※この作品はR-18です。

ダンジョン姫はじめ   作:エターナル好希也

91 / 169
「みよう本」★

 「メイド聖女」のサリーは小中学生の頃の俺の憧れの女性だった。淡く明るい儚げな風貌と、勇気と強さ、優しさと慎ましさを兼ね備えた少女だ。

 

「まさかサリー・ラ・プリマヴェルを知っているのか」

 

 俺は驚愕して尋ねた。プリマヴェル家というのは、彼女が転生した地方貴族の家名となる。

 俺の周囲の人達は皆「みよう本」軽く見ていた。「メイド聖女」に限らず、「みよう本」について熱く語り合うなど、これまでは夢のまた夢だった。妹などは、「みよう本」をエロい本だと認識して、俺から取り上げようとする。最大の理解者である朱美と詩央であっても、俺が「みよう本」に捧げる情熱を、お金と時間の無駄と思っている節がある。クラスメイトは存在さえ知らない子もいた。読書家の委員長や先生だってそうだ。

 R―15な俺は掲示板の利用にも制限がかかっている。「みよう本」全盛時代の五十数年前は、未成年が頻繁に荒らしを行っていた。その反省から匿名性が失われ、今日では成人するまでは書き込めない、閲覧はできるのだが。俺の趣味はぼっちだった。とにかく志を同じくする友人が欲しかった。人生の最後でその願いが叶うかもしれない。俺はすっかり元気になった。

 

「当然でしょ。あなたみたいな悪い虫はサリーには相応しくないわ。最期は家族と再会して幸せになるんだから」

 

 沙織が「メイド聖女」を知っていて、肯定的に捉えているのは嬉しい。だけど最期は、という言葉を聞いてちょっと失望した。最終巻は全て再生紙に回されて世に出回らなかったからだ。彼女の知識は浅いのかもしれない。俺は勝ち誇って言ってやった。

 

「ちょっと違う。確かに最終巻は印刷された。だけどダンジョンクリエーションの影響で全て政府に供託されて、再生紙に回されたんだ。世間には一冊も流通していない。出版社に資料が残されているし、後の世の人も、記録が正確だったと確認している。メイド聖女の本当の結末は誰も知らないよ」

 

 同好の士の無知を指摘するほど痛快な事はない。俺の心は優越感で一杯になった。沙織は顔を真っ赤にして、恥辱に震えるに違いない。

 

「へえ、少しは調べているようね。でも最終巻はたった一冊この世に存在するのよ。お話の結末を知らないなんて可哀そうな人」

 

 ところが沙織はマウントを取ってきた。同好の士に誤りを指摘されるほど屈辱的な事はない。

 

「今、その証拠を見せてあげる。お爺ちゃんから託された唯一無二の形見の品、私の一番大切な宝物」

 

 沙織がアイテムボックスから本を取り出し、俺に示した。俺のよく知る「メイド聖女」と同じサイズで、タイトルロゴも同一のものが使われている。一瞬、偽書を疑った。お金持ちのファンが未完の作品に入れ込んで、勝手に続きを出版した例は過去にもあった。だが表紙を飾るのは、成長して聖女の装いをしたサリーだった。彼女はドレスの裾を摘まんで、丁寧なカーテシーで挨拶している。俺が夢にまで思い描いた最終巻の表紙に相応しいデザインであり、絵師も間違えようもなく、これまでと同じ人だ。明かに本物だった。なんで「メイド聖女」の第四巻を彼女が持っている。

 沙織は故人となった祖父から最終巻を譲り受けたと言った。それなら彼女の祖父は、ダンジョンクリエーション直前は壮年期だったはず。そして「メイド聖女」の作者の情報は消失している。俺は愕然とした。失われた最終巻の真実に辿り着いたのだ。

 

「まさか著者献本?」

「正解なんだから」

 

 紙の本が主流であった時代、作者は発売日に先駆けて、自身の著作を受け取る慣習があった。沙織の祖父が「メイド聖女」の作者なら、クリエーションの混乱の直前に献本されていた可能性が高い。勝ち誇った沙織から、作者だった祖父のひととなりを聞く。趣味の世界では、職業や年齢、思想に関わりなく対等だ。あるいは戦場で敵同士だったとしても、たちまちに仲良くなれる。これが道楽の醍醐味だと思う。

 

「お爺ちゃんはね、地元ではちょっとした有名人だったのよ。だけど地位にかまけて驕らない、それは謙虚な人だった。会社もどんどん大きくして、働いている人も取引先の人もみんな笑顔にしたの。子供が大好きで、世の為に力を尽くしたわ」

 

 流石は「メイド聖女」の著者、聖人君主だった。そんな人が触手の表現が巧みとか、色魔やらを嗾けて、女の子を危機一髪に合わせるとか、心躍る描写が得意だった。これこそ創作の醍醐味だろう。作家はクズというのが世の定評だが、俺の知る処、作家で人格者であったのは彼で二人目となる。

 もう一人は、原村狐堂、日本一有名な私設警官が活躍する、「銭形平次捕物控」の作者である。彼は莫大な印税を貧しい人のために使った。西洋音楽が子女の情操教育に役立つと考え、その隆盛のため私財を投じた。自らは清貧に甘んじている。今日、教育現場でクラッシック音楽が盛んなのは彼の賜物でもある。文部省は「銭形平次捕物控」を国語の教科書に掲載して、狐堂の業績に報いるべきだと思う。

 

「サリーはお爺ちゃんの理想の女性として造られたヒロインだったの。可愛くて、優しく、賢く謙虚で、とても強い女の子。側にいてくれるだけで誰もが幸せになれる、笑顔が似合う少女だったの。お爺ちゃんはわたしにサリーみたいになりなさいって、小さい頃からレディとて扱ってくれた。私の名前もサリーから取られているのよ。わたしは頑張った。理想の淑女になるんだから、勉強も習い事も苦にならなかった。サリーみたいに皆を幸せにしたかったわ。そして最後に素敵な人と巡り合うの」

 

 サリー・ラ・プリマヴェルは作者の夢と希望の詰まったヒロインだった。道理で俺と沙織は魅かれあったはずだ。俺はサリーを理想の女性として崇め、沙織は理想の女性となるべく彼女を目標にした。

 

「メイド聖女を世に送り出した作者の人に心からの敬意を。その意志を継いでくれた沙織に誰よりも感謝を」

 

 

 ダンジョンコアが消滅してから空間はひび割れ、大地は消滅している。終わりは近いのかもしれない。さっきまで死にたいと思ったくせに、今は一秒でも長く生きたいと思っている。俺は最後の願いを口にした。

 

「頼む、一生のお願いだ。僕に最終巻を読ませて」

「どうしようかな。いいわ、その願いを叶えてあげる。私を愛して。妹よりも優しくするのよ。手にかけて泣かした女の誰よりも、わたしを可愛がりなさい。どんな女よりも誠実に、世界の誰より幸福にして。あなたを好きにさせられた、その責任を取りなさい」

 

 沙織はそう言うなり抱きついてきた。俺だって力を込めて抱きしめる。熱いべーぜで求め合った。グチャグチャとあられもない音がする。舌を絡め、唾液を注ぎ、お互いの魂を啜るのだ。もう待ち切れない。俺達は相手の衣服を奪うように毟り取る。二人の躰がふれ合った。嫋やかな沙織と華奢な俺、思春期の初めの禁断の遊びにも見える。俺は沙織の薄い胸に吸いついて甘える。沙織は慈愛を込めて、俺を撫でて許した。合わせた肌の温もりを、俺は生涯忘れないだろう。

 いつの間にか挿入していた。沙織も気づかなかったはずだ。ヴァギナが逸物を離すものかと締めつけてきた。俺の腰が激しく動く。沙織も応えて腰を振る。たちまちに愛の蜜が迸り、アメジストの瞳からは涙が溢れた。嬉し泣きだ。この涙が見たかった。これまでの涙は悔し涙だけだったから。

 花のかんばせが綻ぶ。世界の人を幸福にする笑顔から歓びが零れた。世界の中のただ一人、俺だけが観た。

 

「いいんだからぁ~、わたしをこのまま溺れ死なせて。あぁ、想夜、すき、誰よりも好き」

 

 金の鈴の音が鳴る。高く澄み切った嬌声が音のないダンジョンに響き渡る。甘い声が俺の脳を焼く。更なる愛を求めて俺の命が漲った。もっと奥へと進みたい。

 

「僕は全然足りないよ。もっと愛を受け取って」

 

 沙織と魔力を混ぜ合った。最初に彼女を犯したとき、その不屈の意思をへし折って、悦楽へ沈めた性の魔力だ。ゆっくりと、あるいは焦らすように、膣壁に練り込む。躍動する命と、慈愛の魔力がこれに続いた。魔力が子宮へと侵入して、否、沙織に導かれるように、胎内へと取り込まれた。法悦の魔力が誕生する。

 

「欲しいんだから。想夜の赤ちゃん欲しい。産みたいんだからぁぁぁ~~~」

 

 魔力が一つに合わさった。俺の意識が沙織と重なり、世界が拡大されていく。沙織は世界で一番幸せな声で啼く。

 

「あうぅ~、あはぁ~、わたしのぉ~、わたしだけのそうやぁ~~~」

 

 躰は一つになっている。下半身は煮えたぎらんばかりに熱い。はち切れんばかりに膨張し、トクトクと脈打つ。逸物は奥深くボルチオを穿ち、引絞ってはスポットを削った。問答無用に責め立てながら、同時に優しく慰める。

 

「ハア~、ハア~、そうやぁ~~~、好きよ、こんなに好きなんだからぁ~、あっ、あっ、あはぁ~~~」

 

 沙織が脚を絡め、腕を回す。離すものかと抱きしめてきた。俺の下で悦楽の波に揺れている。促されるように、休む事なく射精した。子宮が歓びに打ち震えるのが雁首に伝わる。力を込めば、面白いように痙攣した。濡れた色の悲鳴の中に、魂の声が木霊する。

 

「嬉しいぃぃぃ~~~。いいんだからぁ~。もっとそーやのものになりたい」

 

 二人の心が一つになる。俺は沙織を虜にした。それは彼女の望みでもあった。法の定めのなかった太古、強き雄が美しい雌を征服するのが常だ。俺達は本来のヒトの正しい姿に立ち還った。

 

 

 

「わたし、好きな人にこうやって本を読んであげるのが夢だったんだから」

 

 俺は沙織に膝枕されていた。満面の笑顔を見ているだけで穏やかになる。ダンジョンの崩壊は更に進み、浮島のような大地の欠片がいくつも漂うだけになった。その中の一つに俺達は乗っかっていた。これらがぶつかり合い、粉々となって虚空へと還っていく。やがて二人も虚無へと吞まれるだろう。恐怖などなかった。「メイド聖女」の最終巻が存在していた、それだけで満足だった。

 

 俺と沙織が、もしダンジョンのない世界線で出会っていたらどうだろう。俺は三顧の礼をもって、沙織と親友になりたいと頼んだはずだ。彼女の容姿が今と異なったとしても、それは変わらない。一緒に泣いて笑って、大喧嘩する。たとえお互いが別の相手と結婚して子供ができても、二人の絆は切れたりはしない。生涯に渡って理解し合い、熱い想いを語り合う、そんな人生を歩んだろう。

 彼女が本を開く。表紙のサリーが微笑んで、カーテシーをしてくれた。

 

「それは剣と魔法とダンジョンの世界。人とエルフとドワーフに獣人、様々な種族がしのぎを削り、女神さまが寄り添ってくれた遥か昔……」

 

 最終巻のプロローグだ。どこまでも澄み渡る涼し気な声、沙織が俺だけのために朗読してくれる。この儚き命はまもなく虚無へと還るだろう。それでも俺は最期で最高の幸福を噛みしめていた。こうやって最終巻を読んでもらいながら逝けるのだから。もちろんそれは沙織も同じだ。

 

 

 

 突然、空が開いた。パラパラと何冊もの本が降ってくる。装丁の施された年代物の、多分羊皮紙の本だ。初めて見た。沙織はそれらを拾い集めながら説明してくれる。

 

「これグリモワールね、この本は回復魔法。こっちの大きいのは水、火、風、土の四つの魔法が使えるわ。これ選抜者でない普通の人でも使えるわよ。もちろん本人の魔力量で、威力と回数は制限されるけど。私達の世界でダンジョンに取り込まれた遺物が、時空を超えて戻ってきたんだと思う」

 

 大発見じゃないか。これまで一般の人はどんなに望んでも魔法が使えなかった。でもこの魔導書があれば限定的ながら夢が叶う。俺だって最近までどんなに魔法を使いたかったか。でもどうしてそんな事まで分かる? 

 

「わたしはダンジョンコアから直接鑑定のスキルを貰ったのよ。しかもトリプル」

 

 沙織もダンジョンコアからスキルを貰ったのか。『鑑定』スキルはシングルだけで、ダブルすら知られていない。保持者はコツコツと鑑定を重ね、かつダンジョンで経験値を稼ぐことで、その精度を上げていく。もし帰還のスクロールがあったなら、沙織は『鑑定』のトリプルと魔導書で、司法取引か、亡命が可能なのではないか。

 それに気になる事もある。沙織はグリモワールが元々はこちらの世界にあったと言っていたような。よく見ればレリーフには、人の顔が刻まれている。デフォルメされているが、「みよう本」愛好家の俺にはすぐ分かった。回復魔法の魔導書の女性と思しき人物は、とあるの物語のヒーラーのヒロインと特定できる。彼女は異世界転移した女子高生で、高貴な殿方を振って、庶民を恋人に選んだはず。

 四大魔法の魔導書には勇者の顔が彫り込まれている。いじめで死んだ男子高生が、異世界転生して俺Tueee する物語だ。こてこてながら、最強のテンプレとして人気を博した。

 悠久の時が流れたのだろう。こちらの世界の読者の思いが本に宿り、受け取った向こうの世界の人達がそれを真実へと書き換えたのだ。ならばダンジョンに呑まれた他の本だって、異世界に流れ着き、解読されて聖書や叙事詩として崇拝されているかもしれない。芸術は大衆から生まれるという思想もある。ホメロスやシェイクスピアだって市民の娯楽だった。「みよう本」にもそんな一冊があってもいいと思う。

 

「呆れたんだから。鑑定トリプルでもそこまで観れなかった。想夜、あなたどれだけ読んだのよ」

 

 沙織に褒められて俺は得意になる。「みよう本」への情熱は誰にも負けない。

 

「ダンジョンは偉大だ」

 

 俺の言葉を受けて、沙織もしみじみと語る。

 

「ここのダンジョンは人類の敵になったのかもしれない。でもわたしには良くしてくれた。獣たちに襲われた時、願いを叶えて助けてくれた。今日まで生き永らえたのも彼女のおかげよ。本当に感謝してるんだから」

 

 俺がダンジョンと共に生きようとしたように、沙織もダンジョンと共に生きた。追悼の言葉が天に届いて、再び空間が揺らぐ。彼女の手元に落ちてくるものがあった。帰還のスクロールだ。ダンジョンコアを破壊した直後にスクロールは現れる、帰還者達は皆証言している。このタイミングで出現するとか聞いた事がない。

 

「わたしは幸運スキルも持っているのよ」

 

 そう言う彼女は誇らしげでどこか寂しげだった。至福の時間は終わりを告げる。

 

「それを寄こして。僕が使う」

「駄目に決まってるじゃない!」

 

 魔導書とスクロールが落ちてきたのは、ダンジョンコアの遺志だろう。沙織に人の理に戻れと言っているのだ。コアの願いを叶えてあげたいし、それは俺の意思でもある。だけど彼女はスクロールを俺の帰還の為に使う気だ。だからこそ奪わねばならなかった。俺が使って、彼女をのどかの元へ送り届ける。結局俺達は最後まで戦わなければいけないのか。ダンジョンの女神さまは意地悪だ。

 沙織は暗殺もこなせるが、どちらかというと後方支援や指揮官タイプだ。直接の戦闘はそこまで得意ではない。対してこちらは戦闘に特化している。俺の勝ちは揺るがない。

 

「大人しく渡して。じゃないと痛い目に会わすから」

「そんな脅しには屈しないわ。あなたを地上に戻すんだから」

「聞き分けがないよ。一度も僕には勝てないくせに」

 

 直接の戦闘で、彼女は俺に勝った事はない。男女の営みでも、さっきは散々負けたではないか。最期にそれをわからせてあげる。

 俺は沙織に襲いかかった。お互い『体術』を持つ者同士、関節を極め、相手を無効化しようとする。力と速さでは俺が勝る。圧倒するも、彼女は『柔軟』を使って何とか抜け出す。蹴りと突きに混ぜて、砂塵を巻き上げ、石礫を飛ばしてくる。必死の抵抗をするも、『身体強化』は俺がダブルで彼女はシングルだ。まして俺は『強靭』な筋肉に『自己回復』まである。段々大人と子供の戦いになった。余裕綽々の俺と、息が上がり涙目の沙織、とうとう彼女はへたり込んでしまう。決着は着いた。捕まえてあげる、俺は沙織に掴みかかる。

 

「いやぁ──ー、もう虐めないで

 

 沙織が女の子らしい悲鳴を上げて、落ちていたバックを拾うと頭上に掲げた。敵わぬ抵抗する彼女が可愛い。だけどバックのふたが開いて、中の本が飛び散ってしまった。何冊かは浮島の外周から、虚空へと漂う。それを見ていた沙織が身を翻す。ダイブして一冊を掴むが、そのまま虚空へ落ちようとする。俺はとっさに『触腕』を伸ばす。今度は間に合った。四本の触腕が離すものかと、沙織の全身に纏わり、じわじわと引き上げた。

 

「変態! 変態なんだから。想夜は触手紳士アールムが好きなんでしょ。でも助けてくれると信じていたわ」

「何で命を粗末にする」

 

 思わず怒鳴ってしまう、俺達の命運はもう尽きようとしているのに。だけど彼女は大事そうに「メイド聖女」の最終巻を抱えていた。

 

「すまない、愚問だった」

 

 俺だって同じ事をしただろう。二人にとって、「メイド聖女」の最終巻は命より大切なのだ。そんな沙織が最終巻を差し出してくる。

 

「これ持ってて」

「いいのか」

 

 震える手で受け取った。感謝の言葉を伝えようにも、沙織の様子がおかしい。彼女は俺を見ず、悲しそうに虚空へ散った魔導書を凝視している。視線を追えば、漂う「メイド聖女」の第四巻があった。愕然として手元の本を二度見した。いつのまにかグリモワールに変わっている。俺の意識が一瞬沙織から離れた。ここで彼女の気配が消える。

 背後からいい一撃を貰う。沙織は『変装』の応用で、魔導書を最終巻に、グリモワールを第四巻に偽装していた。俺なんかを助けるために、命より大切な本を犠牲にした。そして命を捨てての賭けに出た。彼女の想いの深さを、もうそれに応えられない罪の重さを思い知る。

 薄れゆく意識の中で魅せられた。服の裾を摘まんで、カーテシーを披露する沙織の姿に。奇しくも「メイド聖女」の最終巻を飾るヒロインと同じ、それは丁寧なお辞儀だった。完成された少女の形、その美しさに魂を奪われる。

 

 負けた

 

 俺は主人公にはなれなかったな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。