素行不良とされた俺の奉仕先は意外にも、以前楠田幹之輔さんの管理していた街角ダンジョンだった。今はC級に昇格して、協会と自衛隊が共同管理している。佐那ダンジョンと仮命名されている。まだ一般には非公開だ。C級だが非常に小規模なので、条件に合う探索者を揃えれば、少人数でも管理が可能なダンジョンだった。
ゾンビ戦での悪臭対策に『洗浄』スキルが必須、ゴーレムには剣より斧や棍棒が有効、飛行タイプのモンスター用に『炎弾』『石弾』等、攻撃魔法が使える事。つまり今の俺であれば単独で管理が出来る。元々、異空間を発見した縁もあって、ゾンビとゴーレムエリアの調査を手伝っていた。勝手は知っている。近場の徳島ダンジョンに送り込むと、また俺が港湾ダンジョンに潜入しかねないと判断されたのかもしれない。まずは楠田家に挨拶を済ます。ダンジョンが生成される前に建てられたであろう、年季のいった二階家の玄関で三人は出迎えてくれた。
「幹之輔さん、ご無沙汰してます。お変わりありませんか。これからしばらくお世話になります」
楠田幹之輔爺さんは前回出会った時より矍鑠としていた。『自己回復』スキルの影響だろうか。休校になっているせいで、愛望と浄見ちゃんの姉妹も一緒だ。
「この前はお礼も出来んかった。自分の家と思ってくつろがれるがいい」
ここのダンジョンの異空間には昼夜がある。定期的に泊りがけでの調査が行われていた。俺もそれを引き継ぐ訳だが、急な奉仕活動のため、自衛隊の宿泊詰所の使用許可が間に合わなかった。田舎なのでホテルや旅館もない。そこで協会が幹之輔爺さんに相談したところ、快く自宅へ泊めてくれることになった。後方の愛望の顔は赤らみ、目隠れ女子の浄見ちゃんははにかんでいる。
ここの調査隊は先日のレイド戦に参加させられたらしい。自衛隊も後方支援で、大半が港湾へと移動した。言葉は悪いが、ダンジョンを独占できるようでちょっと嬉しい。これから24時間以上、調査探索することになる。楠田家に宿泊するのは明日の夕方からだ。愛望ともゆっくり話したい。
里山に佇む境内は、土と緑の香りが濃ゆい。ダンジョンの試練を受けた時、草木は芽吹いて新緑だった。今は青葉が茂っている。俺もかくの如く健やかに成長したのだろうか。道を誤っていないか。スキルを人の為に使っているか。過ちもあっただろう、それでも懸命に走ってきた。今の自分は正しいのか。自問するも、答え等得られるはずもない。
鈴を鳴らして汚れを払い清める。二礼二拍手一礼、礼を尽くしてから拝殿に入った。ダンジョンの探索も神事のうちという事で、更衣所や休憩所として使う許可は下りている。古びた天井からは干乾びた、でも不快ではない匂いが漂う。人が祈りをささげた歴史だ。連子窓からの木漏れ日が柔らかい。ふと神域という言葉が頭によぎる。神様に見られている気がする。否応もなく心が引き締まった。ここの神様には最大限の敬意を払おう。
着替えようとしたら玉砂利が鳴った。誰かが近づいてくる。軽やかで元気の出る歩き方だ。愛望だった。
「想夜君、お弁当作ったの。ダンジョンで食べて。それとも今?」
多分、朝から心を込めて俺のために作ったのだろう。あの場で渡さなかったのは、愛望も俺と話したかったからだ。手際よく神饌台を取り出すと、三宝に供物を並べ始める。氏神様へ願い事をするつもりだ。ひたむきなのが眩しく、引き締まったお尻がそそる。男性ならお風呂でも、食事でもなく、目の前の恋人を真っ先に選ぶのが作法だ。
「想夜君が無事に帰ってきますよう」
「ご縁を下さってありがとうございます」
照れも気負いもなくお祈りをする。幹之輔爺さんに連れられて、小さい頃からお参りを欠かさなかったようだ。素朴な姿は、彼女の心の有り様だった。健やかな色気が香り立つ。
愛理との出会いは強姦から始まった。名前も知らないお姉さんを犯した事で、二人の縁が出来たのだ。手を合わせている彼女を後ろから抱き締める。すくんでしまった襟首に唇を這わせ、熱き思いを伝える。言葉だけでなく行為で示す、最初の逢瀬がそうであったように。
「ずっとこうしたかった。愛望が好きすぎて我慢できない。僕の愛がどんなに深いか、その躰に刻みつける」
「嫌っ、聞こえちゃう。人が来ちゃう、お願い、やめよう」
「もっと縁を深めたい」
自衛隊の詰所はこの奥、神社に並んで建てられている。距離的には60mほどだ。港湾ダンジョンに人を取られているとはいえ、常に二人は常駐している。愛望が悲鳴か嬌声を上げれば。直ぐに駆けつけてくるであろう。もちろん、俺には『結界』がある。見つからないようするのも容易い。
でもそれでは趣に欠ける。野外ではらはらしながら情を交わす、こちらの方が何倍も刺激的だ。それに境内はそもそも神様の結界とされる。愛理との契りを奉納しよう。俺が『結界』を張れば見てもらえないではないか。もし氏神様がお気に召すなら隠してくれるに違いない。
ズボンのベルトを外す音に愛望も興奮する。俺の善意を信じた挙句、連れ込まれて弟より年下の少年にあそばれてしまったのだ。心を尽くした説得も、部活で鍛えた躰も男の子の肉欲に火を注いだだけ。名前も知らない男の子の玩具にされて、その子を好きになってしまう。愛望は抗えぬ快感を思い出して、まともに立っていられない。腰が砕けて神饌台に両手をついた。嫌、嫌とお尻を横に振っている。俺は構うことなく下着を弄る。
「氏神様が見てる、バチが当たっちゃう」
愛理が蚊の泣くような声で懇願する。部活で鍛え込んだ両脚で懸命に踏ん張っている。だけど俺が聞き入れない事は、とっくに躰に教え込んである。辱められた記憶が呼び起こされた。抵抗しても彼我の差があった、『性技』前では為す術もなく屈してしまった。しなやかな太ももを撫でさすればいいように喘ぐ。俺は揉みしだかれて緩んだショーツを無理やりずらした。愛望もこんな形でまた犯されると予想だにしていない。怖気だって小刻みに震えている。構わずに、猛々しい俺の摩羅が、股間の割れ目を切り裂いていった。
「ご照覧あれ」
「ひいぃぃぃ~~~」
はしたないまでに濡れてしまった奥の院に御柱が刺さる。神代の昔から綿々と繰り返される人の営み、何一恥じる事は無い。神前で氏子の女性と情交する。いつにまして興奮する。俺の肉棒が熱い。それは愛望も同じだった。言葉とは裏腹に、もう達してしまいそうだ。
「おかしくされる、いけないのに、別のわたしがおかしくする」
ここの神社の縁起は村を救った来訪神を祭るため、夜伽をした村長の娘の子孫が起こしたものであるという。今の愛望は、村長の娘と同じ心境かもしれない。突然、知らない男に父親から伽を命じられる。村の為とはいえ、嫌に決まっている。だけど相手は洞窟の悪鬼を屠る恐ろしい怪物なのだ。悍ましい行為に泣き濡れて耐えるも、未知の、この世のものとも思えない快楽に溺れていく。変わりたくない、娘は儚い抵抗を試みるも、神様の好きにされて悦ばされていく。涙ながらの抵抗も、破瓜の悲鳴も、屈してしまった絶頂も、全部家族に聞こえていた。
「ほら、神様だってこんなに悦んでいる、さあ、願いを言って」
もう俺の悦びと神様の悦びは、今の愛望には同義である。彼女が望みを祈願した。
「あぁ~、末永く、想夜君と一緒にいたい。はぁー、はぁー、はあ~~~、一緒に神様のダンジョンを守りたい」
ここで愛望は境界を迎えた。歓びを堪えきれない。大きく口を開けた。この先を許せば、幾つもの悲鳴が溢れ、詰所の隊員のみならず、麓の幹之輔爺さんにまで届きそうだ。素早く手で塞ぐ。すると悶絶して暴れ出した。これも許さない。片手で拘束すると、脈々と愛の営みを続ける。股間からはとめどもなく露が滴り、首筋には玉の汗が光った。
「うんっ、うっ、ううっ~~~」
ぐつぐつと煮詰まった法悦が、行き場を失い体内に蓄積される。吐き出さないと自分でなくなる。愛望が願うのは、人の身を超えた快楽から逃れたい、それだけだ。だが俺は容赦しない。圧倒的な強者の力を示す。泣き喚きたい、喘ぎたい、悶えたい、彼女の意思を全否定して犯す。一方的に支配して快楽を貪る。神と人が交わればこうなるのではないか。
「うぐっ、んんん~~~」
気合を入れるごとに御柱が立ち上がる。それにつれ女体も立ち上がって来る。腰の律動も下から上へと、天を目指して御柱がそびえる。神様へ向けての一突きで、愛望の腰が浮く、爪先立つ。腰を落とせば、お尻の重みがのしかかる。俺の股間がたぎる。女を好きにしているという充実感で、身体に自信が漲った。
不安定な体勢からの強烈なマラの引き絞り、狂わんばかりに愛望が苦悶する。渇いた床に涙だけが降った。もう魂は昇天している、心は常世を迷っているのではないか、愛望の子袋に精を寿げば、その躰は崩れ落ちた。
前菜のつもりで抱いたら、夢中になってしまった。愛望のほうも生意気な弟に屈服した姉の気分に浸っている。縋りついて俺の胸の中だ。俺は優しく撫でてやっている
「誰かに見られたら、わたし生きていけなかったよ」
「神様も二人の仲を認めたくれんだ。だから隠して下さった」
「残酷な想夜君、可愛いのに強い。もう逆らえないの。何でもするの、だから捨てないでよ」
氏神様は縁結びの神様だ。これで愛理は堂々と俺の女になった。彼女に命ずる。
「明晩、夜伽をして」
「駄目よ、妹とは、浄見とは部屋が同じなの。知られてしてしまうわ」
「浄見ちゃんは早く寝かしつけて。じゃないと、二人の契り、見てしまうよ。僕はそれでも構わないけど。でも覗かれたらもっと激しく愛望を泣かす。浄見ちゃんにお姉ちゃんが僕の女になったと分からせるんだ」
「ああ、そんな……」
夜遅くまで起きている悪い子は来訪神に怖い目に合わされる。その時は神事の通り、清見ちゃんにお仕置きしよう。言い訳する愛望の唇を塞ぐと、俺は晴れやかにダンジョンへと降りた。欲望を吐き出して、禊を済ませた気分になった。
月代主任の目の前で魔石を山積みにする、きっと喜んでもらえるだろう。彼女は立場上俺に厳しく当たらねばならないが、色々配慮してもらっている。反省して誠意のある所を示したい。ちなみに奉仕活動中に得た魔石やアイテムは、全て無償で協会に提出しなければならない。もちろんそれで構わなかった。スライムも含め、眼に見える魔物は全部狩っていく。
愛望からのお弁当を食べる前に済ます事がある。ゾンビ狩りだ。こいつらは臭うので、食事の前に終わらせたい。『風衣』を纏ってひたすら狩る。これで臭いをある程度遮断できる。それに剣や槍より、部位破壊できる俺の戦斧のほうが相性はいいのだ。前回より強くなっている自信はある。戦闘ではもう圧倒的な差があった。偶に出てくるスケルトンや餓鬼、狂骨からレアキャラのリビングデッドまで問題なく片付けていく。魔石も溜まり、アイテムの兵糧丸も順調に回収していく。
脆すぎる、せめて映画で見たゾンビのように強かったらいいのに。出来ればレイスも居て欲しい、身勝手な事を考えながら狩りつくしていった。
終了後、『洗浄』を武器にも衣類にもかけてスッキリする。ここまで楽にこなせるなら、皆の嫌がるゾンビエリア、指名依頼を出されそうだ。それもちょっと困るのだが。
そのままゴーレムエリアへ移る。ゴーレムのように硬くて動きの鈍いモンスターは、俺の最も得意とするタイプだ。それに俺は『魔力視』で魔核の位置が分かる。石ゴーレムまでは一撃必殺、アイアンやコッパーでもほぼそうだ。前は魔核が頭にあった場合は、膝を砕いて二撃必要だったが、『風衣』で数メートル跳び上がれば、特異種の巨大ゴーレムでも対処できた。切り札の『衝撃波』を出す必要もない。魔鉄や魔銅も溜まっていく。温すぎる。金塊とか落ちないものか。
それよりも、自動人形とか出てほしい。『みよう本』の時代からオートマタと言えば毒舌クールの美少女と相場が決まっている。俺はメイド服を着た自動人形をダンジョンに強く願った。
愛望のお弁当を食べながら、俺はダンジョンに深く感謝した。ダンジョンは俺に念願のスキルを与えてくれて、強くしてくれた。命を張って試練に挑む、その高揚感と達成感は替えが効かない。はた目からは愚かと思われるだろう。だが神様と遊ぶとはこういう事だ。
俺は親父をダンジョン災害で失っている。薫子は夫を、キリ香は父親を亡くしている。言葉は悪いがこうした人達は当たり前にいる。それでもダンジョンを嫌いになったりはしない。もちろん俺もそうだ。選ばれてスキルを受け取った者の宿命かもしれない。かつて人は山海の恵みに感謝しながら生を繋いでいた。だが自然は優しいばかりではない。その過程で幾万の命が消えた事か。それでも人は恨む事なく営みを続けた。人とダンジョンの関係もこうあって欲しい。ダンジョンとは森羅万象と思う。
お待ちかねの異空間ダンジョンの探索に移る。異空間ダンジョンはその景色もさることながら、産出する魔物、アイテムとも多岐に及ぶ。ここでも様々なゴブリンや四つ足獣、何種類もの鳥類、希少だが節足動物や魚のモンスター、トレントも確認されている。アイテムも魔物由来のものに加えて、薬草や鉱物資源、果実、卵など、採取系のものも多い。このうち食糧系のアイテムは美味であり滋養強壮にも富むので、ダンジョンに入れない人達からの人気が非常に高かかった。
その一方で、異空間ダンジョンにおいては、探索者側に求められる水準も高い。チームなら全体のバランス、ソロなら多様なスキルが必要だ。もっともここでは、出入り口までの距離が格段に短いので、何かあれば逃げ帰れるという大きなアドバンテージがあった。
最初に森林地帯へ向かう。前回足を踏み入れなかった所だ。ここは何種類か、フルーツ系のアイテムが発見されている。隠れている蜥蜴や蜘蛛、蟷螂なんかを『透視』と『魔力視』で確認しながら狩っていく。子供の頃の思い出が蘇る。楽しい時間はみるみる過ぎていった。いくつか果実も発見する。本来なら最初に見つけたものは神社に奉納したかった。残念ながら、今回は詰所へ届けなければならない。
草原へ出て、鷹系のモンスターと初戦闘を行った。やつらは嘴と鍵爪の通常攻撃のほかに、翼に『エアカッター」を仕込んでの斬撃がある。こちらも『石槍』と『鎌鼬』で危なげなく応戦する。久しぶりにここへ来たが、戦闘が軽い。俺の理性が慢心するなと戒める。だが感情は、不遜にも強い敵を求めて止まない。
第二波が来る。俺はハルバードに風を載せて身構えた。三羽のイーグルが加速して急降下してくる。これまでの奴とはスピードも魔力も桁違いだ。だが一触即発の寸前、モンスターは空中で静止しまう。時が止まった? まさか時間に干渉するスキルが使われたのか。俺には何も感じ取れない。三半規管が揺さぶられてバランスを崩す。空間がシャッフルした。