※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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承

 じゅぽじゅぽと、卑(ひ)猥(わい)な水音が響いている。

 いや、響かせていると言った方が正しいか。

 

「んっ♡(じゅぽっ♡)……んっ♡(じゅぽっ♡)……」

 

 口内を消毒した俺(おれ)は、お客様の期待する「肉棒(オチンポ)様が大好きな淫売」を精一杯演じる。

 美(う)味(ま)そうに、有難そうに、そればかりかしゃぶっているだけで全身にじわじわと快感が溜(た)まっていくような、男受けする媚(こ)びっ媚びのフェラチオが部屋を卑猥な音で一杯にする。

 

 俺(おれ)はこんなこと、心では望んでいない。

 あくまで男に戻してもらう束(つか)の間(ま)の為(ため)にこんな倒錯に興じている、その筈(はず)だ。

 だが俺(おれ)はこの肉棒(オチンポ)様をしゃぶる直前、確かに唾液が口内に充満するのを感じた。

 ベタな言い方だが、心とは裏腹に体は求めてしまっているのだ。

 

 俺(おれ)は怖くなってくる。

 男の肉棒(オチンポ)様に抵抗が無くなるのは、今の状況に適応する為に悪いことではない。

 体が疼(うず)いてしまうのも、鎮める術を覚えてきた。

 だが、その変化だ。

 その肉棒(オチンポ)様に抵抗が無くなる適応変化、体の疼きを鎮める習慣化が、心すらも創り変えてしまうようで恐ろしいのだ。

 

 俺(おれ)が俺(おれ)でなくなっていく。

 決して望んでいない性的指向を無(む)理(り)矢(や)理(り)刷り込まれ、変えられていくことへの抵抗が薄れていく。

 

 そしてその恐怖を忘れる為、俺(おれ)は目の前の倒錯にのめり込む。

 俺(おれ)は自分に言い聞かせる。

 

(美(お)味(い)しい♡ 美味しい♡ 肉棒(オチンポ)様、大好き♡)

 

 只管(ひたすら)に、只管にそう念じながら、わざとらしい淫(いん)靡(び)さを演出し続けるのだ。

 

 口の中に唾液とは別の粘液が広がる。

 鈴口から汁が溢(あふ)れてくるのが分かる。

 舌の上から喉へ、そして鼻(び)腔(こう)へと雄の臭いが充満していく。

 

 しかし、この時まで俺(おれ)は気付いていなかった。

 お客様の吐息から、先程までのような興奮を抑えられないといった異常な昂(たかぶ)りが消えている。

 

(醒(さ)めてきている……?)

 

 俺(おれ)は一抹の不安を覚えた。

 と、その時だった。

 

「むごぉッ!?」

 

 突如、お客様は俺(おれ)の頭を掴(つか)み、強引に喉奥まで肉棒(オチンポ)様を突っ込んできた。

 

「おゴッ! ングぇッ!?」

「駄目だよそれじゃあ。オジサン、一回出しちゃってるんだからもっと必死でご奉仕しなきゃあ」

 

 息が、息が出来ない……!

 俺(おれ)はつい、呼吸を確保すべく歯を立てそうになってしまう。

 喉奥に異物を当てられると反射的に口を閉じそうになる。

 だが幸か不幸か、俺(おれ)は鷹(たか)番(つがい)様から散々とその反応を堪える訓練を積まされているので、この突然の凶行に何とか耐えることが出来てしまう。

 

「ホラッ! ホラッ! ホラぁッ!」

「ーッッ!?」

 

 どんどん口雌穴(クチマンコ)へのピストンは激しさを増していく。

 この男、乱暴にするのが好きなタイプか。

 男が相手なら女よりも頑丈だからと遠慮が無くなるタイプか。

 

 こんなことを続けられては、下手をすれば死んでしまう。

 俺(おれ)は無我夢中で、全身全霊を込めて男の手を引(ひ)き剥(は)がし、地獄のイラマチオから抜け出した。

 

 瞬間、後悔と恐怖が全身を包み込む。

 男の冷たい視線が上から背中に突き刺さる。

 そして髪を掴まれて顔を上げさせられた俺(おれ)の眼(め)に映ったのは予想通り、男の無慈悲な表情だった。

 

 バチン、と無言で頬(ほお)を打たれる。

 強い打撃――今の俺(おれ)には失われてしまった男の腕力を嫌でも感じさせられる。

 バチン!――ただその打音が響く。

 冷酷に俺(おれ)の粗相を責める。

 

 俺(おれ)は怯(おび)えながら、再び男の肉棒(オチンポ)様を咥(くわ)え込んだ。

 空(す)かさず、俺(おれ)の意思と安全を完全無視した激しいイラマチオが再開される。

 

 或(ある)いは風俗なら、こんなことをされれば終わりに出来るかも知れない。

 嬢の安全を脅かすプレイを店のスタッフが止めてくれるかも知れない。

 だが、俺(おれ)は鷹(たか)番(つがい)様にとって何の価値も無い人間である。

 壊されても特に問題の無い、寝取られ元妻への未練に支配された奴(ど)隷(れい)に過ぎない。

 男はそれが分かっていて、風俗嬢相手に出来ない乱暴を行使する為に俺(おれ)を買ったのだ。

 

 嗚呼(ああ)、俺(おれ)の雌化したひ弱な体ではどうすることも出来ない。

 先程のように死力を尽くして逃れても、また力尽くで同じようにさせられる。

 弱者は強者のされるがままになるしかない。

 負け犬の生殺与奪権は勝者が握るのだ。

 前の世界でアルファだった俺(おれ)が、この世界ではベータですらない。

 

 俺(おれ)は意識を失った。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 俺(おれ)を現実に引き戻したのは、前立腺を激しく擦る刺激だった。

 気絶している間に俺(おれ)は寝バック状態で尻穴(アナル)に肉棒(オチンポ)様を挿入され、突かれていたのだ。

 

「ひぃっ!?」

「起きた? じゃあ早く尻穴(アナル)締めなきゃ。ガッバガバで全然気持ち良くないよ、君」

 

 身勝手で乱暴な男の声には既に苛(いら)立(だ)ちが混じっていた。

 俺(おれ)は必死に括約筋に力を込めるも、本物の男という奴にわからされ続けた俺(おれ)の貧弱な力ではまるでピストンに抗(あらが)えない。

 

「ねえ、やる気ある? もっと気合い入れなよ!」

「すみませんすみません! ヒィっッ! ひいぃぃン!」

 

 ユルユルな分、前立腺への刺激は却(かえ)って勢いが凄(すさ)まじい。

 それが却って、俺(おれ)の体に強い快感を焼き付ける。

 俺(おれ)は泣き声を抑えられなかった。

 だがそんな俺(おれ)とは逆に、男は不満だらけの様子だ。

 

 バチン!――尻が乱雑に打たれる。

 

「ああッ! 許して! 許してぇッ!」

「許さねえよ何の為の穴だ締めろ! オラ締めろォッ!」

 

 バチン!

 バチン!

 段々と打撃が強くなる。

 

「ヒイィィッ! あひいいいいぃぃッ! 痛い! 激しい!」

「そうかいそうかい! こっちは全然だよオラッ!」

「あああああ! ああああアッ!」

 

 自分の体が雌として開発され切ってしまったということ、そして雌としてすら役に立たないということを乱暴に突き付けられる屈辱。

 それは俺(おれ)を惨めな絶頂へと押し上げていく。

 

「駄目へぇっ! イッちゃうぅッ! んオッ、ああああアァッッ!!」

「はあ!?」

 

 無(ぶ)様(ざま)、無様。

 役立たずの自分勝手なオルガスム。

 それは負け犬の証(あかし)、白旗代わりのトコロテン。

 貞操帯の中で縮こまった極小陰茎(クリチンポ)からの、情けなく絞り出すような敗北射精。

 そしてぞわぞわと、全身に蟲(むし)が這(は)いずり回(まわ)る様な怖(おじ)気(け)を伴う弱者の絶頂が俺(おれ)を包み込んでいた。

 

「オイオイもう終わり? ふざけんじゃねえぞ! 自分だけイキやがって……」

「申し訳……御座いません……。ちゃんとイクまでご奉仕しますので、どうかお許しを……」

「はあ……、もう良いよ。全然駄目じゃないか君。最初はクッソ艶漏(エロ)かったから期待したのに、こんなもんかよ……」

 

 男はそう不満を垂れると、ぐったりと力無く項(うな)垂(だ)れている俺(おれ)の頭上に一枚、紙幣を落とした。

 

「この為体(ていたらく)じゃ万札一枚で充分だろ。それ持って帰れ」

 

 俺(おれ)は恥辱に心を埋め尽くされ、何も言えなかった。

 

「おい、挨拶は無いのか?」

 

 男はキレ気味に舌打ちし、俺(おれ)を頭上から詰った。

 

「本日は……ありがとうございました……」

 

 こんな扱いを受けて尚(なお)、俺(おれ)は男へ必死に媚びた作り笑いを向けた。

 部屋には惨めな雌男と、たった一枚の一万円札が残されていた。

 

 紙幣に印刷された若き皇太子の凜(り)々(り)しい顔が俺(おれ)を嘲(あざ)笑(わら)っているかの様だった。

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