俺に家庭教師のお姉さんが出来た。お相手はもちろん流果さんだ。俺は先の港湾ダンジョン消滅で2週間ほど入院していた。授業の方は先生や委員長の雫子がフォローしてくれるが、流石に苦しくなってきた。雫子は部屋まで押しかけて面倒を見る気満々だったが、それはメイドさんに止められてしまう。病院に見舞いに来られた水崎先生は察したのだろう、俺に借りが出来たと思ったのか、院生の流果さんを家庭教師につけてくれたのだ。
彼女は雫子の家庭教師もやっていて、教え方も上手だった。今も俺の部屋で勉強を見てもらっている。今日はいつものメイド服でなく、涼やかな青髪に似合う白系統のノースリーブとアイボリーのワイドパンツの組み合わせ。知的な女子大生を演出していた。柔らかな布地に脚のラインが浮きあがる。流石気配り上手、俺のやる気を引き出してくれる。
「想夜様、関数の書式を覚えましょう。今日はこの五つ。そして数字と文字列を入力します」
キーボードを叩きながら二人の指が絡み合う。お互いが寄り添うように躰を寄せる。俺はさり気なくすんなりとした腰に腕を回すのだ。彼女は何も言わなかった。こうすると興奮して、血の巡りがよくなる、賢さが増す。モニターにはいくつもの関数、俺には顔文字に見える、が表示された。つまり顔を覚えればいいのだろう。文字や数字が変数となって表情が変わる。
流果さんが教えてくれるのは、必須科目の「情報」だ。プログラミングやネットワークについて学習し、コミュニケーションを取るための授業、要はスマホや電子マネーを正しく使い、AIに、俺より上手に文章を作成させるという、現代人には必要不可欠の、俺にとっては最も苦手な授業だった。その一方、院で情報工学を専攻している流果さんの専門分野でもある。
これまでは『記憶』で丸暗記して誤魔化してきた。だけど理解していないのだから応用が利かない。ますます授業が大嫌いになっていた。そもそも電波が発信できず電子機器が使えないダンジョンでは、こんなものは役立たずではないか。そんな俺に流果さんは嫌な顔一つせず、懇切丁寧に指導してくれる。彼女の厚意に絆されたのと、『知力強化』のおかげで、赤点は免れそうな所まで持ち直した。
流果さんは俺がやる気になって感激している。それに課題を早く終わらせると、ご褒美もある。俺はますますヤル気になった。家庭教師のお姉さんを抱き上げると、ベッドへとエスコートする。彼女はもう操を俺に捧げていた。
「ありがとう。流果さんが来てくれたので再履修せずに済みそうだよ。これからもずっと一緒勉強教えて欲しい」
「私は浅ましい人間です。それなのにこんなに可愛がってもらえるなんて。ずっとお側に置いてください」
家庭教師の発案も、それに志願したのも彼女という。恩人を助けるために、恩人を裏切った。彼女は俺を死地に送り出した代償に、俺の所有物になるという。
最先端の学問を学びながらも、流果さんはどこまでも古風でいじらしい。
「もっと流果さんから教わりたい。僕はあなたで女を知った。あなたを啼かして、もっともっと、大人になりたい」
「精一杯ご奉仕します。でも恥ずかしいのは嫌。優しくしてくださいまし」
メイドさんを抱くのは流果さんが初めてだった。それを彼女は童貞と処女の初体験と信じ切っている。爆発した俺の欲望を受けとめて、泣かされてしまった年上のお姉さんの設定だ。拙い知識で俺を導こうとしてくれる。僅かな時間を惜しむ様に脱がせ合った。少年を大人の女性が裸にしていく。丁寧に制服を畳もうとするも、俺は待ち切れない、爽やかな夏服を剥がしにかかった。
「想夜さまぁ~~~」
年下からの激しい求めに、歓声が上がった。もうお互いに躰を重ねている。彼女の身長は俺よりやや高い。細い肢体が俺の躰に纏わりつく。気づかずとも、適齢期の彼女は、年下の少年から色々仕込まれていた、大人の女は如何にして悦びを得るかを。促すように股間を擦りつけくる。そうすると陰門が開く。いつから濡れていたのだろうか。彼女はずっと待ち侘びていた。俺は深呼吸をする。逸物がするりと滑る。奥へ奥へとあるべき場所に鎮座した。
「ぁぁっ~、ぁぁっ~、あぁ~ああ~~~」
初めは蚊の鳴くようなか細く、やがて甲高い音色、だんだん大きく喘いでくる。白い歯が零れる、流果さんは優しいのがご所望だ。だから俺は動かない。その代わり、ペニスの先に全神経を集中させた。彼女の全てを受け止める。しっとりとした胎内の温もり、繰り返される肉ひだの収縮、高鳴る振動、乱れる吐息、その全ての震源が、ひくひくしている俺の逸物なのだ。
もっと愛して悦ばす、鼓動と呼吸に合わせるように、逸物が波動を放つ。流果さんが堪らずによがり出す。
「想夜様は残酷です。ふしだらになりそう。それならいっそ激しくして。ああ、目茶目茶にして慎みを奪ってくださいまし。それとも何かお話を。ああ、お願い、お願です、早く、はやく~~~」
俺は殆ど動いてない。だけど敏感になってしまった流果さんはもう限界だ。会話して気を逸らさないと、自分の方から達してしまう。それが淑女には耐えがたい恥辱なのだろう。だから俺から引導を渡されたい。淑女が年下に、焦らされての催促するのも奥ゆかしい。だけど傍から見れば年下の少年に溺れる、はしたない女そのものだった。
このまま逝かしてあげたかった。でも今日流果さんとは大切な話がある。これからお願いを耳に吹き込み、曇らせる。俺を本気で好きになった彼女には酷な話だ。
「美帆ちゃんを借りたい。二人切りになれるよう手を貸して」
「ああ~そんなの駄目。美帆はませているけど、まだ子供なの。いやよ、イヤッ~、ヤメテェ~~~」
こんなに愛して愛されているのに、彼は行為の最中に妹分を要求してくる。あまりにも身勝手、耐えがたき不節操、慎みが吹っ飛んだ。理性が崩壊して千々に乱れた。不安と悲しみ、そして悦楽が唇から溢れ出す。泣いてよがって、勝手に絶頂してしまった。話の途中だったけど、そんなに嫌だったのか。俺は愛撫を重ねながら、甘き目覚めを促した。勉強に身が入り過ぎて、時間が大幅に超過しそうだ。
「ううっ、あなた、我が儘言ってごめんなさい」
ダンジョンで襲われて窮地になった事、対抗策として美帆ちゃんから護身術を習いたいと説明する。美帆ちゃんとは以前、組手をする約束をしていた。それを果たす事も出来る。流果さんは恩人を助けて欲しいと、決死の覚悟で俺に躰を売ってきた。対価は俺に死ねだった。ところが肌を合わせるや、俺が死ぬのを何よりも恐怖した。そのトラウマが蘇る。流果さんは俺に顔を埋めて泣きじゃくった。
慰めの言葉は届かない。こんな時、俺に出来る事は一つだけだ。強引にわからせ、後悔を悦びで上書きする。俺もまだ物足りないのでちょうどいい。許しを請うて泣く彼女に、欲望の限りをぶちまける。性愛の奔流に呑み込まれて、流果さんは再び動かなくなる。こうやって妹分のメイドさんを差し出す事を承諾させた。
垂水沢邸では委員長が落ち着かない。彼女が帰ってくるのが遅い、雫子は気が気ではなかった。戻ってくるなり問い詰める。普段はねぎらいの言葉を忘れない優しいお嬢様であるのに。本当は自分が家庭教師をしたかった。彼と女性を二人きりにすると、間違いが起こるのは、身をもって体験している。
「ずいぶん遅かったのね。想夜君と何かあったの」
「お嬢様申し訳ありません。想夜様が苦手科目を克服しようと熱心でしたので、お付き合いしました。家庭教師の方も存外早く終わるかもしれません」
淡々と語る姉貴分に、美帆が茶々を入れる。彼女は護衛役兼話相手として、雫子の側に控えていた。
「なんだ、お勉強で遅くなったの。流果姉、残念。想夜君は私やお嬢みたいに胸の大きい女の子が好きなんだ。お嬢のライバルの幼馴染の子だって胸が大きいらしいよ」
「もう、美帆さんたらぁ」
雫子は真っ赤になって同意した。想夜から散々爆乳を弄ばれたのを想い出したのだ。だけどメイド二人には、世間知らずのご令嬢の純情に映ってしまう。我が身を差しだして女主人の純潔を守ろうと、堅く心に誓うのだった。
「ところで美帆、想夜様から手合わせの申し入れがあるのですけれど、どうします」
「やったぁ! 想夜君、やっぱりわたしに気があるかも。メイド服でお相手しちゃう」
「駄目よ、危ないわ。それに手合わせって、締め技や寝技もあるんでしょう。はしたないわよ」
いつも想夜に甘々な雫子だが、珍しく強い口調で反対した。護衛対象である雫子は柔術の道場を何度も見学している。武術の事などからっきしな彼女には、何故かくんずほぐれつの寝技、締め技ばかりが印象に残っていた。
「それが先日、想夜様はどこかの国の特務部隊に襲われたそうです。対人戦闘に不慣れで、危うく殺されかけたとか。スキルがモンスター向きで、懐に入られるのが苦手だと。そこで体術を磨きたいので、美帆の力を借りたいというのですが」
お爺様と奏子さんを、絶対の死地から救い出してくれた、雫子は狂おしい程想夜が好きだ。想い人が身の危険に晒されている。狙われたのも、国やダンジョンの機密に関わったからだろう。善良な雫子は、自分を想夜の最大の理解者と思い込んでいる。彼の為には何でもする。直ぐに前言を翻した。オロオロしながらも、心の底から信頼する同級のメイドさんに頼るのだ。
「美帆ちゃん、協力してあげて。想夜君にもしもの事があったら生きていけない」
雫子が去った後、美帆は真顔になる。
「流果姉、これでよかったの? 想夜君に惚れているのバレバレだよ」
「わかってしまうのね。美帆ありがとう、お嬢様に気取られないよう、気を遣わせたのね」
二人も姉妹同然に育ってきた。美帆は年の近い姉の変化など見逃すはずもない。家庭教師に出かける間際、姉は落ち着がない。戻ってくると陶酔の表情を見せる。沈着冷静ないつもの流果とは別人の、逢引きを重ねる純情な乙女そのものだった。恐らくは想夜の誘惑に成功して、女にされたのだろう。しかも律儀な性格故に、本気で愛してしまっている。
主人の雫子はメイド達が想夜と仲良くするのを好ましく思っている。それは姉妹同然の彼女達が、恋人と友愛を結ぶのが嬉しいからだ。だけど爛れた関係にあると知ったら絶対に泣く。いくら想夜を篭絡するためとはいえ、事実は伏せねばならなかった。その為わざと軽薄に振舞って、雫子の注意を流果から反らしたのだ。
それに美帆だって、想夜を憎からず思っている。子羊の皮を被った獅子の子供、破滅の臭いが漂ってくる。圧倒的な強者感があるのに、庇護したいと魅せられる。そんな彼が恩人の議員と上の姉の命を救った。感謝してもし切れない。求められれば、自分も躰を捧げる覚悟だった。それどころか初めては想夜がいいと思うようになってしまっている。
そして武闘家の血が疼く。初心者の想夜と達人に近い自分、技量に天地の差があっても、わたしは彼を崩せない。故に全力が出せる。師範や姉弟子との組手での死合は論外だった。でも想夜君なら、わたしの全てを受け止めてくれる。殺すつもりで仕掛けても、彼なら笑って受け流すだろう。