※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

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疑似ダンジョン4 オークの王子様

 下校前のホームルームで先生から説明があった。クラスの雰囲気は重い。

 御上君の家族の承認のもと、管理会社と警察で自宅のカギを開けたが、スマホは充電中のままだった事、コンビニで購入した菓子類や持ち歩いていた防災用キットが見当たらない事、マンションの防犯カメラに帰宅の記録がない事、現時点で他に該当者がいない事から、御上君がダンジョンの試練を受けているのは濃厚であるとのお話だった。加えて、穴はまだ閉じられていないから、頑張っている御上君の無事を祈りましょうと付け加えられた。沈痛な先生の顔を見ていると、なんだか御上君が腹立たしくなっていた、もちろん本人のせいでないのは分かっているが。

 終了と共に朱美さんが出ていく。それを見計らったように、男子の選抜者の二人、柳内君と涸川君が、

 

「先生はああ言っているけど、最悪に備えて心の準備をしておくべきと思う」

「御上のやつ、多分深層に落ちているぜ。知ってるか、生存確率は5パーセント未満だぞ 素人が深層から上がって来ることなんか不可能だ」

 

 言っていることは正しい。ただ格上の朱美さんが出て行ってから、こういう話を繰り出すという性根が卑しい。それと生存確率は現実にはもっと低い。人知れずダンジョンに落ち死んでしまう、その間に誰も引き込み口を目撃しなければ、その人は単なる行方不明者としてカウントされるからだ。神かくしと言われる行方不明者には一部こうした人達を含むと推定されている。

 二人はそれぞれの中学校の同窓を中心に評判が良くなかった。二人とも選抜者に選ばれたのが1年前で選民意識が強く、非行少年の一歩手前という。仲良くなった女子がこっそり教えてくれた。柳内君は副委員長、これは正副どちらかの委員長を選抜者からという学校の慣習から選ばれた。朱美さんは優秀すぎて不在がち、私は他県出身で不適格だったからだ。

 やせぎすの柳内君のスキルは不明だが、涸川君は『剛腕』、自己紹介で自ら暴露した。スキルに相応しい巨体だ。頼ってほしいと言っていたようだが関心がない。

 

 

 

 オークも「みよう本」では人気の高い魔物である。スライム、ゴブリンと並ぶ3大人気モンスターと言ってよい。ヒロインが敗北しても、決して見捨てない。毎晩特訓してくれるのだ。しかも剣だけでなく寝技も伝授してくれる、漢気のあるプロレスラーの様な魔物である。俺も「新人ちゃん」が毎晩オークと特訓するのを見たい気がする。

 さて、首領ゴブリンでお腹いっぱいになった俺だが、オークと実戦してみた。まず棍棒、これは打点が高くて不可と言うか、低身長の俺では2m越えのオークの頭部をうまく打ち据える事が出来なかった。大上段だと何とかなるが防御が心もとない。次に短槍、心臓を一突き出来るが、すぐ折れてしまう。結局、オークの腹を軽く切り裂く、首領ゴブリンの大斧がメイン武器に変更になった。刃こぼれがないので、相当な業物かもしれない。

 大斧でオークを仕留めるには最低2撃、初撃で足か腹にダメージを与え、屈ませてから頭か首を狙う、教科書通りの攻撃が有効と実感する。複数の場合は止めを刺す前に全体を無効化する方が無難。俺の身体能力とオークの走力を比較してみる。大斧を持って走ってもまだ俺の方が早いが、オークはスタミナがある。ゴブリン戦のように消耗戦に持ち込むのは危険等、拙い戦術を組み立てる。

 

 1時間ほど、単独、または少数の群れで実践しながら、探索を続ける。オーク階層の迷路はオークに合わせてか、通路の幅も長さも天井も、広くて長い。もちろん部屋も同様である。するとなんか凄いのを見つけた。「魔力視」で見たこともない大きな魔力の塊を見つける。よく見ると6つ、格別大きな塊と、やや小さめの塊が五つ、オークの集団だ。

 脇道に潜みながら観察してみる。一番魔力の高いオークは頭一つ大きい。マントを羽織り大剣を持っている。何より特徴的なのがそそり立つ男根と、巨大な睾丸である。天に向かって反り返った男根は大人の太もも程である。極悪なカリの返しは銛のそれに似て、突き刺した女を決して逃がさない作りになっている。揺れる二つの睾丸は最高級のマスクメロンの大きさだ。雌を興奮させる甘き汁が、ジューシーに詰まっているのであろう。マントだけなのはいつでも盛るためか? それでいてこのオークには中年親父の嫌らしさがない。むしろ、爽やかなオスの匂いがする。俺はこれに「オークの王子様」と名付けた。

 残りのメスオークたちは、魔力量こそやや劣るものの、俺なんかより遥かに多い。「魔力視」で魔力の違いが色で分かるようになってきたが、全員違う色をしている。全員若いメスで醜いくせに、気高い雰囲気を漂わせている。こいつらを「オークのお姫様ズ」と呼ぶ事にする。「オークのお姫様ズ」はそそり立つ男根を切なげに見ている。彼女達は発情している。俺はタイプの違うお姫様を好き放題する「オークの王子様」を羨ましく思った。

 高貴なオークの集団が視界から消えると冷や汗が噴出した。「お姫様ズ」の一匹でも俺よりはるかに強い。それが5匹と更に「オークの王子様」。絶対にこいつらとは戦うまい、と心に誓う。幸いにしてオーク達は俺がやってきた方角、ゴブリン部屋に通じる方へ行ったようだ。と言う事は「オークの王子様」達の来た方向に上階への通路があるかも。あいつらがもう少し離れたら急ぎ行ってみよう。探索はなしだ。

 そんな思いも空しく、「オークの王子様」達が引き返してきた。拠点に戻るのかと思っていると、なんとこちらの路地へと入ってくる。見つかったのかと青くなるも、どうも違うらしい。「オークのお姫様ズ」ぎゃあぎゃあ言いながら、「王子様」に纏わりついている。「お姫様ズ」の言葉は俺にも判る。

 

「キャイ キャイ わたしが一番、私が先よ、今度はボクの番」

 

 と騒いでいるのだ。「お王子様」に照れはない。「王子様」は全員を泣かす自信がある。こいつらここで盛るつもりでいる。

 付き合っていられないと、路地を奥へ曲がるも行き止まり、なんと袋小路だった。『透視』と『魔力視』で確認するも、隠し部屋も隠し通路もなし。正面突破はまず無理。俺はここまで「試練」で健闘してきた方だと思う。俺がミスをした訳でもなく、相手が上だった分けでもない。ただオークの性欲のせいで死ぬのだ。死はいつも突然やってくる。

 

「ふざけるな」

 

 情けなくて腹が立ってきた。絶望的な状況だが、不思議と恐怖はない。格上でも勝てる、諦めるなと鼓舞してくる自分に気づく。ここに来て『唯我独尊』が仕事をしたのか? 『洗浄』で臭いを消す。曲がり角の内壁をよじ登り、乾坤一擲の一撃に賭ける。「お姫様ズ」はメイジタイプが多いようなので、『魔力視』に切り替える。そしてやってきた集団の一番魔力の強い箇所へ、大斧を振り下ろした。

 天井近くより振り下ろされた大斧の斬撃が、「オークの王子様」の男根を切り落とす。大剣を砕いた感触があった。逸物は白濁の粘液を噴出しながら飛んで落ちると、痙攣しながら縮んでいった。そして睾丸が破裂して血と精液が俺に降りかかる。「王子様」が股間を抑えて屈みこむ。眼前に首が落としてくれと言わんばかりに晒される。俺は思わず斧を振る。「王子様」の首が転がり、俺を睨んだ。この間、2,3秒だったが、体感的には長く感じたと思う。

 俺も「お姫様ズ」も呆然としていたが、動いたのは俺の方が僅かに早かった。『俊足』が発動する。子犬が飼い主の足元を駆け抜けるように、俺は「お姫様ズ」の間を疾走した。後方で幾重にも悲鳴が上がる。「お姫様ズ」の一人が泣きながら回復魔法を使おうとしているのを、俺は目の端に捉えていた。可哀そうだが命は消えている、何故ならスキルが俺に入って来たから。

 

 慟哭と怨嗟の声が俺を追ってくる。途中で何度も『洗浄』を使う。「オークの王子様」の精液が彼女達を引き付けているよう感じたからだ。スキルを会得しているが、確認する暇もない。まだ危険な状況だが、死地を脱したせいか、生きたいと、生への強烈な渇望が沸き上がる。同時に体の奥から命が湧き出るのも分かるのだ。ひたすら走って先を目指す。だが、「お姫様ズ」も負けてはいない。肺が潰れても、心臓が破裂しようともそんな事は関係ないと、裂ぱくの気迫で追ってくる。しかも距離は詰まってきている。もうオークというより夜叉の顔だ。

 突き当りの大部屋で、何とか上層へ登る階段を見つけた。「お姫様ズ」は周辺には近づけないらしい。血涙を流し、血の拳で床を叩く。血の涙とか初めて見た。逃げ切り、この言葉が浮かんだ俺は心に余裕が出来た。「お姫様ズ」に軽く手を振ってから上へと進んだ。

 

 オーク層ではスキルは一個しか入手出来なかったな。命が助かると思うと身勝手な事を考え出す。怒りの「お姫様ズ」と戦っても、絶対に勝てない。向こうの方が強いのに死兵になっているからだ。怒った女性の恐ろしさは家族や友人から身に染みて教わっている。さてスキル、どうせ『性豪』辺りと思っていると、

 

『わからせ』……女性を無理やり悦ばせる。18歳未満情報開示不可。但し使用は可。

 

 また謎なスキルが出てきた。無理やりとは強引の事かな? 母さんは大人しめの女性は、時に強引にリードした方がと喜ぶと言っていた。そう言えば詩央先輩は、最初は遠慮しても何度か誘うと嬉しそうについてくる。慎み深い女性の気持ちを汲み取ってあげる、『わからせ』は大人の奥深い社交のスキルかもしれない。

 パッシブスキルなのも悩ましい。俺は15歳になったばかりだから、情報開示には後3年かかる。

 現在は認証技術が進歩してきて、15歳の俺はR15までの権限しかないが、昔は小学生でもR18に簡単に接続できたと爺さんは言う。現金払いであれば、小学生でもちょっとした要領でR18の商品が買えて記録も残らない。昔は良かったと爺さんは懐かしんでいた。俺もそう思う。いずれにせよ、俺が18歳になるまではこのスキルは秘密、開示されてから考えよう。

 

 

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