※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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進化系

 月代主任から火急の呼び出しを受けた。要件は俺の探索者としてのこれからについてだ。俺はプロ資格の中級免許をもっているが、まだプロデビューをしていない。今の俺の立場はクライアントからの仕事は、直接間接を問わず受ける事はできないし、スポンサー契約も結んではならない。一方彼らが接触してくる事も法律で制限されている。スキルも公開する必要はない。これは未成年の探索者を保護するためのものだ。プロデビューすれば、こうした縛りが解除される。もちろん、高校生でプロデビューしている探索者も結構いて、一種のステータスだったりする。そして俺の答は、卒業するまでデビューしないだ。薫子との約束でもある。

 

「了解したわ。私個人としては先輩の考えに賛成よ。それとこちらの方が緊急なのだけど……」

 

 先のキュプロークス戦の映像について、問い合わせが殺到しているらしい。剣風姫と魔女姫様は有名人なので、残りの男子生徒、つまり俺についての照会が集中して、接触の許可を求めてきてるという。

 

「映像の発信元の市役所が強硬なのよ、安易に接触した所には、映像の使用を拒否すると通達してきてるの。それに地元の議員さんからも、デビュー前の探索者保護を言ってきたわ。御上君の名前も伏せるわね。協会職員としては、華々しいデビューをさせてあげられなくて残念だけど」

 

 デビュー前の探索者保護には、過度なマスコミの報道や拡散の禁止も含まれている。生徒会長の父親の市長や、委員長の祖父の議員先生でも動いてくれたのか。思惑はどうであれ、過去親父や妹の件で色々あった俺には大助かりだ。

 

「でも気をつけなさい。お二人とも有能で野心家なのよ。特に御上君は両家の娘さんとも親しいから利用されそうで、保護者としては心配なのよ。市長の娘さんなんか、大人顔負けのお色気だわ、あなた誘われたら絶対ついて行くでしょう」

 

 義母に何か言われているのか、ギルドの担当職員の人妻が、俺の保護者になっていた。だけど問題はない。雫子はもう堕ちているし、生徒会長なら大歓迎だ。

 それにシーナからはハニートラップの対処法について指導を受けている。誘惑を撥ねつけるだけ、専守防衛では駄目だ。逆襲して徹底的に抱き潰す、後は知らんぷりをする。罠は避けるより食い破る方がカッコいい。俺は自信満々に言い放った。

 

「友人として親しくするのは当然ですよ。だけど僕はハニトラには屈しません。そんなに心配なら、月代主任が僕を誘って下さい。人妻の誘惑は魅力的ですから」

「へぇ、今のちょっとゾクッと来たわよ」

 

 

 

 二人で軽口を叩き合いながら、延び延びになっていた俺のスキル登録に話題が移った。

 

「そう言えばスタンピードでも新しいスキルを会得したそうね、暫定でいいから登録してくれないかしら。最近探索者のスキル拾得率が上がっていると、報告が上がっているの」

 

 スキルを連続して拾得しているのは、俺だけではないらしい。いい機会だ。俺は言われるままにスキルを分類していく。

 

 公開スキル

『身体強化』ダブル 『魔力強化』ダブル 『戦斧術』ダブル 『自己回復』 魔眼『魔力視』 『アイテムボックス』 『俊足』 『洗浄』 『衝撃波』 『強靭』 水魔法『給水』 風魔法ダブル『風衣』 『鎌鼬』

 

 ダンジョン攻略に必要なスキル。俺がプロデビューした時はこれが一般に公開される。拾得したスキル数だけ見れば上級者だが、まだ使いこなせていない。それに彼らも、いくつかスキルを隠しているだろう。

 

 非公開スキル

『美声』 『容姿』 『性技』 『性豪』 『避妊』 『記憶』 『体術』 『知力強化』

 協会には届け出るが、一般には開示されないもの。ダンジョン攻略にあまり関係ないスキルはここ。自衛隊、司法、警察関係者のスキルも通常は非公開。『体術』と『知力強化』は公開スキルに入れる探索者も多いが、非公開にした。先日人狩りに会ったので『体術』は護身用に、『知力強化』を習得しても、俺は一向に賢くなる気配がないのだ。やはり知性なき怪物からの出自がいけなかったのか。

 それにしても俺の非公開スキルは、女性との関係を円滑に進めるものばかりだ。『記憶』だって、学業より男女の営みで役立っている。『体術』はベッドでプロレスファイトが楽しめる。『知力強化』も案外性知識を強化するものかもしれない。

 

 保留スキル

 土魔法『アースファング』 『結界』

 非公開スキルのうち、よく分からないスキルや有用すぎるスキルが回される。特にキリ香のようにローティーンが不相応に強力なスキルを習得した場合、所有者保護の観点からここに分類される。時期を見て公開される事が多いが、所有者の将来は保証されたようなもの。

 

 秘密にするスキル

 魔眼『透視』 『話術』 『唯我独尊』 『わからせ』 『運命操作』 『器用』

 上級者はとんでもないスキルを切り札として隠し持っているという。だが俺のは危ないスキルばかりだ。『器用』はヤバ目のスキルを引いた時の生贄にする為取ってある。R-18スキル『わからせ』はやはり社交のスキル、男女の関係を円滑に進めるスキルの様だ。助かっていると思う。『唯我独尊』については相変わらずさっぱり分からん。

 

 番外

【魔導】ダンジョン産のスキルではなく、シーナから貰った師弟の証。魔法の理解度が高まる。これを得てから魔力の扱いが上手くなった。

 

 

「そう言えば朱美たちはどうしました。返信がないのですが、ダンジョンに潜っています?」

「そうよ。無理のない範囲で調べてもらってるわ。今回のスタンピードの影響で異変があったら大変だし」

「そう言えば未登録ダンジョンのスタンピード、こっちへ向かってきましたよね。何か理由でもあったのですか」

 

 俺は今更ながら疑問を口にした。モンスターは、未登録ダンジョンのあった港湾地帯から徳島ダンジョンまで、ほぼ一直線に向かってきた。人食いの奴らが、昼間人口の多い市街地を目指すのは納得できる。ガーゴイルどもも、探索者の発する魔力と敵意に反応して、ギルドを襲撃したのかもしれない。だけど月代主任は真顔になった。

 

「こちらに向かって来ているなら、ダンジョンを開放して魔物をすべて引き込めばいいなんて暴論もでたわ」

 

 過去、別のダンジョンにモンスターを移住させる実験は何度も試行されている。狩りやすく有用な資源でもある特定の魔物を繁殖させるためだ。結果は全て失敗、移行先のダンジョンから魔力の供給を充分に得られなかったり、原住の魔物から攻撃されたりで、定着しなかった。その論で言えば、ここにスタンピードの魔物を引き入れると、最小限の損害で解決できる。しかし、数千匹の魔物に侵入されて同じ結果になるとは誰も保証できない。港湾地帯とここは数キロの距離しかない。最悪はA級とB級ダンジョンの同時スタンピードだ。さすがにこの案はボツになったらしい。

 

「偉い人はお気楽よね、口出しするだけで、しわ寄せは現場に降りかかるの。今も未登録ダンジョンをどこが管理するかで喧々諤々よ」

 

 国と市のどちらが新しいダンジョンを管理するかで揉めているという。これにいくつか実績のある大企業が参戦を検討しているらしい。新しいダンジョンはお金になる、子供の俺でも分かる。B級ダンジョンの管理を委託されて赤字の企業はない。それに今回は徳島市の既存の施設を利用できる。周囲が更地になったのも大きい。最小限の投資で、速やかに営業に漕ぎつけられる。

 

 

 

 市長が調子に乗っている、瞬間湯沸かし器の老害は引退しろ、ヒートアップした月代主任を、俺はひたすら宥めていた。その時、室内の警告灯に黄色がともり、職員が駆け込んできた。俺が側にいるのを見て職員は報告を見合わせるが、主任は促した。

 

「上層で異常が発生。スライムらしき新種の大型モンスターを三体確認、二体は調査中の探索者と交戦中。残り一体はエントランスへと昇ってきています。止められません」

 

 上級探索者は調査の為、未登録ダンジョンに潜っている。ならば交戦しているのは、朱美や詩央達中級探索者だ。それが複数でも苦戦するのか。

 

「すぐにエントランスに向かいます。マニュアル通りに選抜者以外の人は避難準備を。御上君も探索服がないなら、ダンジョンに入れられないわ。すぐに避難して」

「今は非常事態です、そのマニュアルは適応外です」

「助かるわ。一緒にエントランスに来て。戦える探索者は、今の時間殆どダンジョンに潜っているのよ。それに気になる事もあるの」

 

 主任の説明によると、スタンピードの魔物全ての侵入を阻止したわけではないらしい。乱戦の最中、オーク辺りに寄生していたのであろう、スライムが三体、エントランスから侵入したのが監視カメラに写っているという。目撃した探索者もいたが、目前の脅威と最弱の魔物では優先順位がまるで違う。検討の結果、過去の事例からすでに消滅していると結論づけられていた。

 

 

 

 エントランスでは中級探索者達が新種スライムを待ち構えていた。攻撃は魔法職が担当、盾役が護衛についている。近接戦闘のアタッカーは全員後方に下がっている。登ってきた。スライムというより雲丹のモンスターだ。体長、体高とも4m位のお椀型だが、棘がわらわらしていて倍ぐらいの大きさに見える。炎弾や石弾で攻撃しているが、密生した棘に阻まれ体に届いた様子はない。折れた棘もすぐに生え変わっていく。それどころか、魔法職に向かって棘をしきりに射出している。『石槍』か? これを盾持ちが弾いていた。

 月代主任が控えているアタッカーに状況を尋ねる。

 

「奴の棘が邪魔して剣や槍が通らない。それに刺突を躱しきれない、怪我人が何人もいる」

「残り二体、こいつより一回り小さい3m位のヤツは討伐されたわ。一匹は魔法職の飽和攻撃で再生が弱まった所を皆でタコ殴り、もう一匹は遠方からどこかの少女が斬撃波で真っ二つ。でもガス欠やクールタイムでこいつにまで手が回らなかったのよ」

 

 朱美がやってくれたのか、『斬撃波』が通るなら『衝撃波』も通るはず。それに奴はダンジョンから出ようとしている。スタンピードでもないのに魔素の少ない野外へ出るとかこいつには自殺行為だ。俺と主任は顔を見合わせた。

 

「討ちましょう。外へ出られたら私達は全力が出せないわ。この個体が消えるまでにどんな被害が出るか予想できません。御上君、奴を弱らせる事は可能かしら? 強すぎて鑑定が通らないのよ」

 

 主任の『鑑定』をはじく程強いのか。俺は試しに『鎌鼬』を放った。だが奴はその軌道を読んで、棘を生やすと不可視の刃を受ける。

 

「こいつは魔力が視える、いいえ、感じることが出来るようです。もう時間がありません。衝撃波を使います、皆の退避を」

 

 言われるまでもなく探索者達はエントランスから退避していく。その中で、月代主任だけは距離を取るものの退避しない。疑問に思う俺に彼女は笑う。

 

「なめないでくれる。私は薫子さんのチームで防御担当だったわ。これでも障壁の二つ名持ちよ」

 

 事務屋と思ったらまさかの武闘派だった。道理でこれまで何度も現場を任されていたわけだ。

 俺はエントランスの出口前に立ちはだかった。首魁を倒してから今回が初めての戦闘になる。身体の奥底から生命力と魔力が溢れ出し、細胞の隅々にまで行き渡る。新種スライムの気配が、いや魔力が変わる。何故か奴が最大限の緊張と警戒をしていると理解した。外に出たければ、俺を倒して行け、俺の挑発も奴に伝わった気がした。

 お互いの距離が20m、超人と魔物には一触即発の距離で双方が動く。『石槍』が連続して飛んでくる。先程までとはけた違いの速さと威力、そして何より明確な殺意、俺を殺すという執念が伝わる。これ程までの殺気を魔物から向けられたのは初めてだ。これを浴びて俺の魂が歓喜に震えた。命と魔力に加えて闘気も全身にみなぎってくる。

 幾本もの『石槍』をほぼ上半身の動きだけで躱す。スキルなき人には、俺の体がぶれて槍がすり抜けていったように見えたであろう。地を踏みぬいて加速する。素の能力も、『身体強化』も『風衣』も全てがランクアップしたようだ。そして俺の思考も加速される、俺が緩慢に、奴が止まって見える程の錯覚に陥る。

 新種スライムの全魔力が前面に集中した。無数の棘が密集して、俺に迫る。攻撃と防御を同時に備えたこのファランクスは、奴の死力だ。更にスライムとは思えぬ速度で突進してきた。俺も迷うことなく『俊足』を発動し、双方が激突する。

 

 結果は分かっていた。『衝撃波』の後には、砕け散った無数の破片とモンスターの体液が散乱している。当然魔核も破壊した。意外だったのは俺の手に命を奪った感触がはっきり残った事、ダンジョンの仮初の命ではなく、本物の命を奪ったという実感がわいた。

 

「最後に鑑定が通ったわ。このスライムは土属性よ。知っていると思うけどここのダンジョンのスライムは無属性。未発表だけど港湾のダンジョンのスライムに無属性は確認されていない。土、水、火、風いずれかの属性を持つの」

 

 あり得ない可能性に興奮したのか、月代主任は上気している。人妻の艶っぽい表情に見惚れた。だが、残心を忘れたわけではない。俺は『風衣』で彼女に飛び掛かるとそのまま押し倒した。主任の立っていた後ろの壁が融解液で溶け始めている。倒したはずのスライムの一番大きな破片から傷ついた魔核が覗いて、飛び散った体液が集積されていた。再び水魔法で俺達を狙う気配もあった。

 狂おしい程の生への執着が瀕死のスライムから伝わってきた。俺は無言で『鎌鼬』を発動させて魔核を砕く。スキルと一緒に、奴の無念も俺に届いた。カエリタカッタノニ……。だけど俺の感傷かもしれない。

 

 

「どういう事、今度の鑑定では水属性。まさか寄生でもしていたの」

「いえ、俺の魔力視でも同一個体にしか見えません。戦った感じでは、一つの身体に二つの命を持った生き物ですね」

 

『魔力視』で視ていたが、魔力の波長は同じだった。それに『衝撃波』の一撃で、こいつの魔核は完全に破壊した手応えがあった。普通に考えると、別属性の魔核を二つ持つ新種スライムという事になる。だが一体で二つ魔核を持つモンスターは確認されていない。

 主任を助け起こすと、何故か真っ赤になっている。

 

「あ、ありがとう、そのぉ~、何か服を着て」

 

 学校の制服がズタボロになっていた。特に上半身はほぼ半裸だ。俺は凄い格好で人妻に抱きついていた。それに胸や腕に裂傷が出来て、今更ながらに血が出てきた。棘の破片と魔力爆発によるものだろう。明日から学校に何を着ていこう。即物的な想いに囚われていると、臨戦態勢の集団が上がってきた。朱美や詩央の顔も見える。俺は二人に爽やかに声を掛けた。

 

「探していたよ。二人とも元気そうでよかった。特異種と交戦したって聞いたから心配していたんだ」

「何が心配してたですって。また危ない事して。探索服も無しでダンジョンに入って大技使ったわね」

 

 誤魔化されなかった。怒る朱美を月代主任が宥めている。詩央は何も言わず、即座に俺の治療に取り掛かった。癒しの魔力が入ってくる。詩央と同じ、優しく儚げな魔力だ。実に心地いい。これだけでも詩央がどんなに俺を想っているか分かる。だけど波長に僅かな乱れがあった。

 

「ありがとう、もう大丈夫だよ。それに詩央は無理してるでしょ」

「この力はあなたの為に願ったもの。わたしの魔力を捧げたい」

 

 詩央の回復魔法が俺の体を治療していく。俺には自己回復がある。相乗効果で傷口はみるみる消えてた。もう痛みもない。戦闘で昂った俺の心も、いつの間にか鎮静化されていた。だが突然詩央が脱力して俺へと倒れ込む。

 

「詩央!」

「詩央姉はずっとお化けスライムにやられた人達を、回復魔法で治療していたのよ」

「気づかなくてゴメン、僕はいつも詩央に甘えてばかりだ」

 

 腕の中で力なく笑う彼女は幸せに満ちた表情をしていた。彼女をお姫様抱っこして医務室へ向かう。左右の探索者達が拍手して見送ってくれる。はにかむ彼女に言い聞かせた。

 

「今日は詩央が主役だよ。僕たちは命を奪うだけだったけど、詩央は幾つのも命を救ったんだ」

「いいな、詩央姉は披露宴で新郎に抱っこされるお嫁さんの様。わたしは介添え役だね」

 

 朱美が羨ましそうだ。俺は新床に初夜の花嫁を運ぶ新郎の姿を思い浮かべていた。

 

 

 

 詩央を医務室のベッドに降ろすと、名残惜しいがギルドを後にした。今の俺はジャージ姿だが、下はマッパだ。ゴワゴワして着心地がすこぶる悪い。二人からは絶対に寄り道せずに、速やかに帰宅するよう命令された。言われなくても、これでうろつくのは変態さんだけだ。女の子の前でファスナーやジョガーパンツを降ろして喜ぶ恥ずかしい人達が、この世には存在するという。

 

 新種スライムにはダンジョンの仮初の命ではなく、己の力で生き抜く正真正銘の命を持っていたように思う。そして個としての意識もあった。奴の意識と能力はスタンピード、ダンジョンからダンジョンへ「渡り」をしたことで芽生えたのか。俺は疑似ダンジョンで戦った、ゴブリン首領や蝦蟇がえるを思い出した。あいつらの異常行動も今回の新種スライムに共通するものがあった。魔物にとって異なるダンジョン、別世界へ渡ると進化して強くなる、そう思ったのは「みよう本」の読み過ぎだろうか。

 

 シーナはダンジョンには女神さまの無聊を慰める側面があると言っていた。俺はダンジョンの試練を乗り越えて生物として進化した。命の頑張りに満足されたのか、破格のスキルが与えられた。ではモンスターにはチャンスはないのか。女神さまが万物を慈しむのなら、当然あると思う。人間側だけがいい思いをするのは不公平だし、楽しくない。魔物にも平等に与えられるべきだ。ヒトとしては危険思想だろう。だが、ダンジョンの流儀に染まっていく俺は、ダンジョンの事を最優先に考えるようになってしまっている。

 それにどうせ進化するなら美少女モンスターがいい。徳島ダンジョンのハーピーだって、進化して賢くなれば意思疎通できるかもしれない。ハーピー達は気にいった冒険者からお肉をもらうと、お礼に羽を一枚抜かせてくれる。恥ずかしがったり感じたりして、もじもじするのが可愛らしい。

 

『みよう本』にも美少女モンスターを進化させて仲良くなるお話は多い。美少女モンスターは普段カプセルやカードに封印されている。だけど主人公は彼女達と寝食を共にする。人間の女の子と同じように扱って信頼を得ていく。そして難敵を倒してモンスターはより美しく、強く進化する。子供の俺は羨ましく思う反面こう思ったのだ、愛が足りないと。

 あそこまでイチャイチャして大切に思うのなら、どうして結婚しないのだろう、封印できるなら百人と重婚しても困らない。いたいけな幼女モンスターでも無問題だ。「みよう本」には、民法の婚姻に関する規定はモンスターに適用されないと書いてあった。これは主人公にも当てはまる。10歳とか12歳の主人公がモンスター美少女と事実婚しても、人の定める法にはふれない。何と不甲斐ない、純粋な子供だった俺は大いに憤った。

 この熱い想いは誰にも話したことはない。美少女モンスターとお友達になりたいと言っただけで、惨い折檻を受けたのだ。進化させて重婚したいとか知られたら、死ぬより辛い目に合わされるのは分かっていた。

 

 

 

「御上想夜さんですよね」

 

 美少女に進化しそうな女の子から声がかかった。

 

 

 

 

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