神聖大日本皇國は首都統京、糀街御用地蛟乃神邸。
邸宅の主である若き第三皇子・蛟乃神賢智の寝室は、甘い吐息と囁き声が漂って壁や天井に少しずつ染み込んでいっていた。
「あぁっ刻御門、其処は……」
「此処が……どうしたのですか? ふふっ、お好きですよね、殿下? 私が育てて差し上げたこの、ち・く・び……」
寝台の上には男女が身を寄せ合って坐り、一方がもう一方の身体を愛撫している。
二人は着衣のままだったが、着崩された隙間から柔肌の際どい部分が見え隠れしていた。
皇子の背中に密着し、中衣の上から両の乳首を指でなぞる和装の女は刻御門竜胆――彼の身の回りを世話する侍女である。
「刻御門ぉ……もう我慢出来ないんだ……。触りたい、扱きたい……」
「駄目ですよ、殿下。これはお仕置きなんですから。本日は私に身を委ねていただくという約束、忘れてもらっては困ります」
刻御門はそう囁くと、蛟乃神の耳に柔らかな吐息を吹きかけた。
そして指は、着衣の上から乳首を弄る。
触れるか触れないかの絶妙な指使いで、衣服を素肌と滑らせる。
それが蛟乃神の中に切ない快楽を溜めているらしく、青年は生娘の様に悶えていた。
「殿下、侍女である私の身にもなってくださいませ。好い加減に女性を誑かすその癖を改めていただけませんと……貴方様に身も心も捧げて仕える私としては心が休まらないのですよ。ですから今はこの快楽に耐えていただきませんと……」
「うぅっ……ごめんよ刻御門……」
「殿下、二人切りのときはどうか『りん』とお呼びください。以前よりそうお願い申し上げているではありませんか」
察しの通り、二人の関係は単なる主君と侍女のそれを超えたものだった。
蛟乃神は華奢な優男であるが、無自覚に女性を誑し込む悪癖を持っている。
恵まれた容姿と非の付け所が無い家柄を持つ彼に優しくされ、距離を詰められ、甘い言葉を囁かれると、それだけで大抵の女は落ちてしまう。
そんな彼が、歳が近く器量も良い刻御門に手を出していない筈が無かった。
「はぁ……はぁ……。り、りん……。お願い……いつまでもこんな……」
「ふふ、切ないですよね。もどかしいですよね。でも、もっと乳首、責めてほしいんじゃないですか? さっきからどんどん固くなって、女性の陰核の様に勃起していますよ。とても嬉しそう……」
「やめてよ、りん……。恥ずかしいよ……」
「やめませんよ、罰ですからね。恥ずかしさを甘んじて受け容れてください。もっと良くしてあげますから」
刻御門は指に変わり掌で乳首を撫でながら、蛟乃神の中衣の釦を外していく。
「肌着の上からだとよりはっきりわかりますね、殿下のいやらしい陰核乳首さん……。どんな風になっているか、私に直接見せてください」
蛟乃神は刻御門にされるがまま、中衣と肌着を脱がされた。
ほんのりと桃色の、しかし遊び慣れた形をした乳首が露わになる。
彼は今や、刻御門にすっかり開発されてしまっていた。
「り、りん……」
「直接……触ってほしいんですね?」
「うん……。りん、早く……」
「殿下、可愛いですよ。そんな姿を見せられると、もっとお仕置きしたくなっちゃいます」
刻御門はそう言うと蛟乃神から一旦身体を離し、慣れた仕草で着物を脱いでいく。
彼女の下着姿はこれまでの印象とは大きく異なり、たわわに実った胸と尻を見せ付ける様に布地面積の小さい黒で包んだ、極めて扇情的な装いだった。
「りん……いつの間にそんな……派手な下着を……」
「お嫌いですか? 殿下は上品な私しか見てくださらないのですか? 私の本心はもう……こんなになってしまっていますのに……」
刻御門は蛟乃神の目の前で股衣を脱ぎ降ろした。
彼女の股から体液が糸を引き、布地に垂れている。
「り、りん……!」
蛟乃神は目を瞠った。
ここ最近急速に、刻御門は淫らな本性を彼に見せ始めていた。
同時に、肌を重ねる毎に意地悪さを増している。
「殿下、襲ってはくださらないのですね」
「そんな……乱暴なことは出来ないよ。大切なんだ、君が……」
「意気地が無いのですね、殿下は。でも、お気持ちは有難く存じますよ。それに、そんな殿下のことが愛おしい……」
刻御門は素早く距離を詰めると、脱いだ股衣で蛟乃神の顔を覆った。
驚いた蛟乃神は寝台の上へ仰向けに倒れる。
そんな彼の身体に、刻御門は空かさず覆い掛かり、耳元に唇を寄せた。
「でも、お仕置きですからね。今日は陰茎に膣穴はあげません。代わりにこれで我慢してください」
「むぐっ……りんっ……!」
「それに、陰茎には触ってあげませんよ。好い加減、殿下の陰茎は慎みを覚えるべきなんです。今日は殿下の大好きな、ぷっくり育った陰核乳首だけを虐めてあげます。乳首で沢山気持ち良くなって、女の子みたいに悶えて、一切触られないまま陰茎からいやらしい御精子出しちゃってくださいね」
刻御門は両乳首に爪を立てて優しく弄る。
「ほぉら、カリッ……カリッ……これ、お好きですよね? こうやって爪を立てて、耳元で囁かれながらカリカリされるの。ふふ、カリッ、カリッ……カリカリカリカリ……」
「うううううううっ、ふぅぅーっっ……!」
「素早い動きで虐められると、我慢出来なくて腰が動いちゃいますね。へこへこ、へこへこ……。固くなった陰茎が空気の膣穴に出し入れしているみたいです。そんなに私としたかったんですか、殿下? でも、だぁめ。今日は膣穴お預けです。シコシコも、オ・ア・ズ・ケ。このまま女の子みたいに、乳首で悶えてください。私の匂いを沢山吸い込んで、頭の中を一杯にしながら……。ほーら、カリカリカリカリカリカリカリカリ……」
二人の身体が密着して擦り合う。
刻御門が敢えてそうしていた。
しかし、肝心なところは触れ合わない。
蛟乃神を生殺しにする動きは、却って彼も悶々とさせていた。
「殿下は優しくて可愛い御方ですから、女性を悲しませるようなことをしてはいけないんです。自分から女性に手を出すのは悪いことなんですよ。だってほら、女性に手を出すより、こうやって、女性からしてもらう方がずっと気持ち良いでしょう? カリカリ、カリカリ……。受け身で気持ちよくなって、悶えている方が殿下にはお似合いです。殿下の様な御方、何というか御存知ですか?」
刻御門はクスリと笑い、吐息混じりの声で蛟乃神の耳元で囁く。
「殿下はね、マゾなんです。こうやって、女性に意地悪されるのが大好きなマゾ……」
「ちっ、違……」
「違いませんよ。その証拠にほら、もう陰茎がピクピク震えて、先っぽからお汁がだらだら垂れています。今にもイッてしまいそうですよ?」
「うぅっ……」
「今まで沢山乳首を開発してあげましたから、今の殿下なら屹度出来ますよ。カリカリカリカリ……ほら、乳首だけで射精してください。見ていてあげますから。カリカリカリカリ……」
「りんっ……りんっ……!」
蛟乃神は腰を突き上げながら、今までに無く激しく悶える。
「ほら、イッてください。乳首マゾになっちゃってください」
「だ、駄目だ……駄目だよ……」
「駄目じゃありません。何度も言っていますがこれはお仕置きですから。それか、マゾの殿下はこう言って差し上げた方が嬉しいのでしょうか……?」
刻御門は小さく息を吸い込み、そして……。
「イケ、マゾ」
「ううううううううっっっ……!」
触れられてもいない蛟乃神の陰茎から白濁液が漏れる。
勢い良く飛び出すのではなく、少しずつ漏らす様な射精だった。
「ああっ……あぁぁぁ……」
「ほら、このまま乳首で全部出してください。カリカリ、カリカリ、カリカリカリカリカリ……」
尚も続く乳首への愛撫が、蛟乃神の陰茎から精液を残らず搾り取っていく。
軈て陰茎が力を失い、透明な汁が糸を引くばかりとなって漸く乳首への責めは終わる。
「お疲れ様でした、殿下。お風呂を御用意しますから、そのままお休みになってお待ちください」
刻御門は蠱惑的な笑みを浮かべ、蛟乃神の頭を撫でながら見下ろしていた。
(順調ですね。この分なら蛟乃神殿下が私の言いなりになるのも後少しでしょうか……)
刻御門は寝台から起き上がると、床に置かれた鞄から着替えの洋服を取り出した。
そして素早い動きでそれを纏うと、鞄を持って扉の前へと進む。
彼女はふと、棚に置かれた空の鳥籠に目を遣った。
「おや殿下、伝書鳩はお逃がしになったのですか?」
「ん……あぁ……」
「放心状態……ですね。もうあのような、女性を悲しませるようなことをしてはいけませんよ」
「うん……」
「では、失礼します」
刻御門は一礼すると、蛟乃神の寝室を後にした。
そのまま部屋から離れると、彼女は鞄から電話端末を取り出した。
そして中身を確認し、先程の行為の一部始終が動画に収められているのを見て北叟笑む。
(蛟乃神殿下、確かに貴方様は私にとって愛しい人でした。何も知らない、本当の男性に巡り会ったことの無い嘗ての私にとっては……)
その時、彼女の電話が鳴った。
「もしもし? はい、御命令通り進めております。蛟乃神殿下を寝取られマゾに調教する計画、極めて順調です。近い内に良い御報告が出来るかと……。え? 本当ですか? 嬉しゅう御座います。では、お会い出来るのを楽しみにしていますね、首領様……」
第三皇子・蛟乃神賢智の侍女である刻御門竜胆は、主と肉体関係にあった。
しかし、今や彼女の心は主に無い。
彼女は既に、叛逆者である武装戦隊・狼ノ牙の首領Дに寝取られてしまっていたのだった。