※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

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破邪顕正の華傑刀・獄ノ巻
一


 黄(つ)柳(げ)野(の)文(ふみ)也(や)は夢を見ていた。

 否(いな)、麒(き)乃(の)神(かみ)聖(せい)花(か)に敗れ、「宍(しし)妻(め)娼(しよう)也(や)」という雌として隷属する道を選んでしまった彼にとって、最(も)早(はや)夢と現実の境界は曖昧だったのかも知れない。

 

 彼が見ている光景は、とあるホテルの一室だった。

 この場所は覚えている。

 そう、水(み)徒(と)端(はた)早(そ)芙(う)子(こ)と初めて交わったのはこのホテルだった。

 

『何だか……恥ずかしいな、文(ふみ)也(や)』

 

 彼の隣には、あの頃と変わらない早(そ)芙(う)子(こ)が初体験を前にそわそわしていた。

 貴族の令嬢である彼女にとって、繁華街にあるそれ目的のホテルは何もかも物珍しく、新鮮だったのだろう。

 

『正直僕(ぼく)も勝手が分からないんだ。なんとなく連れてきてしまったけれど、こんな所は初めてだからね』

『そうなのか? そうか、良かった……。文(ふみ)也(や)と私(わたくし)でお互い初めて同士なんだな。文(ふみ)也(や)に初めてを捧(ささ)げられるし、文(ふみ)也(や)の初めてにもなれるんだ……。嬉(うれ)しいな……不安だけれど……』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は頬(ほお)を赤らめ、潤んだ目で文(ふみ)也(や)をまじまじと見詰めていた。

 普段は長身も相(あい)俟(ま)って凜(り)々(り)しい印象を与える彼女だが、文(ふみ)也(や)の前では時折乙女の表情を見せる。

 文(ふみ)也(や)はそんな彼女を前にして、日に日に愛(いと)おしさを募らせていた。

 

(初めは良い鴨(かも)だと思った。庶民の通う大(だい)學(がく)に男爵家の御(お)嬢(じよう)様(さま)が居るとは、格好の餌食だと思った。でも今では……こんなに可(か)愛(わい)らしい表情を僕(ぼく)に見せてくれる。僕(ぼく)の前だけでは、君(きみ)は一人の乙女になるんだ。嗚呼(ああ)、胸の時めきが心地良い。今、この強くて美しい女性は、僕(ぼく)だけのものだ……)

 

 文(ふみ)也(や)は実のところ、男としてやや自信が足りなかった。

 小柄で華(きや)奢(しや)で、お世辞にも逞(たくま)しいとは言えない体付きだ。

 文武でいえば紛(まぎ)れも無く文の属性である。

 そんな彼にとって、早(そ)芙(う)子(こ)のような女性は自分に釣り合っていると思えない。

 

 だが、彼女の表情や仕草を見れば自分を愛してくれているのだと解(わか)る。

 彼にとってそれは、至上の幸福に思えた。

 

『早(そ)芙(う)子(こ)さん、とりあえず身体を清めようか……』

『そ、そうだな。じ、順番はどうしようか?』

『こういうとき、よく見る芝居(ドラマ)では女性に先に行かせるものだが……』

『そうなのか……しかし、一人脱ぐのは少し……緊張してしまうな……』

 

 二人はお互いに緊張しており、却(なか)々(なか)寛(くつろ)ぐことが出来ないでいた。

 浴室で汗を流す順番すらも決めかね、無為な時が流れる。

 暫(しばら)くして、早(そ)芙(う)子(こ)が一つの提案をしてきた。

 

『あのさ……一層、一緒に流し合わないか?』

『つまり……二人一緒に入るってことかい?』

『駄目……かな……?』

 

 正直、文(ふみ)也(や)にとっては気が退けた。

 早(そ)芙(う)子(こ)の体付きの美しさは服の上からでも判(わか)る。

 鍛えられた肉体美は、脱げば嘸(さぞ)かし凄(すご)いのだろう。

 一方、文(ふみ)也(や)は自分の貧弱さを自覚していた。

 

 しかし、文(ふみ)也(や)は考える。

 早(そ)芙(う)子(こ)もまた、一糸纏(まと)わぬ自分の姿を曝(さら)すのは恥ずかしいのだ。

 つまり、心情的な立場は同じだろう。

 ならば、ほんの少しの恥を甘んじて受け、彼女の気持ちを少しでも楽にしたい。

 

『解った。一緒に行こうか』

『あ、ありがとう……。じゃあ、脱ごうか……』

 

 二人は互いに見つめ合い、少しはにかんだ様に笑い合いながら衣服を脱ぎ合った。

 そして浴室へと向かう。

 

『浴室は実家と然(さ)程(ほど)変わらないな』

『そ、そうなのかい?』

 

 二人が入った部屋は高めの水準の宿泊料金が設定されていただけあって、備え付けられた浴室は結構な大きさだった。

 それに対する印象の違いは、二人が育った環境の差を思わせる。

 男爵家とはいえ、実業で成功している水(み)徒(と)端(はた)家の令嬢にとって、庶民が思わずわくわくしてしまう浴槽もそれほど特筆するものでもないらしい。

 

『先に身体を洗わないとな』

『うん、そうだね』

『湯船には……あまりゆっくり浸(つ)からない方が良いのか?』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)の目線は文(ふみ)也(や)の身体の下を向いていた。

 或(あ)る一箇所、様子が変わったことに気が付いたのだろう。

 

『ああ、ごめんよ。もう勃(た)ってしまったんだ。早(そ)芙(う)子(こ)さんの裸を見てしまうと、どうしても我慢出来なくて……ね』

『……じゃあ早く済ませて寝台(ベツド)に行こうか……』

『そうしてもらえると助かるよ』

『じゃあ、洗うぞ……』

『洗うって、え? 早(そ)芙(う)子(こ)さん、何をしているんだい?』

『ん? 何って、文(ふみ)也(や)を洗ってやろうと思ったんだが……』

『あの、早(そ)芙(う)子(こ)さん、そういえばさっき流し合うって言っていたけど、もしかして洗い合うつもりなのかい?』

『駄目か? 私(わたくし)は文(ふみ)也(や)を洗ってあげたいし、文(ふみ)也(や)にも洗ってもらいたいんだが……』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)が見せた思わぬ積極性に、文(ふみ)也(や)は戸惑いと興奮を同時に覚えた。

 そんな彼に構わず、早(そ)芙(う)子(こ)は綺(き)麗(れい)な両手に泡を付け、文(ふみ)也(や)の身体を這(は)わせる。

 

『うぅっ、早(そ)芙(う)子(こ)さん……!』

『どうした、文(ふみ)也(や)?』

『早(そ)芙(う)子(こ)さん……気持ち良い……』

『ん? 私(わたくし)に洗われるのが、か?』

『ああ。他人に、何より早(そ)芙(う)子(こ)さんに触られると……それだけで普段と……自分でやるのとはっ……感覚がっ……違うからぁ……』

『そうなのか、それは嬉しいな。そんなつもりは無かったんだが、そういうことなら念入りに洗ってやるからな』

 

 泡立った石(せつ)鹸(けん)が早(そ)芙(う)子(こ)の掌(てのひら)を滑らせ、文(ふみ)也(や)の全身を心地良い感覚に包んでいく。

 そしてそれは両腕を、胸を、腰から脚をそれぞれ洗っていき、そしてとうとうその場所に差し掛かる。

 

『うっ……!』

『あ、すまん。もしかして、ここは痛かったりするのか?』

『いや、そうじゃなくてっ……敏感だから……特に気持ち……っ……良くてっ……』

『ふふ、そうか。だったらここは特に丁寧に……』

『はぁぁぁぁっっ……!』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)の指が睾(こう)丸(がん)と竿(さお)を包み、優しく滑らせる。

 指は勃起した先端に差し掛かろうとしていた。

 

『これは……剥(む)いて洗った方が良いか?』

『っ……!』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)が何気なく発した言葉に、文(ふみ)也(や)は棘(とげ)に刺された様な羞恥を覚えた。

 彼女は知らず知らずのうちに、男にとっての劣等感――包茎を指摘してしまったのだ。

 

『早(そ)芙(う)子(こ)さんっ……! そこは……自分でやるから……』

『どうしてだ? これ、後で使うんだろう?』

『その……情けないんだ……。僕(ぼく)のは……見てのとおり……あまり立派じゃないから……』

『何を言っているんだ?』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は優しい微(ほほ)笑(え)みを浮かべて、羞恥に赤く染まった文(ふみ)也(や)の顔を見上げる。

 

『文(ふみ)也(や)のこれ、可愛くて私(わたくし)は好きだぞ。正直、実物を見るまでは怖かったんだ。自分の中に入れるものが何か悍(おぞ)ましい怪物みたいなものだったらどうしよう、ってな。でも、文(ふみ)也(や)のなら大丈夫そうだ。文(ふみ)也(や)と同じで、控えめで、紳士的で、優しそうで……。これなら初めての私(わたくし)でもなんとか受(う)け容(い)れられそうだ。安心したよ』

『そう……なのか……』

 

 文(ふみ)也(や)にしてみれば、あまり褒められたような気はしなかった。

 しかし、では逆に早(そ)芙(う)子(こ)を威圧したかったのかと言われれば、そんなことは断じて無い。

 ならばここは、素直に受け取っておこう。

 そして、そんな早(そ)芙(う)子(こ)と汚いもので交わらない為にも、確(しつか)りと剥いて洗ってもらおう。

 

『解った……剥いて……隅々まで洗ってくれないかい……?』

『ああ、大丈夫、優しくするからな』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)の手が文(ふみ)也(や)の包皮を慎重に剥いていく。

 痛くなかったといえば嘘(うそ)になる。

 だが、文(ふみ)也(や)はなんとか堪(こら)えた。

 これからおそらくは早(そ)芙(う)子(こ)も、最初は痛みを我慢するだろう。

 それを思えば、この程度のことで弱音を吐く訳には行かなかった。

 何より、手付きから早(そ)芙(う)子(こ)の優しさと愛情が充分に伝わってくる。

 

『早(そ)芙(う)子(こ)……さん……っ』

『ん? 加減はどうだ? 痛くないか?』

『大……丈夫……。それより……それ以上するとっ……!』

 

 文(ふみ)也(や)の陰茎(ペニス)から次第に痛みが消え、別の感覚が込み上げてきた。

 これ以上触られると、暴発してしまう。

 

『だ、駄目だ早(そ)芙(う)子(こ)さんっ……! で、出ちゃう……!』

『え?』

『うううっっ……!』

 

 文(ふみ)也(や)は早(そ)芙(う)子(こ)の目の前で射精を迎えた。

 小さな亀頭の鈴口から飛び出した精液は早(そ)芙(う)子(こ)の手に、そして顔にも掛かる。

 

『ご、ごめん早(そ)芙(う)子(こ)さん』

『もしかして……イッたのか? これが……精液なのか?』

『本当にごめん。早(そ)芙(う)子(こ)さんの顔、汚しちゃった……』

『いや……』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は自分の顔に付いた文(ふみ)也(や)の精液を愛おしそうに掬(すく)い取(と)った。

 

『初めて見た……。これが精液……。男が気持ち良くなって、女との間に愛の結晶を作る為に出す……。文(ふみ)也(や)は私(わたくし)の手で気持ち良くなってくれたんだな……嬉しいよ』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は微笑みながら、再び石(せつ)鹸(けん)液(えき)を手に付けて精液を洗い落とし、そして文(ふみ)也(や)の陰茎(ペニス)を掌で包み込む。

 

『そ、早(そ)芙(う)子(こ)さん!?』

『汚れてしまったからな、ちゃんと洗い直さないと……』

『ま、待って! イッたばかりはっ……より敏感だからっ……!』

『あ、そうなのか? すまない。じゃあもう少し、細心の注意を払ってうんと優しく……』

『はぁ……はぁ……ありがとう……』

 

 途中で暴発はあったものの、文(ふみ)也(や)の身体は早(そ)芙(う)子(こ)の手で極楽に導かれつつ洗われ終えた。

 攻守交代、今度は文(ふみ)也(や)が早(そ)芙(う)子(こ)を洗う番だ。

 

『さあ、文(ふみ)也(や)。今度は文(ふみ)也(や)が私(わたくし)を洗ってくれ。その……好きなように……触って良いからな……?』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は文(ふみ)也(や)の前で腕を拡(ひろ)げて胸を張り、その抜群の肉体美を見せ付ける。

 そのあまりの素晴らしさに、文(ふみ)也(や)は気後れしてしまう。

 

『凄い……』

 

 文(ふみ)也(や)は固(かた)唾(ず)を呑(の)んだ。

 この身体を今から好きな様に触れる。

 後で抱くことすら出来るのだ。

 まさに誰もが羨(うらや)む、男冥利に尽きる僥(ぎよう)倖(こう)だ。

 

『で、では……』

『んっ……』

 

 文(ふみ)也(や)は掌に泡立てた石鹸を付け、早(そ)芙(う)子(こ)の身体を優しく触る。

 彼女も文(ふみ)也(や)の手を敏感に味わっているのか、時折甘い吐息を漏らす。

 胸を、脇を、太(ふと)股(もも)を、文(ふみ)也(や)は丁寧に洗っていく。

 

『ああ……これは確かにっ……気持ち良い……な……』

『早(そ)芙(う)子(こ)さん……凄く綺麗だ……』

『ありがとう……文(ふみ)也(や)……』

 

 文(ふみ)也(や)の手を柔肌の感触が包む。

 それは許しの抱擁に思えた。

 肌と肌が触れ合うと共に、もっと奥の何かが互いの感情を確かめ合っている。

 

『あぁ……っ……文(ふみ)也(や)……』

『早(そ)芙(う)子(こ)さんっ……』

 

 早(そ)芙(う)子(こ)は感じている。

 彼女の身体は、心は、今自分のものだ。

 そう思うと、文(ふみ)也(や)は堪(たま)らなく興奮した。

 出したばかりの陰茎(ペニス)は再び硬さを取り戻していた。

 

『文(ふみ)也(や)……なんだか私(わたくし)、我慢が出来なくなってきたよ……。文(ふみ)也(や)も……そうだろう?』

『ああ……』

『続きは上がってから……寝台(ベツド)で……、な?』

『うん、そうしようか。僕(ぼく)も……待ちきれないよ』

『ふふ、そうか。文(ふみ)也(や)、向こうで沢山愛してくれ……よ?』

 

 二人は身体を流し、浴室を後にした。

 これから二人は初めての目合いへと向かう。

 今(こ)宵(よい)、この部屋は二人の愛で埋まるだろう。

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