※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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五

 寝台(ベツド)に上がると、早(そ)芙(う)子(こ)は四(よ)つん這(ば)いの体勢を取った。

 せめて、これからの行為で無様に崩れた顔を晒すまいという、最後の羞恥心が取らせた体位だった。

 

「その体位で良いのだな?」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は無言で頷(うなず)いた。

 

「あいわかった」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)は彼女の意思を了承すると、指で彼女の秘部を愛(あい)撫(ぶ)し、解し始めた。

 慣れた優しい手つきで、しかし徐々に拡張する様に動かすその様はこれからの行為がかなり厳しいものになることを、否が応にも早(そ)芙(う)子(こ)に予感させた。

 

「俺(おれ)のは大(でか)いからな。少しでも挿入しやすいように充分に解してやらねば汝(なれ)も辛かろう」

 

 紳士的な言葉だが、全く安心出来ない。

 

(どうせ、どうせ滅(め)茶(ちや)苦(く)茶(ちや)にする癖に……!)

 

 この男の力の行使はそういうものだ、と既に早(そ)芙(う)子(こ)の骨身に染みている。

 楽に済むことなど期待出来る筈もなかった。

 指が引き抜かれた時、彼女は何度目かの地獄を覚悟した。

 

「充分濡(ぬ)れたな。そろそろ入れるぞ」

「はい……」

 

 次の瞬間、文(ふみ)也(や)とは比較にならない巨根が彼女の膣(ちつ)内にめりめりと侵入してきた。

 

「うぎいいいいいっ!! 大きいっ! 大き過ぎるうぅぅ!! 体裂けるぅぅぅ! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃっ!!」

「大丈夫だ。慣れるまではゆっくり動いてやるから安心て身を委ねろ」

 

 大丈夫なことは何も無く、彼女に出来る事は全力で少しでも痛みを和らげることだけだ。

 その為ならば涙も涎(よだれ)も鼻水も出すし、声を上げる事も厭(いと)わない。

 地獄のような苦痛を前にすれば恥も外聞も何と矮(わい)小(しよう)なものか。

 

「おおおおおっ! おおおおおおん!」

 

 凄まじい異物感。

 まるで自分はこの男の物なのだと体の芯から思い知らされているかのようだ。

 嗚呼、これが屈服するという事なのか。

 

 これを掻(か)き回(まわ)されたら一体どうなってしまうのか。

 怖い怖い怖い。

 生殺与奪権ごと全身を握る巨大な死神の手、その力強さまで肌身に感じられるような圧倒的被征服感。

 

「落ち着いてきたな。これ程の物は初めてだろうに、偉いぞ」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)は早(そ)芙(う)子(こ)の尻を優しく撫(な)でる。その感触に少しだけ心が安らいでしまうことが早(そ)芙(う)子(こ)の屈服感をより強めてしまう。

 

「ではそろそろ動くとするか。痛みもあろうが堪えろよ。直に快楽へと変わるからな」

 

 宣告に少し震えた早(そ)芙(う)子(こ)だったが、お構いなく活塞(ピストン)運動は執行された。

 

「おおおおおおああああああああああああああああいいひいいいひいいいひいいいいいいいううあああああああああああああおおおおおおおんおおおおおおおんおおおおおおおおんンんなあああああああああああああぐはああああああああああああああおおおおおおおおおおおひイヒヒぎいいいいいいおほおおおおおおおおおおんびひひいいいいいいいいいいいいあいあいあいあいあいあややあああああんおおおおおあああっはああああああああああああああああおっおっおっんおぉっづあああああああああああああはああああああああああうばあああああがああああああああああああおおおおおおおおおおんんんああああああああ……!」

 

 獣のような咆(ほう)哮(こう)が部屋に響き渡る。

 それは大地をも揺らし、夜を切り裂いて空の星まで届きそうな程の悲鳴、絶叫であった。

 そして次第に、嬌(きよう)声(せい)へと変わっていく。

 思えば覚悟して受(う)け容(い)れてしまった時点で、こうなってしまうこともまた必然だったのかもしれない。

 

 相手は到底勝てない絶対強者たる男である。

 相手は嘗て惚(ほ)れ、そしてずっと心の何(ど)処(こ)かで忘れられなかった男である。

 相手は今、彼女が縋(すが)れる唯一の男である。

 

「んおおおおおおっっ!! おほおおおおおおおおっっ!! あああああっっぁぁあああああっっっっ!! んびいいいいいいいっっ!!」

「気持ち良くなったら伝えよ。汝(なれ)の一番良いやり方で徹底的に悦ばせてやろう」

「うんぐうううううっっ!! 良ひぃぃっ……これ良いぃぃっっ!!」

 

 早(そ)芙(う)子(こ)の言葉に嘘(うそ)偽りは無かった。

 凄まじい迄(まで)の凌辱であることは間違い無いのに、それ以上の快楽が心と体の芯に叩(たた)き付(つ)けられている。

 自らの性癖を、存在を、魂の在り方すらも塗り替えられてしまう様な、凶悪極まり無い性的快楽である。

 

(アア……飛ぶ……! 私(わたくし)の中で何かが弾けて……消し飛ぶ……!)

 

 それは死を想わせる、快楽を超えた悦楽であった。

 そんな中、彼女の脳(のう)裡(り)に一つの映像が浮かび上がる。

 学生時代の、まだ穢(けが)れも何も知らなかった自分は、一人の青年と恋に落ちる。

 そして正義感に燃える彼女は、彼に誘われるままに革命戦士として目覚め、体制に抗(あらが)う為に刃を振るう、誇り高き女剣士の姿だ。

 

 ……果たしてそうだろうか。

 早(そ)芙(う)子(こ)は本当に正義感に溢れる、誇り高き生き方をしてきたのか。

 彼女が革命に奔(はし)ったのは、親友に降り掛かった理不尽な死を呑(のみ)込(こ)めないまま逃げたに過ぎぬではないか。

 自分が本当に正義感から抗う様な人間であれば、親友が死んだその時点で、貴族社会の権力構造をものともせずに一人で戦いの狼煙(のろし)を上げた筈だろう。

 

 武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)の道(どう)成(じよう)寺(じ)太(ふとし)は、彼に自分を紹介した地(ち)上(じよう)ノ(の)蠍(さそり)座(ざ)の黄(つ)柳(げ)野(の)文(ふみ)也(や)は、そんな自分の薄っぺらい正義感擬(もど)きを見抜いていたのだ。

 それを看破された結果、逃げ場を失った彼女は革命に囚(とら)われてしまった。

 

 革命戦士・水(み)徒(と)端(はた)早(そ)芙(う)子(こ)――それは嘗て自分が思い描いた理想の自分では全くない。

 寧(むし)ろ、理想とかけ離れた自分を罰し、自傷し続けた姿に過ぎなかった。

 黄(つ)柳(げ)野(の)文(ふみ)也(や)の薄汚さにも、道(どう)成(じよう)寺(じ)の許(もと)に連れて行かれた時点で気付いていたのだろう。

 黄(つ)柳(げ)野(の)早(そ)芙(う)子(こ)の名前も、文(ふみ)也(や)への愛から名乗ったものではなく、己の存在を自ら穢していたのだ。

 

 今、早(そ)芙(う)子(こ)の脳裡に浮かんだ「革命戦士・黄(つ)柳(げ)野(の)早(そ)芙(う)子(こ)」の像は粉々に砕け散った。

 強引な性交、その挿抜、打ち付けられる逸物(ペニス)と暴力的な快楽が、何度も執(しつ)拗(よう)に幻覚の自画像を擂(す)り潰(つぶ)していく。

 

「素直になるのだ。汝(なれ)は生(き)の儘(まま)、有(あ)りの儘(まま)で美しい。汝(なれ)の本当の姿を思い出せ」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)の言葉が妙にはっきりと頭に響いた。

 思えば彼はずっと自分のことを肯定しようとしていた。

 事此処に及んで、こんな淫(みだ)らで無様な醜態を見せ付ける自分を誇れというのか。

 

(納得……してしまう……! 絶対的な力……暴虐的な悦楽に……有無を言わさず納得させられてしまう……! 私(わたくし)の中に出来た負い目を……跡形も無く消し飛ばす……! あいつらに植え付けられた……本当はずっと苦しかった……悍ましい自己認識を……! 私(わたくし)自身にはどうにもならなかった頑固な信念を……無(む)理(り)矢(や)理(り)突き砕いて……!)

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は今、絶対強者にぶつけられる力の濁流に呑(の)まれていた。

 このまま溺れてしまえば良い。

 否、抵抗など出来る筈が無い。

 

「あああああああっっ!! しのがみざまっっ!! ありがとうございます!! ありがどうございまずううううううっっ!! おおおおおおおおイイ!! さいぎょおすぎりゅうぅぅうっ!! うまれでぎてよがっだでずうぅぅぅ!!」

「そうかそうか。遠慮は要らんぞ。好きなだけ悦びを乞うが良い」

「はいっっ!! はいいいいいいっっ!! もっどぐだざいいいいいいっっ!! もっとだいでっっ!! わだぐじのっっ!! まぢがっだわだぐじっっ!! ぜんぶごわじで!! だぎづぶじでええええええっっ!! わだぐじのながっっ!! あいづらぜんぶっっ!! なぐりごろじでえええええっっ!!」

「そうだ、苦しみも悲しみも怒りも全部吐き出せ。俺(おれ)の子種で全部呑(の)み込(こ)んで、洗い流してやるからな」

「ありっっありがっっあっあっありがどうございまずううううううううううっっ!!」

 

 強制的な歓喜の嬌声だった。

 この凌辱の様相を呈する性交に慣れてしまった時、その異物感が安(あん)堵(ど)感(かん)にすり替わり、快楽を求めるようになった時、彼女は水(み)徒(と)端(はた)早(そ)芙(う)子(こ)でも黄(つ)柳(げ)野(の)早(そ)芙(う)子(こ)でもなくなった。

 

 この名無しの女は男を満足させるまでに幾度となく絶頂し、失神し、それでもなお狂ったように彼を求め続けた。

 獅(し)乃(の)神(かみ)叡(えい)智(ち)の絶倫振りは数回程度の射精で尽きることはなく、何度も何度も彼女は膣内に精液を注入された。

 その度に体位を変え、また激しく快楽を貪(むさぼ)る。

 

「おごおおおおっ!! ぴぎひいいいいッッ!! じのがみざまああアアアッッっ!! んぎもぢいいいいぃぃぃぃいいおおおおおぉぉぉぉおおぼほおおおがあああああああああああああんばああああああああぁぁぁぁッ!! あびブギいいいいイイイイいおごっっ!? ばッぼほっおっばっのっんごおおおおオオオオオオおおおぉぉぉぉぉおおおオオおおおおおおおおなあああああああああぶひいいいいいいいいいんんんんっはああああああああ……!」

 

 豚の様な金切り声を上げ、痴態、醜態を晒す彼女から羞恥心は既に消し飛んでいた。

 斯(か)くして、彼女の革命は終わりを告げた。

 二人が目もくれない床には、砕けた彼女の名刀が虚(むな)しく打ち捨てられていた。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

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⦿

 

 

 

 事が終わり、早(そ)芙(う)子(こ)は全裸土下座の姿勢で獅(し)乃(の)神(かみ)の言葉を待っていた。

 これから賜(たまわ)る新たな名は、今彼女の身を痙攣させている余韻と共に、心の奥底にまで定着する。

 暴虐的な迄に何度も焼き付けられた、「絶対強者」に抱かれる悦び――魂に刻まれたその余韻は永久に消えることは無いだろう。

 

「うむ、我(われ)乍(なが)ら誠に美しき名だ! 生まれ変わった汝(なれ)に此(これ)程(ほど)似合う名もあるまい!」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)は無邪気な笑みと共に半紙に書かれた文字を早(そ)芙(う)子(こ)に両手で見せつけた。

 達筆であり、力強い線で堂々と書かれた線には自信と教養の深さが滲(にじ)んでいた。

 

「見よ見よ。今より汝(なれ)は敷(しき)島(しま)、敷(しき)島(しま)朱(と)鷺(き)緒(お)だ」

「私(わたくし)のような者には勿(もつ)体(たい)無(な)いほどの素晴らしき名に御座います。与えられた名に恥じぬよう新たな生を精一杯全うさせて頂きます」

「汝(なれ)の新たな職務は俺(おれ)の近衛侍女としてその刃で俺(おれ)の身を守ることだ。砕けた刀に代わるより良い名刀をやろう」

「恐悦至(し)極(ごく)に御座います。胸一杯の誇りと共に全身全霊を以(もつ)て務めて参ります……」

 

 窓の外では空が白んでいた。

 

「敷島、丁度日の出だ。汝(なれ)は今まで本当によく頑張った。さ、近う寄れ」

「はい……」

 

 獅(し)乃(の)神(かみ)叡(えい)智(ち)は彼女を傍らに座らせて肩を抱く。

 女は虚(うつ)ろな目で淡々と男の気を惹く愛の言葉を囁(ささや)き続けた。

 男は穏やかに目蓋を閉じてその声に聞き入っていた。

 朝焼けが二人の姿を煌(きら)びやかな金色に染める中、彼らは微睡(まどろみ)の中へ包まれていった。

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