※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

23 / 169
ストーカー

 瀬理菜ちゃんに同伴して中学校へ向かう。マンションからは20分位だ。俺は瀬理菜ちゃんとイチャイチャしながら歩いている。ストーカーどもは朝の登校中は瀬理菜ちゃんを鑑賞するだけで、声は掛けて来ないらしい。今あそこにいますと、瀬理菜ちゃんが袖を引いて教えてくれる。俺は瀬理菜ちゃんの肩に手を回して、庇うように引き寄せる。ストーカーに親密なところを見せつけるのだ。キモ男よ、血の涙を流すといい。

 結局四匹釣れた。ストーカーにははっきりと、他の通行人からは分かり難い角度で、瀬理菜ちゃんの腰を抱き、腕をたぐり、あるいは瀬理菜ちゃんから体を寄せてもらって護衛していく。役得である。恥ずかしがる美少女をいだき、それをライバルに見せつける、男子とはかくありたいもの。顔を真っ赤にして、嬉しそうに俺に身を任せる瀬理菜ちゃんを見たストーカーは、その場に崩れ落ちた。

 それにしてもストーカー連中、全員成人男性だった。だらしない服装、無精ひげを生やして不潔な印象、運動不足で緩み切った肉体、彼らは何者なのだろうか。こんな奴らは恐れるに足りない。俺は瀬理菜ちゃんの所有者であるかのように振る舞い、彼らを挑発していった。

 俺が唯一懸念したのは、悪ガキどもの冷やかしだったが、杞憂に終わった。悪ガキは一月前までは俺の後輩だったのだ。仲裁を頼まれたりして顔見知りも多い。腕の腕章を見て、悲しそうに諦めたように、挨拶をしていった奴も多かった。他にも知り合いの後輩と挨拶を交わしながら、瀬理菜ちゃんを無事送り届けた。

 

「おう、御上よ、もう中学が恋しくなったのか。がきんちょのお前には高校生はまだ早かったようだな」

 

 立ち番の教員に呼び止められた。厳つい大男の教員は、黒田先生、俺の3年の時の担任の先生だ。無神経で生徒の気持ちを解さないと評判だったが、体格のせいもあって荒事には適任な先生だった。

 

「今の担任の先生は、優しくて凄く美人な人ですよ。高校ライフは最高です」

 

 軽口を叩きながら本題にはいる。

 

「護衛の件、迷惑をかける。これは俺の独り言だが、篠塚と同じようなストーカーが他の中学でも出現してな」

 

 他言無用で話を聞くと、他の中学でも2件、瀬理菜ちゃんと同様な不可解なストーカー事件が発生して、教育委員会も問題視しているという。警察の方でも専門の部署、選抜者の犯罪を取り締まる異能力課の介入が取り沙汰されている。未登録の洗脳系スキル保持者が存在している可能性だ。未登録のスキルを嗅ぎまわれると、俺にもとばっちりが来るかもしれない。早く解決してほしいものである。

 

「スキルは正しく使えよ」

 

 前の担任の先生の言葉が耳に残った。 

 

 

 

 俺が瀬理菜ちゃんの護衛で、母校の中学へ通った事は瞬く間に噂になった。クラスメイトの弟、妹も通っているので仕方がない。昼休み、俺の席に友人たちが集まってきた。

 

「御上、聞いたぜ。朝から凄く可愛い子とイチャイチャしていたらしいな。それで護衛だって。けしからん」

「篠塚瀬理菜ちゃん、入学早々、学内一の美少女と言われている子でしょ。弟が言ってたわ」

「なんでお前の周りには綺麗な子が集まるんだ。羨ましいぜ」

 

 朱美は今度のダンジョン遠征の打ち合わせで、詩央の所へ行っている。俺の護衛の話を聞くといい顔はしないであろう。自分も参加すると言い張るに違いない。護衛対象者が女性であるので、朱美が参加するのは理にかなっている。しかし、それでは俺の仕込みが無駄になってしまう。俺は早期に決着をつけたいのだ。

 

「俺たちも護衛に加わりたい。明日から一緒に行っていいか」

「駄目だ、お前たちならストーカーとして排除する」

「友達がいのない奴だ。理生院、お前からも何とか言ってくれよ」

「極めて妥当な判断だと思うわ」

 

 理生院が珍しく俺の肩を持った。

 

「わたしの研修先でも小耳に挟んだのよ」

 

 理生院は奨学生だ。選抜者用カリキュラムの大半を官公庁への研修で代替えしているので、スキルはそちら方面に特化しているのであろう。どんなスキルかは、守秘義務があるとか言って教えてくれないが。

 

「洗脳系スキルは抑止力としての役割が大きいわ。警察に所属している人たちも、スキルの熟練度はそこまで高くない。未登録者がこの系統のスキルを使っても、さじ加減が難しくて遠からず露顕する。警察の人達も、加害者の人達からスキルを使用して聞き出そうとしたかもね。だけど進展がないなんて、普通ではありえない。未知のスキルの存在を含めて、注意した方がいい。もし今回のストーカー事件がスキルによるものなら、一般の人は関わらない方がいいわ」

 

 関わらない方がいい、この言葉で会話はお開きになった。洗脳系スキルは全て魔眼の一種である。『洗脳』の魔眼を始め『催眠』、『支配』などが知られる。相手の目を直接見る事で発動するが、モンスターに通用した例はない。スキル自体はレア中のレアにもかかわらず、ダンジョンでは全く役に立たない。そして人間社会では使用を厳しく制限される不遇のスキルといってよい。警察も『催眠』等で、聞き出そうとしたと思われるが、上手くいかなかったと思われる。理生院が言うように、スキルに特別な条件が付与されているか、未知のスキルの可能性を考慮した方がいいだろう。

 

 

 

 悪友達に冷やかされながら、俺は母校の中学校へ向かった。瀬理菜ちゃんは校門の内側で待っていた。

 

「瀬理菜ちゃん、お迎えが来たわよ」

 

 付き添ってくれた女生徒が促している。瀬理菜ちゃんは恥ずかしそうだ。こういう時に一緒にいてくれる友達は大事にしたほうがいいと思う。三人の内の一人が尋ねてくる。

 

「キリ香ちゃんのお兄さんですよね。わたしたちのこと、覚えていますか」

「思い出したよ。妹の誕生日に家に来てくれた子たちだろ、キリ香に追い出されたから話は出来なかったけど」

 

 去年だったか、瀬理菜ちゃんを含めてこのメンバーは妹の誕生祝にうちに来た事があった。この時キリ香は、お兄ちゃんどっかいって、と俺を追い出してしまったのだ。

 

「ごめんなさい、キリ香ちゃんは想夜さんが大好きだから、取られたくなかったんだと思います」

 

 瀬理菜ちゃんが横からフォローしてくれた。

 

「それよりおにーさんは選抜者になったんですよね。おめでとうございます」

「高校での活躍聞きましたよ。つよつよなんでしょ。悪い選抜者の人相手でもラクショーだって」

 

 今朝の中学の出来事が高校に伝わるように、俺が試練を越えた事、柳内と涸川を制圧した事は、兄や姉を通して中学校へも伝わっている。

 

「想夜さんは瀬理菜ちゃんと付き合っているんですか、なんか噂になっているんですけど」

 

 瀬理菜ちゃんは何も言わない。

 

「そんな事はないよ。でも僕の名前が虫除けになるんだったら、出してもいいかな」

 

 お友達から大喜びされた。この子たちはメスガキという人種ではないか。キリ香の交友関係が心配になってきた。

 

「おにーさん、お家に遊びに行ってもいいですか」

「えー、モカちゃん、ヨワヨワだから泣かされちゃうよ」

「やだ、襲われちゃう、でもゆるしちゃう」

 メスガキ達が仔犬のように纏いついて身体を寄せてくる。構ってほしくてたまらないようだ。瀬里奈ちゃんがお友達を何とか引き離そうと頑張っているのが可愛い。気を張っていた瀬里奈ちゃんが自然体になってきた。このメスガキは良いメスガキだった。

 

 

 

 

 メスガキ達も引き連れて5分も歩いた頃だろうか。

 

「出たよ」

 

 メスガキの一人がビシッと指さす。その方角には朝のストーカー4人に加えて、更に2人、きも男が揃っている。瀬理菜ちゃんのストーカーは6人、追加の2人は聞いた特徴と一致する。これで全員揃った。皆がバットや警棒を構えている。俺を襲撃する気だろう。周辺が騒然として逃げ出す人もいる。警察を呼んでとの声も聞こえる。瀬理菜ちゃんが俺の腕を取り、ピタリと体を寄せてくる。それにしても一度に6人ものきも男につきまとわれる瀬理菜ちゃんの心境は如何ばかりか。その理不尽な理由と合わせると、いつ変になっても不思議ではない。

 

「瀬理菜ちゃんキタ、コレ」

「僕こそがその子に相応しいんだな。女神ちゃんから離れろ」

「美少年死すべし、慈悲はない」

 

 ストーカーどもが激高した。メスガキどもも煽り始める。

 

「わっ、キモっ! ブヒブヒいってる」

「ざぁ~こ、ざぁ~こ クソザコナメクジ」

「おじさんたち、はずかしくないのぉ? しんでください」

 

 俺は瀬理菜ちゃんの腰を引き寄せ、きも男に見せびらかしてやる。どさくさで脇腹をなでなでするのだ。彼らの怒りが有頂天に達した所で力強く宣言した。

 

「この子は誰にも渡さない、僕が護って見せる。おっさんたちなんて相手にならないから、逃げ帰りなよ」

 

 警告は発した。瀬理菜ちゃんが潤んでいる。後ろでメスガキどもがキャーキャー言っている。情緒不安定なストーカー達はもう自分を抑える事が出来ない。俺は瀬理菜ちゃん達を後ろに下がらせると彼らを迎え撃った。ここで彼らを制圧するだけなら容易い。緩み切った肉体で連携の取れていないストーカーなど、選抜者でなくても武道の達人なら対応出来るであろう。

 彼らの中で一番体格が良くて、一番キレた奴がバットで殴りかかってくる。潜ませていた特殊警棒で受ける。本気で受けるとバットが弾け飛ぶので、力加減が難しい。鍔迫り合いを演じながら、俺は『魔力視』で彼を観察した。魔力の色も波長もごく普通のものだ。彼の命の源から脈々と湧いている。操作されている風も、悪党だから醜いという風でもない。しかし、見つけた。彼の濁った眼のふちに、異質な魔力がこびりついているのを。そして俺はこれを知っている。昨夜見た瀬理菜ちゃんの魔力にそっくりだったのだ。不思議で綺麗な、そして一度見たら忘れがたい魔力、まさかこれが悪さをしているのか。

 俺の生の魔力を全開にしてぶつけ、妖しい魔力の残滓ごと吹き飛ばしてみた。彼はその場で崩れ落ちて失神した。もう一度、『魔力視』で確認するが、魔力の流れに乱れはないので大丈夫であろう。後ろに逸らさないよう、ヘイトを俺に集めながら二人目、三人目も同様に相手をする。きも男と見つめ合うのは嫌なのだが、顔を突き合わせるような距離でないと、魔力の残滓は吹き飛ばせない。三人目の処理が終わった時、警察が駆けつけ、残りのストーカーは捕縛された。

 彼らは僕にもスキルさえあれば思いのままなのに、と俺を罵っている。彼らはスキル=チートと勘違いしているのだろう。

 努力なしで活きるスキルはない。そんなスキルを手にするのは「みよう本」の主人公だけだ。今度「みよう本」を差し入れてあげよう。

 

 

 

 息を切らしながら、ジャージ姿の黒田先生が走ってきた。変なところで責任感の強い先生だ。憮然とした顔で俺に問いかける。

 

「仕込んだのか? 篠塚に妙に馴れ馴れしいとか、ストーカーを煽っていたと聞いたぞ」

「まさか、彼女を庇っていただけですよ。それにストーカーのヘイトを護衛の僕に向けさせるのは当然では」

 

 当然だが、俺は仕込みをしていた。セクハラまがいや挑発等、通常ならギリギリで許される俺の言動も、彼らからは傲岸不遜に見えるだろう。彼らが早めに暴発して、検挙される方が俺としてはありがたかった。ストーカーが瀬理菜ちゃんに直接手を出さないという情報も、俺の行動を後押しした。

 もちろん、安易な暴力沙汰は容認されるものではない。一方で我慢を重ねた挙句、遺恨が爆発して取り返しのつかない事態になる事もある。勝敗や是非は別として、早い内にトラブルを起こして問題を大きくした方が、解決が早まる事も多いと思う。今回も4、5日はかかると思っていたが、1日で済んでラッキーだった。

 瀬理菜ちゃんを『魔力視』で視る。彼女の魔力と、ストーカーに残る魔力の残滓は非常によく似ているが、僅かに違う気もする。俺はこの差を、別人のものなのか、単に魔力が変質したのか、判断できない。メスガキ達を黒田先生に押し付けて、瀬理菜ちゃんと一緒に署に同行するが、複雑な気分だ。えりか先生も向かっているという。

 

 




わからせに弱いメスガキには、主人公はスキル特効で無双出来ます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。