簡素な部屋である。
備え付けられているのは一人用の寝台と、椅子と小卓、食事を差し入れる為の小窓、それから大型のモニターのみであった。
一応別室として便所とシャワー室が備えられており、地下の独房としては充実している方だろうが、凡そ男女が一週間愛を睦み合う場ではない。
二人はあくまでも囚われの身――そう示しているかの如き内装であった。
そんな地下房に粗末な寝台が軋む音が響いている。
娼也は呼吸を荒らげ、正常位で早芙子と交わっていた。
顔を真っ赤にして呼吸を荒らげながら早芙子を懸命に突く娼也と、無表情のままそんな彼を見上げている早芙子が残酷なまでに対比されていた。
「はぁっ、はぁっ……! 早芙子さんっ、早芙子さんっ……!」
「稚拙な腰使いだな。全然良い所に当たらない。そんな温い動きで浅い所を撫で回されても不快なだけだ。もっと奥まで激しく突けないのか? 貴様の情けない陰茎では届かないのか? 貧弱な力ではそれが限界なのか? 無様だな」
「うぅっ、早芙子さん……!」
「呼ぶなと言っている、気色悪い。全く、こんなことを一週間も続けるのか。嫌になるな……」
娼也は腰を動かしながら、嘗ての早芙子と重ね合わせていた。
あの時はちゃんと感じてくれたではないか。
一緒に腰を動かし、一緒に絶頂を迎えてくれたではないか。
「貴様、まさか昔は感じていたとでも思っているのか?」
図星を突く言葉が胸に刺さった。
同時に、背筋に奇妙な電流が奔る。
「はぁ、はぁ、早芙子さんも……そう……言っていたじゃないか……」
「演技に決まっているだろう。貴様に恥を掻かせないように気を遣っていたんだよ。一応、あの頃は貴様を愛していたからな。だが、どうにも甘やかし過ぎたようだ。何度も交わった癖にちっとも成長していない。益々貴様への失望が深まるばかりだよ」
「そんな……」
「ああ、もう莫迦莫迦しいな。さっさと終わりにしよう」
早芙子は吐き捨てる様にそう言うと、両手の指を娼也の乳首に伸ばしてきた。
同時に、膣で陰茎を締め上げて自らも動き始める。
「うぁあっっ! あぐっ! そ、早芙子さん駄目っっ!」
「ただでさえ貴様は昔から感じやすかったからな。このみっともない乳首、麒乃神殿下に随分開発していただいたと見える。ほら、こうして指先でカリカリ弄ってやると堪らないんだろう? さっさとイケ! 雑魚陰茎も膣穴で締め上げてやるから! 獅乃神様に鍛えていただいた膣穴に負けて無様にお漏らし射精しろ!」
「あああっっ! 駄目!! 早芙子さん、やめて! イク!! イッちゃうからぁっ!!」
「やめるかこの屑が! イケ、ほらイケよ!」
「ふぐうううううっっ!!」
娼也の陰茎が激しく脈打ち、鈴口から精液が漏れ出る。
同時に、早芙子の膣穴は彼を拒絶する様に陰茎を吐き出した。
中出しを許されなかった精液がポタポタと彼女の股に零れる。
「はぁぁっ……あぁぁ……」
娼也は強烈な脱力感を覚え、早芙子の上に倒れ込んだ。
それは嘗て、事を終えた彼が彼女に身体を預けていたのと同じ仕草だ。
あの頃は精根尽き果てた彼を彼女は優しく抱き留めてくれた。
しかし今は、娼也は頭上で露骨な舌打ちが鳴るのを聞いた。
「っ、退け! 穢らわしい!」
娼也は激しく押し退けられ、寝台から転げ落ちた。
あまりの無体な扱いに、津波の様な惨めさが押し寄せる。
しかしそんな彼に、早芙子の態度は容赦が無かった。
「何をしている。貴様の汚らしい精液で私の体が汚れてしまっただろう。舐めて掃除しろ、この愚図が」
「そ、そんな……」
「なんだ、文句があるのか? 貴様は少しでも私の気を惹かねばならん立場だろう。別に、私はこのまま獅乃神殿下にお仕えしても構わんのだ。というより、貴様と一緒になるくらいならその方が遙かに望むところと言える。寧ろこれは貴様に少しでも可能性を残してやろうという慈悲のつもりなのだがな」
早芙子は身体を起こし、寝台に腰掛けて股を開いている。
確かにそこには、膣内に一滴たりとも辿り着けなかった娼也の精液が零れていた。
「薄い精液だ。量も少ないし、大した労働じゃないだろう。さっさと綺麗にしてくれ」
「うぅ……!」
娼也は今まで、麒乃神から散々口内射精されている。
精液を舐める、という行為自体は初めてではない。
だが、自分のものは経験が無かった。
女性との性行為の末に外へ出したそれを舐めさせられるのは、両性具有の主のそれとはまた異なった惨めさを味わわされる。
(うぅ……確かに薄い……。御姉様のとは全然違う……)
娼也は早芙子の股に舌を這わせ、精液を舐め取る。
その頭上で、彼女の顔がまたしても不快感に軋むのを感じていた。
「ああ、気持悪い……。舐め取ったらさっさと離れてくれ」
早芙子の足が娼也を突き飛ばした。
娼也は再び冷たい床に転げる。
「今日の交わりはこれで終わりだな。シャワーでも浴びてさっさと寝るとしよう」
その時、壁に掛けられていた大型ディスプレイが点灯した。
そこには一人の美女が映し出されていた。
『はぁい、敷島ちゃん。どうやら記念すべき再会一回目の目合いは終わったみたいね』
「貴龍院殿……」
貴龍院皓雪――彼女よりも先に獅乃神叡智の近衛侍女となっていたゴシックロリータ服の美女である。
何やら捉えどころの無い、謎めいた雰囲気を含んだ笑みを湛えている。
『敷島ちゃん、一応言っておくけれど、貴女達の様子は此方から具に観察させてもらっているわぁ。獅乃神様からの言付けを破ることが無いようにね』
「解っている。だからつい今し方、不本意ながらこの男と交わったところだ。ちっとも気持ち良くなかったがな」
『それは獅乃神様と比べてしまうからそうなるのよ。あの御方と比較するのは流石に酷というものよぉ』
「それもあるだろうが、差し引いたとしてもこの男は最低だぞ。付き合っていた頃から変わらない、最低の目合いばかり経験させられてきたんだ」
『でも敷島ちゃん、獅乃神様とその男以外は知らないでしょう?』
「では、貴女はどう思う? この男、いつも自分だけ私に無責任中出しを決めたら力尽きてさっさと寝てしまうんだ。私に甘える様に抱き付いてきてな。それだけじゃない。回を重ねる度に私への甘えは酷くなる一方で、最後の方は私の胸に顔を埋めながら『ママ、ママ』などと鳴きながら喘ぐ始末だったんだぞ」
『それは……確かに酷いわねぇ……。貴女、能く我慢していたわぁ』
「一応、愛してはいたからな。男が弱さを見せるとき、強い女として受け止めてやらねばと思っていた。尤も、真に強い殿方を知ってしまってからはそんな気持ちも吹き飛んだが……」
『ご愁傷様ぁ……』
娼也は自分の情事を暴露されて居た堪れない気持ちになった。
確かに、あの頃は早芙子に自分の欲望と願望をぶつけ、甘え過ぎていたところもあるだろう。
だがそれを、見ず知らずの人間と一緒に笑いものにするのは酷いではないか。
最早嘗ての、優しくて誇り高い早芙子は居ないのだろうか。
『とはいえ、あの御方からの言付けはただ交われば良いというものではなかった筈よぉ。起きている時間はなるべく睦み合うこと、忘れないようにねぇ』
「くっ……! 貴女も意地が悪い。この件も、元々は貴女の提案だったな……」
『それはそうだけれど、最終的には獅乃神様にも御了承頂き、あの御方の御命令という形で伝えられているわぁ。である以上、あの方に絶対服従を誓う身として、振る舞い方は一つではないかしらぁ?』
「……仕方が無いな……。おい屑、こっちへ来い」
早芙子は自分が腰掛ける隣を手で叩いた。
嘗ての彼女からは想像も付かない乱雑な態度で誘われた娼也だが、それでも彼は希望を棄てられなかった。
涙を堪え、彼女の隣に身を寄せる。
「おい勝手に密着するな」
『敷島ちゃん、今から睦み合う相手にそれは無いんじゃなぁい?』
「ぐっ……!」
早芙子は不服そうに唸り声を上げると、娼也の背後から腕を回して胸に手を這わせた。
反対側の手も、反対側の胸に添える。
「取り敢えず、その感じやすい雑魚乳首を触ってやる。扱きたかったら勝手に扱け。貴様からは私に触れるなよ。この身体は獅乃神様の物、好きにして良いのはあの御方だけだからな」
早芙子はそう言うと、娼也のぷっくりとふくらんだ乳輪を親指と中指で押し広げた。
「うっ……!」
「こういう雑魚乳首がどう弄られると気持ち良いかは能く知っているんだ、身を以てな。こうやって乳首を強調する様に乳輪を拡げて、人差し指の爪先で狙い撃ちにすると……」
「はぁぁぁんっ! あんっ! あぁぁんっっ!」
「雌みたいな声だな、気持悪い。以前からその気はあったが、やはり貴様は強い女に責められて女みたいに善がりたいマゾだということだな。昔は可愛く思えたものだが、今見ると情けなくて悍ましいな」
かりかりと、早芙子の白い指が素早い動きで娼也の乳首を愛撫する。
充分開発された両乳首は、弄られる度に娼也の背筋に快感の微弱電流を流し、もどかしさを前立腺に集めていく。
「あんっ、あんっ、あんっ、あんっっ!」
「陰茎もまた勃ってきたな。あの御方と同じ物とは思えない、申し訳程度の代物だが……」
嘗ての恋人に他の男と比較されて蔑まれながら雌の快楽を味わわされる――娼也は堪らない屈辱と興奮を覚えていた。
このままあっさりとイカされてしまってはあまりにも情けない。
しかし、早芙子の手技の前では耐えられそうもなかった。
「なんだ、そんなに腰を見せ付ける様に突き出して、もうイきそうなのか?」
「駄目ッ! 早芙子さんっ! あぁぁんっ!!」
「イきたければ勝手にイケば良いさ。雑魚の貴様はどうせ我慢など出来ないんだろう?」
「ああああああん!!」
娼也の陰茎から精液が漏れ出した。
勢いの無い、お漏らしの様な射精である。
「やはり情けない射精だな。あの御方とは比べるべくも無い。これでは精液が子宮まで届かないだろう。あの御方ならば腹が膨らむ程に注いでくれるのだがな……」
『確かに、そのお漏らしは無いわねぇ……。じゃあ私は当の獅乃神様と楽しみましょうか……』
「何……?」
いつの間にか貴龍院は服を脱ぎ、、ディスプレイにはもう一人の男が映っている。
第一皇子・獅乃神叡智――二米を超える長身に筋骨隆々とした体付きの、嘘の様に逞しい男だった。
『貴龍院よ、やはりこれは悪趣味ではないか? 姉上が行為を送ってきたのもそうだが、もう少し品のある方法は無かったものか……』
『品性を取繕おうとしては、却って肝心な部分が曖昧になってしまうことがありますわ。多少御下品でも、露骨なやり方ではっきりさせた方が良いこともあるのです。その方が、彼の未練にも確りと決着が付くというものですわ』
『そういうものか。ならば仕方が無いな……。では貴龍院、汝を抱いてやろう』
画面の中の獅乃神は貴龍院を押し倒した。
「ああっ、貴龍院殿、自分だけ狡い!」
早芙子は悔しそうな表情を浮かべ、画面に見入っていた。
『んおおおおおおおっっ! おっごおおおおおおおっっ!! じのがみざまああああっっ!! ぞんなっ、激し過ぎまずうううううっっふごおおおおおっっ!!』
獅乃神に激しく突かれる貴龍院は、先程までの澄ました様子とは打って変わって凄まじい喘ぎ声で啼き始めた。
どれ程気取っていた女でも一瞬にして一匹の雌豚に変えてしまう、そんな圧倒的な強い雄の性行為というものを、画面越しにまざまざと見せ付けられている。
(早芙子さんも……これをされたのか……! こんな風に……犯されて堕ちたのか……!)
隣を見ると、早芙子は物欲しそうな眼で画面に見入っていた。
片手が娼也の乳首から離れ、股間を弄っている。
「そ、早芙子さん……!」
「五月蠅いな。こんなのを見せ付けられて、我慢出来る筈が無いだろう。片方だけ弄ってやるだけ有難く思え。どうしても寂しければもう片方は自分で慰めるんだな」
「うぅ……!」
娼也は仕方無く、早芙子の身体との隙間から片腕を前に出して自分の乳首を弄る。
早芙子の反対側の手は秘部を激しく掻き回していて、卑猥な水音を立てていた。
「はぁ……はぁ……! 獅乃神様っ……! 私も……獅乃神様の逞しい逸物様で我を忘れて善がり狂いたい……! 一週間もこんな男で我慢しろだなんて……! うぅっ! ああぁ! 貴龍院殿はっ、もしや最初からっ、獅乃神様を独り占めするつもりでっ……!」
淫らに悶える早芙子の姿を見て、娼也は思い知らざるを得なかった。
嗚呼、彼女は最早身も心も獅乃神叡智のものなのだ。
自分の元に戻ってくる可能性など、最早微塵もありはしないのだ。
『んほおおおおおっっ!! イギまず!! 獅乃神様っ!! イガぜでいだだぎまずぅぅぅぅっっ!! オッゴオオオオオオッッッ!!』
「あああああっっ!! んおおおおおおおっっ!! 雌穴ぐちゅぐちゅしてイグうううっっ!!」
「ふぐうううっっ!!」
画面の中の女と、寝台の上の男女は同時に絶頂を迎えた。
尤も、三人は全員が全員、一人の強い雄によって敗北して淫らに咲き乱れる雌に過ぎなかった。