※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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四

 早(そ)芙(う)子(こ)の呼吸を封じていた巨根が彼女の喉から引き抜かれた。

 

「ごほっ!! ゴボぁッ!!」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は必死で咳(せ)き込(こ)んだ。

 また神(しん)為(い)は外れた顎を繋(つな)ぎ合わせていないが、意に介している余裕も無かった。

 やっと、やっと呼吸ができる。

 生まれてこれまで、今ほど空気が有難いものだと感じたことは無かった。

 

「獅(し)乃(の)神(かみ)様っ!! 獅(し)乃(の)神(かみ)殿下っ!! 堪忍、堪忍しでぐだざいっ!! 息が出来まぜん!! 死ぬがと思いまじだああっっ!!」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は我を忘れて必死に訴えた。

 汚く濁った声で叫び散らした弱音、泣き言だった。

 嘗ての凜(り)々(り)しい姿とは余りにもかけ離れた姿に、獅(し)乃(の)神(かみ)はほんの少し眉を顰(しか)めた。

 

「思いの外、耐えられぬものだな。綾(あや)花(か)や貴(き)龍(りゅう)院(いん)はこれぐらいで悦(よろこ)んだのだが……」

「ぜえーっ!! ぜえーっ!!」

 

 冗談ではない、と早(そ)芙(う)子(こ)は獅(し)乃(の)神(かみ)の考え違いを聞き必死に首を振った。

 こんなに苦しいのなら、もう前戯は終わりにして貰いたい。

 しかし、獅(し)乃(の)神(かみ)は斜め上の納得から彼女に最悪の宣告を突き付けた。

 

「二人よりも遙(はる)かに強い汝(なれ)が耐えられないのは何か別の理由がある筈……。屹(きっ)度(と)、汝(なれ)は自信を失って弱っているのだ。自らの人生の選択が誤りであったわけだから、無理からぬこと。ならば、その自信を取り戻さねば汝(なれ)は救われまい。ここは一つ、俺(おれ)を射精に導いてみよ。それを為(な)してこそ、汝(なれ)は再び己に誇りを取り戻すことが出来るというもの」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)はすっかり怯(おび)えに支配されながら、聳え立つ獅(し)乃(の)神(かみ)の巨根を見上げていた。

 

(今のを、絶頂させるまで、繰り返す? 出来っこいない!)

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は余りの難題に眩暈(めまい)を覚えた。

 しかし、獅(し)乃(の)神(かみ)はそんな早(そ)芙(う)子(こ)に構わず、容赦無く己の逸物(ペニス)を彼女の口から喉へと捻じ込んだ。

 

「ぬぼおおぉっ!」

 

 再び、地獄の様な苦痛の時間が始まった。

 

「無理はしなくて良いぞ。駄目だと思ったら迷わず合図を送れ」

 

 無理はしなくても良いとは云(い)っても、そもそもこのイラマチオそのものが人間には無理だ――そんなことは言える筈もなかった。

 早く絶頂を、早く終わりを、そう願いながら限界まで耐えるしかない。

 

 だが、この強(きよう)靭(じん)な逸物を絶頂させるのは並大抵な事ではない。

 案の定、彼女は獅(し)乃(の)神(かみ)の手を叩いて限界の合図を送った。

 獅(し)乃(の)神(かみ)は彼女を解放した。

 

「げぶぁっ!」

「おいおい大丈夫か? 今にも死にそうな顔をしているぞ。少し休め」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)を労(ねぎら)わる素振りを見せる獅(し)乃(の)神(かみ)だが、本人としては期待外れだったことがその表情から読み取れる。

 この様なことを、失敗を、何度も何度も繰り返しては彼の不興を買ってしまう。

 早(そ)芙(う)子(こ)はすっかり「どうにか獅(し)乃(の)神(かみ)の機嫌を損ねないように」という水準で考えを巡らせるようになってしまっていた。

 

「落ち着いたな? 頑張れるな?」

「頑張りまず、頑張りまずがらぁっ……」

「良し!」

 

 再び繰り返される意図せぬ凌辱。

 永遠にも思える数秒の窒息。

 

 焦点が合わず裏返らんばかりの上目。

 乙女にあるまじき垂れ流される涙鼻水唾液。

 遅々として進まない射精までの道筋。

 

 藻(も)掻(が)く姿はまるで豚。

 出来の悪い吾妻形(オナホール)。

 何度も何度も何度も何度も刻まれる無能の烙(らく)印(いん)。

 

「もう少し、もう少しだ! 頑張れ頑張れ頑張れ!」

 

 ほら期待に応えましょう。

 まだまだまだまだ我慢です。

 

(無理無理無理無理死んじゃうがらぁっ!)

 

 死ぬ気でやれよ、死なないから。

 

「げぶぁっ!」

 

 吐き出されて元(もと)の木(もく)阿(あ)弥(み)。

 背中に降りかかる失望の眼(まな)差(ざ)し。

 

 肉便器にもなれない使えぬ魯(ろ)鈍(どん)。

 何のために生まれてきたのか。

 嗚(お)咽(えつ)しか能の無い虚無の女肉。

 

「あと少しだったのに……」

「ずみまぜんずみまぜん……。私(わたくし)は塵(ごみ)でずぅ……」

「そんなことはない、お前はこの世で最も優れた民族の女だ、出来る出来る。最後まで付き合ってやるからほら、もう一度だ」

「んぶっ!」

 

 死ぬ、死んでしまう。

 いっそ死ねばいい。

 死体の方が役に立つ。

 無能、塵(ごみ)屑(くず)、雑魚、虚無。

 口先だけの盆(ぼん)暗(くら)牝(め)型(がた)木(で)偶(く)人(にん)形(ぎょう)。

 生きる価値無し。

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

 死んで虫(むし)螻(け)蛄(ら)にでも生まれ変われ。

 そして踏(ふ)み潰(つぶ)されてまた死ね。

 次は黴(ばい)菌(きん)にでもなるか。

 汚い汚い汚い汚い。

 否死ね。

 死んだまま戻ってくるな。

 また生まれて来ようなど虫が良過ぎる消えてしまえ。

 そもそも何故、何故生まれてなど来た。

 誰が許可して存在した。

 ほら死ねさっさと死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

 

「良し! 出すぞ! 残さず受け止めろ!」

 

 長い長い、永遠とも思える長い凌辱の果てに漸(ようや)く訪れた射精の瞬間だった。

 

「ごッ? ゴポポッポポポポポオォッ!」

 

 人間とは思えないほど大量の射精だった。

 自分を根底から作り変えてしまう様な、暴虐の固形流動物(ゼリー)が容赦無く胃に注がれていく。

 自分を根本から否定される様な余りにも残虐な性拷問の終わりは、それまでの経過が生(なま)温(ぬる)いとすら思える様な、悍(おぞ)ましい程の硬く濁った濃厚精子(ザーメン)だった。

 胃を溢れさせる程の量に、すぐさま嘔(おう)吐(と)感が込み上げてくる。

 

「うぷっ……」

「耐えているな! 偉いぞ!」

 

 吐き出さず堪えるのは、不興を買わない為だ。

 その為に、巨根が引き抜かれた後も早(そ)芙(う)子(こ)は口を押さえて耐え忍んだ。

 しかし、我慢し切れなかった。

 

「おぼぼぼぼぼぼぼぼおぉっ! おげええええ! ぐえええええっ!」

 

 全てを吐き終えてぜえぜえと草(くた)臥(び)れ切った呼吸をする嘔吐塗れの乙女。

 早(そ)芙(う)子(こ)はすぐさま、背中に突き刺さる視線に恐怖した。

 

 やってしまった、吐いてしまった。

 それが獅(し)乃(の)神(かみ)叡(えい)智(ち)の機嫌を損ねたのではないかと、怯える彼女は項(うな)垂(だ)れたまま小刻みに震えていた。

 

 そんな早(そ)芙(う)子(こ)の頭に獅(し)乃(の)神(かみ)の手が添えられる。

 瞬間、彼女はびくりと痙(けい)攣(れん)した。

 だが彼女の懸念とは異なり、獅(し)乃(の)神(かみ)の声と手つきは穏やかだった。

 

「大丈夫か? 少々頑張り過ぎたようだな」

「申し訳……御座いません……」

「謝ることはない。最後は堪え切れなかったとはいえ、よくぞこの俺(おれ)を射精へと導いた。誇って良いぞ」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)の目から大粒の涙が零(こぼ)れ落(お)ちた。

 一体何の涙なのだろう。

 

 己が境遇の惨めさへの憐(れん)憫(びん)か。

 男の仕打ちの苛烈さへの屈辱か。

 それとも遣(や)り果(おお)せた事への安堵か。

 将(はた)又(また)、思わぬ優しさに感嘆したのか。

 

 だが、早(そ)芙(う)子(こ)は忘れていた。

 これはあくまで前戯に過ぎないということを。

 

「さあでは愈(いよ)々(いよ)、本番といこうではないか。寝台(ベツド)に身体を預けるが良い。体位は選ばせてやるぞ」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)の言葉に、早(そ)芙(う)子(こ)は涙目のまま彼を見上げた。

 彼の巨根は全く萎(な)えていない。

 一度射精させれば勢いも衰えるなど、甘い考えだった。

 

「どうした? 俺(おれ)が決めてやろうか?」

「いいえ……」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)はふらふらと、全てを諦めた様に寝台(ベツド)へ向かった。

 空虚な心で歩く姿はまるで腐屍徊(ゾンビ)の様であった。

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