※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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お忍びデート1 小姑二人

 先日もまた会長と風紀委員長の逆鱗に触れた。ちゃんと誤っておかないと、俺の高校ライフに暗雲が立ち込めてしまう。戦々恐々として部屋に入るや、ひたすら頭を下げまくる。意外にも生徒会長はさほど怒ってはいなかった。

 

「突入の件はいいわよ。お父様を助けてくれて個人的には感謝しているわ。でも、レイド戦でのあなたのやらかし、これ位で帳消しには出来ない。もっと尽くして、お姉さんに誠意をみせなさい。それから謝罪するならしっかり相手の眼を見る事。そわそわしてると二心ありと誤解されるわよ」

 

 流石は女王様気質、しれっと俺を配下に置こうとしている。それでいて、俺を矯正してくれる度量もある。あなたの犬になりますと言えば許してもらえるかもしれない。

 ただ『記憶』スキルも善し悪しだ。女装した俺は、更衣室で二人の裸体を鑑賞している。生徒会長の裸身は、完熟間際の美味しさで、堕神が真っ先に目をつけるのも納得の艶やかさだった。それが頭にちらついてしまい、顔をまともに見れなかった。それどころか『透視』したくて堪らなくなる。でも彼女相手ではすぐバレてしまう。社交辞令で気を散らす。

 

「お忙しい所、市長には病院にまでお見舞いにきていただきました。その上、お願いまで叶えてくれそうで感謝しています」

「おい、摘花。御上は何を頼んだんだ。どうせろくな願いではあるまい」

 

 俺の謝罪を苦々しく聞いていた風紀委員長が口を挟んだ。何故か真剣を持ち込んでいる。

 

「それがこの子、お嫁さんを無制限に欲しいってお願いしたのよ。そしたら水崎先生の方が乗り気になって……」

「破廉恥な奴め、全然反省していないようだな。成敗してやる」

 

 もちろん立法と地方行政は別物だ。だけどお子様な俺は区別できない。それに市長は反対のようだが構うものか。言った言わないで既成事実にしてしまおう。

 

「クラスの女子に話したら、意外と反応良かったですよ。朱美と詩央は確定だし、菫先輩も誘ってみます。生徒会長と風紀委員長もいかがですか」

「この痴れ者が!」

 

 求婚したのにあんまりな反応が返ってきた。風紀委員長は刀に手をかけ、生徒会長からは説教を喰らう。

 

「プロポーズは女の子にとって生涯の思い出なのよ。軽々しく言っては駄目。それに私の夫になりたいならば、跪いて誓いなさい、誰よりも愛して大切にすると。わたしの事をいつも一番に考えて、なんでも言う事を聞きなさい。そしたら少しだけ考えてあげる」

 

 生徒会長は重婚には反対だが、法案が通ってしまえば受け入れる態度だ。悪法も法なりというやつだろう。ただし正妻は自分だけで、他は格下のお妾さん扱いしそうだ。そして自分で夫を管理する気満々だった。他の奥さんのとの褥の回数まで指示しそうな気がする。愛が重そうな人だ。

 風紀委員長は懸命に怒りを抑えていた。何故なら重婚の人数制限の枠を外す根拠として、彼女の父親、故、神瞑無三総帥があげられるからだ。彼は探索で得た膨大な資産を背景に、お妾さんを百人抱えていた。そして全員を満足させていたのは有名な話だ。探索者として大成すれば、精力も増強される、子供をたくさん作れば溜め込んだ資産も分配される、よって男女の機微はあまり法で縛らず、水が流れる如く、自然に任せるべしとする考えもあった。

 剣風姫は露骨に話題を変える。

 

「そう言えば弾道弾の件、何で知っていた。水崎先生から聞いていたのか」

 

 国はしらばっくれているが、水崎議員が己を道連れに、沙織と星堂さんを爆殺しようとしたのは公然の秘密だった。誰から聞いたのかは、俺と流果さんの愛の機密事項だ。

 

「虫の知らせですかね。オーロラが降って来た時、他にも空から降って来るかもって思ったんですよ。あの日は感が冴えわたっていました。綺麗な神様のお導きかもしれません」

 

 今度は風紀委員長の顔を真っすぐ見て話す。俺は彼女のマッパを『記憶』している。ツンとした乳首、うっすらと恥丘を覆う夜の若草、隠し切れない陰裂が頭に浮かぶ。武術に身を捧げた女性美の極致だった。彼女も俺に全裸を見られた事を思い出したのだろう。赤面して顔を背けてしまう。

 弾道弾の事は政府からもギルドから聞かれたが、これで誤魔化した。実は死中の探索者が、感を頼りに格上のモンスターを倒したとか、未踏の迷路を突破した話はよく聞く。ダンジョンコアに届いた事も、予感があったで通した。古武術にも同様な体験は伝わっているはずだ。剣風姫を黙らせた。勝った。

 

 

「あなたはこれから野外学習が多いようだから、お姉さん、心配だわ。市役所を手伝ってくれたら嬉しかったのに。お父様がっかりしてらしたわ」

「お前、摘花の配慮を無碍にしたのか。課外活動で何をしようとしている?」

 

 剣風姫は友誼に厚い。友人をとても大切にする。その友人が軽く扱われるのは、自分が軽んじられるのと同じだ。部屋の温度が下がった気がした。

 

「それが、孤児院のお手伝いをするそうよ。親を亡くした子供たちの役に立ちたいですって。本当に無償の奉仕になるわ」

「ほう、実践で償おうというのか。反省しているというのは噓ではないようだな」

 

 俺がボランティア活動を始める事を、二人とも厚意的に捉えている。張りつめた空気が緩んだ。斬られずに済んだ。いい事をすると自分に還ってくるというのはやはり本当だった。ダンジョンの女神さまに感謝しよう。それから最期に念を押された。これには魔女姫様も同意見のようだった。

 

「御上想夜、菫との交際、断じて認めん」

「菫はあなたに好意を持っているわ。でもそれに付け入らないで。あの子は誰よりも純粋で真面目なのよ。今のあなたでは釣り合わない」

「もちろんです、菫先輩は崇拝すべき偶像ですよ。付き合うなんて烏滸がましい。お二人の女神様に誓いますとも」

 

 俺は調子よく返事をした。実はこれから菫先輩とデートなのだ。逢引きは障害があってこそ燃える。小姑二人がうるさい、菫への愛がますます募った。

 

 

 

 神瞑弥生にとって、家族は修羅と同義だった。傲岸不遜、強さだけを求めた父親、そんなクズの寵愛を競う百人の愛人かつ母親。その泥沼から逃れるように、ひたすら剣に没頭した。父親が亡くなって清々した。だが因果は巡って、自分が総帥の座を継ぐことになってしまう。今度は異母兄姉の妬みと、欲望に塗れた門弟たちの眼差しに晒される事になった。

 摘花と菫とは幼い頃から知り合いだった。お互い家に縛られている事、同学年であり、同時期にダンジョンに選ばれた事で急速に親しくなっていく。自分を女の子扱いしてくれるのは二人だけだ。摘花と菫は彼女の心の拠り所になった。それに剣を極めようとする弥生と文を修める摘花、目指す道は違っていても、お互いを補完するよう馬が合った。

 純真無垢を絵にかいたような菫は庇護対象であり、夢でなりたかった自分でもあった。愛らしく天真爛漫な容姿と性格は、世の男性を虜にした。幸いにして彼女も選抜者となった。その特殊なスキルと合わせて身を護る事は出来るだろう。ところが御上想夜という異物が現れた。人当たりのいい性格と整った顔立ちだが、父と同じおぞましい臭いがする。奴は欲望と暴力の化身だ。女受けのいい容姿なだけに始末が悪い。

 ある種の植物や動物は生存や生殖のため擬態するという。彼も同じだ。儚げで純粋な容姿で庇護欲を誘う。そうやって女をおびき寄せると、内に秘めた眩しいまでの生命力で喰らうのだ。そこに悪意などない。遺伝子レベルの刷り込みだろう。

 菫が騙され、汚されると思うと気が狂いそうになる。わたしだって欺かれたのだ。誰にも見せぬと誓った肌を見られた。もう操を半分穢されたのと同じだった。昨晩も夢を見た。惨めに彼に敗れている。わたしは剥かれて哭いていた。これは父が女武芸者に行ったのと同じ仕打ちだ。試合ではわたしが勝つ。では死合ではどうか。彼とは三度共闘したが、三回とも私よりも先んじていた。魂が御上想夜を意識してしまう。だからあんな夢を見るのだ。

 

 

 

 摘花は今朝も市長の父親から、想夜を篭絡するよう急かされていた。一時期は制御の利かない彼の評価を下げていたが、ジョーカーとして見直したようだ。しかし、魔女姫様には自分を安く売るつもりはない。そして逃がすつもりもない。

 

「御上君、生徒会から処分を降します。素行不良が目立つあなたを、当分の間監察対象とします。定期的に出頭して現状を報告する事、そして生徒会業務を手伝って、罪を償いなさい」

 

 

 裸を見られた事、本当はもう怒ってはいない。思い出す度、内股になる。ちょっと恥ずかしい。だからペナルティを下す。生徒会長の権限で彼を呼び出して、言う事を利かせる。公私ともに注目されている彼女には、男の影はスキャンダルだ。これは学生指導に名を借りたデートでもあった。自分と同格の後輩が、生徒会業務を手伝うのは自然な流れだ。それに彼もまんざらではなさそうだった。幼馴染たちには悪いが、略奪してしまおう。いい女はいい男を侍らせてこそ相応しい。

 

 彼女にも隠しているスキルがある。『暗示』もその一つだった。スキル『暗示』は洗脳系の魔眼ではない。ちょっとした会話や仕草で気持ちを伝え、期待に応えて貰おうという、人間なら誰でも行っている習性、これをちょっと強力にしたものである。政治家を目指す彼女には必須の、そして絶対に隠さねばならないスキルだった。このスキルの保有を知られただけで、説得力のある彼女の言葉は軽いものになるから。幸いにして、『暗示』は想夜の『話術』等と同じくバッシブスキルだ。彼女は日頃よりその仕草に、言葉に『暗示』を乗せて、悟られないようスキルの向上を心掛けていた。特に言葉に『暗示』を乗せて放てば、言霊のような効果があった。魔力に敏感な御上想夜には相性がよく、面白いように言うことを聞いてくれる。

 このスキルが魔女姫様のカリスマの一端だった。しかし『暗示』がなくても、その美貌と相まって、彼女はカリスマ溢れる女性になったはずだ。そして想夜もその色香に誑かされて、忠犬になったかもしれない。

 

 夕垣摘花は発育のいい肉体と相まって、少女から淑女へと急激に変わりつつあった。男どもを誘引する強烈なフェロモン、振るいつきたくなる激しい曲線、生徒会長の立場が犯罪を誘発しかねない程の、いい女になりつつあった。男どもが群がってくる。疎ましく思うも、それは摘花にも準備が出来た兆しであった。女の情念が目覚める、自己に相応しい雄を求めずにはいられない。己以上に強く美しい相手をだ。そんな男が目の前に現れた。もう他の雄はどうでもいい、想夜への独占欲に囚われる。手中にするためなら、どんな手段も厭わない。囲いたい、彼の忠誠が欲しい。ご褒美はわたしの躰よ。不本意だが、他の女に貸し出す事もあるだろう。上に立つ者、独り占めは慎まねばならない。

 彼のお勤めが終わったら、優しく抱いて慰めよう。この身でもって他の女の臭いを消す、わたしの匂いに染め直してあげる。その時だけは年下の彼に子供のように甘えたい。

 

 

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