※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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逆夢は踊り疲れて目を覚ます

 時は流れ、戦争事態は一応の収束を見た。

 革命動乱が鎮圧され、停戦に向けての交渉に入った皇(こう)國(こく)は、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)を漸(ようや)くその国務から解放した。

 彼は一月振りに自邸に戻る。

 だが其(そ)処(こ)には、もう刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)は居なかった。

 

「刻(とき)御(み)門(かど)……」

 

 久々に寝室へと入った蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は、寝台(ベツド)に寝そべって天井を見上げる。

 脳(のう)裡(り)には、嘗(かつ)ての侍女・刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)と過ごした日々を思い浮かべていた。

 

「刻(とき)御(み)門(かど)、君(きみ)はどうしてあの男の許(もと)へ奔(はし)ったんだ? そんなに僕(ぼく)が不満だったのか?」

 

 刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)が彼の侍女となったのは、彼が丁度十五歳の頃だった。

 当時の彼女は和装の似合う年上の美少女で、彼にとって憧れの存在でもあった。

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)にとって、刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)は初めて肌を重ねた女性だった。

 

「君(きみ)と遊ぶのは楽しかったんだがな……。君(きみ)の望むままの僕(ぼく)を演じてあげるのも、あれはあれで嫌いじゃなかった。ああいう君(きみ)も面白いかなって思い始めていたんだよ。余り似合ってはいなかったけれどね……」

 

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)が貴族の令嬢に手が早くなったのは、刻(とき)御(み)門(かど)を口説き落とせた成功体験を切(きっ)掛(かけ)としていた。

 もっと色々な女性と仲良くなりたい――その感情自体は純粋なものだったものの、いつも気が付けば肉体関係を持ってしまっている。

 女性に求められれば求められるだけ甘い言葉を、期待通りの言動をとってしまうし、またそれをやめるつもりも無かった。

 お互いに楽しければ、良い夢を見られればそれで良いだろうと思っていた。

 

「だが、君(きみ)は……君(きみ)は居なくなってしまった……」

 

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は溜息を吐いた。

 美しかった彼女が、嘗て憧れた彼女の虚像が淡色になって消えていく。

 思い出として温めるには、余りにも凄惨な結果となってしまった。

 

「もう……やめよう。流(さ)石(すが)に懲りたよ……。君(きみ)には悪いことをしてしまったね、刻(とき)御(み)門(かど)……。期待を持たせ続けるべきではなかったのかも知れない。いつか姉様に言われたとおりだよ……」

 

 時は流れ、彼は操を立てるべき女性を見つけ出す。

 それまでに彼が女遊びをやめられたのかどうかは……想像にお任せする。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 一方、首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は潜伏先の隠(かく)れ処(が)で一人の女を捕え、弄(もてあそ)んでいた。

 

「アオオオオオオオオッッ!」

 

 暗がりの中、女の悲鳴が谺(こだま)する。

 四(よ)つん這(ば)いになった白人女性が首(しゆ)領(りよう)Д(デー)に犯されていた。

 

「ははははは! やはり白人の特別感は堪(たま)らないね! 穢(けが)らわしい日本人の雌(めす)豚(ぶた)どもでは此(これ)程(ほど)の愉悦は味わえん!」

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は尻に腰を打ち付けながら、嘗て同志から尋ねられた疑問を思い返す。

 

『首領、刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)は同志に加えられないのですか?』

『そのつもりは無いよ』

 

 武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)には女の隊員も存在し、最高幹部にも名を連ねていた。

 しかし、彼は刻(とき)御(み)門(かど)をそこに加えようとはしなかった。

 

『では、彼女は孕(はら)み袋ですか……』

『いや……』

 

 かと言って、本格的に性奴隷とするつもりも無かった。

 現に彼はあまり頻繁に刻(とき)御(み)門(かど)を近付けようとはしなかったし、蜂起の際には最終的に捨て駒としてしまった。

 結果、彼女は逃亡に着いてくることが出来ず、皇(こう)國(こく)内で死亡してしまったのだ。

 首領は同志の質問を今(いま)尚(なお)一笑に付す。

 

(莫(ば)迦(か)なことを言うものではないよ。あんな勘違い女、金を搾り取って使い捨てる以外に用途なんて無いだろうに。何の連絡も無く我輩の隠れ処に出向いてくるような、考え無しの糞(くそ)莫(ば)迦(か)女だよ? 自分の身の程を勘違いして、約束された将来を自ら棄(す)てるような、どうしようも無い雌(めす)狗(いぬ)以下の雌(めす)狗(いぬ)……。連れ回すなんて御免だよ。命が幾つ有っても足りん)

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は凡(おおよ)そ無(む)茶(ちや)苦(く)茶(ちや)な男だが、刻(とき)御(み)門(かど)竜胆(りんどう)という女に対する評価は妥当だろう。

 結局彼女はどこまでも道化に過ぎなかった。

 極めて滑稽な人生だったが、それを選んだのは彼女自身である。

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は刻(とき)御(み)門(かど)と初めて会った時のことを思い出す。

 

『この皇(こう)國(こく)に神(じん)皇(のう)陛下の権威をものともしない御(お)方(かた)がいらっしゃったなんて! なんという気骨溢(あふ)れる御方でしょう! それに、教養も深い! 私(わたくし)、今まで叛(はん)逆(ぎやく)者は野蛮な猿だと思っていましたわ! でも、違った! 貴方(あなた)に比べたら、寧(むし)ろ普通の臣民の方が意気地無しばかり! 狗(いぬ)の民族、言い得て妙ですわね!』

『ほ、ほう、そうかね……。因(ちな)みに君(きみ)の主・蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)はどうなのかね?』

『糞(くそ)雑(ざ)魚(こ)蛞(なめ)蝓(くじ)ですわ! 優柔不断で流されてばかり! 肝心なところで私(わたくし)から逃げるんですの!』

『そ、そうなのかね。君(きみ)は……蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)と普通の主従関係ではないようだね……』

 

 首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は思わず失笑した。

 

(いや、面食らったよ。あんな簡単にオルグに転んだ莫(ば)迦(か)娘(むすめ)は初めてだった。自分から興(きよう)味(み)津(しん)々(しん)で我輩に会いに来た変わり者で、面白いと思っていたが、四(よ)方(も)やあれ程中身の無い脳(のう)味(み)噌(そ)空(から)っぽの御(お)嬢(じよう)様(さま)だとはね。主君となった蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)も気の毒だよ)

 

 そんなことを思いながら、首(しゆ)領(りよう)Д(デー)は目の前の女の尻を平手で打った。

 

「ンオオッッ!」

「ほらもっと締め給(たま)え! 我輩にきちんとご奉仕するのだよ! 君(きみ)もあの糞(くそ)莫(ば)迦(か)女と同じに思われたくないだろう?」

 

 彼にとって、女はただの雌であり、肉奴隷であり、孕み袋である。

 そんな彼は最終的に、一人の女の手によって破滅の道を辿(たど)ることになる。

 しかしそれまで、愚かな革命の夢を延命し続けるだろう。

 

 夢は逆夢、永久に続くように思えても、いつか踊り疲れて現実に目を覚ますのだ。

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