※この作品はR-18です。

日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝   作:坐久靈二

6 / 39
補 上

 逸(へ)見(み)樹(いつき)は反政府テロ組織「武(ぶ)装(そう)戦(せん)隊(たい)・狼(おおかみ)ノ(の)牙(きば)」に参画を決めた。

 今後、逸(へ)見(み)はその首領の都合の良い愛人、情婦として、その体を捧(ささ)げ続けるだろう。

 

 一方で、同じく有(ゆう)姫(き)という女を寝取られたもう一人の男は全く別の運命を辿(たど)った。

 とある大人物の邸宅、長く続く壮麗な回廊で、ヒールの乾いた音が響いている。

 彼にとって、目一杯のおめかしは己を愛してくれた掛け替えのない貴人への礼節であり、感謝であり、忠義であり、慕情である。

 

 この廊下の向こう、豪(ごう)華(か)絢(けん)爛(らん)な寝室では、今(こ)宵(よい)も彼の主が胸を時めかせて彼を待(ま)ち侘(わ)びている。

 無論、それは彼にとっても同じであり、この世で最も愛(いと)しき人と目合い語らう部屋へ向け、どうしても足早になってしまう。

 

 そんな、心此(こ)処(こ)に在らずな彼は、一人の男とぶつかってしまった。

 一六〇糎(センチ)足らずの華(きや)奢(しや)で小柄な体にフリフリの女装が好(よ)く似合っている彼とは対照的な、二米(メートル)を優に超える偉丈夫である。

 体格差にヒールのバランスの悪さが重なり、彼は一方的に転ばされてしまった。

 

「大丈夫か?」

「も、申し訳御座いません」

 

 相手が相手なので、倒れた彼の方が即座に謝罪を口にした。

 偉丈夫は黄(こう)櫨(ろ)染(ぜん)色(しょく)の肌に白(はっ)金(きん)色(しょく)の長髪という浮き世離れした色彩に、身震いするほど美しい顔で彼を見下ろしている。

 皇(こう)國(こく)に住まう者ならば誰でもその顔を知っている。

 日常的に男の肖像画を見て生活しているからだ。

 

「不注意でした。大変申し訳御座いません、皇太子殿下」

「良い良い、気にするな」

 

 皇太子はその青い唇からうっとりするほど心和(な)ぐ声を奏でた。

 柳緑と深紅の虹(こう)彩(さい)、澄んだ重瞳に、女性と見(み)紛(まが)う彼の姿が鏡映しになっている。

 

「立てるか?」

「はい。御(お)気(き)遣(づか)いありがとうございます」

 

 そう言いながらも立ち上がる際に体勢を崩した彼の手を、皇太子は咄(とつ)嗟(さ)に掴(つか)んだ。

 

「あ、すみません……」

「怪(け)我(が)をせぬように確(しつか)り前を見て歩くが良い。傷が出来ては姉上が悲しむぞ」

「はい。ありがとうございます」

 

 彼は一礼し、この館の主である皇女の許(もと)へと向かった。

 

⦿

 

 皇太子はこの日、姉である第一皇女に遊びの誘いを受けていた。

 遊びと言っても、彼女のコレクションを肴(さかな)に酒を楽しみながら、天下国家のあるべき姿について意見を交換するという雲上人の嗜(たしな)みに興じるのだが。

 彼とぶつかったのは、一(ひと)頻(しき)り話し終えて帰る最中であった。

 

「あの子、今日も呼び出されたのですか。お酒で気分が高揚なさっているとはいえ、弟君が帰るのも待たずにとは……。第一皇女殿下も随分とお気に入りの御(ご)様(よう)子(す)ですねえ……」

 

 ゴシックファッションに身を包んだ近衛侍女が皇太子に語り掛けた。

 皇太子は丸太の様に太い腕を組み、立ち去った女装子の後ろ姿を眺めている。

 

「あれほどの美貌の持ち主だ。収まるべき処(ところ)に収まったと言うべきだろう。寧(むし)ろ、前の女に捨てられたというのが全く理解出来ん」

「まあ、女性の好みは色々では御座いますが、ナヨナヨした弱さを嫌う方は多いですからねえ。その御(お)方(かた)にとっては論外だったのでしょう」

「しかし、元はといえば幼い頃より想(おも)いを寄せ合った仲だというではないか。それを昨日今日新規に現れた何処(どこ)ぞの某(なにがし)へ乗り換えるなどということがあるか? それとあの美貌を合わせて尚(なお)、強い弱いだの勝ち組負け組だの、そんな誰も彼も大して変わらぬどうでも良い要素の方が重いというのか?」

 

 心底解せぬ、といった様子で皇太子は首を捻(ひね)った。

 そんな主に、近衛侍女が更なる噂(うわさ)話(ばなし)を告げる。

 

「よくある話ですよ。彼を捨てた方は極端ではありますがね。聞けばその御方、彼を捨てて得た財閥の御曹司も敗戦を機にまた捨てて、最終的には鷹(たか)番(つがい)公爵閣下へ嫁いだそうですよ」

「鷹(たか)番(つがい)公爵家? あの男の処へか? 鷹(たか)番(つがい)家の嫁選びには今更驚かんが、よりにもよってあの男を選んだのか? 言っては難だが、男を見る目が無さ過ぎるのではないか?」

「ええ。結局鷹(たか)番(つがい)卿(きよう)はまた新しい女性に目移りして離婚。塵(ごみ)同然に捨てられたその御方、今では夜の商売で体を売って糊(こ)口(こう)を凌(しの)いでいるそうですわ」

 

 その顛(てん)末(まつ)に、皇太子は肩を竦(すく)めて反対側へ首を捻った。

 

「下々の男と女はよく解(わか)らんな……」

「鷹(たか)番(つがい)卿をして下々と評せるのは貴方(あなた)様くらいで御座いましょうが……」

 

 頭を捻る皇太子と、その後に続く近衛侍女が廊下を歩いて行く。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 小さなノック音を静寂に鳴らす。

 僕(ぼく)はこの瞬間を何十回繰り返しても胸の高鳴りを抑えられない。

 

「入りなさい」

 

 鈴を転がすような美しい声が扉の向こうから返される。

 皇太子といい彼女といい、貴人の声というものは聞くだけで夢心地にさせる。

 

「失礼します」

 

 扉の向こうで待つ第一皇女殿下は、間違い無く皇(こう)國(こく)で最も美しい御方だ。

 畏れ多くも僕(ぼく)は彼女を「御(お)姉(ねえ)様(さま)」と呼ばせて頂いている。

 

「此(こ)方(ちら)へいらっしゃい。私(わたくし)の可(か)愛(わい)い望愛(のあ)」

 

 頤(おとがい)望愛(のあ)、それが御姉様に賜った僕(ぼく)の新しい名だ。

 嘗(かつ)ての「畔(くろ)柳(やなぎ)紀(のり)明(あき)」という名は、逸(へ)見(み)樹(いつき)という間男に幼馴染の望(もち)村(むら)有(ゆう)姫(き)を寝取られて以来呪われてしまった。

 直々に新しい名を下さった御姉様には感謝しか無い。

 あの二人は今頃どうしているだろうか。

 僕(ぼく)が雌の喜びに目覚めたと知れば、二人して嘲笑するのだろうか。

 

 天鵞絨(びろうど)の幕が垂れる豪(ごう)奢(しや)な寝具に座って細い指先を弄(もてあそ)び手招く御姉様に促されるまま、僕(ぼく)は彼女の傍らに寄り添って腰掛ける。

 

「ごめんなさいね、このところ毎日御前を呼び出してしまっていますね」

 

 お姉様の白い手が僕(ぼく)の内(うち)腿(もも)を優しく摩(さす)る。

 それだけで僕(ぼく)は快感に声を漏らしてしまう。

 

「可愛いですね。そんな御(お)前(まえ)だから、私(わたくし)もつい会いたくなってしまうのですよ」

「あ♡ 御姉様……♡」

 

 体が密着し、身長一七七糎(センチ)あるという御姉様の体格に華奢な僕(ぼく)はつい圧倒され押し倒されそうになる。

 ふふ、と彼女は笑い、腰に手を回して僕(ぼく)を支えた。

 

 長く、さらさらの絹のような黒髪が僕(ぼく)の敏感な肌に触れる。

 

「あっ、あっ……。御姉様、御姉様……」

「モジモジしちゃって……。少し愛(め)でてやるだけですぐこれですね」

「だって御姉様、素敵だから……」

 

 うっとりした夢心地のままお姉様の瞳を見上げる僕(ぼく)を、彼女はぐいと抱き寄せ、唇を重ねた。

 自らに配膳された極上の果実を味わい尽くすように舌を絡められると、僕(ぼく)は嬉(うれ)しさで胸が一杯になる。

 更に、弾力のある豊かな乳房が布越しに圧し当てられ、僕(ぼく)は愈(いよ)々(いよ)耐え難い疼(うず)きに身(み)悶(もだ)えし始めた。

 

 二人の唇が離れ、唾液が名残惜しそうに糸を引く。

 

「んっ……」

「うふふ、いつまで経(た)っても初心(うぶ)な坊やですね。トロンとした目で呆(ほう)けちゃって……、本当に可愛い♡」

「はぁ、はぁ……。御姉様、僕(ぼく)もう……」

「欲しくなってしまいましたか?」

「はい、ごめんなさい……」

 

 御姉様の寵(ちよう)愛(あい)を受ける者は、ある特別な誉れを賜ることが出来る。

 

 彼女もまた、皇太子殿下とは異なる形で幻想的な身体的特徴を有する神聖な御方だ。

 数多くの『日本』を吸収してきた皇(こう)國(こく)だったが、他のどの時空もこのような特殊性を備えた方を多く有する皇室は無かったそうだ。

 もちろん、僕(ぼく)の元いた新(ネオ)羅(ロー)馬(マ)大(だい)韓(かん)帝(てい)國(こく)連邦日本王国の倭(わ)王(おう)光(みつ)信(のぶ)殿下らも同じだった。

 

 特別な方との特別な目合い。

 

 それを知ってしまったら、もう普通には戻れない。

 もう御姉様に与えられる悦(よろこ)び以外で満足なんてできない。

 

「では、いつものようにオネダリをしてみなさい」

「はい……♡」

 

 僕(ぼく)は寝台(ベッド)に仰(あお)向(む)けとなり、フリルのたっぷり付いたスカートを託し上げる。

 そして女性用のパンティとガーターベルトにギチギチと抑え込まれながら必死に勃起する弱々しい陰茎(おちんちん)を彼女に晒(さら)した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。