※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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エピソードの途中ですが、ストックが突きました。残り3話は随時あげていきます。




神戸ダンジョン3 神スキル

 散らばる魔石など拾っている間はなかった。資料とするため、母がミノタウロスの魔石を回収したのみ。そして俺は新たなハルバードを手にした。へし折れた相棒に哀悼を捧げる。一緒に戦ってくれてありがとう、持ち帰りたいがアイテムボックスには余裕がない。非常時には探索者の遺品を預かる事もあるからだ。

 

「私たちが居た緩衝地帯からは中層に向けて6か所に分岐しているの。ここは何とかなったけれど他はどうかしら。モンスターが登って来なければいいけど」

 

 妹を護りながら、母が先導、俺が殿について上層へと駆け上がった。途中、戦闘痕はない。ガチ勢の人も無事に逃げてくれただろうか。この間、キリ香はずっと無言だった。それどころか思い詰めていて、声を掛けるのも憚られるほどだ。よほど怖い思いをしたのだろう。ただ『身体強化』の能力が格段に上がっている。最弱から中の下にランクアップした。非戦闘職でこれ位なら安心できる。現に移動速度も思いの外早く、もう緩衝地帯に着こうとしている。

 

 

 

 母と兄に挟まれてキリ香も走る。後ろからの兄の視線が小さなお尻に突き刺さる。

 

「ムズムズする。もっと見て。そしてわたしを欲しがって」

 

 大好きなお兄ちゃんには綺麗だと思われたい。意識せずとも筋肉が弾み、脚が跳ねる。走る姿勢がしなやかに、躍動する乙女のフォームに代わっていく。機能美の極致だ。もっと躰を動かしたい。でないとこの熱狂が抑えられない。

『結界』に護られながら、キリ香は兄の奮闘に圧倒された。お兄ちゃんと魔物が踊る。死の舞踏だ。モンスターが嬉々として死んでくれる。積み上げられた屍の上で兄の命が光り輝く。この世界でこんなに美しいものは初めてだ。キリ香は脳を焼かれた。

 お兄ちゃんの武器が折れた。詰みだ。闇より黒い死が視えた。声を限りに啼き喚く。この世の終わりだ。だがしかし、生と死の白と黒が、オセロのように裏返る。リバーシが劇的である程、歓びも大きい。キリ香は魂の叫びを上げる。生娘にもかかわらず絶頂したのだ。この瞬間、世界の誰よりも兄を欲しいと思った。

 お兄ちゃんみたいに綺麗で強くて優しい人に、力尽くで犯されるのは女の幸せ。早く処女を奪ってよ。

 

 マ マはミノタウロスの魔石を回収している。兄はハルバードで演武をして、新しい武器に馴染もうとしている。わたしもあんな風に激しく、そして大切に扱われたい。母を手伝おうとして、目敏くスキルオーブを見つけた。早くお兄ちゃんに使ってもらおう、拾ってみるも、オーブは何とキリ香自身のものだった。

 ミノタウロスを倒したのはお兄ちゃんなのにどうして? でも手にした瞬間、絶対に秘密にすると心に誓った。スキルの情報が流れ込んでくる。これは願いを叶えてくれるスキルだ。誰よりも女神さまに祈った。

 

「お兄ちゃんの初めてをもらう」

 

 キリ香はできる女の子です。お兄ちゃんの愛蔵本みたいに、凡人が努力しないでチートをもらえるなんて、これっぽっちも思っていません。兄のためなら茨の道も乗り越えます。

 

 

 

 真摯で純粋な願いだけがダンジョンの女神さまに届けられる。女神さまは憐れんだ、かなわぬ願いに恋い焦がれる少女達を。

 

「力は貸します。ですが一番大切なものは自分の手で掴み取るもの。試練を潜り抜けるのです。女の子の敵を撲滅しなさい。さすれば願いを叶えましょう」

 

 父を討たれて逆賊とされた、卑劣な少年へ復讐を誓う乙女がいる。幼少時の性的虐待のせいで男性不信となったご令嬢は、単性生殖がしたい。生けるものへの博愛を説いて、虚弱少女がベッドで祈る……。幾つもの命懸けの願いが届いていた。

 女神さまはこちらの世界の物語を読まれた。愛のために美しく戦いたい、少女達は誰もが秘めた願いを持っている。ダンジョンの女神さまはその尊き想いを紡がれて、新しいスキルを創造された。

 

 契約スキル……『魔法少女』

 

 制約だらけで代償も大きい。だけど不可能を可能とする破格の女神のスキルだ。キリ香は今日、スキルを二つではなく三つ獲得していた。

 

 

 

 緩衝地帯への入り口が見えた。だけど変だ。先に別れたガチ勢の人達が警戒しながら出入り口を囲んでいる。他の選抜者も押し留められて、避難しようとしていない。

 

「おう坊主、生きていたか。お前上級らしいな。さすがだな、だけどちと不味い事になっている。見てくれ」

 

 小柄な俺が見やすいように最前列に案内してくれた。緩衝地帯には二百人程の探索者が倒れているか、意識朦朧としてふらついていた。朧げな光の玉が乱舞している。レイスだ。緩衝地帯は千を超える死霊の群れに占拠されていた。他の通路では倒れた探索者を救出しようとしているが上手くいっていない。射線が通らなかったり、操られた探索者が邪魔をしてくる。

 レイスは単体ではさほど強くない。生命力を吸収されたり、憑りつかれたりするが、直ぐに命にはかかわらない。また、強い意志を持てば探索者なら抵抗できる。精神体を移動する魔核を武器や魔法で破壊するのも有効だ。でも今回は数が多すぎた。飽和攻撃を受けている。

 

「ここでは過去レイスが出現した記録はねえ。誰も備えはしていない。ギルドっだてそうだ。徳島から聖水を回してもらうしかないが、どれだけ時間がかかる事か」

 

 全員が苦虫を噛み殺している。今頃はギルドでも情報を把握しているだろう。徳島支部から「聖水」を輸送してここに届けるまで、ヘリを使っても3時間ぐらいか。

 

「重篤な人もいるみたいね。それでは間に合わないわ。想夜さん、お願い」

 

 お使いでも頼むように母が突入を命じる。キリ香も兄の活躍がもう一度見られると目を輝かせた。先程の攻防で、俺の力量が身に染みている。絶対の信頼があった。お散歩でもするように危機感のない俺を周囲の人が止めようとしてくれる。それに先んじて軽口を叩く。

 

「レイスとの戦闘経験は豊富ですよ。楽勝です。それに僕は徳島からきました」

「まさか?」

 

 伊那ダンジョンで散々レイス系を相手にしてきた。女装して女子更衣室に侵入した罰で奉仕活動をやらされたからだ。負の感情に囚われて呪いとなったアルドネも解放した。妖精達からも死霊系のモンスターについてはレクチャーされている。恐れるものは何もない。

 常人を遥かに凌ぐ俺の魔力と生命力はレイスにとってはご馳走なのだろう。憑りつこうと、俺の周囲で乱舞する。俺は知っている。レイスどもは邪な気持ちや絶望を好むのだ。つまり悪人や心が折れた人間ほど憑かれやすい。その反面、清き女性や不撓不屈の男性を苦手とする。

 翻って俺はどうか。女神さまに祟られて色欲に囚われている。獣欲はレイスの大好物だ。憑りついて周りの女性を襲おうと群がってきた。心の中の『唯我独尊』が吠える、我一人だけ、気高いのだと。たちまちに情欲は全女性への博愛に、強姦願望は愛を貫く強固な意思へと昇華した。ヒューヒューと風の音がする。霊魂は俺に憑りつけずに慟哭した。

 

 もう一押しだ。おかずは誰にしよう。経験済みの相手より、手を付けていない娘の方が妄想は捗る。真っ先にキリ香が思い浮かんだ。でも数百人を前にして妹を空想の世界に引きずり込むのは気が引ける。まして本人も横にいるのだ。次にリリエちゃんが思い浮かんだ。ちょっと前までここでいい雰囲気で話していたのだ。さよならが言えなかっただけに、会いたいという気持ちが積もる。

 ドレスタイプの探索服で着飾ったリリエの姿を、俺の『記憶』が正確無比に呼び出した。善良で人見知りする彼女には、細い脚とかわいいお尻、つんと澄ましたおっぱいが相応しかった。奥手のこの娘をどんな風に仕込もうか。

 彼女は身体が心に引き摺られて、まだ未発達だ。でもそこがいい。強引にやって躰の発育を促してやるのが紳士の務め。そして達人ならその先がある。彼女から処女を奪うのではなく、与えてもらう。嫋やかな少女を組み伏せるのは容易いが、その気にさせるのは至難の業だ。リリエは凛とした覚悟を決める。自ら脱いで発育途上の裸身をこの俺に晒す。彼女は恥じらいと破瓜の痛みで、清き涙を流すはずだ。

 こんな幼気な子を泣かすのは、俺ではなくレイスが大好きだ。リリエちゃんを咽び泣かせて供養としよう。清き乙女が全てを捧げる高貴な俺を想像した。気は心、レイスどもは崇高な精神に打たれて悶絶する。

 

 

 

「あれだけのレイスを相手にしても屈しないのか。何という魔力量と生命力、そして鋼の精神」

「尊いわ。この世の全てを愛せるのね。天使が降臨したみたい。私だって癒されたい」

 

 周囲の探索者は口々に俺を褒めたたえる。中には俺が珍しいプリースト系のスキルを持っているのではと指摘する者もいる。当然だろう。俺は聖母と聖女を蹂躙した。まさに神聖にして犯すべからず。

 

 

 

「ミスト」

 

 中央まで進むと、給水の応用で水分を気化させた。同時に『風衣』を発動させる。地下空間は濃霧の渦に包まれた。錐もみしながら、立ちどころにレイスは昇天する。透明な魔石の粒が、雨のように降り注いだ。

 岩壁や天井に潜んでも無駄だ。「ミスト」に侵食されて、ぽたぽたと穢れた魂は地に落ちる。霧を吸った人達は例外なく苦しみ始めた。これはかつて対峙したサイコキラーのヒス女の技だ。俺はこの技を盗んで毒霧を発生させ、彼女の仲間を七転八倒させた。ヒス女なら彼らの苦しみを見て、濡れて喜んだであろう。

 

「霧を作るスキルなんて知らないぞ。新スキルか」

「あれ毒じゃないの。あんなに可愛い顔してえげつないわね」

「やり過ぎだ、倒れている連中は初心者が多い。直ぐに死んでしまいそうだ」

 

 先程の賞賛から一転して、人でなしの烙印が押されようとしている。だけどレイスが抜けると、倒れている人は穏やかな顔になった。ここで一斉に救援がいる。弱った人にはポーションが飲まされた。地に落ちて動けないレイスはスライムより弱い。何度も踏み潰されて消滅してしまう。

 ある程度落ち着いたところで、薫子が拡声する。『鼓舞』が使われた。それでなくても彼女は協会の管理職だ。常連が協力して、きびきび進行していく。

 

「こちらは神戸支部です。聖水を使用しました。在庫にも余裕があります。当面の危機は去ったといいでしょう。ここに臨時の救護所を設置します。重篤な負傷者はこちらへ。トリプルが治療します。また回復魔法の使える方は集まってください。それから事務職の人もこちらへ。運営にご協力を。また各パーティーのリーダーは報告をお願いします。協会として現状把握と未帰還者や要救護者の確認をします」

 

 俺はこれ見よがしに、アイテムボックスから「聖水」をどんと出した。回復魔法トリプルの存在と、目の前の「聖水」のせいで、探索者の間に安心感が広がっていく。俺のアイテムボックスに余裕がなかったのは「聖水」を輸送中だったからだ。お届け先の京都のギルドからは嫌みを言われるかもしれないが、それは甘んじて受けよう。

 

 

 

「想夜さん、無事でよかった。っそれから薫子さんもご無沙汰です」 

「キリ香ちゃん、頑張ってるね」

 

 詩央と朱美だ。

 

「朱美姉、詩央姉、久しぶり!」

 

 施術中のキリ香は頼れる姉貴分の登場に嬉しそうだ。二人とも今日は実習でダンジョンに潜ると言っていた。退避してきたのだろう。

 モニター越しではいつも話していたが、直接会うのは久しぶりだ。周りなど気にせず、抱き合うように悦びを爆発させる。だけど楽観モードは遅れて避難してきた一団によって終わりをつげる。

 

「ダンジョンの崩落に巻き込まれたグループがいる。中学生ぐらいの女の子とその指導員達たちだ。死霊系のモンスターがいて近付けなかった。何とかならないか」

 

 母と妹が遭難者の人数と特徴を聞いている。間違いない、リリエたちが巻き込まれた。不安で一杯のキリ香を似た。即座に救助を決意する。もちろん、朱美と詩央も同行する気でいる。最低限の情報を受け取って突入しようとした時だ。ここで朱美たちの合宿の指導員から待ったがかかる。

 

「きみたちは我々の、体協の指導下にある。連覇がかかっているんだぞ。勝手な行動は認められない」

「今は非常時、教官よりわたし達が立場は上です。その為の上級探索者です」

 

 大人しい詩央が言い切った。年長の責任者も同意してくれる。

 

「そうだったな。助けられる者を見殺しにしての栄光に価値などない。行って義務を果たしなさい」

 

 いくら功績あるからと言って、15や16歳の学生に上級の免許が下りるのは異例だ。特権や優遇とは引き換えに、こうした非常時に率先して義務を果たす事を期待されている。俺達はそれを覚悟で受けた。僅かな時間が生死を分ける。影をも残さぬスピードで深層へと駆け下りた。

 

 

 

「あのメンバーは徳島のスタンピードや籠城事件で、常に最前列を張っていたわ。そして誇るべき私の教え子と息子よ。私達よりよっぽど死線はくぐっています」

 

 ママがサポートの人に説明している。みんなが戻ってくるまでここを待機所にするつもりだ。クラスメイトは心配だけど、お兄ちゃんなら何とかするはず。それよりも朱美姉と詩央姉が気になった。前から綺麗だったけれど、最近色気に凄味が出てきた。お兄ちゃんとダンジョンに潜るようになってからだ。このままだと盗られてしまう。

 お兄ちゃんには悪いけど、選ばれなければそれでよかった。一生養ってあげるつもりでいた。でも今日知ってしまった。お兄ちゃんが一番輝くのは、ダンジョン深く死地に赴いた時だ。もう一度焼かれたい。でもそこに同行できるのは朱美姉と詩央姉だけ。節操のないお兄ちゃんなら過ちを起こしそう。

 わたしだって強くなる。誰より素敵なお兄ちゃんを私だけのものにする。朱美姉と詩央姉には悪いけれど、隣にいるのはわたしだ。女神さま、早く私に試練をください。カッコ可愛いドレスを纏って、兄のハートを射抜きます。

 

 御上キリ香は変身したい。

 

 

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