捕えられた文也は麒乃神の寝室で化粧を施され、『宍妻娼也』へと変わっていく。
同じく女装した美青年の手で少しずつ女らしくなっていくのは奇妙な感覚だ。
どこかむず痒い気恥ずかしさとふわふわとした熱感は、見目麗しい美少女を前にする感情とよく似ている。
相手が男であるということと、自分も同じ姿になっていくということ、その倒錯の中へ緩やかに蕩けていく。
「御姉様、終わりました。如何でしょう?」
「まあまあ、これはこれは、思った通りの可愛らしい姿になりましたね」
麒乃神は化粧の出来栄えを見て彼と文也、いや宍妻娼也の二人を嬉しそうに褒め称えた。
頬を優しく撫でられただけで雌の嬌声を漏らす彼の名は頤望愛、娼也の先輩ということになる。
彼の、細身の女と見紛う艶めかしさを備えた身体を目の当たりにし、娼也は身震いと共に固唾を飲み込んだ。
その薄桃色の発達した乳首と、ほんの少しだけ括れた腰付き――此程までに雌化した身体を男が備えていると思うと、それが却って倒錯的な性的刺激に満ちて見えた。
股間の平らな貞操具の中には、自分と同じものが信じられないほど縮こまって納まっているのだろう。
(これは、この姿は……!)
娼也は一つの予感に震えた。
その心情を見透かしたのか、麒乃神は蠱惑的な笑みを浮かべて彼に宣告する。
「御前もこんな風になれますよ」
彼女は囁くと、娼也に見せつける様に白く細い指先で望愛の両乳首の先端を転がした。
「あぁんっっ……!!」
望愛は自分よりずっと背の高い麒乃神に体を預け、善がり声を漏らした。
その甘美な快楽の声が娼也の脳を揺さぶる。
「ふふ……」
麒乃神はそのまま、望愛のぷっくりと膨らんだ桜桃の様な乳首を爪先でカリカリと弄ぶ。
「あっ、あっあっあん……あぁん……。あぁっ、あっ、あんあんっ、あぁぁあああぁぁっっん……。」
彼女の愛撫は望愛の全身に電流の様な快感を迸らせているらしく、彼はくねくねと苦悶にも似た悦びの踊りを舞いながら嬌声を漏らし続ける。
(なんて淫靡な姿だろう……)
娼也は思わず嘆息した。
そして麒乃神の言葉を脳内で反芻する。
『御前もこんな風になれますよ』
こんな風に、いやらしく艶めかしく悦びに咽び泣く姿に、自分もなれるというのか。
そんなことを考えてしまうと、口内に唾液が溜まってしまう。
全身の血流が掻き回される。
そして、股間が硬くなってしまう。
自分もあんな風に、淫靡な姿を晒しつつ、この女に愛撫されてみたい。
そんな彼の劣情を見抜くように、麒乃神の眼は彼に向けられて笑みを湛えている。
「んっ……ふぅっ! 御姉様っ……! 僕、もうっ……!」
望愛はそんな主の関心を取り戻そうとするかのように何かを訴える。
娼也に見守られる中で、彼は絶頂に達しようとしていた。
ただ麒乃神に両乳首を弄られているだけなのに、それだけで彼は巨大な快感に激しく震えていた。
「では数え下してあげましょう。零でイキなさい」
「んんっ……ふううぅぅっ……!」
「五……、四……、三……、二……、一…………零! ……零! 零! ほら、イケ!」
「あぁうううぅぅっっ!!」
望愛の身体がびくん、びくんと大きく跳ねた。
同時に、彼の股間からぽたぽたと白濁液が零れ落ちる。
やはり彼の貞操具の中には、小さな男性器がその欲望を抑え付けられながら閉じ込められているのだ。
そして雌の様に愛撫されることによってのみ、絶頂の瞬間にその存在を、通常の男とは程遠いお漏らしの様な射精によって示すことを許される。
「はぁ……はぁ……」
望愛は麒乃神に体を預ける。
そんな彼に、彼女は零れた精液を指差して命じる。
「解っていますね?」
「は、ハイ……」
何を、という疑問を挟む間もなく、望愛は屈んで自分の出した精液を舐め始めた。
一見極めて惨めなその姿は、娼也には何処か羨望を感じさせるものがあった。
圧倒的上位者の女性に愛され、とことんまで惨めな姿に堕とされてみたい。
娼也の心に芽生えた願望の正体はまさにそういうものだった。
それを見透かしたのか、麒乃神は娼也の方へ近づいた。
そして無言のまま衣装を脱ぎ、股間に聳え立つ逸物、あり得ない筈の巨根を見せつける。
「うぅっ……。これは……本当に……」
「そう、私は両性具有なのですよ。娼也、今から私のこれに口で御奉仕なさい。上手に出来たら、御前にも私を『御姉様』と呼ぶ権利を差し上げましょう」
娼也は彼女の股間に聳える立派な怒張に目を奪われていた。
今からこれを、口で……。
そう思うと驚くほどの唾液が口内に充満してくる。
そして彼は遂に、彼女の鈴口に恐る恐る唇を付けた。
それは初恋の異性と交わす初めての接吻のときめきに、官能的な倒錯感をも混ぜ合わせた、何とも甘美な口づけに思えた。
夢幻のような一時、まるで桃源郷。
娼也の中で、夢が実現したような歓喜と仇に屈服した様な恥辱が目紛るしく入れ替わり、交互に廻り廻り続けていた。
(こんなことに、こんなことに僕は胸が破裂しそうなくらい高揚している。嗚呼、嗚呼、これを、これを舐めろと仰るのですか、しゃぶれと仰るのですか。屹度、後にこれで僕を犯すのでしょう。でも僕はもう、貴女には逆らえないのです。首領、みんな、早芙子さん、ごめんなさい……)
悔恨の言葉が脳裏に過ったと同時に、それは彼の喉奥へと捻じ込まれた。
その苦しみ――自分よりも大きな逸物で女性に喉奥を犯されるという屈辱感が、娼也の小さな陰茎を硬く強張らせていた。
嗚呼、この女には「歯が立たない」――窒息して飛びそうになる意識の中で、娼也はそう痛感していた。
「ぶはッ!!」
意識が飛ぶ寸前のところで、逸物は一気に引き抜かれた。
そして息継ぎを確認すると、麒乃神は再び娼也の喉にそれを捻じ込む。
今、彼の呼吸は完全に彼女の管理下に置かれていた。
即ち、彼女の許可無しでは息をすることも許されない、完全なる愛玩人形扱いを受けているのだ。
何度目かの解放の後、麒乃神は冷厳な笑みを瞳に湛えたまま娼也を見下ろして命じる。
「今度は隅々まで丁寧に丹念に舐め尽くしなさい」
「はい……はい……」
彼の目尻に浮かぶ涙は窒息の苦しみ、屈服の恥辱、そして隷属の歓喜から滲み出たものだ。
彼女の亀頭は鈴口から零れる雫に輝き、汎ゆる貴金属よりも美しく見えた。
父が売っていたどんな宝石も彼女の前では敵うまい。
(父さん、貴方はこれを望んでいたのか。何と恥知らずな! そして、僕も今……。嗚呼、至福だ……)
娼也はぐちゃぐちゃの思考を振り払うように彼女の逸物をねっとりと舐り続けた。
暫くして、麒乃神は娼也の頭を掴んで彼女の逸物から引き離した。
そして彼をそのまま寝台の上に押し倒す。
「望愛、彼の中を綺麗にしなさい」
「はい……」
望愛が少女と見紛う様な体を起こし、娼也の許にある物を持って来た。
その太い注射器の筒の中には、透明な液体がたっぷりと波打っている。
「ヒッ……!」
娼也の頭から一気に血の気が引いた。
何をされるのか、何のための行為かは明らかだ。
「怖がることはありませんよ。私の物を受け容れるからには確りと清めておかなくてはなりませんからね。さあ、力を抜きなさい」
娼也の恐怖を余所に、望愛は麒乃神から命じられるままに注射器の先端を彼の肛門に突き刺した。
娼也は異物感と共に何かが腹の中を満たしていく感覚に襲われ、力なく声を漏らす。
「あああああー……」
それは、儀式の準備である。
完全なる服従を示す儀式の為、我が身を清める行為である。
ここから先、彼の人生の総ては辛苦なる汚辱と甘美なる陶酔に満たされる。
その未来を暗示する様に、彼の中から「過去」は全て掃き出され、取り除かれるのだ。