎が垂れ、美夜子の綺麗な顔を汚した。
そして、目の前の垂涎物を喰らおうと首を伸ばし──
「──美夜ちゃん!」
間一髪、横から割って入ってきた夕太によって突き飛ばされた。
何度も転がってから跳ねるように飛び起きたハイエナは、今度は夕太に向かっていく。
「夕くん!」
上半身を起こした美夜子が叫ぶ中、夕太はポケットに手を突っ込む。
取り出したのは、網袋に入ったお団子。その内の一つを手に取り、大口を開けて突っ込んでくるハイエナの喉奥目掛けて投げつけた。
一直線に飛ぶお団子。ボール遊びをしても見当違いな方向に投げてしまうことが常な夕太だったが、奇跡か偶然か、この時は一寸違わず目標に向けて風を切った。
そのまま、パクッと。
ハイエナは口の中へストレートインしてきたお団子を、喉をゴクリと鳴らして飲み込んだ。
「~~~~~~ッ??!」
瞬間、ギョロギョロした目が限界までかっ開く。
伸ばしていた前足と爪を使って、急ブレーキをかける。轍を作りながら砂煙を巻き起こし、夕太の立っている場所から5mほどの距離で完全停止した。
明らかに獲物を前にした猛獣の挙動ではないそれに、呆気に取られる美夜子。
一方で、ハイエナはその黒い体にだらだらと大量の脂汗を流し始めた。後ろ足で立ち上がり、前足でお尻を抑えている。
そして、キャインキャインと鳴き声を上げながら、来た道を戻る形で森の奥へと逃げていく。その後をなぜかハラマセダケなるキノコがぴょんぴょんと跳ねて追いかけるのだった。
「ど、どうなってるの? ……ッ、夕くん!」
逃げ去っていくハイエナを見届けた美夜子は慌てて腰を上げ、夕太のもとへ駆け寄って肩を掴んで揺さぶる。
「大丈夫!? 怪我は……あ、血が出てる!」
見ると、夕太の左腕から血が流れ出ていた。ハイエナを突き飛ばした際に爪が当たってしまったのだろう。
「ん、へーきだよ。ぼくより美夜ちゃんの方が──」
「私はいいの! ごめんね。ごめんね……」
美夜子は夕太の小さな身体をひしっと抱きしめ、涙を流して無事を喜ぶと共に後悔した。いくら普段安全だからとはいえ、自分が森になど誘わなければこんなことにはならなかったのだから。
夕太は美夜子と抱き合っている状況に頬を赤らめながらも、オロオロした様子で泣いている彼女を心配している。
やがて、落ち着きを取り戻した美夜子は鼻をすすりながらも夕太を放した。
「ぐすっ……それにしても、さっき投げたお団子みたいなの、何だったの?」
「これ? 『おしり印のきびだんご』って言うんだ。食べたらおなかがピーピーになるから、おしりで色々する時にチョーホーするんだって」
「……色々って?」
「わかんない。でも、おしりがガバガバになるみたいだから、きっと今ごろハラマセダケに好きホウダイされてるよ」
きびだんごをポケットに仕舞いながら、「ちょっと、かわいそーなことしちゃったかな?」とハイエナが去っていった方向を見やる夕太。
そんな彼を、美夜子は後ろからもう一度抱きしめた。背中の柔らかい感触に再び頬を染めながらも、夕太は不思議そうな顔で肩越しに振り向く。
「ど、どうしたの?」
「……無事で、良かった」
本当は早くこの場を離れて家に帰るべきなのだろう。美夜子もそれは重々分かっている。
それでも、今はこの小さくて勇敢な子に触れていたかった。生きていることを直接肌で感じたかった。またしても自分のせいで、家族を失うなんてことになりかけたのだから。
「……ホントに、ごめんね」
「もう、さっきから美夜ちゃん、なんであやまってるの?」
「だって、私のせいで──」
「そんなのどうだっていいよ。それより、大好きな美夜ちゃんが無事でよかった!」
肩越しに、夕太は満面の笑みでそう答えた。
その純粋な笑顔と、大好きという言葉。それを受けた瞬間──
美夜子の胸は、ドクンッ! と跳ね上がった。
体温が火にかけられたかのように上昇していき、頬は見る間に赤らんでいく。
胸の高鳴りは止む気配を一切見せず、それどころかどんどん激しさを増していった。
「美夜ちゃん?」
「……もう少し。もう少しだけ、このままでいさせて」
首を傾げる夕太から隠れるようにして、彼の小さな背中に胸を離す形で顔を埋める美夜子。
赤くなった顔を見られたくなくて。心臓の鼓動を聞かれたくなくて。
この日の出来事が切っ掛けだったのだろう。
美夜子が夕太のことを弟としてだけでなく、一人の男の子としても意識するようになったのは。
いや、ひょっとしたら。
家族として迎えた時から。出会ったその日から。もしかすると、そのずっと前から。
なぜだか、そんな風に考えてしまうこともあった。
理屈に合わないかもしれない。それでも。
満月美夜子は夕太という少年に心惹かれている。それだけは確かだった。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「…………ん」
懐かしい夢を見ていた美夜子は、ふと目を覚ました。
寝るつもりはなかったので慌ててベッドから上半身を起こし、時計を確認。30分ほどしか経っていないことに安堵する。
(後ちょっとしたら、お夕飯の支度を始めなくちゃ)
材料の方は魔美の家から帰る途中でスーパーに寄って買ってきてある。今日は夕太の好きなハンバーグ──大体夕太の好物ばかり作って、満月パパの好物はたまにしか作らない──にするつもりだ。
当の夕太はまだ寝ているだろうかと美夜子は隣の部屋に視線を送る。様子を見に行こうかしらと考えたところで、彼から取り上げたコピーとりよせ機の端末が目に入る。
スススッ、と。ベッドから降りて、四つん這いで端末に擦り寄る美夜子。
これを使えば、隣の部屋にいる夕太の様子を確認することができる。直接向かわずとも。手間をかけずとも。
美夜子は端末のボタンにゆっくりと指を伸ばす。
あらかじめ言っておくが、これは覗きではない。あくまで、不出来な弟の様子を確認するために使うのだ。決して、彼みたいに不埒な目的で使うわけではない。
──もう一度言う。断じて、覗きでは、ない!
そう頭の中で言い訳を垂れ流しつつ、ドキドキと高鳴る胸も気づかないフリをしながら、緊張の面持ちで起動ボタンを押す。
一瞬モニタに映った伊藤つばさをガン無視し、拙い操作で対象を夕太に設定すると、モニタの画面が移り変わって隣の部屋を映し出した。
『────はあっ……はあっ……はあっ』
「……えっ?」
目を丸くする美夜子。
映ったのは、間違いなく目当ての人物。満月夕太。出会ってからこれまで、美夜子の心の大半を占めている大事な存在。
とてもエッチで、欲求に忠実だけど知識がない、ある意味で純粋な子。
そんな彼が、おちんちんを弄っていた。
下半身裸の状態でベッドに横になり、右手で握ったそれを上下にシコシコと擦っている。ひたすらに。必死に。左手は何やら白い布を鼻に押しつけており、その顔はその熱量を表すかのように上気して汗が滲み出ている。
まさしくそれは、美夜子も初めて見る、男の子のオナニーであった。
「ゆ、夕、くん……」
ゴクリと、生唾を飲み込む音が鳴り響く。
一体、いつだろうか? 皮が剥けたのは? そんな行為を、自慰行為を学んだのは?
毎日のように着替えを覗き見してきて子供ちんぽを大きくさせていることはもちろん知っているし、何なら登下校中のホウキの上でそれをお尻に押しつけられたことだってあった。
その時は美夜子がやんわり止めてとお願いしたら素直に言うことを聞いてくれたが、今にして考えれば、あれもある種の自慰行為と言ってしまって良かったのかもしれない。
そうだとしても、こんな性器ならぬ正規の方法を知っているなんて夢にも思わなかった。
だって、あの夕太だ。いくらエッチなこと大好きとは言え、あの頭の悪い子が自分一人でそこに至るなんて、とてもじゃないが信じられない。
(……ん?)
気になる点を見つけて、眉間に皺が寄る。夕太が左手で鼻に押しつけている白い布、あれはもしかしなくてもパンツではなかろうか?
美夜子は一瞬自分のかと思ったが、ローウエストのハイレグショーツなんて持っていない。あ、動きやすそうでいいなと現実逃避してしまう思考をよそへ追いやる。
ねえ、夕くん。それ、誰の? 誰のパンツ? 何で持ってるの? ねえ? ねえ?
嫉妬心から止めどなく溢れてくる文句が、心の叫びとなって脳内で木霊していく。
『……つばさ、ちゃんっ』
「は?」
ふいに聞こえてきた、喘ぎにも似た夕太の声。
思わず、美夜子は自分でも出したことがないような色の声を漏らした。
つばさ? まさか、伊藤つばさ? さっきまで夕くんが覗いていた、あのアイドルの?
でも、どうやって? このひみつ道具って、目的の相手を覗き見できる遠見玉のようなモノじゃなかったの?
動揺のあまり、前のめりになって探査ビデオのモニターに顔を寄せる。その際、突いた手が偶然端末のボタンを押してしまう。
それを切っ掛けに端末が物音を立て、L字型に伸びた棒の先に取りつけられたカメラに似た部位から光が照射され始める。
「きゃっ……な、何?」
光が差す先、自身がさっきまで寝ていたベッドの方を振り向く。すると、そこには隣の部屋で絶賛オナニー中であるはずの夕太がいた。
『はぁ……はぁ……』
「!!?!!??」
夕くんが、私のベッドでオナニーしてる……!!
美夜子は口をあんぐりと開け、混乱する中でモニターの映像とベッドの上の夕太を見比べる。全く同じ動きをしている。まるで映像の夕太がそのまま立体となって映し出されたかのようだ。
そこで、はたと思い出す。このひみつ道具の名称が『コピーとりよせ機』ということを。
コピーを取り寄せる。つまり、このモニターで映した対象を元にした立体コピーを、こうして自分のもとに作り出すことができるのだろう。
似たような魔法としては自分の姿を任意の場所に映し出す投影術が相当するが……
「も、もしかして……」
ベッドに擦り寄り、恐る恐る左手の人差し指を近付ける。
ゆっくり、ゆっくりと。夕太が一生懸命シコシコしている、おちんぽの先っぽに。
────つんっ
『んッ』
「~~~~ッ!!」
感触があった! 触れた! 触ってしまった! 夕くんのおちんちんに!
やはり思った通り、このコピーとりよせ機で作った立体コピーは、こちらから一方的に干渉することができるのだ。なんてエッチな道具だろうか!
声にならない黄色い悲鳴を上げながら、幼い亀頭に触れた指の匂いを嗅ぐ。少しツンと来るような香り。素晴らしいことに、このコピーは匂いまで再現されていた。
興奮に顔を茹で上がらせながら目をグルグル巻きにする美夜子だったが、ふと正気に戻ってブンブンとかぶりを振る。
何をやっているのかと。自分はただ弟の様子を確認しようとしただけなのだから。こんな欲求に任せた覗きやイタズラなんて言語道断だ。
(でも……でも……)
頭の中で必死に拒否する言葉を並び立てる。
しかし、視線は自慰行為を続ける夕太から外れないまま。そして、その右手は──
くにっ、くにっ、くにゅ、くにゅ……
いつの間にか、パンツの上から濡れそぼった秘裂を撫で擦っていた。
「夕くん……」
美夜子はよじ登るようにしてベッドに上がる。同時にその手でパンツを下ろし、はみ出した足から床に落とす。
スカートをまくり上げて下半身裸の状態になり、横になっている夕太に向かい合うようにして自身も寝そべった。
『つばさちゃん……つばさちゃん……っ』
美夜子の存在に気づいていない夕太は、相も変わらずつばさのことを想いながらおちんぽをシコシコと拙い動きで擦り続けている。鼻で嗅いでいた彼女のパンツを、今度は懐に抱きながら。
それに対して張り裂けそうなくらい胸が切なくなりながらも、本能には抗えず秘部を弄る右手の動きは止められない。
くちっ、くちゅ、ちゅぷ、ぬちゅっ……
「はぁ……はぁ……♡ 夕くん、夕くん……♡」
隣の部屋にいる本人の耳に届かないよう、声を潜めながら名前を呼ぶ。
夕太との距離は僅か15センチほど。自身の内に秘めた想いを乗せて吐息を零す。その温もりが届いたのか、目と鼻の先の彼はほのかに眉を伸べた。
そんな美夜子の綺麗な鼻をくすぐる、幼い想い人の汗と性のアロマ。いつも洗濯する前に密かに夕太のブリーフの匂いを嗅いでいた彼女にとってそれはとても香しく、自身の頬肉が見る間に緩んでいくのを自覚する。
股間を弄る手はますます激しさを増していき、溢れ出た愛液がシーツを汚す。
昂りに呼応するように右脚の膝を立ててはしたなく股を開き、目の前の彼に見せつけるようにして腰を揺らめかせた。
ぬちゅ、ぐちゃ、にちゃ、くちゅっ、くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅっ……
「あっ、あっ、あっ、あっ……夕くん♡ 夕くんっ♡」
──見て、見て! こっち、見て!
美夜子は喘ぎ声の裏で必死に叫ぶ。
伊藤つばさが可愛いことなんて重々分かっている。トップアイドルなのだから。美夜子とて容姿だけであれば負けてない自信はあるが、他者を魅了する術においてはその道のプロには叶わないだろう。
それでも、夕くんを一番に想っているのは私。私なんだ。
もし私よりも好きな子ができたのだとしても、それだけは変わらない。絶対に。
『つばさ、ちゃん……っ……つば……』
絶頂が近いのか、夕太の呼吸が最低限となり、手の動きがスパートをかけるように速くなる。
それに合わせ、美夜子も深呼吸を一つ。人差し指、中指、薬指の三本指で敏感なクリトリスを中心に激しく回しこね始め、お尻を浮かせて高みへ昇り詰めていく。
にちゅ、にちゅ、くちゃっくちゃっくちゅくちゅちゅくちゅくちゅ……
「夕くんっ♡ 夕くんっ♡ 夕くんっ♡ 夕く──」
『…………美夜、ちゃんっ!』
「────ッ!!」
不意打ちで名を呼ばれ、目を見開く。心臓が飛び出そうなほど跳ね上がった。
瞬間、きゅううぅーッと子宮が熱くなり、股間の蓮の花が急激に締まり出す。
「ぁ♡ イ゛、クッ♡ あ、あ゛あぁぁぁ………ッ!♡ ッッ!!♡♡」
ビクッ! ビクッ! ビクビクッ!! ビクッ!!
押し寄せる強烈な快感に、美夜子の頭は真っ白になる。瑞々しい肉体が狂気乱舞するかのように踊った。
股間を両手で抱え込み、横になったままの体勢で腰を曲げて蹲る形で抑え込む。なおも身体は水を得た魚のように跳ね、口端からは涎が一筋。
美夜子だって、思春期の少女だ。これまで年相応に何度もオナニーをしてきた。だが、今回のそれは群を抜いて一番の快楽だったのは言うまでもない。
「……ぅうッ! あ、ああ……ッ!!」
無論、そのオナニーで思い浮かべる相手は、目の前で同じく絶頂を迎えている不出来な弟。コピーである彼は瞼をキュッと閉じ、硬く尖ったおちんぽをその小さな身体ごとビクビク痙攣させている。
精液が出てくる様子はない。これで彼のオーガズムが何度目か分からないが、やはり未だ精通は迎えられなかったようだ。脚をピンッと伸ばし、全身で空撃ちによる快楽を享受していた。
「「はぁ……はぁ……はぁ……」」
互いに快楽の波が過ぎ去り、余韻となる荒い吐息がピロートークの役割を果たす。
それから少しして、夕太はオナニーと絶頂による疲れからか、すぅすぅと寝息を立て始めた。
「夕くん……」
立体コピーである夕太と添い寝する形となった美夜子は、先のことを思い浮かべて人知れず柔和な笑みを零す。
彼は呼んでくれたのだ。イク直前に、つばさではなく、"美夜ちゃん"と。無意識だったのだろう。それでも、だからこそ、とても幸せな気持ちだった。これ以上ないほどに。
スッと両手を伸ばし、夕太の頭を胸元に抱き寄せる。
隣の部屋で寝ている本物の彼も何か柔らかいものが当たっているような気がしたのか、気持ち良さそうにその寝顔を綻ばせた。
(ああ、やっぱり)
美夜子は悟った。諦めたといった方が良いか。
もはや自分を誤魔化し切れない。この気持ちに正直であるべき、いや、ありたいと想い始める。
(……お夕飯、出前にしましょう)
忘れていたことを横に放り捨て、幸福感に満ちた夢心地のまま、美夜子も瞼を閉じる。
想い人を胸に抱きながら。
「つばさちゃん、また会いたい、な……」
しかし、その想い人からそんな寝言が零れたのを、美夜子は聞き逃さなかった。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
休み明けのお昼。美夜子は中等部校舎の屋上で魔美達とお弁当を食べていた。
その最中、箸を置いて「聞いて」と口を開く。
「私、夕くんのこと、やっぱり……好き、みたい、です」
頬を赤らめながらも、神妙な顔つきで先日の発言を取り消す形で告白した。
「「ふ~ん」」
が、魔美もリームも知ってたとばかりに反応が薄かった。そのあっけらかんとした返しに、あれ? と首を傾げる美夜子。
「相談があるなんて言うから、てっきりAもBもすっ飛ばしていきなりCからおっ始めちゃったのかと思ったわ」
「そ、そんなことしたら、歯止めが効かなくなっちゃうでしょ!?」
「まあ、あんなエッチでスケベな子が知ったら、お猿さん確定よね」
「夕くんじゃなくて、私がよッ!!」
その包み隠さない否定の言葉に、からかうつもりだったリームは閉口してしまう。
「ね、ねえ。AとかCとかよく分かんないけどさ、ゆーくんも美夜ちゃんのこと好きなんだから、打ち明ければいいだけの話じゃない」
「相手が5歳も年下の小学生だから、周りが気になって伝えられないの?」
魔美の意見と、リームの質問に対し、美夜子は首を横に振る。
当の夕太がアイドルの伊藤つばさにお熱だから、自分が想いを打ち明けても仕方ないのだと。
「前にも言ったじゃない。男の子ならみんなそうだって。第一、あの国民的アイドルとお近づきになるなんて夢のまた夢の話なんだから」
そう言って笑う魔美。彼女にしては、全くもってその通りだ。
リームも同意しようとしたが、それでも浮かない様子の美夜子を見て、まさかと思い至る。
「……もしかして、そのアイドルとお友達になっちゃった、とか?」
その確かめるような言葉に、美夜子は眉尻を下げてこくりと頷き返す。
「ええーーっ!?」
魔美の驚声が屋上に響き渡る。信じられないとばかりに目を丸くするが、美夜子は間違いないと言いたげな顔つきだ。
その横で、リームは「いつの間に……魔美の家に遊びに行った日かしら? 油断してたわ」と何やらブツブツ言っている。
昨日、美夜子が使ったコピーとりよせ機。あれは単方向型で、どうやっても一方的に相手に干渉することしかできない。そして、相手が身につけている物を奪うことも不可能だ。
ということは、夕太が持っていた伊藤つばさの物と思われるパンツは、直接持ち主と会いでもしない限り手に入れることはまず無理と言っていいだろう。
何より、あの寝言。
"また会いたい"だなんて、どう考えてもそういうことではないか。
それにつばさだけではない。ちょっと覗いただけでも、夕太のクラスには明らかに彼を意識している子がいることが分かった。しかも、これまた美少女だ。
極めつけは、夕太の担任である桃子先生。最近彼女の夕太を見る目が、どうにも危ない気がしてならないのだ。絶対に何かあったに違いない。
「いつもいつも私のこと好き好き言ってくれてるのに、どうして……」
俯いてブツブツ呟きながら魔力をほとばしらせる美夜子。それがそのまま念力となって周囲に広がり、傍にある塔屋の窓ガラスがカタカタ揺れてヒビが入り始める。
「み、美夜子!」
「美夜ちゃん! 抑えて抑えて!」
慌てて魔美とリームは彼女をなだめ、なんとかその場を収める。落ち着いてから、二人は同時に溜息を吐き、心の中で呟くのだった。
((言えないわ、絶対……))
(ゆーくんと毎週お股を擦りつけっこしてるなんて……!)
(毎晩、ゆうの寝込みを襲ってるなんて……!)
一番傍にいるにも関わらず、知らない間に最下位を走っている美夜子なのでした。
次回は魔美がメインの話となります。
〇満月美夜子
新魔界大冒険の要素も取り入れつつ、住居は教会ではなく原作の満月邸のままだったりと作者が都合の良い形に組み合わせている。
関係ないが、ドラえもんクラブ4巻に掲載された小説『魔界大冒険外伝 美夜子の魔法戦記』ではセーラー服を着ていたり、パンツは見えないながらも大股開きで地面に打ちつけられるシーンがあったりと、美夜子ファンには垂涎モノの内容となっている。
〇ハイエナ
原作では魔界にあるまやかしの平原に生息している。
ゲーム『ギガゾンビの逆襲』ではギョロリンという名前で登場。