※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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ダンジョンデート2 ボス戦

 休憩中の会話から俺は思う事があった。子供時代の想い出から、カエルは音に敏感だったのを思い出した。一匹が俺の足音に気づいて川に飛び込むと、その水音に反応して遠くの奴まで連鎖して飛び込んでしまう。

 では水中に潜んでいるカエルモンスターはどうやって俺を認識しているのか。もちろん聴力や視力も使用しているだろう、だがそれだけか。俺は奴らを『魔力視』で視ている。モンスターにも魔力を視たり、感じたりする種類がいるのではないか。俺は自分の魔力を思い切り水面に叩きつけた。二人が怪訝な顔をしている。1分もしないうち反応があった。10を超える魔力の塊が近づいてくる。そして数はなおも増えている。

 

「朱美、詩央、失敗した。モンスター接近、数10以上、いや20匹以上」

 

 俺と朱美は水辺から距離を取り、個別撃破でこれに当たる。詩央は掩護だ。『身体強化』と『剣術』が共にダブルの朱美は、大剣を片手で振り回す。更に『俊敏』まであるので、囲まれる事がない。詩央は牽制しながら、舌を使おうと開いた口に直接『炎弾』を打ち込んでいる。俺も『俊足』で一撃必殺と一撃離脱を心掛ける。一対一なら戦斧で頭蓋を割るのが確実だ。陸に上がった奴らを片付けると、水面でバシャバシャしている牙の生えたおたまじゃくしの群れを、詩央が『炎弾』で追い払った。

 

「想夜さん、反省。魔法を使う特殊個体がいたら危なかった」

「何かするならちゃんと言ってよ。というかスキルでも使ったの」

 

 俺は二人に説明しながら、ひたすら謝った。どうもカエルを見るとテンションが上がる癖は直らないようだ。この一戦で20匹以上は確実に倒した。池に沈んだおたまじゃくしモドキまで入れるともっとだろう。今回、薬壺も出た。迂闊な俺の行動の結果でもあるので嬉しくない。

 

「今の魔力放出、もう少し弱める事は出来ない?」

 

 詩央は考えがあると言って聞いてきた。彼女の案はこうだ。

 

 こちらの条件の良い場所を選定して魔力を今の半分位の強さで放出する。

 魔物が釣れれば、これを2,3回繰り返す。

 池を移動し、同様に行う。

 

 見晴らし良く、戦闘にスペースの取れる場所で試してみた。魔力を加減して、今度はゆっくり水面に放出する。やはり1分ほどで魔物が釣れた。最初は十数匹、三人で協力して倒す。二回目は8匹、3回目は3匹釣れた。水面のおたまじゃくしモドキは最後に詩央がまとめて倒す。この間、約1時間だ。但し俺の魔力の消耗が激しく、再度の休憩となった。俺的には後1回はこなせるのだが、緊急時に備えて体力や魔力は半分程度温存しておくのが、生き残りのコツとされている。周囲の警戒を二人に任せて、1時間ほど休む。今回は『結界』は使っていない。起きたら魔力ポーションを飲まされた。効果は高いが激マズと評判の最新のやつだ。これも経験らしい。

 二度目の釣り出しは、魔物の集まりが悪く、2回で止めた。ここで俺は不可思議な現象に戸惑った。魔物というか魔力の塊が一つ、ずっと水中から動かないのだ。宝箱特有の魔力に似ているが、魔物のにおいもする。ミミックか。俺は詩央に話した。

 

「水中や水盤から宝箱が見つかる事はある。だけど水中にミミックがいた例は報告されていない。それと、ここの池の中から宝箱が見つかった例もない」

「カエル池に潜ろうなんて、そんな女の子いないわよ」

 

 それはそうだろう、水中で舌に巻き取られて丸呑みされるより、陸で根気よく薬壺のドロップを待つ方がいい。俺は小考すると、

 

「今回はリスクを取りたい。元々今日の遠征が賭けみたいなもんだし」

 

 そもそも『運命操作』のような貴重なスキルを所持した以上、命を賭ける事を覚悟しなければならない。幸いにも魔力の塊は岸から5mほど、水深も3~4mだろう。カエルの体高から当りをつけた。俺は迷うことなく全裸になった。二人は呆気に取られている。戦斧を片手に潜ると居た。貝の魔物が1匹、口を開けている。貝殻は2m近くあろうか、中央には真珠の代わりに宝箱があり俺を招いている。手を出せば太い貝柱で俺を挟み込み、溺死させる気だろう。俺は戦斧で素早く宝箱を搔き出した。

 

「想夜さん、ひどい。恥ずかしくて止める暇がなかった」

 

 顔を真っ赤にした詩央が抗議してくる。

 

「魔力視で視たんでしょ、オーブ、それともアイテム?」

 

 朱美も真っ赤な顔で尋ねてくる。俺は宝箱を開けた。スキルは『アイテムボックス』だった。念願のスキルを習得した。

 

「想夜、よかったね。これで運命操作を誤魔化せるでしょ」

「ありがとう、二人のおかげだ。これから僕は補助に回るよ」

 

 今度は俺が二人を掩護して、経験値稼ぎや、あわよくばスキル会得を手助けするのだ。だが、詩央は難しい顔をしている。

 

「想夜さんが今朝アイテムボックスを使っていないのは人に見られている。貴重なスキルを隠匿するために、後から習得したスキルで誤魔化したと勘ぐる人が出るかもしれない」

 

 話し合いの結果、いままで通り俺が魔物を狩る事にした。

 

 4度目、5度目と魔物を釣り出していく。共に30匹前後の魔物を狩った。そしてカエル池群の最奥部、直径500m超える大池というか小さな湖まで辿り着いた。大池にはいくつか小島もあり、岩礁も連なっている。俺の魔力の残量からも、時間的にも、ここが最後の狩りとなるだろう。今まで通り、水面に魔力を流し込むが何も起きない。加減を間違ったかと思っていると、池の奥の方から、巨大な魔物の魔力が近づいてくるのが見える。魔力の強さから見てボス級だ、それも2体。一体は4m程の蝦蟇がえる型で、もう一体は赤がえる型、こいつは3m強はあるか、俺の大好きなカエルだった。蝦蟇を朱美と詩央のコンビで、赤がえるを俺が受け持つことになった。

 

「気をつけて、前に戦った蝦蟇がえるは『炎弾』と『自己回復』を持っていた。それに鈍そうに見えて結構早かった」

 

 説明しているうちに赤がえるが10m級の大ジャンプをかましてくる。ハルバードが一閃するが空を切る、今のは獲ったと思ったんだが。再度の跳躍でも、戦斧は躱され、すれ違いざまにキックを放ってくる。俺は斧の柄で受けるも大きく吹き飛ばされてしまった。今ので分かった。奴は風魔法を使っている。空中で進路を変えているのだ。赤がえるがキョ、キョと嗤う。魔物の癖にカッコいい奴だ。

「みよう本」では空気や風を利用して空中ターンを決めるのは主人公の見せ場だ。悪役のくせに主人公の技が使えるのは、強キャラに決まっている。俺はこいつをライバル認定した。赤がえるが眼前で進路を変えて、レッグラリアートを繰り出してくる。俺の頭上を飛び越えると見せかけてフライングニーキックを、更に延髄蹴りまで出してくるのだ。俺がプロレス愛好家でなければ、敗北していたであろう。この後もトリッキーな動きを見せてくるがもう見切った。こいつは空中殺法は凄くても、地面に降りた際の決め技がないのだ。覆面レスラーと同じだ。俺は『俊足』で駆け寄り、着地した瞬間を狙って頭蓋をかち割った。

 蝦蟇がえるの方は『石弾』と『自己回復』を持っている。詩央が『石弾』を撃たせないよう牽制していた。蝦蟇がえるが口を開けると、『炎弾』を叩きこむ。『自己回復』を持つ者同士、朱美と蝦蟇は、大剣の斬撃と体当たりで潰し合いの様相だ。しかし蝦蟇がえるが朱美を圧殺しようとしたところを、逆に大剣で心臓を貫かれた。

 

 ボスがえる達はスキルオーブを落とした。赤がえるからは俺に『魔力強化』を。これで俺の『魔力強化』はダブルになった。実をいうと、俺は疑似ダンジョンに落ちた早い時点で『魔力強化』を会得したため、強化された魔力が自分の魔力と思ってしまっている。違いが分かればいいのだが。

 蝦蟇がえるからは二つ、朱美には『アイテムボックス』を、詩央には『身体強化』を落とした。朱美が狂喜したのはもちろんだが、詩央が一番欲しかったのが、『身体強化』だという。後衛で『身体強化』がダブルなのは上級者パーティーからになり、ティーンでは珍しい。

 

「これで朱美ちゃんや想夜さんに置いて行かれなくて済む」

 

 二人は一番必要なスキルを手にした。これで移動速度も移動距離も格段に伸びる。強化合宿でも代表メンバーに選ばれるのではないか。今回、二人のスキルが『運命操作』によるものかは分からない。二人ならいずれ自力で引けたであろう。だが俺は密かに『運命操作』に感謝を捧げた。自分の代替スキルより、幼馴染がいいスキルを会得した事がはるかに嬉しかったからだ。

 

 

 

 魔物の消えた後の大池は、先程までの激戦が嘘のように静まっている。ここが地上で草や木が点在しているなら、格好のデートスポットとなる風光明媚な場所となろう。皆でボートを漕いでみたい。詩央が点在する岩礁を指して言う。

 

「想夜さんならいけるかもしれない。岩礁を伝って向こう岸に渡れば、深層に降りられる」

 

 岩礁を飛び石代わりにして、500m程先にある対岸に到達すれば、深層に降りる階段があるという。降りた先には、植物系モンスターと虫系モンスターの楽園があるらしい。ダンジョンでは珍しい亜空間が展開されている。蝦蟇がえるがいたエクストラステージと同じタイプの空間だ。

 発見されてから、向こう岸にたどり着いたパーティーは僅か3組、戻ってきたのは1組だけとされる。しかもそのパーティーもほぼ全壊している。足場の悪い岩礁の上で、先程のようなボス級の襲撃を受ける。むろん通常の魔物も四方から襲ってくる。掩護を期待できない中で渡り切るのは、上級者でも厳しいものがあろう。ましてパーティーには後衛もいるのだ。

 深層の別区画からこの亜空間へ到達するルートはいまだ発見されていない。幻の階層とされ、このダンジョンの最大の難所とされる。探索者の持ち帰ったアイテムには非公開とされるものがあり、貴重な資源が存在するのはほぼ確実とされる。夢を追う探索者や、企業の支援を受けた一流パーティーが幾度も挑戦したが、3組以外は対岸にも辿りつけなかった。

 

「三人で行くのよ。綺麗なお花が咲いていると記録にあった」

「僕も行きたい、二人とも僕を連れて行って欲しい」

 

 朱美はロマンチストだ。俺はまだ見ぬクワガタやカブトのモンスターに想いを馳せ、心が躍った。

 

 

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