※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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丙

 薄暗い倉庫の中、雨漏りの音が聞こえる。

 武(たけ)田(だ)観(み)月(づき)は両手首を鎖で縛られ、天井から吊(つ)るされていた。

 既に薬を飲まされ、軍人として鍛え身に付けた力も失われてしまっている。

 そんな状態で彼女は、一人の女から鞭(むち)打(う)ちの拷問を受けていた。

 

「うぐっ! うぐぁっ!!」

「ほぉら、さっさと吐くんだよ! お前の知っている軍の情報をな!」

「誰が……! ぐぎひっ!!」

 

 既に軍服はボロボロであり、選良(エリート)を自負していた観(み)月(づき)は見るも無残な状態になっていた。

 しかし、そんな彼女を支えているのはまさに選良(エリート)としての矜(きよう)持(じ)に他ならなかった。

 新兵の自分が知っている情報など、大した価値は無いかも知れない。

 だが軍人の道を選んだ以上、敵に情報を売ることなど出来ない。

 

「調子はどうだ、同志火(ひ)野(の)」

 

 そんな所に、倉庫へ二人の男が入ってきた。

 共に長身に、鍛えられた体付きをしている。

 その内の一人は、声に聞き覚えがあった。

 

「貴様……!」

「生身では初めましてだな。俺(おれ)が金(こん)剛(ごう)悟(さとる)、貴様を撃墜した超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・ロクサーヌ改の操縦士だ」

「金(こん)剛(ごう)……悟(さとる)だと……?」

 

 観(み)月(づき)はその名前に聞き覚えがあった。

 戦ったときから引っかかっていたのだ。

 

「知っている奴(やつ)は知っているかもな。俺(おれ)は嘗(かつ)て、民間人の為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)大会で中(ちゅう)學(がく)生(せい)ながら全国優勝した神童だったのだ。当時は皇(こう)國(こく)全土でちょっとした話題になったものだ。もう十五年前になるかな?」

 

 得意気に語る金(こん)剛(ごう)の顔を、観(み)月(づき)は唯(ただ)々(ただ)睨(にら)み上げる。

 武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)には凄(すご)腕(うで)の操縦士が居ると、隊長から聞いてはいた。

 しかし、まさかそのような経歴の者が叛(はん)逆(ぎやく)者に身を落としていたとは。

 

「どうしてそんな男が……狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)などに……」

「不公平だからだよ」

 

 即答する金(こん)剛(ごう)の横で、先程まで観(み)月(づき)を鞭(むち)打っていた女が目を背けた。

 

「俺(おれ)は平和主義者でね、軍には興味が無かったから其(そ)処(こ)に居る同志火(ひ)野(の)の父親が経営する企業に入り、為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)開発の試験操縦士として生計を立てていた。ま、経歴が経歴だからな、会社には貢献したし、それなりに稼がせてもらった。しかしそれでも、社会に出ると否が応にも思い知るのさ。この国が如(い)何(か)に腐っているのかを。無能で怠け者の貴族が踏ん反り返っている社会が如何に糞(くそ)であるかをな」

「火(ひ)野(の)……? まさかその女、火(ひ)野(の)初(はつ)音(ね)か?」

 

 観(み)月(づき)は立て続けに驚かされた。

 為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)を開発している民間企業の中でも、火(ひ)野(の)重工は非財閥として最王手だ。

 その社長令嬢・火(ひ)野(の)初(はつ)音(ね)までもが叛逆者となっていたとは。

 

「貴様は一つ勘違いしている。俺(おれ)達は正確には『地(ち)上(じよう)ノ(の)蠍(さそり)座(ざ)』といってな、同志黄(つ)柳(げ)野(の)の下で狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)の別働隊として再結成された組織なのだ。どうも、俺(おれ)達は狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)とは境遇が違って話が合わんのだよ。あいつらは俺(おれ)達と違って恵まれていなかったからな」

「ああ、俺(おれ)も熟(つく)々(づく)そう思うよ」

 

 もう一人の男が頷(うなず)いた。

 地(じ)頭(とう)恭(きよう)輔(すけ)、如何にも凶暴そうな、人相の悪い男だ。

 しかし彼もまた、裕福な家の育ちである。

 そんな彼に、金(こん)剛(ごう)と火(ひ)野(の)は意外そうな視線を向ける。

 

「同志地(じ)頭(とう)は仲良くやっていたように思ったがな?」

「口裏を合わせていただけだ。女の趣味も合わんしな。あいつらは従順な女が好きなようだが、俺(おれ)は反抗的な女を犯すのが興奮するんだ」

 

 そう言うと、地(じ)頭(とう)は服を脱いで全裸となった。

 彫り物が駆け巡る筋骨隆々とした肉体が剥(む)き出(だ)しになる。

 

「うっ……!」

 

 観(み)月(づき)は青(あお)褪(ざ)めた。

 何故(なぜ)男二人が拷問の場に割って入ったのか、その目的が男根(ペニス)と共に露(あら)わとなる。

 彼女がそれを目の当たりにしたのは幼少期以来だったが、地(じ)頭(とう)のそれは想像からかけ離れて異様な形状をしていた。

 

「女の拷問は親(おや)父(じ)の組の得意分野でな、俺(おれ)もやり方は能(よ)く心得ている。その為(ため)の物も確(しつか)り仕込んであるんだ。見ろ、こいつをよ……」

 

 地(じ)頭(とう)の男根(ペニス)には、明らかに人工物が埋め込まれていた。

 所々に浮き出る丸い突起が観(み)月(づき)の恐怖を煽(あお)る。

 

「やめろ……!」

「ふふふ、いつ見ても堪(たま)らんな、強気な女の表情が恐怖に染まるのは。だが、肉が強(こわ)張(ば)るのは良くない」

 

 地(じ)頭(とう)はそう言うと拳を握り締め、腰を回して振り被る。

 彼の悪趣味に金(こん)剛(ごう)と火(ひ)野(の)は目を背けている。

 そして、彼は勢いを付けて観(み)月(づき)の腹部に拳を突き立てた。

 

「がはっ!!」

 

 腹部の内臓が悲鳴を上げる様な鈍痛が観(み)月(づき)を悶(もん)絶(ぜつ)させる。

 殴られると解(わか)っていた彼女は彼女なりに腹筋を固めたのだが、そんなものは存在しないかの如くあっさりと貫かれたのだと解ってしまう。

 そんな彼女に、地(じ)頭(とう)の鍛え抜かれた腕が更に容赦無く振るわれる。

 何度も、何度も、宛(さなが)ら肉の下(した)拵(ごしら)えの如く彼女の腹を殴り続ける。

 

「ぐえっ! ごえエェェッッ!!」

「犯す前になァ! 恐怖で強張った肉を殴って柔らかくするんだ! そうやって強くて反抗的な女の心をへし折って屈服させるのが興奮するんだよ俺(おれ)は! 肉がトロトロになった女を犯したときの征服感よ!」

 

 鈍い音が腹から響く。

 痛みと息苦しさに視界が明滅する。

 

「地(じ)頭(とう)め、何て悪趣味なの……。同じ女として、見ていられない……」

「軍人になどなるものではないな」

 

 先程まで鞭を打っていた火(ひ)野(の)や男の金(こん)剛(ごう)ですら目を覆う。

 観(み)月(づき)にとって、それまでの拷問が児戯に思える苦しみだった。

 これが男の腕力。

 ふと彼女は金(こん)剛(ごう)の言葉を脳(のう)裡(り)に繰り返す。

 

『軍人になどなるものではない』

 

 あの時、家を出ずに大人しく嫁に出されていればこんな目に遭わなかった――そんな考えがふと頭に過(よぎ)ってしまった。

 だがその迷いすらも、地(じ)頭(とう)の剛腕に与えられる腹部の苦痛が一瞬で掻(か)き消(け)してしまう。

 

「オラ! オラァッ!!」

「おげえェェッ!! うげえエェェッ!!」

 

 いつこの苦痛は終わるのか――そんなことを思ったとき、地(じ)頭(とう)の肩に金(こん)剛(ごう)の手が置かれた。

 止めてくれたのか――そんな甘い考えが観(み)月(づき)の頭に過った辺り、既に彼女の心は折れるまで秒読みだった。

 だが、そんな淡い期待は儚(はかな)く消える。

 

「地(じ)頭(とう)、俺(おれ)と火(ひ)野(の)は連中の隊長の屍(しかばね)を片付ける。此(こ)処(こ)に居るよりその方が気が楽だ」

「おう、悪いな」

 

 観(み)月(づき)は漆黒の絶望に包まれた。

 大(おお)石(いし)隊長が死んだ。

 自分が独断専行せずに連携していれば、或(ある)いはこうならなかったかも知れない。

 

 金(こん)剛(ごう)と火(ひ)野(の)は倉庫を去り、この場には地(じ)頭(とう)と観(み)月(づき)だけが残された。

 もうこの男を止め得る者は誰も居ない。

 気が済むまで嬲(なぶ)られるだけだ。

 

「さぁて、お楽しみを続けよう……かっ!」

「ごほぉォッ!!」

 

 再び、いつ終わるとも知れぬ腹への殴打が始まった。

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