狛乃神嵐花はこの女を知っている。
兄宮である第三皇子・蛟乃神賢智の侍女として、何度も顔を合わせているからだ。
「刻……御門……」
有無を言わさず自分に近寄って来た彼女を見て、狛乃神は刻御門竜胆が自分を助けに来たのだと思った。
それこそ、蛟乃神が自分の為に彼女を派遣したのだと納得した。
しかし、その淡い期待はすぐに裏切られることになる。
刻御門は鞄から全身拘束衣を取り出した。
そして無言で狛乃神に無理矢理着せ始めたのだ。
「え? 何? 何? むぐうっっ!?」
狛乃神の口に筒状の枷が嵌められ、全頭マスクが被せられる。
これで彼女は見ることと喋ることが出来なくなってしまった。
辛うじて開いた鼻と耳の穴から辛うじて呼吸と感音だけが可能な状態だ。
「どういうことかね、刻御門君?」
刻御門が取った突然の行動に、首領Дもやや面食らった様に尋ねる。
彼女はそのまま黙って何らかのリモコンスイッチを取り出し、ケーブルを拘束衣に繋いだ。
拘束衣は丁度乳首や陰核の部位に金属製のピアスを刺せる構造となっており、その相手側がリングになっているのだ。
刻御門は淡々とリモコンのスイッチを入れる。
「むぐうううううううっっ!!」
瞬間、狛乃神の身体に電流が流れた。
通電された彼女は苦痛に悶える。
口枷がなければ絶叫していただろう。
「お待たせしました、首領様」
「成程、そのスイッチで通電出来るということか。しかし狼ノ牙には既に似た様な拷問具があるのだがね。我輩がそれを使わないのは、目合っている最中に通電する訳にはいかん以上、肌の露出を極端に減らすだけの無用の長物に過ぎなくなるからなのだよ」
「其方については問題御座いません。この拘束衣は特別製です。私の能力で、装着者のみに効果が及ぶよう調整してありますから」
皇國には限られた人間のみが特殊能力を使い、社会を支配するという歪んだ治安体制が存在する。
貴族の娘として皇族に仕える刻御門もまたその能力者なのだ。
彼女の能力は、物理現象の効果を一定の空間に閉じ込めるというものだ。
これにより、拘束衣の通電効果は装着者の狛乃神だけに限定され、仮令身体が触れ合っていたとしても首領Дには及ばないということである。
「さあ、此方から存分にお楽しみください」
刻御門は拘束衣の股間に備わったファスナーを開いた。
黒々としたゴムの隙間から少女の秘部が露わになる。
「ふむ、却々面白い趣向だね。しかし、抑も君には別の指令を与えていた筈だが……」
「首領様の命令の真意は、マゾ調教された皇族が晒す無様な姿を撮影し、革命の折に衆目に見せ付けられるよう準備するというものではないですか? であるなら、狛乃神殿下が今からお見せになるあられもない痴態でも事足りるかと……」
首領Дは刻御門からリモコンスイッチを受け取った。
「確かに一理ある……」
首領の同意を得た刻御門は満足気に北叟笑んだ。
だが次の瞬間、道成寺が腕を振るうと同時に刻御門の和服はズタズタに切り裂かれた。
「ああっ!?」
「だが我輩の命令に解釈を加える権利など君には無い!」
首領の不興を買った刻御門は怯えた眼で彼を見上げる。
そこには先程までの、淡々と鬼畜を演じる彼女の姿は影も形も無かった。
衣服を開けさせられただけで崩れてしまう仮面の何と脆いことか。
所詮、彼女は嗜虐側、支配者側に立つ器ではないのだ。
そんな刻御門の為体を横目に、首領Дは同じ空間に控える同志へと呼び掛ける。
「同志逸見、あれを持って来給え」
「はぁい……」
呼び掛けに応えたのは、やたらと男に媚びた化粧をした人物である。
なよなよとした物腰だが、この逸見樹は男である。
訳あって彼は雄を棄てさせられ、雌として首領Дに可愛がられているのだ。
この女装男もまた最高幹部の一人である。
逸見は悩まし気に尻を振りながら、押し入れの中を漁っている。
程無くして、彼はゴム製の拘束衣を持って来た。
刻御門は青褪める。
「そっ、それは……!」
「言っただろう? 同じようなものは既に持っていると。同志逸見、刻御門君にそれを着せ給え」
「ヒッ……!」
刻御門は抵抗する間もなく拘束衣を着せられ、同じ姿を狛乃神の隣に並べた。
黒に包まれ、喋ることもままならない二人分の女体が四つん這いで尻を見せ付けている。
首領Дは逸見からリモコンスイッチを受け取った。
これで、彼は拘束された双方に通電することが出来るようになった。
「では刻御門君、始めるとしようか。君の希望通りの通電調教を」
「むぐっ、むぐーっ!」
首領Дは二人分のスイッチを同時に入れた。
「んぐううううううっっ!!」
「むごおおおおおおっっ!!」
二人の雌の悲鳴が部屋中に谺する。
そして、首領Дはその内一方の腰を掴んだ。
「では、刻御門君の贈り物を受け取るとしようかね」
首領Дの男根が狛乃神の秘部へと挿入された。
「んんっ!? ムムウうぅぅーっっ!!」
「おおっ!? これは凄い! 通電で緊張した膣の凄まじい締め! これは嘗て無い快楽だよ! 今まで様々な穴を味わってきたが、これは初めての体験!」
思わぬ収穫に興奮する首領Дだが、相手の狛乃神にとっては地獄の苦しみだろう。
何せ、通電に加えて挿入された女性器を強制的に力まされているのだ。
首領Дの男根の凄まじい大きさに加え、これは途轍もない凌辱である。
「むごおおおおおおおっっ!!」
狛乃神の鼻と口から大量の汁が飛び散っている。
それは鼻水なのか、涎なのか、或いは涙なのか――ただただ悲惨さを全ての体液に変えて撒き散らしているといった様相だ。
「刻御門君、そちらはお預けだよ! 君は御褒美に値することが何も出来ていないのだからね!」
「んぐううううううっっ!!」
二人の夢はどちらも叶わなかった。
刻御門に解放されると夢見た狛乃神は裏切られたし、この贈り物が命令の代用になると夢見た刻御門は順当に罰を与えられている。
二人は逆夢となった現実の中、悲鳴の輪唱を叫び続けている。
「さて、刻御門君……」
首領Дは二人の通電を止め、逸見に顎で合図をした。
逸見は刻御門から筒状の口枷を外す。
これで彼女だけは言葉を発することが出来るようになった。
「今一度、我輩の命令を暗唱し給え」
「はヒッ……私は……蛟乃神殿下を寝取られマゾに調教します」
「宜しい!」
通電再開。
二人の悲鳴も再び奏でられる。
「むぐうううううっっ!」
「ああああああああっっ!」
「今一度言ってみ給え! 自分の立場の誓いと共に!」
「はい! はいぃぃぃっっ!! 私はっ! 刻御門竜胆はっ! 首領様に絶対服従のっ! マゾ奴隷です!! 首領様のっ! 御命令通りっ! 蛟乃神殿下をっ! あああっっ!! 蛟乃神殿下を寝取られマゾに調教しますうぅっっ!! あぎいいいいいいっっ!!」
二人は長く、長く、通電地獄の中で泣き叫び続けた。
「そうら、狛乃神嵐花! 君の中に我輩の種をくれてやろう!」
「んごおおおおおおっっ!!」
「あああ首領様! 首領様! どうか私にも! 私にも首領様の子種をくださいませ! 首領様の元気な赤ちゃん産みたいです! 私を首領様の孕み袋にしてくださいませ!」
「くどいね! だったら君は命令を果たし給え! 働かざる者食うべからず! 何の成果も無く御褒美を強請るものではない!」
「ああっ、そんな御無体な!」
「しつこい! 罰として電圧を上げる!」
「ぎゃあああああああっっ!! ごめんなさい! ごめんなさいいいいいいっっ!!」
「君は隣でお預けされてい給え。狛乃神嵐花に種を注ぐ隣でね」
「むうううぅぅーっっ!!」
「ほら出すぞ! その子宮で受け止め給え!」
凌辱は夜通し続き、朝になってから刻御門だけが解放された。
彼女は女の幹部から着替えの衣服を貸され、ボロボロの状態で帰路に就く。
皮肉にも、蛟乃神がずっと外出中であった為に、彼女の身に降り掛かった異常事態は露見しなかった。
尚、彼女の誓いは結局果たされない。
この後、蛟乃神賢智は結局皇宮から離れないまま、戦局は急転回を迎える。
皇國が劣勢に立たされた結果、武装戦隊・狼ノ牙は革命の機とみて全国の組織と共同し、連合革命軍として蜂起。
その最中、刻御門は自身の本性を晒して蛟乃神を首領Дに差し出すが、そのまま革命動乱は鎮圧される。
首領Дは国外へ逃亡し、そして刻御門はその最中に叛逆者として惨殺されるという、あまりにも惨めで順当な末路を辿ったのである。