学校で一番エッチなヤツのおねショタ歴程 作:ピーマン
──ブンッ! ピヨヨンッ ブンッ! ピヨヨンッ
一度のテレポートで移動できる距離はせいぜい5、600mぐらい。
魔美は途中で服を着たのち、空気ピストルを何度も自分の頭に発砲。独特な効果音を鳴らしながらテレポートを繰り返し、家の自室に直接帰り着いた。
「ただいまぁ」
そう誰に向けるでもなく挨拶して、靴を脱ぐ。手に持っていた物を放り出して、ベッドにボスッとうつ伏せに倒れた。
ふーっと息を吐く。頬に触れてみると、まだ顔が熱い。
(もう、あたしったら何ドキドキしてるんだろう。ゆーくんには美夜ちゃんがいるのに……)
伊達に女の子好きを自称しているわけではない夕太。たまにドキッと女心を刺激するようなことを言うことがあるからタチが悪い。
気持ちを切り替えるべく、起き上がって部屋着に着替える魔美。その際、指に嵌めた空気ピストルが目に入った。
(いちいちバンッて言わなきゃならないのが欠点なのだ。他にも良さそうな道具がないか、ゆーくんに探してもらわないと)
それはつまり、また裸を見せるということなのだが、魔美はそれを楽しみにしてしまっている自分に気づかない。
年齢に比べて感性が幼い彼女には、下着の湿り気も性的な訴えとして届かないでいた。
さて、先ほどの緊張のせいもあってか、なんだか喉が渇いてしまった。部屋を出て一階に降りた魔美は、適当な飲み物を飲もうと台所へと向かう。
すると、そこには──
「あれ? パパ!?」
なんと、フランスへ絵画留学中であるはずの父、十郎の姿があった。
「ん? 魔美? 何だ、帰ってたのか」
「それはこっちの台詞よ! 何で? いつ帰ってきたの?」
「ついさっきだよ。あっちで出来た知り合いが日本に用事ができてね。旅費は出すからぜひにと付き添いを頼まれたんだ。ほんの一週間だけど、こうして帰ってこれたわけさ」
「そうなんだ……おかえり、パパー!」
大好きな父親のサプライズ帰省に感極まり、その久しく触れていなかった太った体に抱きつく。十朗は笑顔で愛娘を受け止めた。
絵画留学を始めてから、かれこれ1年以上。バカンス大国であるフランスなので大学も連休が多いのだが、彼はそんな時でも画家としての腕を磨くべく自主的に励んでいるため、帰ってくるのは年に一度ぐらいなのだ。頻繁に帰省するだけの金銭的な余裕がないというのもあるが。
「ほら、これお土産」
「わーい! ありがとう!」
ひとしきり抱き合った後、十朗からもらったフランス土産のお菓子を手にぴょんぴょん跳ねる。そんな娘を微笑ましそうに見ながら、彼はふと思いついて咥えていたパイプを口から放した。
「そうだ、魔美。久しぶりにモデルを頼まれてくれないか?」
「え? お知り合いの方はいいの?」
「長旅の疲れもあるし、今日いっぱいはお互い自由にしようってことになってるんだよ。今頃はホテルから出て、街を満喫してるんじゃないかな」
「ふーん」
「それで、やってくれるか? 一応小遣いも出すつもりだけど……」
魔美は留学前の父と暮らしていた時のように、快く引き受けようと口を開きかける。
『──だってぼく、魔美ねえの裸、他の人に見せたくなんかないもん』
「あ……う~ん、と」
しかし、先の夕太の言葉がフラッシュバックして、思わず歯切れの悪い返事を返してしまう。こんなことは初めてだった。
「どうした? 都合が悪いのなら、僕は構わないけど……」
「う、ううん! 大丈夫! オッケーよ!」
「本当か? 他に用事があったりするんじゃ──」
「大丈夫だったら! せっかくパパが帰ってきてくれたんだもん!」
慌てて首を横に振り、笑顔で返す。今日を逃したら、またいつ描いてもらえるか分からないのだから。そう自分に言い聞かせる。
が──
「敏腕ヌードモデルおマミの出
「うわあぁーッ!!?」
「わー!? パパ―!!」
ちょうど人差し指を立てたのがまずかった。
"
幸いなことに、十朗は頭にたんこぶを作るだけで済んだ。
二人で久しく使っていなかったアトリエ部屋に行き、魔美は服を脱いでモデルの仕事を始める。なお、空気ピストルはまた誤射しないように台所に置いてきた。
「前髪~ 切りィ過ぎた~♪ 日~曜日の~午後ォ~♪ お~でこ~テカテッカ~♪」
(相変わらずだなぁ、パパ)
ほくそ笑む魔美。再び素っ裸になった彼女は、膝立ちで両手を頭の後ろに組んだポーズを維持している。
そんな彼女をキャンバスに描きながら、下手くそな歌を披露している父。彼は筆が乗ってくると、こうして無意識の内に歌を口ずさむのだ。フランスに留学してもその癖は変わらないらしい。
「あっ、いけない」
「ん? どうした?」
「今日ママね、帰りが遅くなるの。だからお夕飯の買い物しなきゃだったんだけど、忘れてたわ」
「な~んだ! それじゃあ、モデルを頼んで正解だったなぁ!」
「まあ、ブジョク!!」
母親の菜穂子は朝売新聞の外信部に勤めており、今日は遅くなると前もって言われている。夕太のもとから離れる時の言い訳は、別にその場で思いついた嘘というわけではなかったのだ。
「じゃあ、今晩は出前でも取るか。久しぶりに福来軒のラーメンが食べたかったんだ」
「ふーんだ、パパのバカ」
そう文句を吐き捨て、魔美はポーズを解いてモデル台から足を下ろした。
「おいおい、まだ終わってないぞ?」
「おトイレ!」
「はぁ。仕方ない、出前を頼みがてら休憩にしようか……あっ! こら魔美、服ぐらい着ていきなさい!」
父のお叱りも無視して、全裸のままトイレに向かう。
思い返せば、今日は午後に一度もトイレに行ってなかったのだ。膀胱に溜まったおしっこを放出すべくノブに手をかける。
「ッ!」
その時、間の悪いことに頭の中で非常ベルの音が鳴り響いた。この激しい鳴りよう、誰かが緊急で助けを求めているのだ。「行かなきゃ!」と階段を駆け上がる。
「あれ? あれぇ!? どこ行ったのー!?」
すぐに自分の部屋に戻って空気ピストルを回収しようとするが、元々小さい道具なため、どこへやったのか見当たらない。
そもそも、そこにあるはずもなかった。自室ではなく、台所に置いてきたのだから。焦っているのが災いして、魔美はそれに気づくことができない。
「えーいっ! もう、こうなったら──」
仕方なく、夕太から取り上げて鞄の中に入れたままだった白状ガスを取り出す。隠し事ができなくなってしまうが、この際、背に腹は代えられない。
魔美は頭に白状ガスのノズルを向け、ガスを発射する。プウッという間抜けな音と共に、彼女の姿はベルの発生源へ向けてテレポートした。裸のまま。
──ブンッ! ピヨヨンッ ブンッ! ピヨヨンッ
既に陽が落ちた中で、魔美は白状ガスを出し続けて屋根伝いにテレポートを繰り返す。
もう一度言うが、裸のままである。
「ここね。ベルの発信源は」
そうして辿り着いたのは、思わず目を奪われてしまうほどの豪邸。そこの一室からベルの音が聞こえてきているのだ。
もう一度テレポートし、発信源である部屋内に侵入。ちょうど物陰に転移できた魔美は、ひょこっと顔を出して部屋の様子を伺う。
「やめ、やめて! ──あぁっ!!」
そこでは、ベッドの上にいる女性が長い茶髪を乱暴に引っ張られ、大学生らしき二人の男達に服を剥かれてようとしている真っ最中だった。まごうことなきレイプ直前の現場だ。
「ひどい、女性の髪をあんな乱暴に……!」
考えていることが白状ガスのせいで声に出てしまうが、女性の悲鳴のおかげで気づかれていない。
性知識に乏しい魔美に分かるのは女性がひどい目に遭っているということだけで、具体的に彼らが今から何をしようとしているのかはイマイチ飲み込めていなかった。
「ちっ、やけに暴れやがる。おい、催眠術担当! さっさと眠らせろよ!」
「わりぃ、何回やっても成功しなくてさ。この女、抵抗力高すぎだぜ」
「あぁ?! 催眠術も魅了術もダメ! ちんぽばっかおっ勃ててねえで、少しは役に立てねえのか!?」
「人のこと言えんのかよ? 俺らがダメならウチの大学にいるヤツは全員無理だろ」
魅了術か催眠術で大人しくさせるつもりだったのだろう。だが、人の意識を操作するというのは魔法でも高度な部類に属するし、そもそも一般利用は法律で禁止されている。
それを扱えるという時点で、彼らが偏差値の高い有名大学に通っている、一般社会におけるエリートのような立場にいるということが推察できる。
「ったくよぉ~……まあいいか。パンツは脱がせたし、このままヤッちまおう」
「ッ!? いや! いやあぁっ!! ──ツ夫さぁん!!」
「あ~、うるせえなぁ! その綺麗な口にちんぽ突っ込んでやろうか!? 嫌だったら大人しく黙ってろ!」
我慢の限界が来たのか、男は怒りに任せて彼女の後頭部を殴りつけた。
すると、女性の身体から糸が切れたように力が抜け、ベッドにうつ伏せに倒れてしまう。勢い余って、気絶させてしまったようだ。
「あ~、やっちまった」
「でも、これで静かになったじゃん。結果オーライってヤツ?」
「バカ野郎! 完全に寝かせちまったら面白くねえだろ! 俺はマグロが嫌いなんだ!」
「殴って黙らせたのお前じゃん……まあいいや。俺、後ろの穴もらうから。へへ、あの有名女優をヤれるなんて、落目とかいう二枚目スターの言うことを信じて良かったな。認識阻害のセキュリティも簡単に抜けられたし」
片割れの男もまたズボンを脱ぎ捨て、全裸となった二人の男が気絶した女性に覆い被さろうとする。
しかし、これ以上黙って見ている魔美ではない。何をしてるのか気になって尻込みしてしまったが、今こそエスパー魔美の出番である。
「そこまでよ!」
「ッ! だ、誰だ!?」
物陰から飛び出して仁王立ちする魔美。
が、忘れてはいけない。彼女もまた全裸であるということを。
「何だ何だ、嬢ちゃん。はしたない格好してんじゃねえか」
「中学生か? ひゅ~、結構可愛いじゃん」
まだ成長途中の身体をじろじろと眺める男達。その舐めるような視線に魔美はゾワッと肩を震わせるも、親指と人差し指、小指を立てた手を差し向ける。
「うわっ!? こ、このガキッ!」
「全然抵抗できねェ! 何だコイツ!?」
浮遊術に捕まった二人は、全裸のままの無様な姿で宙に拘束された。
本人は気づいていないが、魔美が使う念力系の魔法は魔力を一切介していないまた別の力によるもの。そのため、相手側は魔法だと思って抵抗しても全く効果を成さないのだ。
魔美はそのまま窓を念力で開けて、男達を外へ放り出そうとする。
「キャッ!?」
が、それは中断させられてしまう。
急に現れたもう一人の男に後ろから羽交い絞めにされてしまったのだ。
「ふ~、助かったぜ」
「おいおい、お前らこんなガキに何手こずってんだ?」
「うっせえな! テメーこそ帰ってくるのが遅えんだよ!」
どうやら、彼らの仲間らしい。魔美を拘束するその手に真新しいタバコの箱を持っていることかして、ヤニを切らして外へ買いに出ていたのだろう。
「いやぁっ! 放してェ!」
「キンキンうるせぇな! 静かにしろ!」
「ッ!」
暴れて拘束から抜け出そうとする魔美だったが、女性を殴ったリーダー格らしき男からパシンッ! と頬に平手打ちを受け、恐怖にすくみ上がって悲鳴を上げられなくなってしまう。
「おい、どうやって中に入ったんだ? この家は魔法で簡単には入れないようになってるはずだぞ」
「……あ、あたし、テレポーテーションで、入りました」
侵入方法を問われた魔美は、正直に瞬間移動術で入ってきたと吐いてしまう。怖くて素直に話したわけでない。移動に使った白状ガスのせいだ。
男達は目を丸くして驚く。先述した通り、瞬間移動術を個人で扱える人間など滅多にいないのだから。
「テレポーテーション!? マジかよ!」
「コイツは驚きだぜ。そんな女がわざわざ真っ裸でやってくるなんてなぁ。コイツは天からの恵み物って奴かな」
「何似合わねえこと言ってんだよ。へへ、でも確かに。こんなガキ犯すの初めてだもんな」
そう下卑た笑いを零しながら、男の一人が魔美に近付いてその胸をすくうようにして触る。
拘束された身体がビクリと震え、肌に鳥肌が浮かび上がる。目尻からは涙が頬を伝って流れ落ちた。
「違ぇよ! この女を孕ませてガキ産ませれば、当分遊ぶ金には困らないぜ」
「ああ、そうか! 国から金もらえるんだったな!」
固有魔法を身につけた人物の子供は、同じ固有魔法を受け継ぐと言われている。
確かにその通りなのだが、可能性はかなり低い。また、受け継いだとしてもそれは下位互換に等しく、ほとんどの場合使い物にならないのだ。
つまり、実質的にこれは魔法世界における迷信ということである。
「ちょうどいいや。前にヘマしてしょっぴかれたせいで、クソ親がカネ寄越さなくなったからなぁ」
「でもよぉ、さすがに俺ら全員が遊べるほどの額じゃねえだろ?」
「足りねえなら足りねえ分、孕ませればいいんじゃねえの?」
「ギャハハッ、そんな数のガキ産ませてどうすんだよ」
「じゃ、早いもん勝ちってことで」
しかし、勉強や魔法はできてもまともな教育を受けていなかったのだろうこの男達は、どこかで聞いたその迷信を信じ切っていた。
「きゃっ!」
魔美を羽交い絞めにしていた男がその腕を放し、床へと突き飛ばす。
倒れながらも振り向いた魔美の裸身に、にじり寄ってきた三人の男達の影が落ちる。突き飛ばした男も服を脱いで、全員が全裸となっていた。
魔美はその性知識の乏しさゆえに、これから自分が何をされるのか理解していない。それでも、とんでもなくひどい目に合わされることだけは本能で分からされていた。
「許して……! 許してェ……!」
──ジュワアアァァァ…………
恐怖に駆られて許しを請いながらも、膀胱に溜まっていた尿を抑え切れずに失禁してしまう。魔美の股間を中心に、床の敷物に黄色いシミが広がっていく。
「うわっ、コイツ漏らしやがった!」
「カーペットが台無しだ。こうなったら、嫌でもガキこさえてもらわなきゃなあ」
そう文句を並べて、男達は早いもの勝ちとばかりに魔美に群がり始める。
濡れた尻で後退りながら、魔美は心の中で助けを求めた。それは白状ガスの効果で、声となって吐き出される。
「誰か、助けてェ……! パパぁ! ママぁ! 美夜ちゃん! ……ゆーくん!」
「──いてっ!?」
その時だった。
魔美と男達の間に突然、割って入るようにして横からピンク色のドアが現れたのは。
「魔美ねえ~、もっと良さそうなの用意して────あれ?」
そんな呑気で幼い声と共に勢い良く開かれた扉に、魔美の真正面にいたリーダー格の男は顔面をぶつけ、もんどり打ってしまったのだ。
ドアの中、扉の先から顔を出したのは、声に出して呼んだ相手──夕太だった。
「ゆ、ゆーくん……!」
「魔美ねえ? あれ、ここ魔美ねえの部屋じゃないよね?」
状況を理解していない彼は、真っ裸で黄色く染まったカーペットの上に尻もちを突いている魔美を見て、首を傾げる。
反対側を振り向いてみれば、開き切った扉の先にいる三人の全裸の男達の姿が目に入った。
「あ! キミら、勝手に魔美ねえの裸を見ちゃダメじゃないか! 魔美ねえはぼくのだぞ!」
「いきなり現れやがって! このガキ!」
危機感皆無で指を差す夕太に、残りの二人が飛びかかろうとする。
「ッ!」
そこに、魔美の浮遊術が割り込んだ。倒れているリーダー格の男もろとも、三人を空中に拘束して動きを封じる。
「魔美ねえ!」
ドア枠を握って声を投げかける夕太。
彼の意図を察した魔美は、そのままドアの向こう側へ「えーい!」と男達を放り込んだ。
「「「 うわああぁぁーーーーッ!! 」」」
ドアの向こうは夕太の部屋から交番に切り替わっており、男達は警察の目の前に真っ逆さまに落ちてしまうのだった。
「な、何だ何だ!?」
いきなり降ってきた裸の男達に驚く警察官の声を聞こえる中、ピンク色の扉がバタンッと閉められる。
「あー、びっくりした。魔美ねえ、だいじょ──「ゆーぐぅ~んッ!!」ぐえっ」
未だに何があったのか分かっていない夕太の首根っこ目掛けて、魔美は顔をぐしゃぐしゃにして飛びついた。
「あだしっ! も゛う、ダメかと思っで……ゆーぐぅ゛ぅんッ!」
「ニヘヘ……よしよ~し。もう大丈夫だかんね」
これで白状ガスを浴びてなければ、もう少し年上としての矜持を保っていたのかもしれない。
裸で縋りついてくる魔美の柔肌の感触にちんぽが半勃起状態になりながらも、本当に怖かったということが伝わってきたので、夕太はその背中を撫でてあげる。
「よしよし……あれ? 魔美ねえ、あのベッドで寝てる女の人は?」
「あっ! そうだった!」
言われて思い出し、襲われていた女性のもとへ駆け寄る二人。「あの、大丈夫ですか?」と魔美がそっと肩に触れて揺り起こす。
その横で、床に落ちた女性の物らしきパンツを拾ってポケットに仕舞う夕太。
「う、うぅん……」
「あ、良かった。大丈夫そう」
「魔美ねえ、テレポートのこと隠したいなら、起きる前に帰った方がいいんじゃない?」
「そうね。じゃ、書置きだけ残して……」
二人は犯人は警察に捕まったと簡単な書置きを残し、どこでもドアで足早にその場を去ろうとする。
「あ、あら? 私、一体……」
目を覚まし、上半身を起こす女性。思い出したように痛みを訴える後頭部に手を添える。
そして、物音がして振り返ると、ピンク色のドアをくぐっていく少年の後ろ姿が。扉が閉じると、それはまるで白昼夢だったかのように消えてしまった。
「今のは……ミツ夫、さん?」
どうにか無事に魔美の部屋へ戻ってきた二人。
魔美は小便まみれの下半身を拭くためにタオルを取り出す。「拭いたげる」と言う夕太に「汚いからメッ!」と頭をはたきながら。
そこへ、一階から十朗の声が聞こえてくる。
「おーい、魔美。出前、頼んどいたからな。食べ終わったら、またモデルの続きを頼むよ」
「あっ……パ、パパ! あたし、もうお風呂入っちゃうから、別の日でもいい!?」
「ええ? まあ、もう遅いしなぁ。戻るのは一週間後だし、どこかで時間は取れるか」
「ありがとう! ……それじゃ、ゆーくん。すぐ戻ってくるから待っててね」
そう言って、魔美は小便で汚れた身体を洗うため、着替えを持ってお風呂場へと向かっていった。夕太は(おじさん、帰ってきてたんだ)と思いながらそれを見送った後、一直線に彼女のベッドに飛び込む。
「んー、魔美ねえの匂いでいっぱいだ」
シーツに頬ずりし、その香りを堪能する。さっきまでおしっこまみれの部屋の主がいたので、少し刺激臭が混ざってはいるが。
30分ほどそうしていただろうか? 今度はごろんと転がって仰向けになり、ベッドから上半身を起こす。
大体魔美が満月家に遊びに来ることが多いため、彼女の部屋に入るのはちょっぴり久しぶりだ。どうして女の子の部屋というのは、こうも良い匂いがして興奮するのだろうか?
夕太は胸を躍らせながら、少し模様替えされた部屋に視線を巡らせた。
「あっ」
そうして見つけたのは、壁に飾られた一枚の絵画。父親である十朗が描いた、魔美の裸婦画だ。
以前も飾られてはいたが、やはり何度見ても自然と目が引き寄せられてしまう。ベッドから降りた夕太は絵画に近付くと、間近でその芸術を鑑賞する。
「ふー、さっぱりしたぁ! ゆーくんお待たせ……って」
そこへ、お風呂から上がってきた魔美が二人分のジュースをお盆に乗せて戻ってきた。
彼女の視線の先には、自分の裸婦画を手に取って見ている夕太の姿。
どうせエッチな目で見てるんだろうなぁと思ったが、意外や意外、夕太は和やかな目で絵を鑑賞していたのだ。事実、彼の股間はテントを張っていなかった。
「驚いたぁ。ゆーくん、エッチな気分にならないの?」
「なんで?」
「だって……ヌードよ? あたしの裸よ?」
「う~ん、初めて見た時はエッチな目で見そうになっちゃったけどね。でも、魔美ねえの身体がすごく綺麗だってことが素直に伝わってくるし、愛情込めて描いてるってことも分かるから、自然と心が和むんだ。ボク、ゲージュツはよく分かんないけど、おじさんの絵は好きだよ」
芸術に興味がない人が魔美の裸婦画を見ると、大体は明らかに性的な面を意識して鑑賞してしまう。実際に父の画展にクラスメイトを誘ったら、男の子はみんな赤面して直視できない様子だった。
だから、大好きな父の絵を、そして自分の裸婦画を素直に褒められて、魔美はこそばゆい気分になってしまう。
「……その絵、欲しいならあげよっか?」
「え、いいの!? ありがとう!」
「わー、やったー」と大事そうにポケットに仕舞う夕太。全く、この子はいつもさっきみたいな感じで不意打ちしてくるから本当にタチが悪いのだ。
話を切り替えるため、魔美はベッドに腰を下ろす。すぐ横をポンポンと叩いて夕太を誘い、口を開いた。
「ねえ、ゆーくん。気になってたんだけど、あのピンク色のドア、何なの?」
「『どこでもドア』だよ。思い浮かべた場所に繋がるドアなんだ」
「えええッ!! つまり、瞬間移動できるってこと!? あ、あたしのアイデンティティーが……」
自慢のテレポートを簡単に再現したどころか、上位互換を見せつけられてショックを受ける魔美。
「で、でも、美夜ちゃんから信頼できる人の前でしか使わないようにって言われてるし、魔美ねえみたいに咄嗟に使えるものでもないから、魔美ねえのテレポートの方がすごいよ」
「そう……? あたし、すごい?」
「うん」
「……そうよね! 暴漢もやっつけたし、エスパーおマミはやっぱりすごいのだ!」
少しおだてたらすぐ調子に乗るのが魔美の悪いところであり、良いところでもある。
実際、魔美のテレポートの方が優れている面も多い。彼女は物体を部分的に瞬間移動させることもできるので、以前お餅を喉に詰まらせた人からお餅だけを取り除くと言った芸当も成し遂げたことがあるのだ。
「それにしても、あんな奴らに魔美ねえの裸を見られちゃうなんて悔しいなぁ」
「それだけじゃないわ。あの人達、あたしと子供を作ろうとしてたの!」
「子供ってどうやって作るの?」
「……そういえば、どうやって作るのかしら? パパとママみたいにお互い好き合ってる人同士の間でできるものだとは思うんだけど……」
普段エッチなことばかりしている夕太も女性の裸を見たりおっぱいやお尻に触ったりするだけで、具体的な性知識は持ち合わせていない。
この頃はまだオナニーの仕方さえ知らないし、それは魔美も同じだった。性知識がない者同士、頭の悪い話に花を咲かせる。
「じゃあボク、美夜ちゃんと子供が作れるわけか!」
「……作れるんじゃない? 美夜ちゃん、ゆーくんのこと大好きだし」
少し膨れた様子でそう返す魔美。自分の態度を誤魔化すようにして、ジュースに口をつける。
「魔美ねえとも子供作りたい!」
「ブッ!!」
しかし、続く夕太の爆弾発言に噴き出してしまう。
「ゆ、ゆーくんは美夜ちゃんのことが好きなんでしょ!?」
「うん。でも、魔美ねえのことも好きだよ?」
恥ずかしげもなくそう告白する夕太に、魔美は顔を真っ赤にして胸を高鳴らせる。
堂々たる二股宣言。いや、まだどちらとも恋人関係というわけではないので気が多いとしか言えないだろうが、不思議と夕太が言うと嫌悪感を覚えなかった。
「で、でも、やっぱり美夜ちゃんに悪いし……」
「あ、そうだ」
もじもじとしている魔美の気も知らず、自分から話を切ってポケットを探り始める夕太。
そして、何やらアクセサリーらしき物を取り出した。ペンダントだ。
「わあ、綺麗……それどうしたの?」
「あげる」
「え?」
ほいと、手渡されて呆ける魔美。
手のひらの上に乗ったそれは、金色のチェーンに赤く輝くハート形の飾りがぶら下がっていた。
「空気ピストルだとやっぱり使い辛いかなと思って、『ハツメイカー』って道具で作ったんだ。念じるだけでハートの先から小さな空気の塊が出てくるよ」
説明を聞きながら、魔美は手渡されたペンダントをしげしげと見つめる。
チェーンは不思議な素材でできていて頭を撃つのにちょうどいい長さまで伸びるし、首に下げることで落としたりすることも防げるだろう。
「これ使って、今後は気をつけてね」
「……止めないの?」
あんな怖い目に遭っても、魔美は人助けを止めるつもりはなかった。
多分、また同じような現場に出くわすとしても、躊躇せず向かいに行くだろう。夕太もそれを察しているようだった。
「だって、魔美ねえってテレポートできるようになったの最近なんでしょ? でも、困ってる人を放っておけないのは昔からじゃない。大丈夫だよ。危なくなったらボクがまた助けたげるから」
「…………ッ」
魔美は、夕太がこんなにも自分を理解してくれていることがこれ以上ないほど嬉しかった。
だが、今は一旦そのことは置いておこう。それよりも、このペンダントの"お代"のことを考えなくては。
このペンダントは空気ピストルの時と違って、夕太がわざわざ作ってくれたのだ。裸を見せるぐらいでは足りないに違いない。
無意識の内に、魔美の股間は湯上りとは違う要因で湿り始めていく。
「じゃ、ボク帰るね」
ところが、夕太はらしくもなく説明するだけして帰ろうとする。
「も、もう帰っちゃうの? このペンダントのお代は?」
「え? い、いいよ。だって、さっき魔美ねえの絵をもらっちゃったし。それに、そろそろ美夜ちゃんが晩ご飯できたって報せに来る頃だと思うから……」
そう言って、どこでもドアをポケットから出そうとする夕太。
思わずムッとなる魔美。自分でもよく分からないまま、彼の手を咄嗟に捕まえた。
「わっ!?」
そのままベッドに引っ張って押し倒し、馬乗りの状態になる。
夕太の上に乗っかったまま、着替えたばかりのパジャマのボタンを外し始めた。
「ま、魔美ね──」
「今だけ! ……お願い。今だけ、美夜ちゃんのこと、考えないで」
今の彼女の恰好はパンツの上に母親が着古したオーバーサイズのパジャマシャツを着ているだけで、ブラジャーやズボンは着けていない。
あっという間に全てのボタンが外され、大きく開いた隙間からいつもの真っ白でシンプルな下着、と思いきや、花柄の少しおしゃれな印象のパンツが露わになる。
「ゆーくんに、見せたいの。あたしの、裸……」
白状ガスの効果がまだ残っているのだろうか?
それは定かではないが、魔美は想いの丈をそう言葉で表した。そして、シャツが落ち、下着が脱ぎ捨てられ、一糸纏わぬ姿を夕太の前に晒される。
未だお風呂で火照った身体はそのままで、少し荒い吐息と共に僅かな熱気が伝わってくるのが分かる。それは裸婦画のそれと全く同じ形でありながら、全く別物で。学校で見せてもらった裸よりも、何倍もエッチな姿に見えた。
その上に、魔美は夕太からもらったペンダントをつける。
「……どう? 似合う?」
「う、うん」
全裸に自分がプレゼントしたペンダントだけをぶら下げて、より卑猥さが増して見える。彼女という宝石が夕太の所有物であると主張しているかのように思えた。
見る間に勃起していく夕太のペニス。ぐんぐんと鎌首をもたげ始めたそれが震え、膨らんだズボン越しに魔美の股間の亀裂を押し上げて擦る。
「んっ、ゆーくん。痛い」
「ご、ごめん。でも、エッチな気分になると、どうしてもちんぽが硬くなっちゃって……」
これでもかと窮屈だと訴えているその様を見て、魔美は夕太のちんぽが「出して―出して―」と叫んでいるのをテレパシーで聞き取った。
「まあ可哀そう。脱がしちゃいましょ」
「あっ──!」
考えるや否や、言葉に出た魔美は夕太のズボンに手をかける。ブリーフごとズボンが引き剥がされ、ポロンと弾き出る子供ちんぽ。
勃起しても亀頭がほんの少し覗くだけの小さな包茎ちんぽだが、その屹立した様と硬さは昂りに合わせて一級品に昇り詰めている。短小包茎が多いギリシャの彫刻と同じでありながら、明らかに違っていた。
魔美はそのまま勢いに任せて、「上も脱いじゃいましょ」と剥ぎ取っていく。もはやされるがままの夕太。
「ふふ……二人とも、裸になっちゃった♡」
ベッドの上でお互い全裸となった少年少女の出来上がりである。その図は、どうあがいても芸術とはほど遠い。
この状況に心のうちで罪悪感を覚えてしまう魔美。相手は親友の想い人なのだから。それでも、それを上回る恍惚感がより深みにはまらせていく。
「ぅ……ぅう……」
気づけば、下で組み敷かれている夕太が腰をヘコヘコと上下に動かし、ちんぽを魔美の大事なところに擦りつけている。
それによってか、いつの間にかちんぽの包皮は剥け、亀頭が顔を出していた。
「ゆ、ゆーくん? 大丈夫? ちんぽこ、皮が剥けちゃってるけど……」
「ん……分かん、ない。でも、こうしてるとなんだか、気持ち良くって……」
シャツを脱がされている最中に何度も擦れて、それが気持ち良かったらしい。
夕太は夢中で腰を動かし続けている。その度に擦られて刺激されるのは、魔美の秘裂の突起部分。
「な、んか、あたしも……んっ……気持ち、いい、かも……♡」
彼の腰の動きに合わせて、魔美もまた腰を動かし始める。
コスッ……コスッ……コちゅ……にちゅぅ……にちゃ……ぬちゃあ……
渇いた肌が擦れる音が、徐々に、少しずつ、水気を帯びたものへと変わっていく。
自分達が一歩手前の行為をしていることを理解していない中、動きが早くなっていく二つの腰。響き渡る幼い息遣い、粘り気に満ちた水音、お尻と太ももが奏でる肉打ち音が昂りを増長させる。
とてつもなくエッチなことをしているという自覚だけはありつつも、惹かれ合う者同士でただただ快楽を求め続ける。
にちゃ……にちゃ……に……ちゅ、ぱちゅ、ぱちゅん、ぱちゅ、ぱちゅん……!
「魔美ねえ……! 魔美ねえ……!」
「ゆーくん……! ゆーくん……!」
無意識のうちに名前を呼び合う。
何かが奥から迫っている。それを本能で理解し、腰の動きがさらに激しさを増していく。
ぱちゅんっ、ぱちゅんっ、ぱちゅっ……ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ……!
──ず、ちゅっっ!!
そして、示し合わせたように互いの股間を強く擦り付けた。
「「 ────ッッ!!? 」」
──ビクッ!! ビクッ!!
二人は雷に打たれたように身体を引きつらせ、激しく痙攣した。
「あ……は、ああぁぁぁ……ッ♡♡」
盛大に嬌声を漏らし、そのまま力が抜けたように倒れる魔美。抱きつくようにして下に寝ている夕太に覆い被さった。
彼もまた、魔美のおっぱいに包まれながら、朧げな意識の中でツンとした汗の匂いが混ざった甘い香りを享受する。
「「はぁ……はぁ……」」
残ったのは二人の荒い息遣いと、心地良い熱気だけ。
先ほどの一際強い快感は何だったのだろうか? そう疑問を思い浮かべながらも、今はこの満ち足りた状況を心行くまで堪能したかった。
「──おーい、マミ公! ラーメン届いたぞ!」
そこへ、一階から聞こえてくる十朗の声。
余韻も吹っ飛び、ビクリと飛び上がってお互い正気に戻る。
「い、今ちょっと……後で食べるからー!」
「何言ってるんだ。早く食べないと伸びちゃうぞー?」
階段を昇ってくる足音。
魔美は慌てて毛布を掴み、夕太ごと隠すようにしてバサリと頭から被った。十朗が扉を開けると、そこには毛布に潜って顔だけ出している魔美の姿。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
「そ、そうなの! ちょっと湯冷めしちゃってお腹が……」
「全く、しょうがないな。ラップしとくから、早めに食べるんだぞ?」
「うん。ありがとう、パパ」
「……ところで、何か変な匂いしないか? この部屋」
「き、気のせいよ! 気のせい!」
「そうかなぁ?」
ひと悶着ありながらも、ようやく扉が閉められて難を逃れる。
隠し事を打ち明けずに済んだということは、白状ガスの効き目は既に切れているということだ。
「……ま、魔美ねえ、く゛るしぃ」
「あ、ごめんなさい!」
なるべく一人に見えるよう、夕太のことを押し潰すように体重をかけていたのだ。
すぐに起き上がろうとしたが、魔美はどういうわけか途中で思い直し、夕太のことをそのまま抱き締めた。
「ま、魔美ねえ……?」
「ゆーくん……今日、泊まってかない? あたし、もっとこうしてたいの。とても……とても幸せな気分だから」
「…………」
しばらく沈黙が続いたが、夕太は首を横に振った。これ以上は美夜子が不在に気づいて探しに出るかもしれない。
「ごめん……やっぱり、もう帰らないと」
「……そっか。そうよね。無理言ってごめんなさい」
二人は布団から出て、少し気まずい空気のまま服を黙々と着直す。けれども、衣擦れ音だけが耳に届く中、互いの視線はチラチラと何度も交差した。
そして、夕太はどこでもドアを出し、自分の部屋に帰るためにノブに手をかけてくぐる。その途中で、魔美の方を振り返った。
「……えと、それじゃあ、また学校でね」
「うん。今日は助けてくれて、ありがと。ペンダントも」
ペンダントと聞いて、夕太は何か思い出したのか、ドアを閉める手を止めた。
「あの、あのね」
「なあに?」
「そのペンダントなんだけど、ボクが作ったものだからさ……もしかしたら、壊れやすいかもなんだ。だから、時々メンテナンスとかしないといけないと思う」
「メンテナンス?」
「うん……だから、その」
会話をしながら、彼同様に頭の出来が良いとは言えない魔美は夕太が何を言いたいのかすぐには理解できなかった。
しかし、テレパシーで徐々に彼の頭の中のイメージが伝わり、はっきりとしてくる。それは、魔美と夕太が先ほどのように大事なところを擦りつけっこしている姿だった。
「ま、また擦りつけっこしようね! 絶対だよ!」
同時にバタンッとドアを閉める夕太。ドアは瞬く間に消えてしまう。
魔美は夢見心地のような気分でフラフラと歩き、再びベッドへうつ伏せに倒れる。そこには夕太の温もりと匂いがまだ残っていた。
(……ああ、どうしよう)
ここまで来ると、さすがの魔美でも自分の気持ちを自覚するようになっていた。
恋をするというのは、こんなにも胸が躍るものなのか。小さな子と遊ぶことが好きで幼稚園の手伝いまですることがある自分が、まさか年下の子をそういう対象として見ることがあるとは思ってもみなかったが。
しかし、頭の中に美夜子のことが思い浮かぶ。同い年なのに姉のように良くしてくれた、小さい頃からの親友だ。
魔美は美夜子のことも好きだし、夕太に二股させることで彼女を悲しませたくはない。
(この気持ちは、胸に秘めたままにしておくべきなんだわ)
魔美はそう決心した。その際、ベッド脇に置いたままの白状ガスが目に入ったので、浮遊術でゴミ箱に放り込む。
(でも……裸で擦りつけっこするだけなら。キスするわけじゃないもの。それくらいなら、いいわよね?)
魔美はそのまま、夕太の匂いに包まれながら目を閉じる。
なお、しばらくして空腹で起きた彼女は、冷めて伸び切ったラーメンを泣きながら食べるのだった。
以降、魔美と夕太は週に一回の頻度で密会を重ね、現在でも互いの想いを擦り続けている。
そんな様子を監視する人物がいることを、二人は知らない。その目の色は、綺麗な緑色に輝いていた。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「よーし、そろそろみんな描き上がった頃合いかな?」
「あ、先生ー」
美術部員のほとんどが石膏像のデッサンを描き終えた頃、美術の先生が戻ってきた。
彼は部員達の作品を順に見回り、意見やアドバイスを与えていく。
「うん。一年生はまだまだ拙いところが多いけど、それでもよく描けてるな。これなら、今度のデッサンコンクールでも良い線行けるだろう……ん?」
ふと視線を巡らせると、周りを気にしないまま黙々と鉛筆を走らせている生徒がまだ一人。画家の娘で、部員の中でも一際画力がある佐倉魔美だ。
「何だ佐倉、まだ描いてるのか? 随分と熱心に……え? お、おい! 佐倉!?」
「え?」
そこで、ようやくトリップから戻ってきた魔美。
先生の動揺した声を聞いて、周りの生徒も何だ何だと集まり出す。
「ちょ、ちょっと魔美!」
「さ、佐倉先輩……!」
魔美の絵を見た女子達もまた声を上げ、頬を染めてその視線を逸らした。
それも仕方がない。何せ、彼女のキャンパスには包茎ちんぽだけがでっかく描かれていたのだから。
「わっ!? わっ!? ち、違うんですこれはぁ!!」
「おいおい佐倉、あんな偉そうなこと言っておいて、お前こそ雑念まみれじゃんか」
「雑念っていうより、煩悩じゃないか?」
「いや、でもよく描けてるな……というか、これ石膏のヤツとちょっと違くない? 毛とか生えてないし」
からかう男子達。顔を耳まで真っ赤に染め上げた魔美は、慌てて抱きかかえるようにしてキャンパスを隠した。
「違うんですーーーーッ!!」(もう、ゆーくんのバカーーッ!!)
学校中に響き渡る魔美の叫び声。
理不尽な八つ当たりの気持ちがテレパシーで夕太に伝わったのか、離れた場所にいる彼は人知れずクシャミをするのだった。
次回はリームがメインの回となります。
〇佐倉魔美
しずかパパの「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という言葉が服を着て歩いているような性格の子。服は着てないことが多いけど。
原作ではテレポートに使う道具はブローチなのだが、今作ではパイロットフィルム版を参考にペンダントに変更している。後者であれば裸のままでも首に下げていられるため。(実際、パイロットフィルム劇中で魔美はほとんど全裸。真っ裸のまま夜の街をテレポートしてスナイパーと対峙している。そういう事情もあってペンダントにしたのだと思う)
〇襲われていた女性
多分F先生の作品に詳しい方なら正体は丸分かりだと思う。
好きなキャラなのでどこかで出したいと考えていたが、当分タイミングがなさそうだったのでとりあえずの形で挟ませた。今後登場させられるかは不明。
ちなみに、この世界線の彼女は色々こじれて想い人と結ばれなかった。