※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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スクールカースト1 魔女姫様

 危険だと止められたけど生徒会室にやってきた。しかも休日、スクールカーストトップの生徒会長が差しでお相手してくれる。罠だとしても釣られない訳にはいかなかった。部屋にはハーブと甘いお菓子の匂いが立ち込めている。中で微笑む魔女姫様はさながらセラピストのお姉さんだ。こんな人が本当に俺を陥れようとしているのか。

 

「御上君、お疲れさま。あなたが取り締まってくれた男子生徒の処遇が決まったわよ。女生徒への迷惑行為はイジメ認定となりました。教育委員会に報告されて学校からは保護者に警告、悪質な人は保護観察処分。生徒会からは男女交際の禁止を通達します。守らない生徒には実欲行使をお願いね。不満そうだけど、これは被害者の人権に配慮した結果よ」

 

 ホンワリと優しい言葉でねぎらってくれる。だでも内容はあんまりだった。俺のせいで、彼等は女生徒たちから総スカンを喰らってしまう。男子生徒も巻き添えを恐れてシカトする。家庭では白い眼で見られて居場所を無くす。

 翻って俺はどうだろう。日頃の悪事が露顕すれば、その反発は彼らの比ではない。母やキリ香からは絶縁される。朱美と詩央からは振られてしまう。まして俺は生徒会の犬だと思われている。学校中の男子から徹底的に糾弾される。思うだけで身が竦む、睾丸が縮みあがった。稀代の強姦魔として名を馳せるかもしれない。マスコミは、父の殉職やキリ香の身バレの件では好意的ではなかった。今回も真実を歪めて伝えるだろう。世間様に合わす顔がない。

 

 生徒会長が隣に座ってノートPCを開いてくれた。椅子を寄せて触れ合う距離で覗き込む。

 

「御覧なさい、あなたが懲らしめたクズ男の末路を。この社会人の方、会社にまで連絡がいったそうよ。家庭では中学生の娘さんがいるのに大変よね。こちらの他校の高校生、学校の名誉を穢したって吊し上げを喰っています。二人ともあなたのクラスメイトに付き纏っていた連中よ。こんなに見事に解決したら、彼女達、あなたに惚れてしまうかもね。でも手を出すのはいけないわ。あなたは清く正しくありなさい」

 

 夏見達にコナをかけていた連中は確かにたちが悪かった。でもここまでするのか。常習で更に悪質な俺ならば、どんな罰になるだろう。でも残念ながらクラスメイトとはスキンシップが取れない。女神さまの呪いが発動してしまう。俺は暗然とした。

 

「あらあら、浮かない顔をしているのは、やましい処があるからかしら。わたし達選抜者は、強い力をもらっています。だからこそ法に従い、己を律する義務があるの。あなたやわたしはダンジョンの力の化身。二人してこの世の模範となりましょう」

 

 政治家の娘らしく彼女の観察眼は鋭い。俺の本質に迫っている。それに彼女の言う事は正論だった。選抜者は法と秩序を護り、社会の秩序を維持する義務がある。力を貸せと言っている。だけどダンジョンで生きる俺には別の理があった。

 二人一緒とか、彼女は真剣だ。潤んだ瞳で俺を見詰める。これはプロポーズなのだろうか。しかしながらナイフのような痛い言葉で、俺の心を傷つける。

 

「ずっと御上君を見ていたわ。女の人に破廉恥な事をしているのでは? あなたを綱紀粛正で摘発しなければいけないかも」

 

 何で分かった? 心臓がパクパクする。

 

「司祭様とシスターとの禁忌の関係、神をも畏れぬ所業です。JCとその母親と同時にお付き合いするなんて、節操なくて呆れ果てるわ。小梨利先生と垂水沢委員長はとっても身持ちの固い人。あなた、ダンジョンの力で堕としたのね。他にも色々調べてたわ。あなたと躰を合わせた女性は28日後に力を授かるのでは。さあ、白状なさい」

 

 以前彼女から俺に28という数字に覚えがないか尋ねられた。言われてみれば、全員が俺と関係した28日後に選抜者となっている。市役所の伝手を使って、俺の周りの女性達を調査したのだろう。でも核心までには至ってないようだ。女神さまの祟りだなんて知られたら、事態は更に悪化する。しらばっくれよう。

 

「僕の周りに選抜者が多いってよく言われるよ。でも僕が只人だった頃から、父母も妹も、親友達も選ばれていた。巡り合わせだと思うけど」

「ふーん、そう来るのね。あなたを話していると、ある魔眼保持者を思い出すわ。彼は透視の魔眼への不当な差別を訴えて、問題提起を起こしました」

「その手記なら僕も読んだ事があります。女性からの当誹謗中傷に悩まされながら、清く正しく生きている人ですよね。僕は感動しましたよ。たとえ不利なスキルを習得しても、彼のように正々堂々とありたいです」

 

 手記の著者はそのスキルゆえに世の女性から虐げられて差別されていた。にもかかわらずスキルの誘惑に負けないで強く生きる彼を尊敬していた。俺は彼の手記を読んでいたので、『透視』の魔眼を持っている事を秘密にしている。

 

「残念、その人本当に覗き魔まだったのよ。それを誤魔化すために濡れ衣だと言い張っていたの。今この人はお薬で不能にされて服役しているわ。こんな性犯罪者を尊敬しているなんて、類は友を呼ぶのかしら」

 

 俺の心は悲しみに沈んだ。『透視』の魔眼を習得した人物は、やはり性犯罪者となる定めなのか。気持ちも息子もショボンとした。またEDが再発しそうだ。

 

「そんな悪い御上君にはチャンスを上げます。私の夫となる人は浮気は絶対許しません。他の女に欲情なんてさせないわ。でもね、あなたはそれではつらいでしょう。だから妥協してあげる。いい子にしていたら女の子を、より取り見取りに宛がってあげる」

 

 これはプロポーズなのか。彼女は独占欲が強い。配偶者には絶対の忠誠を求める女王様気質だが、選りすぐりの女性を用意して俺の性欲に配慮してくれるらしい。手配した女の子を抱けと言っている。でもこれでは国に囲われて女性を宛がわれるのと変わらない。わからせる歓びもなければ、妻の眼を盗んで浮気するスリルもない。釈然としないものがあった。

 

「婚約するのは早いけれど他の女性に盗られたくない。お父様も賛成よ。あなたを高く評価しているわ」

 

 魔女姫様はそんな俺の後ろの回ってしな垂れかかる。彼女も相当な巨乳だ、俺の背中に柔らかいものを当てて来きた。少女から大人へと移ろう、豊潤でそれでいて清潔な匂いがする。心地よさに気が遠くなりそうだ。彼女はなおも迫ってくる。

 

「わたしの躰で慰めてあげる。犯した罪ももみ消してあげる。だからわたしだけの男の子になりなさい」

 

 俺の罪を見逃すばかりか、綱紀粛正を謳う彼女が自ら躰を差し出そうとしている。才色兼備の魔女姫様はスクールカーストのトップなのだ。そんな彼女にここまでされて悟りを得ない男はいない。色即是空、ありがたや、俺の色欲が空になる。いきり立った逸物が心安らかに静まっていく。

 慈愛のお姉さん成分を取り込もうと、背中に全神経を集中させた。だけどほんの僅か違和感がある。【魔導】があるからこそ気づけた。魔女姫様の乳房から意志を持った魔力が背中越し浸透している。そして俺の精神に干渉を始めた。

 甘い言葉の響きさえ、シーナ達、妖精の言霊に似る。魔力を乗せて惑わしてくる。こうした事象は事前に指摘されなければ、あるいはアルドネと呪い対決をしていなければ察知できなかったであろう。危うく不能にさせる処だった。

 

「まさか状態異常!」

「よく分かったわね。私以外の女には勃たなくしようと思ったのに。でもあなたはこの世全ての女性の敵。観念して私の奴隷になりなさい。ヒトには過ぎたその力、わたしが正しく管理します」

 

 背後にいる生徒会長の雰囲気が変わった。ほわほわした雰囲気が冷徹な権力者のそれへと移る。魔女姫様は俺をスキルで支配下に置こうとしている。不能にして独占しようとしている。暗示や誘導の状態異常だろう、彼女のお許しが出た場合のみ他の女にも欲情するのだ。俺は思わず叫んでしまった。

 

「信じていたのに。花も実もある会長は僕の理想のお姉さんだったのに。会長は純真無垢な僕の心をもてあそんだ」

「何という厚顔無恥。全く反省しないのね。従えないなら捕縛して司法の裁きを受けさせます」

 

 

 

 

 正義の美女や美少女が糾弾してくる。この状況でヴィランには出来る事はたった一つ、手籠めにして口封じをするのだ。躊躇せずに襲いかかった。だが見えない壁が俺を阻む。スキル『障壁』だ。『魔力視』の魔眼には幾重にも、壁が彼女を取り囲んでいるのが視える。この『障壁』は防御だけではない、応用で攻撃も可能だ。たちまちに壁際に追い込まれた。正面と左右からシールドバッシュで潰す気でいる。

 身軽な俺は、壁を蹴り天井を蹴り、三角跳びの要領で頭上から襲いかかった。生徒会長をひん剥いてやる。まずは俺を支配しようとした悪い乳房にお仕置きだ、俺の左手が魔女姫様の胸元へ伸びる。だけど彼女もさるもので、『電撃』にて払いのける。奇襲はリボンになっているスカーフを解いたのみに留まった。指がジンジンする、握りしめたスカーフを想わず床へと落としてしまった。

 

「わたしを汚そうとしたわね。獣は檻に閉じ込めます。家畜になったら鎖でつないで飼ってあげる」

 

 生徒会長が悪い魔女の顔になった。一方こちらも手詰まりだ。俺の攻撃魔法は過剰だし、彼女には通用しないだろう。彼女には攻撃魔法を無効化するスキル『ディスペル』がある。ならば隙を作って、『体術』で組み敷くしかない。

 

 風魔法 『風衣』。俺はダウンバーストを発生させた。突風が床にぶつかり吹き上がる。部屋中に紙の資料が舞い散って、生徒会長のスカートを浮かせた。真っ赤になってスカートを押さえた所を押し倒すのだ。すらりとした太腿が剥き出しになる。後数センチで股間が見える。

 

「スキル『ディスペル』 あなたの魔法は届かない」

 

 魔女姫様が呪文を唱えた。俺の『風衣』が雲散霧消してしまう。宙に舞う書類の束も床に落ち、制服のスカートも何事もなかったかのように彼女の脚を守護している。パンティをみようとした『風衣』も攻撃魔法判定されてしまった。

 

「高校生にもなってスカートめくりをするなんて、あなたはまだまだお子様ね」

 

 そんな魔女姫様もいい年をして恥ずかしがっている。俺の視線が彼女の股間に集中すれば、彼女もつられて目を落とす。チャンスだ、『俊足』で駆け寄る。だけど盛大にコケてしまった。恥ずかしい。いつの間にか床に落ちたスカーフが足首に絡まっていたのだ。引き千切ろうとしたが、鋼のように硬くビクともしない。

 

「サイコキネシスよ、スカーフにはわたしの魔力が練り込まれているわ。身体強化に優れるあなたでも簡単には解けない」

 

 

 両足を縛られて俺は無様に床に転がった。勝ち誇った魔女姫様が近づいてくる。すらりと伸びた御脚が眩しい。だけどそこから先は見えそうで見えない。絶対領域を展開している。違う、これは見せつけて俺に意地悪をしているのだ。

 

「イヤらしい男の子が這いつくばるのは爽快だわ」

 

 生徒会長が嗤いながらつま先を伸ばしてきた。己の勝利を宣言している。女王様は俺に臣下の礼を取らせようとする。

 

「さあ、忠誠を誓いなさい。私の靴に口づけして。それとも踏まれたいのかしら」

 

 

 

 何という屈辱。俺の逸物が怒りに震えて竿立った。妖精達が正しかったのだ。女王様のカリスマを完膚なきまで打ち砕いてやる。ここで対魔女、対魔法少女用の決戦兵器を投入した。実戦での運用は初めてとなる。

 

 床から二本、天井からも二本、緑の触手がするりと奔る。一瞬にして彼女の両手、両足首に巻きついて自由を奪った。俺の心の望むままに、大の字に吊って拘束した。だけど彼女は動じない。

 

「これがあなたの本性なのね。わたしを触手責めにしようだなんて、万死に値します。きついお仕置きが必要だわ。スキル、ディスペル、わたしには攻撃魔法は無効です」

 

 あらゆる攻撃魔法を無効化するスキル『ディスペル』は、世界中で魔女姫様ただ一人が会得している。絶対の自信をもって、再びスキルを発動させた。でも触手は消えもせず、解けもしない。色が黒く変わっただ。初めて生徒会長の顔に動揺が走った。

 

「そんな、ディスペルが効かないなんて! 御上君、あなたいったい何をしたの」

 

 今度は俺がニヤつく番だ。

 

「闇魔法、触腕。凶暴な女性から身を護るようダンジョンコアからもらったんだ。抵抗なんて無駄な事。港湾ダンジョンのコアだって捕縛したから。それにこれは攻撃魔法でなく防御魔法、ディスペルなんかは効かないさ」

「何て卑劣な。未確認のスキルについては報告義務があるはずよ。でもまだ勝ったと思わない事ね。水弾、石弾、そして風弾」

 

 炎弾を使わなかったのは火災を恐れての事だろう。生徒会長が魔弾を三種同時に展開した。触腕が黒く染まって、当然ながら不発に終わる。何度試みても結果は同じだ。俺の『触腕』は魔力を乱して、魔法やスキルも阻害する。彼女の『サイコキネシス』も解除された。スカーフも解けて、俺は自由の身となった。

 

「御上君、どうなっているの。魔法が全部使えないわ。離しなさいよ」

「僕の触腕は殺傷能力を持たない。拘束にのみ特化している。あらゆる魔法を封殺するよ。悪い魔女と魔法少女を懲らしめる僕だけの秘密のスキルさ」

 

 魔女姫様の異名を持つように、生徒会長は日本を代表する魔法職の一人だ。多彩なスキルとその運用を誇っている。だけど力の源を奪われてしまった。そうなると野獣の前の美味しそうな女鹿になってしまう。彼女の誇りと貞操は風前の灯火となった。

 

「やめなさい、ここは学校、生徒会室。わいせつ行為は、許されません」

「委員長や担任の先生とも教室でヤッたよ。嫌がっていたのに、今ではすっかり僕の虜さ。会長はどんな聲で鳴くのかな、僕と秘密を共有しよう」

 

 とうとう真実を告白した。俺の心は晴れやかだ。それに反して、魔女姫様はどんより曇る。涙雨が今にも降りそう。

 

 

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