※この作品はR-18です。

学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程   作:ピーマン

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性の未確認(前)

「きゃー、坊やーっ!」

 

 とある平日の昼間。突然、そんな悲鳴が住宅街に響き渡った。

 

 そこは高低差のある場所で、それゆえに周辺を移動するには坂道を通らざるを得ない。

 声を上げたのは妙齢の女性。お腹が少し膨れたマタニティワンピースを着ているその姿から、妊婦であることが一目で分かる。

 

 その彼女が立っているのは件の坂道。膝を突いた状態でお腹を庇いながら、下り先に向けて手を伸ばしている。その伸ばした先には、下り坂を滑るように駆け下りるベビー用の浮遊椅子が。乗っているのは1、2歳ほどの幼児だ。

 本来親の魔力で操作すべきそれは、子供の魔力に反応して誤作動を起こしたのか、徐々にスピードを上げていく。セミオート式のそれは移動を命令さえすれば、後は停止命令が出されるまでそのまま動き続けてくれる操り術が仕込まれた最新式のもの。皮肉にも、それが今回の事故に繋がってしまったのである。

 

「誰か! 誰か止めてーッ!!」

 

 必死に助けを求め続けるが、間の悪いことにその場に居合わせた人はおらず。声を聞いて家の窓から顔を出す者がチラホラといる程度。今から出ても間に合うはずがない。

 下り坂の先は崖。ガードレールこそあるもの、このままではそれを乗り越えて宙へと飛び込んでしまう。

 

 もう間に合わない。女性はその瞬間を目の当たりにするのが怖くて、瞼を固く閉じる。

 

 

 ──ブンッ

 

 

 その時、不思議な音が耳に届いた気がした。それから少しして、自分の衣服を引っ張る感触。加えて、「ママぁ?」という自身を呼ぶ声も。

 恐る恐る瞼を開け、目を向ける。すると、なんとそこには、下り坂を降りていったはずの子供の姿があった。

 

「坊や!」

 

 感極まって子供を掻き抱く母親。何が起こったのかは分からない。それは子供の方も同じようで、幼児ながらに不思議そうな顔をしている。

 とにかく、母親である彼女は自分がお腹を痛めて産んだ子が無事であったことに感謝するしかなかった。

 

 そんな親子を見つめる少女の姿が、一人。

 

「……良かったぁ、間に合って。さて、部活部活っと」

 

 少女──佐倉魔美は、胸に下げたペンダントを頭に向ける。

 すると、再びブンッという音と共に、彼女の姿は掻き消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、遅れちゃったっ」

 

 独り言を漏らしながら、魔美は人気のない屋上からバタバタと階段を駆け下りて美術室へとひた走る。

 ただでさえ遅れていたのに、ちょうど向かおうとした矢先に"助けを求めるベル"が届いて、急遽飛ばなければ(・・・・・・)ならなかったのだ。

 

 お人よしでお節介焼きな彼女は、いつも困っている人や悩んでいる人を見かけては駆けつけて助けになろうとする。それが佐倉魔美と言う少女である。 

 もっとも、魔美の場合はとある事情により、見かけなくともどこからともなく現れるのだが。先ほど、あの親子を助けたように。

 

 そんなこんなで、辿り着いた美術室。

 途中、何度も制服の下で揺れるペンダントを取り出しそうになるのを抑えていた。少し切れた息を整えながら、美術室の扉に手を伸ばす。

 

(あれ……?)

 

 取っ手に手をかけた際、室内がいつもと違って珍しくガヤガヤと騒がしいことに気づく。

 扉を開けると、そこでは既に他の部員達がある物を囲う形でそれぞれキャンバスの前に座り、鉛筆片手に周りとお話に花を咲かせていた。

 

「わー! 何々!? これどうしたのー!?」

 

 みんなが囲っているある物を見て、興奮した様子で声を上げる魔美。

 それは、男性の石膏像だった。それも普段美術室に置いてある頭部や上半身だけの石膏とは違い、ご立派な全身像である。

 

「あ、魔美」

「先生が近所の美術学校から借りてきたんだって。今日はこれをデッサンしろって言われたんだけど……」

「だけど、何?」

 

 同級生は途中で言葉を濁し、恥ずかしそうにその描く対象をチラ見する。

 首を傾げて視線を追うと、彼女の眼差しは石膏像の股間に向けられていることが分かった。

 

 ほとんどの石膏がそうであるように、この全身像も全裸だ。かろうじて肩に衣を被ってはいるが、やっぱりほぼ全裸だ。

 そして、その股間には男性なので当然の如くペニスが生えている。小さくて、皮を被った陰茎。背が高くて引き締まった肉体をしているし、陰毛も生えているが、やっぱり包茎ペニスである。

 

 なるほど、どうりで色めき立ってるわけだ、と魔美は腰に手を当てる。あの石膏、確かに局部の作りが妙に精巧に出来ていた。

 周りを見れば、男子は自分の局部と比べて笑っている子もいれば、大差ないのか気まずそうにしている子の姿も。女子は興奮して目をギラギラしている子と、恥ずかしそうに視線を反らしている子に分かれていた。

 

「まったく、みんな子供なんだから。芸術にそんなザ……ザ──」

「雑念?」

「それそれ! 余計なことばかり考えてないで、絵を描くことに集中しなきゃ!」

 

 その言葉に、周りの同級生はさすが画家の娘といった羨望の眼差しを向ける。雑念という言葉が出てこなかった点から少し呆れた目も混ざっているが。

 

「そんなに言うんだったらさ、佐倉がヌードモデルやってくれよ! 慣れてるだろ?」

「それだったら女子も集中できるしな!」

「ちょっと男子ぃ! それはアンタ達が美味しい思いしたいだけじゃないの!」

 

 一層賑やかになる部員達。魔美はやれやれと溜息を吐き、自分のキャンバスと椅子を用意して腰を下ろした。

 耳をそばだててみると、同級生と進級して美術部に入った一年生の会話が聞こえてくる。

 

「え? 慣れてるって……佐倉先輩、ヌードモデルやったことあるんですか?」

「お父さんが画家なのよ。今はフランスに絵画留学してるらしいけどね。よくヌードモデルをやってお小遣い稼ぎしてたんだって」

「へ、へー、そうなんですか」

「ま、確かに裸体は美術の基礎って言われるしね。高等部では実際にモデルを呼んで裸体画を描く機会があるらしいし、私達も今の内に慣れておかないと」

 

 何だか後輩は若干引いているように見えるが、気のせいだろう。

 その会話を皮切りに、皆徐々に落ち着きを取り戻してきてデッサンに集中し始める。何だかんだと言って、彼らも美術部員なのだ。

 魔美も筆箱から鉛筆を手に取り、皆に倣って課題に取りかかる。

 

(それにしても、あのちんぽこ……毛が生えてなかったら、ゆーくんのとそっくりね)

 

 が、筆を走らせながらも、彼女は石膏の局部を見てそんな邪なことを考え始めていた。自分で余計なことを考えてないでと言ったばかりだというのに。

 皮被りの包茎おちんぽ。成長した夕太の股間に変わらずぶら下がっているそれを想像して、くすりと笑いを零す。

 

 魔美は夕太のおちんぽを見たことがある。それは石膏のモノとそっくりだということが分かることから、容易に推察できるだろう。

 問題は、一度見た、というわけではないこと。彼女は何度も彼の幼い局部を見たことがあるのだ。それも昔の話ではない。今現在だって、週に一度の頻度で。

 

 その切っ掛けとなった出来事を、魔美はデッサンを続けながら想い起こす。鉛筆を持っていない方の手で制服の上からペンダントを弄りながら。

 

 

 

 

 

 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 

 

 

 

 

 

 魔美が夕太と知り合ったのは、10歳の美夜子が彼を拾ってすぐのこと。

 ちょうど美夜子の家へ遊びに行ったら見慣れない男の子がいて、彼女の子供かと勘違いしたのも今では良い思い出だ。

 

 それからしばらくして、満月家が身寄りのない夕太を養子に迎えることが決まった。

 母親を亡くしてからというもの、消沈して作り笑いも多かった美夜子。しかし、夕太を迎えて彼の世話を焼くようになってから、それがすっかり目立たなくなった。というか、見てるこっちが呆れるほどにべったりだったのである。

 

 見る間に元の彼女に戻っていく姿を間近で見て、魔美は自分のことのように喜んだ。もちろん、親友である自分がその役を担えなかったのは少し残念ではあった。

 しかし、それ以上に羨ましいという気持ちもあったのだ。同じく一人っ子である魔美も弟か妹が欲しいなと常々思っていたから。夕太を養子に迎えるという話を聞いたその日に、両親にせがんだくらいだ。

 

「パパ、ママ! あたしも弟が欲しい!」

「え? そ、そんなこと言われてもなぁ……」

「ウチは魔美一人で手いっぱいよ。それに、パパはめっきり体力が落ちちゃったし」

「お、おい!」

 

 そんな感じで、結局断られてしまったが。

 ちなみに、魔美はどうやって子供を作るのかを今現在でも知らない。コウノトリが運んでくるとか、さすがに魔法世界でもそんな事実は存在しないし、中学生なら保険の授業で習うはずなのだが、居眠りして聞いていなかったのだ。

 

『ゆーくん。あたしのことは魔美お姉ちゃんって呼んで!』

『……魔美おねえちゃん…………魔美ねえ?』

『あ、それいい! 魔美ねえもゆーくんのお姉ちゃんになったげるね!』

『ダメ! この子は私の弟なの!』

『えー、美夜ちゃんのケチ! いいでしょ、減るもんじゃないし!』

 

 美夜子の家に遊びに行く度、彼女が魔美の家に夕太を連れて遊びに来る度、二人は取り合いに励んだものである。

 夕太が"魔美ねえ"と呼んでくれるようになってからというもの、弟を得たような気分になって美夜子と競うように世話を焼いたのだ。大体失敗して自分もお世話になってしまうというオチ付きで。

 

 

 

 それから数年後、魔美14歳。つまり去年、正確には半年前の話。

 美術部に所属している魔美は、課題として学園の敷地近辺の風景画を描くことになったため、目ぼしい場所を探していた。

 

「やっぱり、裏山かなぁ」

 

 校庭を挟んだ先にある裏山だったら良さそうな風景が見つかりそうと考えた魔美は、スケッチブックを手にのんびりとした足取りで校舎脇を通って登り口へと向かう。

 

「ん?」

 

 その途中、頭の中でベルが鳴った。

 辺りを見回すと、初等部の男の子と中等部の男子三人の姿を見つける。前者は校舎の壁を背にしており、後者の三人は逃げ場をなくすように囲っていた。

 彼らの陰になって遠目からはよく分からなかったが、近くの茂みから見てみれば、その初等部の子は魔美がよく知ってる子。彼女にとっても弟のような存在の夕太だった。

 

「あのさ、キミ一応は美夜子さんの弟なんだろ?」

「そうだけど……」

「だったら、そろそろ姉離れすべきなんじゃないか? もう高学年なのにみっともないぜ」

「ようするにくっつぎ過ぎなんだよ、お前」

 

 どうやら、三人に脅されているようだ。美夜子のことが好きらしい彼らは、日頃彼女と一緒にいる夕太が気に食わないらしい。

 これが普通なら弟と仲良くなって本命である美夜子とお近づきになろうとするのだろうが、彼が彼女とあまりにくっつきすぎな上、実の弟ではないという事実を知って、単なる邪魔者としてしか見れなくなったのだ。

 

「そんなこと言われてもな~」

「美夜子さんもいい加減うんざりしてるって言ってたぞ」

「うっそだぁ。だってぼく、将来美夜ちゃんと結婚するって決まってるもん」

「はあ? 何言ってんだこのガキ」

「ふざけたこと抜かしやがって。おい」

 

 いくら文句を言ってもどこ吹く風な夕太。

 その態度が気に食わなかったのか、リーダー格の男子が連れに命令して彼を浮遊術で浮かばせた。

 

「わわっ」

「美夜子さんに付き纏わないって言えば、見逃してやるぜ」

「付き纏ってなんかないんだけど……」

「ダメだコイツ。いっぺん痛い目見ないと、分かんねえみたいだ……なっ!」

 

 我慢の限界を迎えた男子は、宙に拘束された夕太目掛けてその拳を振り上げる。

 

「──ッ!」

 

 瞬間、魔美は茂みの陰から顔を出して手を伸ばした。親指と人差し指、小指を立てたその手を、夕太に向けて差す。

 すると、ブンッと彼の姿が一瞬にして消え、男子の拳は空を切ってすぐ後ろにある校舎の壁を殴りつける結果となった。

 

「いってえぇーーッ!!」

「き、きき、消えた!?」「ど、どこ行ったんだぁ!?」

 

 痛みに蹲る男子。他の二人は急に消えた夕太に驚いて、慌てて辺りを探し回っている。

 

「クスクス、ざまぁみなさい」

 

 再び腰を下ろし、得意げな顔でほくそ笑む魔美。

 しかし、すぐ傍から苦しそうな声が聞こえると共に、お尻に違和感。スカートが独りでに暴れ始める。

 

「む~! む~!」

「きゃっ! ゆ、ゆーくん!?」

 

 なんと、夕太が自分の下敷きになっていたのだ。ちょうど顔にお尻を押しつけるような形で。どうりで座り心地がいいはずである。

 

「ご、ごめんなさい! ちょっとミスっちゃった!」

 

 慌てて立ち上がり、夕太を助け起こす。

 目を回している夕太は状況がよく分かっていないのか、辺りを見回した後でようやく目の前の魔美の存在に気づいた。

 

「あ、あれ? ぼく殴られそうになって……どうなったんだっけ? それに、なんで魔美ねえがいるの?」

 

 中等部の男子に殴られるはずが、どうして魔美の傍にいるのか? ひどく困惑した様子だ。

 見れば、問題の男子達は夕太を探して既に別の場所へと移動していた。

 

「ゆ、ゆーくんったら! こんなトコで寝ちゃダメよ!」

「え……? ぼく、寝てたの?」

「もーぐっすりと! おかげでお尻に敷いちゃったじゃない! あは、あはは……」

 

 魔美はそう笑って誤魔化そうとしたが、夕太は疑わしげにじっと彼女を見ている。

 彼は何を思ったのか、唐突にポケットからスプレー缶のような物を取り出し、それを魔美に向けて頭を押した。すると、プウッとおならみたいな音を出して魔美の顔面にガスが吹きかかる。

 

「ひゃッ!?」 ──ブンッ

「えっ?」

 

 瞬間、魔美の姿が消えた。ガスを吹きかけた夕太も目を丸くする。

 

「ケホッ! ケホッ! もー、何すんの!?」

 

 消えた魔美の文句は、上の方から聞こえてきた。

 見上げると、すぐ近くの木の上で、目を瞑って手で払う仕草をしている彼女の姿が。

 

「魔美ねえ、いつの間にそんなところまで登ったの?」

「だから、エスパーのあたしが! このテレポートでゆーくんのこと助けてあげたの! って、え゛ぇ!?」

 

 驚きの声を上げる魔美。隠していることを一切の違和感もなく正直に話してしまったからだ。

 

「そっかぁ、やっぱり魔美ねぇが助けてくれたんだ。ありがとう!」

「どういたしまして! ……じゃなくて!」

「ところで、魔美ねえって何歳ぐらいまでおねしょしてた?」

「12歳! ぎゃーーッ!!?」

 

 ほんの数年前でおねしょしていたことまで白状してしまい、木の上で悲鳴を上げる魔美。

 そんな彼女に夕太は先ほど使った缶を掲げて見せる。

 

「これね、『白状ガス』って言うんだ。このガスを浴びると、隠し事を何でも正直に話しちゃうんだよ」

「ひどいわ! 秘密にしてたのにぃ!」

「だ、だって気になったから……わー! ごめん! ごめんね! 魔美ねえ!」

 

 魔美は「わーん!」と子供のように大泣きし始めてしまう。

 夕太はボタボタ落ちてくる彼女の涙で頭を濡らしながら、慌てて謝り倒すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 裏山の開けた場所、見晴らしが良い高台に来た魔美と夕太。

 

 夕太は彼女の部活が終わるのを待っているらしい。二人並んで背の低い草むらに腰を下ろし、魔美はスケッチブックに筆を走らせながら彼と会話を交わす。ちなみに、白状ガスは魔美に取り上げられている。

 

「あたしね、エスパーなの」

「エスパー?」

「浮遊術とか念力系の魔法が得意な人のこと。さっきみたいなテレポーテーション……瞬間移動術を使える人は特にそう呼ばれるみたい」

 

 魔美はつい最近になって瞬間移動術を使えるようになった。それに加えて、一定範囲内に助けを求めていたりする人がいると、その思考波が非常ベルとなって頭に届くのだという。

 世話焼きで困っている人を放っておけない彼女は力を得てからというもの、非常ベルを聞きつける度にその主のもとへテレポートで駆けつけ、解決するのが日常となりつつあるようだ。

 

「魔美ねえすごいや! 瞬間移動術って、とっても難しい魔法なんでしょ?」

「えへへ、そうなの。本で読んだんだけど、個人で使える人なんてほとんどいないんだって」

 

 彼女の言う通りで、瞬間移動術は非常に難易度が高く危険な魔法だ。

 現代でも実現できている魔法だが、発着点それぞれに大規模な装置・施設を用意しなければならず、今のところ国家間の移動でしか使われていない。

 ようするに、科学世界における飛行機に準ずる存在ということである。

 

 そんな魔法を個人で使う、ということがいかにすごいか。

 膨大な魔力を要するし、無理やり使ってもどこだか知らない場所に転移して身体もバラバラになるのがオチなのだ。それを中学生で扱える魔美。もはや、彼女の固有魔法と言えるかもしれない。

 

「でもね、自由に使えるわけじゃないのよ。テレポートできるのは、何か危険な物が迫ってくる時だけ。ボールが飛んできたり、人とぶつかりそうになった時とかね。何でかは分かんないんだけど」

「ふ~ん。じゃあ、さっきのは白状ガスのせいでテレポートしたってことか」

「そういうこと。あ~あ、好きなタイミングで使えれば、もっとエスパーとして活躍しやすくなるんだけどなぁ」

 

 話を聞いて、夕太は首を傾げた。先ほどの白状ガスでもテレポートできたのだから、別に危険なものでなくたっていいのではないかと。

 そのことを話してみると、とんでもないとばかりに魔美は首を横に振った。

 

「あんな隠し事もできなくなっちゃうガスなんて、あたしにとっては危険が危ないわ! フライパンの侵害よ!」

「そっかぁ」

 

 それを言うならプライバシーなのだが、生憎夕太にはその間違いを指摘できるほどの頭はなかった。

 

「でもさ、危険かどうかはともかくとして、白状ガスみたいに自分で自分に何か吹きかけたり投げたりすれば、好きなタイミングでテレポートできるんじゃない?」

「……そっか、そうよね! わー! ゆーくんありがとう!」

 

 思ってもみなかったとばかりに感激し、お礼を言って夕太に抱きつく魔美。おっぱいを顔に押しつけられ、これ幸いと夕太はその感触を顔面で味わった。

 

「ニヘヘ……あ、魔美ねえ」

「んー、なあに?」

「そもそもなんだけどさ、なんでテレポートできること隠してるの?」

「あ~。前にね、さりげなく美夜ちゃんに聞いてみたのよ。あたしがエスパーってことは伏せてだけど」

 

 美夜子によると、過去に個人で瞬間移動術を行使できたことで有名になった魔法使いがいたらしい。

 その人は魔美と違って条件なしに好きなタイミングでテレポートできたようで、それを悪用して銀行の金庫に忍び込んだりと犯罪行為を繰り返していたのだという。しまいには警察から逃れる際に目算を誤って壁の中に瞬間移動し、そのまま死んでしまったそうだ。

 

 歴史を振り返ってみても、テレポートを扱えた魔法使いは皆犯罪者になり下がってばかりなのだとか。そのため、あまり良いイメージは持たれていないらしい。

 

「そういうわけで、テレポートを使える人はそれだけで悪い人として見られがちみたいなの」

「えー、魔美ねえはそんなことしないでしょ?」

「もちろん! でも、あたしを知らない人はそう思わないだろうし、やっぱり秘密にしておかないとね」

 

 その話を聞いた夕太は、以前遅刻しそうになった時に使ってみせた『どこでもドア』に対し、美夜子があまり多用しちゃダメと言っていた理由が分かり、一人納得する。

 

「あたしだって、本心では公表したいと思ってるわ。ほら、なんだっけ?」

「お金もらえるやつ?」

「そう、それ!」

 

 魔法世界における日本を始めとした多くの国では、非常に優れた魔力を有している子供や有用な固有魔法を扱える子供をギフテッドまたは魔法優良児と呼んでいる。そういった子供達には、国から成人するまで毎月補助金が給付されるのだ。

 ちなみに、夕太のひみつ道具を取り出す固有魔法はよく分からないし役に立たないと散々な評価を受けて審査落ちしてしまった。この世界では魔力が通っていないものは信用するなという格言があるくらいだから、そういう評価になっても仕方ないのだろう。

 

「本当だったら毎月いっぱいお小遣いがもらえるはずなのになぁ」

 

 魔美は残念そうに頬杖を突いて溜息を吐く。スケッチブックと鉛筆は地面に置いているし、もはや絵を描く気分じゃなくなってしまったらしい。

 夕太はそんな彼女の横顔を隣からじっと見つめる。前にも言及したが、誰が見ても美人な美夜子とリームに比べて、魔美は周りからはよく見れば可愛いという評価に落ち着いている。しかし、夕太にとっては魔美だってジャンルは違えど、とても魅力的な美少女なのだ。

 

「ねえ、ゆーくん。さっきのガスじゃなくて、なんかもっと良さそうな道具あったりしない?」

 

 そうして眺めていると、ふいに魔美が良いことを思いついたと言いたげな顔でそう尋ねた。

 

「え~? あるかなぁ」

 

 言いながら、ポケットを漁ってみる。すると、黒くて小さな筒が出てきた。『空気ピストル』と言い、指に嵌めて"バンッ!"と叫ぶと空気の塊を撃つことができる道具だ。

 魔美はそれを見て、「あっ、去年のお正月のやつね」と口にする。昨年、満月家と佐倉家で催した餅つきで、夕太がこの道具を使って楽していたのを思い出す。

 

「痛くないかしら?」

「少し痛いくらいじゃないかなぁ。というか、当たる前にテレポートするんでしょ?」

「それもそっか。じゃあ、とりあえずはこれを使ってみるわ」

 

 そう言って、魔美は空気ピストルを受け取ろうとする。

 しかし、夕太はそれを乗せた手を握り、彼女の手を避けるように遠ざけた。追いかけてもまた避けられてしまう。

 

「もー! ゆーくん、なんで意地悪するの!?」

「だって、タダであげたりしたら、ボクのひみつ道具の価値が下がっちゃうじゃないか」

「えー、お金取るのぉ!?」

「魔美ねえが年中金欠なのは知ってるよ。だから、そのぉ……」

 

 何やらもじもじしている言い淀んでいる夕太。魔美はそれを見て首を傾げ、ならばと彼の膝に手を当てる。

 すると、魔美の頭の中にある映像が浮かんできた。女の子の裸だ。年は自分と同じくらい。体型も髪型もほぼ同じ。皆まで言う必要はない。それは魔美の全裸姿であった。

 

「まあ、ゆーくんのエッチ! あたしの裸が見たいなんて!」

「ええっ! な、何で分かったの!?」

「ふふん、このエスパーおマミに隠し事なんて不可能なんだから。こうして触れている相手の考えがテレパシーで分かっちゃうの」

「わー、フライパンの侵害だぁ!」

「べー! さっきのお返しよ!」

 

 言い間違えもさることながら、不毛な言い合いをする二人。仲が良いと言えばそうだし、傍から見れば痴話喧嘩にも見える。

 

「はぁ……もう、しょうがないんだから」

 

 しばしの間そうして遊んだ後、魔美はおもむろに立ち上がって自身の制服の白いリボンを解き始めた。

 

「え? ま、魔美ねえ?」

 

 戸惑う夕太の声をよそに、慣れた様子でスルスルとブレザー、ブラウス、スカートを脱いで下着姿になる魔美。

 だが、ここは人気が少ない裏山とはいえ、まごうことなき屋外だ。

 

「ちょ、ちょ! 魔美ねえったら!」

「大丈夫よ、誰も来やしないわ。あ、美夜ちゃんには内緒ね」

 

 そのまま、ついに下着まで脱ぎ捨てた。両手を背に回した状態で目の前に立つ全裸の魔美に、夕太は目を奪われる。

 

 以前彼女が満月家でワインを誤飲して裸を晒して以来、女の子の裸に興味を持つようになった夕太。

 魔美の父が描いた彼女の裸婦画ももちろん見たことはあるが、それとは違って直に見る成長途中の瑞々しい裸体にはやはり底知れない魅力がある。純粋にスタイルも良かった。

 

「……もう、恥ずかしくなっちゃうから、そんなにエッチな目で見ないで」

「そ、そんなこと、言ったって……」

 

 夕太の熱い視線に、うっすらと頬を赤らめる魔美。

 

 周りから言われているように、魔美は画家である父親のヌードモデルを務めていたため、他人に裸を見せることには抵抗がない。

 それでも、見せろと言われて素直に見せるほどではないし、いくら慣れていても、夕太のようにこれでもかと目を見開いて凝視されてはさすがに羞恥心を覚えてしまうようだ。だからと言って、そういう目で見るなと言われても到底無理な話というもの。

 

「……っ」

 

 ごくりと生唾を飲み込み、頭の上からつま先まで舐めるように眺める。魔美のお椀型で手のひらサイズのおっぱいと、くびれ。未だ毛が生えていない綺麗な縦スジに、形の良いお尻。

 なかなかどうして、モデルに相応しい芸術的なバランスを秘めた女体だ。夕太はズボンの下でむくむくとちんぽを勃起させていく。

 

(わ~……ゆーくんのちんぽこ、おっきくなってる)

 

 男の子の生理現象を間近で見て、魔美は自分の身体に自信を持つ。美夜子やリームと比べたら、少し見劣りするんじゃないかと多少の劣等感を抱いていたのだ。

 

「魔美ねえ。お、おまんこ開いてみせて!」

「ひ、開くのォ!? う~ん……」

 

 そのお願いに魔美は躊躇うも、必死な形相の夕太を見て逆に断るのが申し訳なくなってしまう。

 胸の鼓動が大きくなっていくのを感じながら、自身の女陰に右手の人指し指と中指を添える。そして、少し、ほんの少し、くぱぁっと大陰唇を押し開く。艶やかなピンク色の具が露わとなった。

 

「わぁ……」

「~~ッ! や、やっぱりダメ!」

 

 が、すぐに指を離してしまう。

 開かれたおまんこは再び閉じ、まるで恥ずかしがり屋が部屋に閉じこもるようにして元の一本スジに戻る。その上に二重扉の如く両手を被せ、股間を隠した。

 

「ああ! もっと見たかったのに! 魔美ねえのおまんこ!」

「だってぇ、恥ずかしいんだもんっ」

「じゃあっ、じゃあっ、今度はお尻見せて!」

「お尻ぃ?」

 

 見せて見せてとせがむ夕太に、渋々その場で180度回転して背中を見せる。自身の腰に両手を添え、若干上半身を前屈みにしてお尻を強調させた。

 その健康的で丸みを帯びた臀部は、午後の陽の光を浴びて僅かに光沢を成し、芸術的立体感を創り出している。

 

「……これでいい? 満足した?」

「まだ! もっと前屈みになって! お尻の穴もちゃんと見たいっ!」

「ええーッ!? やーよ! 絶対ヤ!!」

「お願い! これで終わりにするから!」

 

 必死に懇願する夕太。魔美は溜息を吐き、ええい、ままよ! とヤケクソ気味に言われた通り前屈みになり、お尻を突き出す。

 さらには言われてもないのにお尻に添えた両手で尻たぶを持ち上げ、肛門部分を押し開いて見せつけた。黒ズミが一切ない綺麗なアナルのお披露目だ。

 

「わー! わー!」

「~~ッ!!」

 

 顔を真っ赤にしながら、瞼をきつく閉じてお尻に注がれる視線に耐える。

 

 おしっこが出る場所やうんちが出る穴なんて見て、何がそんなに良いのだろう? 男の子のエッチに対する興味は理解し切れない。そう呆れながらも、魔美の心の昂りは留まることはなく、徐々に股間は湿りを帯び始める。

 何だかんだ言っても、いつも美夜子に夢中な彼が自分の身体に夢中になっている事実に対し、無意識の内に悦びを感じていた。

 

「魔美ねえの全然汚くないよ! おまんこもね!」

「え? ああっ!」

 

 言われて気づく。より前屈みになったことで、お尻の穴はもちろん、おまんこまでバッチリ見られていたのだ。

 前から見るおまんことはまた違い、後ろから見るおまんこもまた違った趣きがある。夕太は美味しい思いをしたとばかりに唇を舌で舐めた。

 

「もう、バカッ! ゆーくんのエッチ!」 

 

 パッとお尻から両手を放し、夕太に向き直る魔美。

 地べたに座って前のめりになっていた彼の正面に屈み込み、膝を抱える。ちょうどいいサイズのおっぱいが膝に押しつけられ、ふにゅんと潰れた。

 

「……はい、おしまい! 満足したでしょ?」

 

 ぶすっとした顔を向けながらも、乳首やデリケートゾーンを膝と太ももで隠すその体勢がより一層卑猥さを増大させている。

 もう少し、ちょっと脚を開くだけで、またおまんこが見えるのに!

 

「も、もうちょっと……」

「ダメでーす。自分で終わりって言ったじゃない。これ以上は延長料金を頂きますので」

「ぅぅ……」

「あたしだって、モデル以外で裸見せるなんて恥ずかしいんだから。それに、ぽんぽん見せたりなんかしてたら、このおマミ様の魅惑ボデーの価値が下がっちゃいますからね」

 

 夕太は「ちぇ」と唇を尖らす。「ほら、お代」と手を差し出す彼女に、渋々空気ピストルを支払った。

 

「毎度あり。ふふーん、ゆーくんがエッチでスケベな子で助かったなぁ」

 

 そう言って、魔美は受け取ったばかりの空気ピストルを右手の人差し指に嵌め、しげしげと眺める。

 

「う~ん、黒光りしててなんだか無骨ね。ピンク色に塗っちゃおうかしら。そんで? これで"バンッ"て言えば「うひゃっ!?」──え?」

 

 話している途中で急に妙な悲鳴を上げた夕太。魔美は何事かと顔を上げる。

 

 彼はなぜか股間を抑えて震えていた。

 視線を下に戻すと、空気ピストルが嵌められた自分の人差し指。その指が差す先の一直線上には、夕太の股間。

 先ほどの「バンッ」という言葉で、彼の勃起した股間を撃ってしまったのだ。

 

「そっか! "バンッ"って言っちゃったから──」

「あひっ!」

「あ、ごめんなさい! また"バンッ"って──」

「んぎぃっ!?」

「…………」

 

 撃つ度に変な声を上げて悶える夕太を見て、無言になる魔美。

 

「バンッ」

「ちょ! 魔美ねえ!」

「バンッ」

「イ゛ッ! ま、魔美ねえってば!」

 

 なんだかちょっと楽しくなってきた魔美は、空気ピストルで夕太の股間を刺激するのを止められなくなってしまう。

 

「バンッ」

「あぐっ」

「バンッ」

「だ、だから──」

「バンッ」

「ッ、魔美ねえ!」

 

 夢中で撃っていると、急に夕太が魔美に飛びかかってきた。「ひゃっ!?」と声を上げるも、そのまま押し倒されるような形となり、雑草の生え茂った草むらに倒れる。

 

「ゆ、ゆーくん!? 何して──」

 

 ビックリして少しの間呆然としていたが、我に返って自分に覆い被さっている夕太に声を荒げる。が、その夕太の手によって口を塞がれてしまう。

 

「しーっ」

 

 もう片方の手の人差し指を口の前で立てて、何やら静かにするよう訴えている夕太。

 

 

 

「──この辺とかどうだ? 眺め良いし」

 

 

 

 その時だった。少し離れた所から複数の話し声が聞こえてきたのは。美術部員の男子達だ。

 考えてみれば、裏山は風景画を描くには絶好のスポット。魔美以外の部員が来ても何ら不思議はなかった。二人で重なって倒れたまま、草陰に隠れて息を潜める。

 

「う~ん、悪くないけど、どうせなら多奈川が見える場所の方が良くないか?」

(──ッ)

 

 緊張の中、魔美はお腹の辺りに硬くなった夕太のおちんぽが押しつけられていることに気づく。

 自然と荒くなっていく息遣い。なにせ、今自分は裸なのだ。それがこうして密着した状態になれば、一層興奮を覚えても仕方ない。

 

 ドクッ、ドクッ、とお互いの心臓の音がくっついた身体に響き渡ってリズムを刻む。

 部員達の話し声は実際の距離以上に遠く感じられた。

 

「……じゃあ──向こうの──行──」

 

 しばらくすると、部員達は別の場所へと移動していった。張り詰めた空気が一気に霧散し、一息吐く二人。

 

「はぁ……危なかった」

「ホントだよ。魔美ねえったら、ぼくのちんぽイジメるのに夢中なんだから」

「べ、別にイジメたつもりなんてないわ! ちょっと反応が面白くて……」

「いいよもう。それより、ホントに見られてない? 大丈夫?」

「大丈夫よ。なんでそんなに心配するの?」

「だってぼく、魔美ねえの裸、他の人に見せたくなんかないもん」

「…………」

 

 依然、二人は重なって倒れたまま。

 魔美は自分を羽交い絞めにしたまま見下ろしている彼のその言葉を聞いて、途端に顔が熱を帯びていくのを感じた。それに、股間の辺りも。

 

「~~ッ! あ、そ、そうだっ!」 

「魔美ねえ?」

 

 慌てて、夕太を押し退けるようにして起き上がる。

 

「あたし、今日ママが遅くなるから、お夕飯の買い物しなきゃなんだった!」

「え、スケッチはいいの?」

「明日パパッと仕上げちゃうから大丈夫! そ、それじゃ、またねゆーくん! バンッ!」

 

 そう矢継ぎ早にまくし立て、脱ぎ捨てた制服と下着を搔き集める魔美。

 最後にスケッチブックと鞄を手に取り、空気ピストルを頭に向けて発砲。ブンッ! という音を鳴らして消え去ってしまった。

 

「行っちゃった……お夕飯って、魔美ねえが作るわけじゃないよね?」

 

 魔美の母親が許すはずがない。何せ、彼女の料理センスは壊滅的なのだから。夕太は以前知らずに食べて地獄を見たことがある。

 

 そういえば、と思い出す。白状ガスが取り上げられたままなことを。

 二つのひみつ道具分のお賃金が得られなかった夕太は、次に会った時に請求してやるぞと心に決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エスパー魔美感を出すために日常シーンを書いてたら例によって20000字超えたので、後編は明日投稿します。

原作自体は有名とは言え、古いしエッチな目で見れない人が多いだろうと評価などはあまり期待してなかったのですが、急に10評価頂いてビビッてます。ありがとうございます。お気に入りも50件超えて感謝。

〇冒頭の若い妊婦
特に原作に登場しているわけではない、ただのモブ。
ふと疑問に思ったのだが、自分の子供のことを"坊や"と呼んでいる人は現実で見たことがない気がする。それに言わせるだけで昭和感が漂うのはなぜだろう。作者は昭和生まれではないので知らんけど。



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