俺は驚きで歪む彼女の顔を、戦斧の腹に映しながら近づいていく。神話の逸話に倣ったのだ。彼女が変装を解いていく。中年女性の凡庸な顔から、息を飲むような美少女に変わる。斧に映しただけでは物足りない 俺は直接顔を拝みたい誘惑を何とか抑えた。彼女が腕を振る。暗器の投擲だ。俺が千本を打ち払う間に、石柱の群立地帯へ逃げ込んでいく。俺の戦斧を封じるつもりだろう。
俺は、そしておそらくは彼女も、石弾や炎弾など、遠距離攻撃の手段を持っていない。近接格闘戦が主体となる。そもそも一対一の格闘戦は向かい合うのが基本だ。これは洗脳系の魔眼の発動には恰好の条件になる。素の実力は俺の方が上と見たが、状況は彼女に優位だ。
群立する石柱裏側を『透視』と『魔力視』で確認していく。だが大きな石柱は反対側を見通す事が出来ない。彼女の方もある程度、俺の位置を察知できるようだ。探査系のスキルも持っているのか。俺たちは互いに身を潜めて、美少女は正面を、俺は彼女の背後を狙う。俺の武装は警棒に変えた。俺は美少女の顔を見ない様に、胸から下を見て戦っている。彼女が指を鳴らす、可愛らしい掛け声を上げる。魔法の発動を匂わせて、俺に顔を上げさせようとする。だが俺は『魔力視』で魔力の流れを確認している。暗器の投擲は急所のみを庇う。
大きな旋風脚が来た。思わずレギンスに見惚れていると、つま先から暗器が伸びる。躱した俺の顎を狙って、前蹴りが垂直にまで高々とあがる。俺の視線を上に誘導しようというのか。彼女は強い。暗器術か対人用の格闘スキルを持っているのだろう。そして俺が何らかの魔眼を持っている事も感づいている。美少女はくノ一だ。変装して暗器を使い、男を誘惑する。だが俺は負ける気がしなかった。『みよう本』ではくノ一は敗北を宿命づけられた職業である。主人に敗れて、エッチな拷問をされて屈する事がお約束である。
「羽根を寄こして」
ほぼ大勢は決したのに、彼女は諦めない。俺には『自己回復』がある。少々の被弾を覚悟で、脚を取り、体当たりする。その度に彼女は地を転がっていく。消耗した彼女は、どんどん技にキレが無くなっていく。とうとう彼女は魔眼対策で最も有効な戦術、目潰しを自分も巻き込んで炸裂させた。二人は大きく距離を取り、ともに石柱の影に身を潜めた。お互いに相手の位置を見失ったようだ。
俺は一計を案じた。彼女は貴婦人の羽根に異常に拘っている。不利になっても引く気配がない。それならば、羽根を焼けば彼女はどうする。俺は大きな石柱の前に貴婦人の羽根を置き、着火剤をあるだけ取り出し火をつける。先程、羽根を燃やすとブラフをかけているので、効果はあるはずだ。彼女が羽根を手にする瞬間、後ろから襲うのだ。石柱の配置から侵入経路は限られる。
もちろん、これが罠なのは見え見えである。しかし羽根が真に必要なら動きがあるだろう。果たして美少女は迷うことなく、そして慎重に羽根を掴むと素早く後ろを振りかえる。だがそこには誰もいない。
彼女も罠を読んでいた。俺の襲撃コースを予測し、その眼に魔力を貯め、乾坤一擲の勝負をかけた。その瞬間、俺は更に背後を盗り、鷲掴みにした。
風魔法……『風衣』 風を纏い身体能力に補正。特に跳躍や着地に顕著な効果
ハーピーの上位固体から得たスキル、『風衣』。俺は石柱によじ登っていた。その頂上付近、20mを超える空中から舞い降りる。俺の意識が風を掴む、急降下かからの急激な減速、ダウンバーストが炎を散らした。後ろから抱きかかえると首根っこを押さえて、そのまま土を舐めさせる。貴婦人も俺の方がお気に召したようだ。
人の理によれば、彼女は法と秩序にのっとって然るべき裁きを受ける事になる。俺は彼女が直接、間接を問わず、殺人を犯したかどうかは知らない。だが俺を殺そうとしたのは事実だ。瀬里奈ちゃん達も被害に合っている。彼女は俺に押し倒されても、貴婦人の羽根を大事そうに抱きかかえている。人を殺めてでも必要であったのだろう。
ここは人の理を外れたダンジョン、彼女も人の理を外れかけている。そして俺はもっと理から外れている。人外の力を与えられ、異世界の異種族とも関係を持ったのだ。
「そうだ、私刑にしよう」
俺の中で鮮やかな解決策が浮かび上がった。俺は彼女を『結界』に引きずり込んだ。自分の所有物と判断すれば、少人数は引き込めるらしい。
「お願い、助けて、脅されていたの。妹を人質に取られてどうしようもなかったのよ。わたしの秘密を教えるわ」
顔は見えないが、物悲しく哀願する彼女は嘘を言ってるとは思えない。冴えわたる綺麗な声は俺の心を揺さぶる。彼女の目的やスキルを話してくれれば許してあげよう、俺の優しい心が慈悲をかけろと囁いてくる。いや、騙されないぞ、ハーピーのように声に『催眠』を乗せているのか? 俺も似たような事をして、えりかや委員長の同情を誘ったのだ。酷い事をした経験が役立った。
今の彼女は頭を押さえられ、羽根を抱えて蹲っているので、臀部を突き出した体勢になっている。俺は問答無用で下着ごとレギンスを引きずり降ろした。
「きゃー、人でなし」
両肩を押さえて、剥き出しの美尻に男根を添えた。俺の股間で、可愛い桃尻がもぞもぞ動く。
「離せ、エロガキ。ママのおっぱいでも吸ってろ」
「そっちこそ強がっちゃって。まだ処女でしょ、乙女の匂いがするよ」
俺の逸物が花唇をこじ開け、膣口を通り過ぎていく。おそらく彼女は俺が童貞で上手く挿入出来ないと、一旦は安心したに違いない。だが俺の意図に気づいて身じろいた。雁首を陰核から1ミリで寸止めしている。『性技』の一つだ。俺か彼女が一呼吸する度、花芯がくすぐられる。こうなると彼女の意識は嫌でもクリトリスに集中する。膨張して自ら男を求めてきた。
「うわっ、わぁ、やめて、変態、子供の租チンになんか負けない。ばか、ばかぁ──ー」
ああ、彼女は俺の外見から、年下の子供と思っているのか。残念だが、女性に関しては経験を積んだ大人なのだよ。それをわからせてやる。
もう運命は覆らない。ここからの逆転は不可能だ。喪失の恐怖で戦慄く彼女が小刻みに震える。合わせるように初心な花芯も、俺の亀頭に当たって震撼するのだ。自慰するように、処女の泉が湧き出した。濡らしたのは俺が気持ちよくなるためで、彼女への配慮ではない。永遠に俺を忘れないよう、破瓜の痛みを刻んでやる、わざと乱暴に差し入れた。美少女がのけぞって獣のように吠える。
「泣いて喜べ」
「駄目なんだからぁぁぁ~」
深く突いて、強く引いて、俺の快楽だけを追い求める。
もう美少女は声を上げない。嬲られている時も無言だ。破瓜の痛みも悲鳴をかみ殺して耐えみせた。今もそうだ。感じてはいるのだろう、血の混じった愛液がしたたり落ちている。罵倒も懇願も、俺を奮い立たせるだけだと知った。彼女は事が終わるまで黙って耐えるつもりでいる。
彼女は『精神異常耐性』持ちだ、それも強力な。だからハーピーの歌声にも耐えられる。魔眼も含めて、実戦で鍛えられた彼女のスキルはハーピーの『催眠』を上回り、傀儡達も影響を受けない。性交の苦痛も快感もこのスキルで凌いでいる。俺は彼女がこのまま耐えきると、負けたように思えた。
「気持ちよくなんか、なかったんだから」
事後に美少女にこう言われると、一生立ち直れないどころか、一生勃たなくなりそうだ。
気の強い女を犯して睨まれる、そんな彼女をヒィ、ヒィ言わせてこそレイプの醍醐味だろう。顔を見れないのが残念だが、スキルを突破して悦ばせてやる。俺は『性技』を駆使する。暴力的に扱われた女が優しくされると屈するように、一転してねんごろに肉壺をかき回す、怯える膣ひだを、雁首の柔らかい愛撫で慰める。そして果てない口づけで絆していった。伝わってくる痙攣から、彼女が躰の芯まで甘い悦楽に染まったのを確信できる。お姫様の初夜とはこういうものだろう。
「うっ、うっ、うっ、あぁっ」
「死んじゃえ、死んじゃえ、殺す、殺す」
しかし彼女は小さな呻き声を漏らすだけで、快感を必死に堪えている。砂を食んでまで喘ぎ声を嚙み殺している。凄まじい執念だ。このままでは責めきれない。ふと昨日シーナと魔法で愛し合った事を思い出す。シーナは契約の際、俺と魔力を繋いでお互いの快感を高めていた。魔導の第一歩だ。俺は男根に力を籠め、あの時の魔力を再現してみた。雁首が吐き出す俺の魔力が、彼女の魔力を侵食して混じり合う。それは美少女の胎内で一つになり、新しい魔力として成長を遂げた。その一部は俺へも逆流して、凄まじい快感をもたらしてくれる。効果は劇的だった。
「あぁ、駄目ぇ、イヤなんだから、あああっ、ああ~」
謳うような声だった。鈴を転がすような、澄んだ、美しい声で喘いでくれる。
「とうとう啼かした」
俺は勝利の凱歌を上げた。
俺は意気揚々と韻律を刻んでいく。美少女が朗々と、感極まって歌い上げる。俺の興奮も最高潮だ。彼女の顔も歓喜に染まった。もう抵抗もやんでいる。発育途中の乳房を掴むと射精の態勢に入った。
「いい声で啼いてくれた。ご褒美に僕の愛をたっぷり注いであげる。感謝してよ」
「それだけは止めてぇ~、妊娠しちゃう、赤ちゃんできるぅ~、イヤなんだからぁ」
とうとう弱音を吐いた。今日は危険日だったのか、必死の懇願をしてくるが、それは俺に早く頂戴と催促するのと同義だ。もちろん俺に『避妊』がある事は教えてはやらない。彼女は俺を殺そうとしたが、もう些末な事だ。こいつの目的もスキルもどうでもよくなった。もっと恨め、もっと啼け、この美少女を辱める程、俺の心の奥底に力が湧き出す。
「あっ、あぁ~、わぁぁぁ~」
美少女が声を限りに謳い上げて俺を讃える。哀愁を誘う声調、歓喜のリズム、嘆きのレクイエム、全てが俺に染み入ってくる。俺の魂がこの子を犯しつくす事を望んでいる。溢れんばかりの射精をして、彼女の子宮を、その魂を屈辱で汚した。
「許さないんだから、恨むんだから、殺すんだから」
尊厳を穢された彼女が怨嗟の言葉を弱々しくつぶやく。俺の逸物は射精しても萎えるどころか、更に彼女を求めて暴れ出した。今度は正面から組み伏せて汚したい。彼女の魔眼を撃破して、よがり狂う顔が見たい。この子は鋼のメンタルの持ち主だ。その心をへし折って、熱い思いでドロドロにする。俺の愛を分からせてやる。
彼女をひっくり返す、黒曜石の輝きを持つ黒髪、アメジストの瞳、勝気な言葉とは正反対の、可愛らしさを突き詰めた風貌だった。まさに花のかんばせだ。俺は息を呑んだ。世界で一番微笑の似合う少女が、絶望で真っ黒に染まっている。人として見てはいけない冒涜の美、俺は何度でも射精できそうだ。いきり立つ男根を突き立てようと、彼女の両脚を揃えて抱え上げる。世界一の美少女は観念した様に眼をつぶった。
「まだするの……」
もっとやれ、もう少しだ、何かのスキルが体の奥底で蠢いている。同時に『運命操作』が発動する気配がする。おかしい、『運命操作』はアクティブスキルだ。勝手には発動しないはず。
この時、目の端でトロールが傀儡の探索者の方へ向かっているのを捕らえた。目が覚めて逃げていてくれと思ったが、鼻のいいトロールが迷わず進んでいるのはそういう事なのだろう。さすがに見捨てるのは後味が悪い。水入りだ。
追いかける俺にトロールが何故か気付いてしまう。愛液の匂いか、こいつらは鼻がいい、俺は事後に『洗浄』を忘れた自分の迂闊さに腹が立った。それにこいつは4m程ある特殊個体だ。巨大な棍棒を一振りするだけで、石柱が砕け落ちる。トロールで厄介なのはパワーもさることながら、『自己回復』が非常に高い事だ、身体の欠損位すぐ回復する。一撃で即死させないと逆襲される。トロールが俺を目がけて、再び棍棒を薙ぎ払った。俺は『風衣』を纏い、全力で跳躍する。『強靭』もこれを後押しする。空中で取り出した戦斧の重量を乗せて、てっぺんから唐竹割りにした。巨人を頭上から叩く、小柄な俺の夢を限定的に実現できた。それにしても最近特殊個体と遭遇しすぎじゃないか、幹之輔さんのダンジョン25年説が頭によぎった。ここでも魔石とスキルを手に入れた。
『衝撃波』……斧や棍棒の必殺技の一つ、魔力で威力を大幅に高める。ただし魔力の消耗が激しい。クールタイムあり。
有名な『斬撃波』の斧や棍棒版。剣士が『斬撃波』を振るえば斬撃が地面を走るが、こちらは蜘蛛の巣状に広がるという。棍棒も落とした、100キロはありそうだ。どうやってお持ち帰りしよう。
この勝負は痛み分け、いや俺の方がやや優勢か。俺は欲を出して美少女を逃がしてしまい、貴婦人の羽根も失った。対して美少女は純潔を失った。貴婦人の羽根はまた入手できるが、純潔は永遠に失われたままだ。俺の心は晴れやかだ。
魔眼の美少女は俺の出会った探索者の中でも、最高に強く美しかった。もし俺が童貞であったら、罠と分かっていても、顔を見たいという誘惑に抗えなかったろう。そして彼女の魔眼に屈していたに違いない。最近俺は、美女や美少女の一番美しい顔を見て、美しい声を聴いてきた。しかもその表情や泣き声は俺が無理強いしたものだ。この体験が俺を救った。女達に心の中で感謝を送った。
幸い意識を取り戻した探索者達も、互いを支え合いながら避難していく。そこまで悪い人でなかったかもしれない。
彼女が遠くから憤怒の表情で俺を睨んでいるのに気づいた。俺は笑って親指を立て、下半身を指し示す。美少女が悪鬼羅刹の顔になった。
「これは呪われるな」
俺は高揚した。こんな呪いの十や二十、受け止めなくて何が男か。
これが俺と傾国の美少女、春凪沙織との邂逅、いや因縁だった。俺達はお互いの存在をかけてこの先何度も戦い、予想だにしない結末を迎える事になる。ダンジョンの女神さまも皮肉が利いている。