※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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道化と傀儡

 しかしその後、刻(とき)御(み)門(かど)の調教計画は思わぬ形で頓挫することになる。

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)の父親である神(じん)皇(のう)が倒れ、更に皇(こう)國(こく)は日本国との間に戦争を起こした。

 それにより、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は神(じん)皇(のう)の負っていた役割を担う為(ため)に、皇宮から自邸に帰れなくなったのだ。

 

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)邸で待機する刻(とき)御(み)門(かど)は焦っていた。

 このままでは、首(しゆ)領(りよう)Д(デー)の命令を果たせない。

 

(あの無能坊や、適当な理由を付けて帰って来なさいよ! 本当、何処(どこ)までも意気地無しなんだから……!)

 

 刻(とき)御(み)門(かど)は、己の都合より国家を優先する態度を理解出来なかった。

 彼女にとって男らしさとは、責任を負うことではない。

 社会よりも自分の意志を優先することこそ、強さの証(あかし)だった。

 

(折(せつ)角(かく)貞操帯が届いて、これから射精管理調教してやるところだったのに……!)

 

 刻(とき)御(み)門(かど)は机に置かれた金属製の貞操帯を見ながら爪を噛(か)んだ。

 とその時、彼女の電話が鳴った。

 

「はい。あ、申し訳御座いません首領様。あれからまだ調教出来ていなくて……」

 

 刻(とき)御(み)門(かど)は首領から、日々蛟(みずち)乃(の)神(かみ)を調教する様を動画で送るよう命令されていた。

 この電話は、最近それが途絶えていたことに対する催促である。

 

「だ、だってあいつ、開戦してから全然帰って来ないんですよ。流(さ)石(すが)に皇宮で調教する訳には行かないじゃないですか。え? そ、そんな嫌です! 私(わたくし)、首領様の御(ご)褒(ほう)美(び)無しではもう生きていけないんです!」

 

 刻(とき)御(み)門(かど)は蛟(みずち)乃(の)神(かみ)を調教するだけでなく、日々電話越しで首(しゆ)領(りよう)Д(デー)からの命令通りに自分を慰める調教を受けていた。

 そして時折、御褒美と称して直接の調教も受けている。

 

「はい……はい……私(わたくし)は首領様に絶対服従のマゾ雌奴(ど)隷(れい)です。首領様の為に必ず蛟(みずち)乃(の)神(かみ)殿下を寝取られマゾに調教します……」

 

 電話は刻(とき)御(み)門(かど)の誓いだけを目当てにしていたかの様に突然一方的に切られた。

 

(このままじゃ……首領様に棄(す)てられちゃう……! こうなったら皇宮に乗り込んで物陰で殿下を……! でも、どうやって? 皇宮に坐(おわ)す皇族は蛟(みずち)乃(の)神(かみ)殿下だけじゃないし、警備だって尋常じゃない……)

 

 刻(とき)御(み)門(かど)は一つ深呼吸すると、意を決して貞操帯を手に取った。

 

(四の五の言ってはいられない! やる! やるんだ! やるしかない!)

 

 彼女は固い決意と共に、一人皇宮を目指した。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 適当な理由を付けて、刻(とき)御(み)門(かど)は皇宮宮殿御車止までやってきた。

 どうにかして中へと入り、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)と会わなければ。

 

(会ってしまえばどうにでもなる。寂しかったとでも言えば、お優しい殿下は私(わたくし)を無下にはしない筈(はず))

 

 そんなことを考えながら、彼女は宮殿に足を踏み入れようと遠巻きに様子を窺(うかが)っていた。

 

(ん?)

 

 ふと、彼女は正門に見慣れた人影を見掛けた。

 疲れた顔をしているが、間違い無い、自らの表向きの主君・蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)だ。

 

(いつもの甘いお顔が今日は三割引きってところかしら。しかし、一緒に居るのは……?)

 

 どうやら蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は一人ではない。

 何人かの女に囲まれて話をしている様だった。

 表情から、唯(ただ)でさえ疲れているのに困っている様に見える。

 刻(とき)御(み)門(かど)は物陰に隠れながら現場へ近付き、会話に聞き耳を立てる。

 

「三人とも、申し訳無いが僕(ぼく)は当分此(こ)処(こ)から離れられないんだよ」

「そんな……殿下、私(わたし)がどれ程寂しい想(おも)いをしていたか、お解(わか)りにならないのですか?」

「いや、解るよ。僕(ぼく)だって寂しい。僕(ぼく)も君(きみ)に会いたかった」

「あの、殿下、私(わたし)はどうなんですか?」

「私(わたし)だって!」

「勿(もち)論(ろん)、会いたかったさ。寧(むし)ろ本音を言えば、会いに来てくれて嬉(うれ)しいくらいなんだ。君(きみ)達(たち)の顔を少しでも見られた御(お)陰(かげ)で、僅(わず)かな時間だけ幾分か寂しさが紛れる。君(きみ)達の存在が、僕(ぼく)にとってどれだけ救いになっていることか……」

 

 どうやら蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は自身に言い寄る三人の華族令嬢を宥(なだ)めているらしい。

 

「さあ、名残惜しいけれどもうお帰り。この国難が過ぎ去ったら、君(きみ)達に会う為に飛んで行くと誓うよ。その時こそ、会えなかった寂しさを沢山埋め合おう」

「殿下、約束ですよ?」

「私(わたし)にも会ってくれますよね?」

「私(わたし)だって!」

「勿論だよ」

 

 刻(とき)御(み)門(かど)はその光景を見ていられなかった。

 酷(ひど)く不愉快な逢(おう)瀬(せ)だ。

 何度言っても、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)はどんな女にも良い顔をして、期待を持たせる。

 そして女達もそれに言い包(くる)められ、関係を持とうと挙(こぞ)って言い寄るのだ。

 

(あいつ本当、なんなの? 全然私(わたくし)の言いなりにならないじゃない! あれだけ調教して、女性に弄(もてあそ)ばれる快楽を教えてあげたのに……!)

 

 強い嫉妬と、惨めさが刻(とき)御(み)門(かど)を包んでいた。

 怒りもある。

 だが不思議と、彼女は絶望していなかった。

 それ以上に強い衝動が彼女を支配していた。

 

(もう良い! あんな奴知らない!)

 

 刻(とき)御(み)門(かど)が向かったのは、皇宮からやや距離のある別の目的地だった。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 とある高層集合住宅(タワーマンション)の一室、碌(ろく)でもない連中が屯(たむろ)していた。

 叛(はん)逆(ぎやく)組織「武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)」の最高幹部がこの場所を根城にしているのだ。

 

「組織の立て直しには後どれくらい必要かね?」

 

 背の高い壮年の男が仲間の一人に尋ねた。

 痩(そう)躯(く)ではあるが鍛えられた筋肉が異様な威圧感を醸し出し、且つ何処か胡(う)散(さん)臭(くさ)い紳士性を帯びたこの男こそ、武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)を束ねる「首(しゆ)領(りよう)Д(デー)」と呼ばれる悪漢である。

 そんな彼に、同年代の男が答える。

 

「全く足りませんよ。もう以前の様に銀行強盗の一回や二回で大金を手に入れられる時代じゃないんです」

「それもそうだね。しかし、財政的に危機的なこの状況下、少しでも足しにしたいのも確かだ。その為に貴族の令嬢を手(て)籠(ご)めにしているのだからね」

 

 神(しん)聖(せい)大(だい)日(にっ)本(ぽん)皇(こう)國(こく)は武力侵攻も辞さない強権的な国家で、実際に日本国と戦争を起こしている。

 武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)はそんな皇(こう)國(こく)の政府に叛逆する組織であるが、その実態は決して善良とはいえないものである。

 寧ろ、彼らを知る多くの者は、皇(こう)國(こく)と敵対する立場にあってすら彼らを「悪辣さは皇(こう)國(こく)より上」と評していた。

 彼らは過激派である以上に凶悪な犯罪組織なのだ。

 

「刻(とき)御(み)門(かど)嬢ですか……」

「うむ。しかし、彼女も最近は使えなくなってきたね。金払いも以前程は良くないし、命令も碌に熟(こな)せなくなっている。彼女に与えた指令は革命後に皇族の名誉を地に墜(お)とす上でそれなりに重要なのだが……」

「他に何名か確保しておいた方が良いでしょうね」

「そうだね。また誰か修身院大學にでも通わせて適当な貴族令嬢を捕まえるとしよう」

 

 良からぬ会話を交わす幹部達。

 そんな彼らに囚(とら)われている少女が一人。

 

「助けて……御父様(パパ)、兄様、姉様、助けて……」

 

 薄汚れた姿で床に伏せっているギャルファッションの少女の名は狛(こま)乃(の)神(かみ)嵐(らん)花(か)――蛟(みずち)乃(の)神(かみ)の妹で、皇(こう)國(こく)第三皇女である。

 本来の性格は非常に傲慢で我(わが)儘(まま)で、自身の享楽の為に叛逆者を弄ぶ強大な力を持つ非常に厄介な少女だが、今は力を使い果たしてすっかり弱っていた。

 彼女は数日前、武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)に捕まってしまったのだ。

 恵まれた立場で大金を掛けて誂(あつら)えた服装は無残にも破れ、節々にその肌を晒(さら)していた。

 

「扨(さ)て、ではそろそろ此(こ)方(ちら)の調教の続きと行こうか……」

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は狛(こま)乃(の)神(かみ)に眼(め)を向けた。

 ここ数日、彼女はこの男に何度も凌(りよう)辱(じよく)されている。

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は革命家でありながら、同志以外の女を性欲の捌(は)け口(ぐち)として見る悪質な性犯罪者であった。

 取分け、皇(こう)國(こく)の上流階級の女を犯すのは彼の嗜(し)虐(ぎやく)心を大いに満たすのだ。

 尤(もつと)も、狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)に集まり最高幹部に上り詰めた男にはそういう類の者が少なくない。

 狛(こま)乃(の)神(かみ)はそんな男達によって輪(りん)姦(かん)される毎日を送っているのだ。

 

「嫌……嫌……やめて……」

「おやおや、もう命令する気力も無いのかね? 最初のうちは『私(わたし)様(さま)に指一本でも触れて唯で済むと思うな』などと、立場の解らないこと場をほざいていたものだがね」

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)の髭(ひげ)面(づら)が愉悦に歪(ゆが)む。

 彼は狛(こま)乃(の)神(かみ)の髪を掴(つか)んで無(む)理(り)矢(や)理(り)立たせると、そのまま寝台(ベッド)の上に放り投げて転ばせた。

 

「では、いつものお楽しみと行こうではないかね」

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)が寝台(ベツド)に膝を乗せた、その時だった。

 突然部屋の扉が開き、一人の女がずかずかと上がり込んできた。

 和装をした、大きな鞄(かばん)を持った女だ。

 

「……君(きみ)がどうして此処に」

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は彼女の姿を見て、怪(け)訝(げん)そうに眉を顰(しか)めた。

 女はそんな首領を横目に、黙って狛(こま)乃(の)神(かみ)の傍らに鞄を置いた。

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