JCリコ×JDみらいです
生えています
「ふへ〜、疲れた〜…………」
「私も〜…………」
「疲れたモフ〜……」
ぼすん、とはーちゃんとモフルンと三人、部屋のクッションに倒れ込む様にして今日の魔法ガール活動で疲れ果てた身体を預ける。
刻の魔獣の騒ぎから一月と経っていないというのに、世間はすっかりいつもの様子を取り戻していて、今日も『助けて魔法つかい』の声は止まらない。
おまけに日付的には夏休みに入ってるせいか、助けを求める声は普段より増えていて、最近はとても忙しい。
その中でも、今日は格別だった。
何故なら、リコがいないからだ。
魔法学校で校長先生に仕事を頼まれたとかでリコは一時的に魔法界に帰っている。
かなり大掛かりな仕事らしく、帰るのは早くて明後日になるらしい。
何でも、夜通しかけて色々やるとか。
だから今日は、はーちゃんと二人で魔法ガール活動をしていたんだけど…………
「まさか、リコがいない日にこうなるなんてねぇ…………」
「は〜…………」
「モフ〜……」
何故だか今日に限って、リコがいても手が余るくらいに事件が多かった。
それはもう、こうして三人揃ってリビングから動けなくなるくらいには。
はーちゃんと連携して何とか終わらせたから良いけど、代わりに今日はもうこれ以上動けそうにない。
だけど。
「冷蔵庫…………中身、あったっけ…………」
「は〜…………無かった気がする〜…………」
「今日のお弁当で、使い切ったモフ…………」
まだ世界はそれを許してくれないらしい。
晩ご飯の材料が、無い。
それは、この暑い中空を飛び回って疲れ果ててしまった私達にとっては、これ以上なく残酷な事実だった。
更に時計を見ると、もうすぐタイムセールが始まると針が示している。
つまり、今から出ないと間に合わないという訳だ。
この、疲れきった状態で。
その絶望的な事実に、今日はもう出前でも良いんじゃないかと、現実逃避的な考えが浮かんでくる。
その時、視界に窓から覗く夕暮れの空が映った。
そこには薄らとだが月が出ていて、少し欠けた満月…………十六夜の月が、目に入る。
その月を見て、疲れた身体に力が入った。
魔法界にいる、リコの事を思って。
「…………行こうか、はーちゃん、モフルン」
「そうだね…………」
「モフ…………」
どうやら、リコが魔法学校でまだ頑張っているのに、私達だけ楽をする、という選択肢を私は選べないらしい。
どうせ出前を取るなら、リコも一緒に、皆で食べたいって、心が叫んでいる。
はーちゃんもモフルンも私と同じ考えらしく、三人揃ってゾンビの様にノロノロと、しかし確実な足取りで、買い出しの用意を始める。
その時。
「大変です!」
「「うわっ⁉︎」」
「モフっ⁉︎」
いきなり、私達の声じゃない声が部屋に響いた。
「魔法の水晶さん⁉︎」
声のした方を見ると、リコが連絡用にと置いていった魔法の水晶さんがピカピカと点滅していた。
その声は緊迫していて、何か良くない事が起きたと肌で感じ取る。
そして。
「リコ先生が…………リコ先生が!」
その予感通りに、さっきよりもずっと、残酷な事実を水晶さんが伝えてきた。
「リコ!」
「来たか、みらいくん、ことはくん」
「リコは⁉︎リコは大丈夫なんですか⁉︎」
「ああ。リコ先生は無事…………と言って良いのかはわからんが、少なくとも命に別状は無い。リコ先生が自分の口で説明したいそうじゃから、後はリコ先生から聞いてくれ」
リコが魔法の実験で事故に遭った、と水晶さんからの連絡を受けて慌てて魔法学校に向かうと、あたりはすっかり夜の帷に覆われていた。
さっきよりもはっきりと見える様になった十六夜の月が照らす夜の空の下、校長先生が私達を出迎える。
そのまま校長先生に掴みかからんばかりの勢いでリコの安否について尋ねると、私が危惧していた事は起きていない、と校長先生が答えた。
「よ、良かったぁ〜…………ってあれ?」
「「「みらい(くん)⁉︎」」」
リコに何かあったのは本当みたいだけど、大怪我とかじゃなくて良かった、と胸を撫で下ろすと、いきなり腰が抜けて、身体が地面にへたり込んでしまった。
「あ、あはは…………安心したら、ちょっと腰が抜けたみたいで…………」
どうやら、緊張の糸が切れて身体が疲れを思い出したらしい。
水晶さんの話を聞いてからこっちに来るまで、リコの無事で頭が一杯になって忘れてた疲れが束となって襲ってくる。
「みらい、ずっとリコの心配していたモフ」
「見てるこっちが心配になるくらいだったよ!」
「ちょ、モフルン、はーちゃん⁉︎二人だって心配してた癖に!」
すると、モフルンとはーちゃんがニコニコと笑いながらこっちに来るまでの私の様子を校長先生に漏らす。
校長先生の前でそこまで心配していた事を言われるのは事実とはいえ少し恥ずかしく、言い返すけど二人はどこ吹く風、と言った感じでそのまま三人揃って騒ぎ合う。
…………思えばこの時、私もモフルンもはーちゃんも、リコへの危惧が杞憂に終わった事への安堵から騒いでいたんだと思う。
校長先生はそれに気づいていたのか、私達がひとしきり騒ぎ切るまで、静かに見守っていた。
そして、姦しい声が収まった時。
「…………本当にすまぬな、みらいくん。それに、ことはくん達も。わしの提案故、事故が起きぬ様気をつけていたつもりだったが…………面目ない」
「校長先生…………」
力が抜けて地面に座り込んだ私に手を貸しながら、校長先生が謝る。
どうやら、リコが事故に遭ってしまった事に責任を感じているみたいだ。
でも。
「…………大丈夫です、校長先生。リコが一人でやるって決めたなら…………それはきっと、リコが大丈夫だと思ったからやったんです。…………リコは、大怪我とかはしてないんですよね?」
「…………うむ」
「なら、大丈夫です!」
私は、校長先生を責める気にはなれなかった。
勿論、これでリコの命に関わる様な事態になってたらわからなかったけど…………私は、リコを信じている。
リコは、私達を置いて危険な事はしないって。
リコがそういう危険な事をやるなら…………私も、はーちゃんも、モフルンも、皆一緒でやるって、私は信じてる。
だから、リコが一人でやるって決めたのなら…………きっと、大丈夫だってリコが思ったからなんだと私は思う。
多分今回の事故も、リコにとっては想定内の事故、なんだろう。
…………まあ、それはそれとして水晶さんから聞いた時はめちゃくちゃ心配したけどね!
「…………そうか」
「はい!」
私の考えが伝わったのか、校長先生が表情を緩める。
「では、リコ先生に会いに行くと良い。リコ先生は今、自宅にいるはずじゃ」
「わかりました!」
校長先生の言葉に元気よく返事を返して、立ち上がる。
「行こ、モフルン、はーちゃん!」
「はー!」
「モフ!」
箒を取り出して、
目指すはリコの家。
リコのお見舞いに、レッツゴー!
「リコー! 大丈夫ー⁉︎」
「…………みらい?」
ドンドン、とリコの家の扉を叩いて声をかけると、中から足音が響くと共に扉の向こうからリコの声がした。
「うん、そうだよ! はーちゃんとモフルンもいるよ!」
「…………わかったわ。それじゃあ、鍵を開けるから中に入ってちょうだい」
キュアップ・ラパパとリコが唱えると共に、カチャリ、と鍵の開く音がする。
そのままリコの指示に従って、ドアを開けると、そこには。
「へ?」
「はー?」
「モフ?」
「…………」
何故か中学二年生くらいの身長に縮んだ、リコが私達を出迎えた。
「モフ! リコがちっちゃくなっちゃったモフ〜!」
「はー! リコ、私と同じくらいになっちゃった!」
「リ、リコ⁉︎な、何で⁉︎はーちゃんの魔法…………は今日ずっとはーちゃんと一緒にいたから違うし…………やっぱり何で⁉︎」
私達の予想していた魔法の事故とは程遠いリコの姿に混乱して、俄に玄関が騒がしくなる。
「ちょっとみんな、声が大きい!」
「あ、ご、ごめんリコ…………でもなんで?」
「…………説明は私の部屋でするわ。皆、上がってちょうだい。今日は誰もいないから」
混乱して騒がしくなった私達をリコが一喝して静かにさせるけど、頭に残る疑問と混乱は消えなかった。
そして、リコの部屋に上がった時。
「…………単刀直入に言うと、この姿になったのは、闇の魔法のせいよ」
「へ? 今、闇の魔法って言いました?」
リコが更に予想外の爆弾を投下して、余計に混乱が酷くなって頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
「ええ」
「な、何で? …………あっ! もしかしてまた、悪い魔法つかいが現れたの⁉︎」
「違うわ」
「それなら、なんで…………?」
と、リコに聞いた時、混乱する頭が実験というワードを記憶から掘り起こした。
そういえば、魔法の実験の事故が起きたって、水晶さん言ってた様な。
また悪い魔法つかいが現れた訳じゃないなら、リコ達が闇の魔法を実験していたという事になるのかな。
でもなんで?
「ほら、アイルがバッティくんも知らない様な闇の魔法の本を持っていたでしょう? だから、このままでは次似た様な事が起きた時に危ないって校長先生が仰って…………それで、闇の魔法自体の研究はしないけど、今見つかっている闇の魔法だけでもリストにして纏めようって事になったの。私もそれに賛成して、この間入学したスパルダさんやガメッツくんを含めて闇の魔法に関わった事のある人達と一緒に危険度の低そうな魔法から実験をしていたんだけど…………」
「だけど?」
頭の中でリコの言葉を整理すればする程生じる疑問が顔に出ていたのか、リコが苦笑しながら説明する。
「…………前に、闇の魔法で子供になった事があったでしょう? その魔法が、暴発しちゃって…………」
「ちっちゃくなったって事?」
「…………ええ」
「ふ〜ん…………」
「み、みらい?」
言われてリコの身体を改めて見てみると、リコの格好は今のリコをそのまま中学生くらいに縮めた様な姿で、なるほど確かにはーちゃんの魔法とは少し違っていた。
デウスマストの眷属に子供にされた時とよく似てる。
…………それにしても、大人のリコの服を着ている小さいリコっていうのはなんだか新鮮だ。
前に子供になった時は私もはーちゃんも一緒に子供になってたから、私よりも小さいリコを見るっていうのは、五年前を含めても初めてだし。
モフルンの夢で私より大きいリコなら見たことあるけど、あの時の私達はネズミ役だったから、リコはいつも通りだったしね。
だからだろうか。
今のリコはなんだか…………とても可愛い。
いやいつものリコも可愛いけど、今のリコはなんだか、昔のリコとも今のリコとも違う独特の可愛さを感じる。
「リコ〜、どうして顔が赤くなってるの?」
「へ? あ、赤くなってなんてないし!」
リコの可愛さに夢中になってリコを見つめていると、はーちゃんとリコがそんなやりとりをする。
気になってリコの顔を見てみると、はーちゃんの言葉通りリコの顔がほんのり赤く染まっていた。
「どしたの、リコ?」
「な、何でもないわよ」
聞いてみるとぷい、とリコが顔を背ける。
顔を赤くしたまま。
「本当かな〜?」
「ちょ、ちょっとみらい⁉︎」
その反応が可愛くて、揶揄い混じりにもっと近くでリコを見つめてみる。
すると、リコの顔がもっと赤くなった。
それが私の中の何かを擽って、リコから目が離せなくなってしまう。
ふふ。リコは本当に…………
「…………本当に可愛いなぁ、リコは」
「へぇっ⁉︎」
「いつものリコも良いけど、ちっちゃくなったリコも可愛い! 抱きしめたい!」
「モフ…………みらい、大胆モフ…………」
「え?」
そのままさっきと同じ様にリコを見つめていると、モフルンが不思議な事を言う。
「声に出てるわよ!」
はて、何が大胆なのだろうかと考えていると、茹で蛸みたいに赤くなったリコが叫んだ。
「あ、声に出てた?」
どうやら、思考がそのまま喉を通って出ていたらしい。
まあリコが可愛いのは真理だし別に恥ずかしい事でもないけど。
「ええ、ばっちりとね! 全く、人が大変だって時に…………」
だけどリコはそうでもないらしく、ジト目になりながらこっちを睨む。
…………まあ、その割にリコの声は全然怒って無かったけど、それを指摘したら拗ねちゃいそうなので、黙っておく。
「あはは、ごめんごめん。それじゃ、リコを元に戻そう!」
「はー!」
「モフ!」
という訳で少し名残惜しいが、リコを元に戻す事にした。
リコにかかった闇の魔法があの時と一緒なら、解決法はもうわかってる。
「モフルン!」
「モフ!」
あの時と同じなら、プリキュアになれば解ける筈。
リコ曰く、今日はリズさんやリリアさんもいないみたいだから、バレる心配も無いし。
そう思って、モフルンを呼ぶと。
「ちょ、ちょっと待って!」
「え?」
「モフ?」
何故か、他ならぬ魔法の被害者であるリコが私達を止めた。
「リコ?」
「…………その、今プリキュアになるのはまずいっていうか…………」
リコのよくわからない行動に首を傾げると、リコが更によくわからない事を言う。
「え、何で?」
「はー?」
「モフ?」
解決法がわかってるのに何故かそれを避けようとするリコに、はーちゃんとモフルンも揃って首を傾げる。
「えっと…………はーちゃん、モフルン。その、悪いんだけど…………みらいと二人きりにさせてくれない?」
そのまま首を傾げていると、顔を赤くしたままのリコがそんな事を言い出した。
いきなりの提案に三人揃って顔を見合わせるけど、どうやらリコは私と二人きりになるまで話す気はないらしく、それだけ言うと顔を背けて黙ってしまった。
何でだろうと思ったけど、リコが喋らない事にはどうにも出来ず、どうしたものかと思ったその時。
「リコ…………これだけは聞かせて。リコは、私達と一緒にいるんだよね?」
はーちゃんが、リコの顔を覗いて真剣な顔で問いかけた。
すると。
「…………当たり前じゃない。私達は、ずっと一緒よ。ただ…………ちょっと、みらいにしか話せない事があるだけよ」
黙っていたリコがはーちゃんの目をしっかりと見つめて、答えを返した。
その声は普段通りのリコの声で、嘘をついているとか何かを隠しているとかそんな感じはしなかった。
本当に、私と二人きりになりたいだけみたいだ。
「…………うん、わかった! リコがそう言うなら、私も信じる!」
「モフ! モフルンも信じるモフ!」
それが伝わったのか、はーちゃんとモフルンの顔がぱぁっと赤くなる。
「じゃあ私達、校長先生のとこに行くね! お腹減ったし、ついでにご飯食べてくる! いこ、モフルン!」
「わかったモフ!」
そのままはーちゃんがモフルンを抱いて、パタパタと廊下へ駆け出していく。
そしてバタン、と扉が閉まり、部屋には私とリコだけが残された。
「…………えっと、リコ。その、二人きりにしてほしいって…………何があったの?」
さっきのリコの態度や、校長先生の言葉から実はリコの命が危ない、とかそういう心配が無いのは何となくわかっている。
だけど、はーちゃんとモフルンがいたら話せないというその内容は私の知識じゃどうにも想像が出来なくて、首を傾げるしかなかった。
そんな私を見て、リコが苦笑する。
そして、何かを覚悟するかの様に深呼吸を繰り返し、ゆっくりと口を開いた。
「…………実は、私にかかった闇の魔法は、小さくなる魔法だけじゃなかったの。もう一つ、暴発した闇の魔法があったのよ」
「…………それって、さっきリコが言ってた、プリキュアになるのはまずいっていうのと関係してるの?」
「…………ええ。そして、みらいにしか話せない事でもあるわ」
リコのその言葉に、緊張で思わず息を呑む。
目の前のリコの様子から、リコは校長先生にもこの事は詳しく言っていないと直感したからだ。
つまり、これからリコが話す事は、本当に私にしか話せない事で。
その事実に、鼓動が否応無く速くなる。
そして。
「…………生えたのよ、アレが」
「アレ?」
「…………だから、その…………男の人にある、アレが…………私に、生えたのよ」
「…………え?」
続くリコの予想外の言葉が、私の頭の中を完全に吹き飛ばした。
「…………ちょっと、みらい?」
「…………はっ」
リコの呼びかけで、爆弾発言で真っ白になった頭が復活する。
「…………私の聞き間違いかな。今さっき、リコの口からとんでもない内容が出てきた様な…………」
だけど私の頭はリコの言葉を飲み込めなかった様で、さっきの言葉を幻聴だと判断してしまっていた。
と言うか、そうであって欲しいと逃げていた。
余りにも、衝撃的過ぎたから。
しかし。
「残念だけど、聞き間違いじゃないわ」
リコがすぐに私の言葉を否定した事で逃げ道がなくなってしまった。
更に、頭の冷静な部分がリコの言葉は事実だと告げる。
リコの言葉が事実なら、さっきまでのリコの行動に納得いく説明がつくからだ。
小さくなってるとはいえ、さっきのリコ、ちょっと様子がおかしかったし。
それでも、頭はまだその事実を飲み込みきれず、混乱して視線が右往左往する。
そして。
「…………」
泳いでいた視線が、リコのスカートの辺りを捉えた。
リコに言われるまでわからなかったのだから当たり前だけど、一見、スカートに違和感は無かった。
でも…………意識して見てみると、少しだけ、ほんの少しだけ、普段のリコにない…………
「ちょ、ちょっとみらい、何見てるのよ」
「あ、ご、ごめん…………」
「「…………」」
そこまで考えた時、顔を赤くしたリコに止められた。
そのおかげで変な方向に飛んでいた思考が元に戻る。
だけどリコに止められたことで、リコに生えただろうそれを余計に意識してしまう。
それをリコも察したのか、お互いに気まずい沈黙が流れる。
そりゃそうだ。
だって…………男の人のアレなんて、私は教科書で見たくらいで経験なんて全く無いし。
もしかしたらお父さんのなら見た事あるのかもしれないけど、子供すぎて記憶が無い。
そしてそれは、多分リコも同じだろうし。
…………つまり、こういう状況はお互いに初めてという訳で(いやそもそも、大好きな人がちっちゃくなった上にアレが生えるって経験した人、私以外にいるんだろうか)。
どうすれば良いのか全くわかっていない状態なんだから、どうにもギクシャクしてしまうのはある意味当たり前の事だった。
それでもこの気まずい空気を何とかしたくて色々考えるけど、口に出そうとした瞬間に声にならず霧散してしまい、もどかしい気持ちになるだけだった。
リコも同じの様で、何度か口を開けようとしては閉じる、という事を繰り返している。
そしてお互いに動けなくなってしまい、気まずい沈黙に部屋が支配された時。
ぐぅ。
と、不意に、大きな音が部屋に響いた。
それは、私のお腹の音だった。
同時に、思い出したかの様に身体が空腹を訴え始める。
そういえば、晩ご飯の材料を買いに行く前に水晶さんから連絡が来てそのままこっちに来たから何も食べて無かったんだった…………
カタツムリニアの中じゃ、リコが心配で食欲とか無かったし。
その時。
「…………ぷっ。ふふ、ふふふっ…………」
私のお腹の虫の鳴き声がツボに刺さったのか、リコが耐えきれない、と言った様子で笑い始めた。
「ちょ、ちょっとリコ!」
「ふふっ…………ご、ごめんなさい、みらい。突然だったから、何かおかしくって…………」
「もう!」
ずっと笑い続けるリコに何だか恥ずかしくなって抗議するけど、リコは笑いっぱなしだった。
だけど、何故だろうか。
「…………ふふっ」
リコの笑い声を聞いてる内に、私も何だか笑い声が込み上げていて、気づけばリコと同じ様に笑っていた。
そのまま、お互いに笑い続ける。
その時間はとても楽しくって、気づけばさっきまでお互いの間にあった筈の気まずい空気は、何処かに消え去っていた。
「これ美味しいね、リコ!」
「みらいの口に合って良かったわ。これ、私のお気に入りなの。魔法商店街でも結構人気なのよ」
「へー…………なんてお店?」
あの後ひとしきり笑い合った私達は、腹が減っては戦は出来ぬ、とりあえず何か食べよう、という事になってリコの部屋にあったお菓子を摘んでいた。
さっきまでの事なんて忘れて…………いや違う、忘れずに頭の隅に置きながら、いつもの様に、他愛ない話をし続ける。
そして、お皿に盛られたリコのお菓子が尽き、私が最後の一欠片を飲み込んだ時。
「…………それで、リコ。これからどうする?」
これからの事を、改めてリコに切り出す。
それは必然、リコに生えた…………その、男の人のアレの話題に触れるという事になるが、今の私に躊躇いは無かった。
そんな問題は、リコにかかった魔法を解く事に比べたら私の中でとても小さいって、気づいたから。
だから…………思い切って、リコに踏み込む。
すると。
「…………」
「…………リ、リコ?」
リコがまた、顔を赤くして黙ってしまった。
その顔にちょっと早まったかな、と頭の中が慌て出す。
しかし。
「…………みらい。あなたにしか頼めない事があるのだけど、良いかしら。勿論、無理にやって欲しいとは言わないわ。みらいが良ければの、話だけど」
「もちろんだよ! 私に出来る事なら、喜んで!」
どうやらそれは私の杞憂だった様で、何かを覚悟した様な表情になったリコが、閉していた口を開いた。
当然私にリコの頼みを断る理由は無く、勢いよく頷くと、リコがこっちに来て、と言わんばかりに私を手招きする。
それに誘われるままにリコの側に身体を近づけると、リコが私の頭を抱いた。
「リコ?」
それが不思議でリコに問いかけるが、リコは答える事なく私の耳元に口を寄せる。
そして。
「…………え?」
本日何度目かの爆弾発言を、そっと耳元で囁いた。
ザーザーと、身体を流れるシャワーの音が浴室に響く。
「…………」
身体を洗い流す水音に包まれながら、さっきのリコの言葉を思い返す。
『…………私に、抱かれて欲しいの』
リコはそう、私に囁いた。
何でも、リコにかかった闇の魔法は女の人同士が交わる為に作られた魔法らしく、術者が…………この場合はリコが満足するまで、解ける事は無いらしい。
それが、抱かれて欲しいというリコの言葉に繋がる訳だ。
当然、リコの言葉が何を指すかくらいはわかる。
だってもう、大学生だし。
そういう知識だって、年相応にはある。
…………経験は今の今まで、一回も無いけど。
だってリコ以外とそういう仲になるなんて考えた事も無かったし、リコと再会した後も中々会えなかったからそんな機会は無かったし、また会えたら会えたで刻の魔獣の事件が起きてそれどころじゃ無かったし、中学生の時はそもそもそんな年じゃなかったし。
閑話休題。
つまり、これが私にとって初めての経験という事になる(そして、きっとリコにとっても)。
…………だから、だろうか。
「…………大丈夫、かな」
躊躇わないと決めた筈なのに、少し、不安な気持ちになってしまう。
別に、リコに抱かれるのが嫌って訳じゃないし、これが必要な事だっていうのはわかってるつもり、だけど。
というか嫌なら、こうしてシャワーを浴びていない。
でも…………私達は、これが初めてだ。
おまけにこれからやる事は、お互い碌に経験した事もない、イレギュラーな事で。
そんな状況で上手くリコを満足させる事が出来るかと言えば、首を傾げざるを得なかった。
…………だから、いざその時が近づくのを感じると、無性に不安になってしまう。
しかし、そんな状況でも身体は勝手に動いていて、気づけば隈なく全身を洗い終わってしまってった。
それでも浴室を出る踏ん切りがつかず、そう言えば歯を磨いていなかったと言い訳する様に歯磨きするけど、それもすぐに終わってしまう。
その時。
「みらい?」
先にシャワーを浴びて自室で待っている筈のリコが、浴室の外から心配そうな声で私の名前を呼んできた。
「リ、リコ? どうしたの?」
「どうしたのって…………みらいが入ってからもう結構経ってるから、少し心配になって」
「へ? …………うわ本当だ!」
言われて時計を見ると、確かにリコの言う通り、シャワーを浴びるにしては不自然なくらい長い時間が経っていた。
「ご、ごめんリコ! でも大丈夫だから! すぐに出るね!」
「…………ねえみらい。本当に、良いの?」
「え?」
それに慌てて、取り繕う様にリコに返事をすると、扉越しにリコが、真剣な声で私に問いかけてきた。
「…………今から、私とみらいは…………その、男女の営みに近い事をやるでしょう? それで、みらいは私の頼みを引き受けてくれたけど…………もしみらいがこれからやる事に迷っているのなら、私は別に、このままでも良いかなって思うの」
「それって…………」
「だって、私が元に戻っても、みらいが笑顔じゃないなら意味が無いじゃない? 私は、みらいの笑顔が大好きだから。悲しい顔のみらいなんて、見たくないわ。幸い、そこまで困っている訳じゃないしね」
リコの問いの意味がわからず訊き返すと、優しい声でそんな答えが返ってくる。
だけど…………私はそれを聞いて、困ってないなんて嘘だ、と思ってしまった。
いきなり中学生くらいに身体が縮んでしまったのに、困らないなんてある筈が無い。
それなのに、困ってないとリコが言ったのは…………きっと、私の中の不安を感じ取ったのだろう。
私を気遣って、強がりを張ったのだ。
それに気づいて、胸が締め付けられる様な気分になる。
私の意気地なさが、またリコを心配させてしまったと。
でも。
「それに…………満足すればこの魔法は解けるんだから、自分で満足する方法を探しても良いしね。無理にみらいに頼む事もないんじゃないかって、さっき思ったの」
「そんなの嫌だ!」
「へぇっ⁉︎」
私を安心させるためだろうか、少し柔らかい口調になったリコの言葉を聞いた瞬間、私の中の何かが爆発した。
「リコが…………リコが、私以外で満足するなんて、そんなの私は嫌だ!」
それは、私の仲にある…………リコへの独占欲の、発露だった。
叫びながら自分勝手だな、と思うが、爆発した独占欲は止まらない。
「ちょ、みらい⁉︎」
「私は…………リコ以外にそういう仲になる人なんて考えられないし、リコが私以外の誰かとそういう仲になるのは、もっと考えられない! だから、そんなのは嫌だ!」
「…………じゃあ、みらいは一体何が不安なのよ。私以外と出来ないって言う癖に、これだけ待たせておいて…………何も無い、なんて言わせないわよ」
「それは…………」
爆発した感情のままにリコへの欲を叫んでいると、リコが呆れた様な声を出した。
その声に水をかけられた様に頭が冷えて、言葉が詰まる。
さっき恥ずかしい事を言っておいてなんだけど、不安な理由を今思い返してみると、なんだか恥ずかしくなってきたからだ。
だけど、扉の向こうのリコは沈黙の時間に比例して恐ろしい気配を強めている。
その気配に、このまま黙っていれば更に酷い事になると確信して、口を開く。
「…………その、リコとそういう仲になるのが嫌って訳じゃなくて、むしろ嬉しいんだけど…………」
「だけど?」
「…………リコを満足させるのが上手くいくか、不安で…………私、経験無いし…………」
「…………それが、みらいの不安の理由?」
「うん…………」
「なるほど、ねぇ…………」
リコに不安を吐露すると、リコが溜息を吐くような声を出す。
その声が、まるで私に呆れてる様に聞こえて、思わず胸にグサリと刺さる。
だけど。
「…………全く。私達って、本当に一緒ね」
「…………え?」
続くリコの言葉が、痛みを忘れるくらい私の心を揺さぶった。
「私も、みらいと同じ不安を感じてる、って言ったのよ」
予想外の言葉にポカンとする私に、リコが畳み掛ける。
「…………私だって、経験なんて無いし。それも、男の人の立場の経験なんて。…………だから、正直怖いわ。例え魔法が解けたとしても、その結果、大好きなみらいを傷付けてしまうんじゃないかって思うと、怖くてたまらない」
でも、とリコが続ける。
「お互いに、考えている事は一緒だったのね。みらいも、私にかかった魔法が解けるか心配だった。そうでしょ?」
「…………うん」
「なら、話は簡単ね。…………二人で一緒に、やりましょう。私がみらいを引っ張るのでもなく、みらいが私を引っ張るのでもなく…………二人で一緒に、歩いていきましょう。そうしたらきっと、上手くいくわ」
二人で、一緒に。
私が主体でも、リコが主体でもなく、私とリコで、一緒にやる。
その言葉が、胸に込み上がる不安を優しく溶かしていく。
気づけば、さっきまでの不安は泡の様に消えていた。
「…………そうだね、リコ。二人で一緒に、やろう」
私の声から不安が無くなったのを感じたのか、扉の前のリコの気配が緩む。
そして。
「それじゃあ、もう一回聞くわね、みらい」
再び、リコが問いかける。
「────大丈夫だよ、リコ!」
それに私は、混じり気のない、心からの答えを返した。
「ありがとう、みらい。…………じゃあ、また私の部屋で。待ってるから」
「うん!」
私の答えに満足したのか、リコの気配が浴室から遠ざかっていく。
それに合わせて、私も浴室を出る準備をする。
不安の代わりに喜びで、胸を埋めながら。
そして浴室を出て、リコの部屋に入ったその時。
「────」
ベッドに腰掛けるリコの姿に、頭の中がさっきの焼き直しの様に吹き飛んだ。
遅れて身体が血流で熱くなり、鼓動が早鐘を鳴らし始めた。
「みらい?」
「へ? あ、ご、ごめん!」
そんな私を怪訝に思ったのか、リコが心配そうな声を出す。
その声で思考は息を吹き返すけど、胸の鼓動は跳ね続けるままだった。
何故なら。
「…………大丈夫、みらい?」
「だ、大丈夫だよ、リコ! 土壇場で不安になったとか、そういうんじゃないから! …………ただ…………」
「ただ?」
「…………その…………リコの裸がすっごく綺麗で…………見惚れてたっていうか…………」
リコが、一矢纏わぬ姿で私を待っていたからだ。
十六夜の月に照らされたその姿はとても蠱惑的で、私の心をこれ以上なく撃ち抜いてしまっていた。
リコの部屋に入る前に考えていた事なんて、真っ白になってしまうくらいに。
「…………今の私の裸なんて、中学生の時に何度か見てるじゃない、みらいは。今更珍しいものでもないでしょ」
そんな私の言葉に、リコが照れた様な、呆れた様な、どっちともつかない顔をする。
確かに中学生の頃、リコの裸を見る機会は何度かあった。
その時の私も、リコは綺麗だって、思っていた。
だけど、何故だろうか。
「それは、そうだけど…………でもやっぱり…………リコは、綺麗だよ」
「…………もう」
今の私の目に映るリコの裸は、同じ綺麗でも、かつて見たそれとは全く違って見える。
姿が中学生の頃と一緒ても、今のリコは大人っぽくて、可愛くて、綺麗で…………妖艶だった。
そう見えるのはきっと、この五年間でお互いに時を重ねながら変わって、成長していったからだろう。
…………リコと離れ離れになっていたこの五年間は、寂しくて辛いものだったけど、それだけじゃなかった。
楽しい事も嬉しい事も沢山あったし…………そして何よりも、色々な事を知って世界がとても広がった。
その変化は私の中にあったリコへの気持ちにも及んで…………私ですら気づいていなかった、隠された気持ちを暴いた。
親友として、家族としての親愛の裏にあった…………人として、リコを愛する気持ちを。
だから…………その愛を自覚した今の私にとって、目の前にいるリコの姿は、とても魅力的だった。
「…………ところでみらい、いつまでそこで見ているつもり? 風邪引くわよ?」
「…………あ」
そんな事を考えていると、リコが照れ隠しなのか、口を尖らせて不満気な顔をする。
その声で、私がリコの部屋の入り口に立ちっぱなしだったという事に漸く気づいた。
「あはは…………ごめんね、リコ? 随分長く、待たせちゃって」
「…………別に、待ってないし」
それはつまり、立ちっぱなしだったのにも気づかないくらい私がリコに見惚れていたという事になるが、改めて気づくと何だか照れ臭かった。
その照れ臭さを誤魔化す様に謝りながら、リコの隣に腰掛ける。
だけど。
「…………」
ベッドの上でリコと隣合った瞬間、誤魔化しの甲斐も無く、再び身体が固まってしまった。
リコとの距離がさっきよりも近くなって、より鮮明にリコの存在を感じとったからだ。
それで心が更にリコに魅了されて、ここからどうすれば良いのか、何もわからなくなってしまう。
そのまま、沈黙が部屋に広がろうとした時。
「…………リコ?」
リコがそっと、私の手を握る。
そして。
「────みらいだって、綺麗よ。それに…………とても、可愛い」
「へ?」
囁く様な、だけどはっきりとしたリコの声が、部屋に広がりかけた沈黙を打ち破った。
「…………今、綺麗で可愛いって言いました?」
リコのその予想外の言葉に、反射的に口癖が漏れる。
「ええ、言ったわ。みらいが綺麗で可愛いって。まあ、みらいが可愛いって事は、中学生の時から思っていた事だけど…………」
「そ、そうなの?」
そんな私とは対照的に、リコがはっきりとした声で私の言葉を肯定した。
その姿に虚を突かれて、思考に空白が生まれる。
そして。
「そうよ。中学生の時から、ずっと…………可愛くて、太陽みたいな女の子って思ってた」
その空白の隙を突くように、リコが畳み掛けてきた。
リコのその態度から、リコの言葉が本気だと直感して、思わず顔が熱くなる。
「だから…………みらいと再会した時は、凄くびっくりしたわ。だって、大人になったみらいがとても綺麗になっていたもの」
しかしリコはそんな私に構わず、更に畳み掛けてきた。
「でも…………そのおかげで、今のみらいがあの頃のみらいのままじゃなくて、私と同じ様に時を重ねてきたって、実感したわ。だから…………こうして今、みらいと一緒にいると、凄くドキドキするの。このままこうしていたら、どうにかなっちゃいそうな位に」
「リコ…………」
リコがそう囁いて、熱っぽい視線を私に向ける。
奇しくも、リコの言葉は私がリコに思っていた事とそっくりだった。
そのせいだろうか、釣られて私も、見下ろす形でリコの顔に視線が行く。
その時。
視界の端に、何かが見えた。
ソレは、肉っぽい色をした何かだった。
気になってその何かを追いかけると、それはリコの下腹部…………いや、もっと下の方に繋がっているのが見えた。
そこまで見て、漸く気づく。
これは、リコに生えた…………男の人の、アレだって。
「…………ねえ、リコ。ソレって、さ…………私に、興奮してるって、事なの…………?」
初めて見るリコの身体に生えたソレに動揺して、無意識に声が漏れる。
何故なら、ソレは私が想像していたものより遥かに肉っぽくて、大きかったからだ。
…………見たことはないけど、男の人のアレは興奮で大きくなるらしい。
だから、目の前のソレはきっと、興奮してる状態って事なんだろう(これで興奮していないなら、服の上からでもわかっちゃうだろうし)。
つまり、さっきのリコの発言と合わせると、リコが私に興奮してるって事になる。
…………そういう目で、私を見ているという事になる。
「…………そうよ。言ったでしょ、みらいにドキドキしてるって。おかげでみらい達が来た時、はーちゃんやモフルンにバレない様にするのが大変だったんだから」
無意識に漏れた私の問いかけにリコが顔を赤くて、口を尖らせる様に囁く。
そんなリコの様子に、頭のどこか冷静な部分がリコの部屋を訪ねた時に様子がおかしかったのはそれもあったのか、と納得する。
だけど。
「…………そう、なんだ」
残った頭の冷静じゃない部分は、リコの言葉をトドメにして弾け飛んでしまっていた。
そんな言葉しか、返せないくらいに。
そしてそれはリコも同じだった様で、気づけば二人揃って、示し合わせたかの様に見つめ合っていた。
「「…………」」
お互いに無言のまま、視線が交錯する。
視線の先の瞳は熱っぽく揺れていて、その瞳の中に映る、もう一つの瞳も同じだった。
…………先に動いたのは、どちらからだろうか。
視線で熱を交わし合うのに満たされなくなった本能が、やがてお互いを求めて動き出す。
そして。
熱に浮かされたまま触れ合う唇に、甘い味が広がった。
唇同士が触れ合う柔らかい感触に、理性が蕩けていく。
蕩けていく理性に反比例して、本能がどんどん渇いていって、リコとの距離が更に縮んでいく、
リコの唇を、私の唇で甘噛みしてると錯覚するくらいに密接に、唇が重なり合くらいに。
気づくと、いつのまにかベッドに二人揃って倒れ込んでいて、お互いを抱きしめ合っていた。
でも欲張りな本能は触れ合うだけ、抱き合うだけではまだ足りない様で、渇きはますます酷くなる。
だから潤いを求めて、リコの唇の内側に、そっと舌を這わせてみる。
するとリコが驚いた様に硬直するけど、私に委ねる様に、すぐに身体の力を抜いた。
それを合図に、リコの舌に私の舌を絡めていく。
舌を濡らす蜜の味に更に理性を蕩けさせながら、ゆっくりと、リコと呼吸を混ぜ合わせる様にして、リコの舌を絡めとる。
そうしている内に、リコの唾液と私の唾液が混ざり合って、淫靡な水音を立て始める。
それは私の欲張りな本能を更に刺激して、もっと、もっと、と飽くなき情欲の炎を燃やす。
情欲の炎に煽られるまま、リコの舌を貪る様に味わっていく。
そして、十分にリコの唇を味わって唇が離れた時、私の理性はリコとのキスで完全に蕩けきってしまっていた。
だけど。
「…………んっ⁉︎」
理性が蕩けきったのはリコも同じだった様で、しかもリコは満足していない様だった。
それを示す様に、リコが私を押し倒す形で唇を塞ぐ。
しかもさっきのお返しと言わんばかりに、今度はリコが舌を絡めてきた。
キスの熱に浮かされて、身体の力が抜けていく。
その隙を突く様にリコに唇を貪られて、さっきの甘さとは違った、ゾクゾクとしたものが背筋を走っていく。
痺れるようなその快楽に、まるでリコの魔法にかけられて、身体が糸で繰られた様な錯覚を覚える。
リコのなすがままにされて、身体が快楽で腑抜けていく。
そのまま、何度も何度もリコに、唇を貪られた。
もうどれくらいリコと唇を重ねたかわからなくなった頃、唇が淫靡な水糸を引きながら、ゆっくりと離れる。
「…………ぷはっ」
そして糸が切れると同時に、身体が碌に空気を得られなかった事を思い出して、呼吸が荒くなる。
だけどすっかり蕩けきってしまった私はまだリコを欲しがっていて、続きをねだる様に、私の身体に馬乗りになったリコを見つめる。
すると。
「…………わかってるわよ。これで終わらせる気なんて、私も無いし」
リコが呆れた様な、だけど柔らかい笑みを浮かべながら、私に覆い被さってきた。
そして。
「でも、いつまでもキスしてる訳にもいかないでしょう? だから、今度は別の方法でやるわ」
リコがそんな事を言いながら、首筋にそっと、唇を落とした。
同時に、さっきまで私の舌に絡まっていたリコの舌が、首筋に触れる。
リコの舌がチロチロと、首筋を撫でながらゆっくりと下がっていく。
やがてリコの舌が鎖骨に触れると、そこを重点的に責める様に、リコの舌が蠢き出した。
同時に太もものあたりにリコの手が触れ、優しく撫で始める。
上と下から同時に攻められて、さっきとは違った甘い感覚が全身に広がっていく。
更にリコが音を立てながら鎖骨の辺りを攻めるせいで、身体が余計に興奮で熱くなり、リコの事しか考えられなくなる。
そしてリコの舌が触れてない場所が、鎖骨から無くなった頃。
「…………こうして見ると、みらいのって、本当に大きいわね」
鎖骨から舌を離したリコが、私の胸を見つめながらそんな事を呟いた。
「…………それ、リコがちっちゃくなったからじゃなくて? リコだって、私と同じくらいだと思うけど」
リコにじっと胸を見つめられながらそんな事を言われるのが何だか気恥ずかしくて、ちょっと目を逸らしながら反論する。
「いいえ、みらいの方が大きいわ。ちょっと心配になるくらい」
だけどリコの中では私の胸が大きいというのはどうやら決まった事らしく、真面目な顔をしながらよくわからない事を言う。
胸が大きいと心配って、何だろう?
「心配って?」
「…………みらいに、悪い虫がつかないかって心配」
それが気になって聞いて見ると、何というかリコにしては素直な答えが返ってきた。
つまり、私がリコ以外に狙われてないかって心配らしい。
まあリコ以外に私を恋愛的に好きな人がいたとして、私がその人を好きになる、なんてありえないけど…………リコがそう思ってくれた事は、嬉しい。
だから。
「…………そんなに心配なら、リコのものって、名前書いちゃえば?」
リコの頭を胸に埋める様に抱いて、そっと囁く。
私にはリコだけだよ、と返答する様に。
「…………確かに、みらいの言う通りね。私のものって、ちゃんと名前を書かないと」
果たしてリコは私の誘いに気づいた様で、楽しそうな声と共に、もぞもぞと胸の中で動き出した。
ゆっくりと、焦らす様にリコの舌が私の胸を這う。
それはさっきまで音を立てながら私の鎖骨を攻めていたリコの動きとは真反対の動きだった。
太ももを撫でる手も心なしかさっきよりも大人しくて、気持ちよさと共に物足りなさが身体の中で高まっていく。
だけどリコは攻めるペースを変えず、執拗に私をいじめ立ててどうしようもないもどかしさが溜まっていくばかりだった。
そして、もどかしさが爆発してしまいそうになった時。
ひたすらに胸の周りをいじめてたリコが、乳首に舌を伸ばした。
そのままリコが、飴玉でも転がす様に、だけど優しく乳首を舌で捏ねる。
散々焦らされたせいか私の乳首は既に固くなっていって、それだけで甘い痺れが走る。
でも、爆発してしまいそうなくらいのもどかしさを解消するにはまだ足りなかった。
その時。
「…………っ!」
かぷり、とリコが私の乳首を甘噛みした。
その刺激に溜まったモノが決壊して、強烈な甘い痺れが全身を走る。
本当に電気を流された様に身体が跳ねて、力が抜けていく。
でもリコはまだ攻め足りない様で、今度は反対側を攻められる。
身体がさっきので覚えたのか、リコの攻めがより気持ちよくなって更に身体が腑抜けていく。
更に。
「…………っ、ぁ…………リコ…………っ」
ずっと太ももを下から撫で上げていたリコの指が、秘部に入ってきた。
一瞬、リコの指に身体が異物感を覚えるが、リコにずっと攻められていたせいかすぐに身体が抵抗をやめて、異物感が霧散する。
私の膣内が落ち着いたのを見計らった様に、リコの指が静かに膣内を弄り始める。
優しく、丁寧なその動きは私に痛みを感じさせる事はなく、ただ快楽だけを叩きつけてくる。
いきなり激しくなったリコの攻めに身体が悦んで、さっきとは桁違いの甘い痺れが、身体中に広がっていく。
そのまま、リコが満足するまで、リコの跡を、身体に刻みつけられた。
リコに攻められて、全身がリコの跡で染まった頃。
「ごめんなさい、みらい…………そろそろ、我慢出来なくなってきたわ」
リコが色々な感情を封じ込めた様な震えた声と共に、私を抱きしめる。
同時に、何かが私の股間に触れた。
ソレはリコの言葉を示す様に固くて、熱かった。
その様子にごくり、と唾を飲む。
これから起こる事を、どうしても想像してしまって。
だけど、不安はなかった。
これからやる事も、これまでやってきた事も、変わりはないから。
「いいよ、リコ。…………私がリコのものだって、もっと刻みつけて?」
だから、小さいリコの身体を抱きしめ返す。
リコの背中を、押す様に。
「…………ありがとう、みらい」
リコが、私を抱きしめる力を強くする。
顔は見えなかったけど、その声にはさっきの様な震えはなかった。
「…………それじゃあ、いく、わよ」
「うん」
ぎこちない動きで、リコが固くなったソレを、私の秘部に宛てがう。
「…………っ」
そしてゆっくりと、リコのソレが私の膣内に、挿入ってきた。
強烈な異物感と共に、痛みが私に襲いかかってくる。
「みらい、大丈夫?」
「うん…………っ、ちょっと痛いけど、大、丈夫…………」
だけど、想像していた程の痛みじゃなかった。
それはきっと、リコに執拗なくらい丁寧に全身を攻められたからだろう。
多分、私が出来るだけ痛くならない様にって事なんだろう。
それに気づいて、心が悦びに満たされていく。
痛みなんて忘れるくらいの、リコへの悦びに。
「ねえ、リコ…………動いても、良いよ?」
その悦びを示す様に、リコに誘いかける。
だけど。
「駄目よ。ただでさえ私の都合に付き合わせてるのに、これ以上みらいに痛い思いなんてさせたくないわ」
さっきまで私の誘いに乗ってたのは何処へやら、リコはあっさりと誘いを跳ね除けてしまった。
でも、とてもリコらしいその態度にますます嬉しくなって、リコを離さまいと足を絡めて抱きしめる。
「ちょっと、みらい」
「えへへ…………」
痛い筈なのにそれを嬉々として受け入れる私に、リコが呆れた様な声を出す。
だけど、私は歓びの声しか出せなくなっていた。
そして、私の膣内が挿入れられた異物に馴染んだ頃。
ゆっくりと、リコが動き出した。
「…………っ、あ、ぁ…………っ」
私の膣内を、異物が擦る。
時間をかけて馴染まされたせいだろうか、痛みはもう無くて、代わりに快楽がはっきりと伝わってくる。
それも、とびっきりの快楽に。
その快楽に耐えきれず、思わず嬌声が漏れる。
身体も同様で、快楽を与えるこの異物を離さまいと、締め付ける。
それに合わせてリコの動きが段々と激しくなって、更に快楽が強くなっていく。
そのままリコと一緒に、快楽の沼に沈み込んでいく。
そして、お互いの快楽が、限界まで高まった時。
「…………っ、みらい、何か、きそう、だ、わ…………っ」
「リコ…………っ、私も、そろそろ、限、かい…………っ」
リコの動きが、何だか焦った感じになった。
それは私も同じで、謎の焦燥感が心を支配する。
お互いに限界が近いと悟りながら、その焦燥感に従ってリコに絡める足の力をもっと強くする。
「みらい…………っ⁉︎はなして、このままじゃ、あぶない、わ…………っ!」
「大丈夫、今日、危なくない日、だから…………っ!」
「…………みら、い…………っ!」
そして。
「ぁ、あぁ…………っ、リコ、リコぉ…………っ!」
「みらい、みらい…………っ!」
リコが一瞬ビクン、と跳ねたかと思うと、決壊したかの様に、熱いモノが吐き出された。
同時に私も弾けた快楽の奔流に心を溶かされて、頭が真っ白になる。
「リコ…………きもち、よかった…………」
お互いに絶頂が収まった頃、ずるり、とリコが異物を引き抜く。
さっきまで私の膣内を塞いでたモノが無くなって、ドロリ、と注がれたモノが溢れた。
その時。
「…………ごめんね、みらい」
「え?」
リコが、私の足を掴んだ。
そして。
「…………ぁ…………っ⁉︎り、こぉ…………っ!」
再び、リコが私に挿入した。
絶頂して敏感になったところを不意打ちされたので、さっきよりも強い快楽に溶かされる。
「リコ…………これ、だめ…………っ! おかしく、なっちゃう…………っ!」
あまりに強い快楽から逃げる様に反射的な言葉が出るが、身体は正直で、リコを離したくないと締め付けるばかりだった。
だから。
「みらい…………言ってたわよね、満足させることができるか、不安、だって…………っ! だから…………今から、私がみらいで満足してるって、証明して、あげる…………っ!」
リコの言葉で、快楽の前に現れた恐怖はすぐに霧散してしまう。
「リコ…………っ! だぁい、すき…………っ!」
「私も、よ…………っ! みら、い…………っ!」
後に残されたのはリコが大好きという気持ちだった。
それが快楽と混ざって、もっと大きな快楽になる。
そのまま、リコと二人、何もかも蕩け切ったまま、何度も何度も交わりあった。
「いやー、一時はどうなる事か、って感じだったね、リコ!」
「全くだわ。…………上手く行ったから良かったけど」
リコと交わりあった翌日。
私達は、箒に乗りながら魔法学校を目指していた。
あの後、気絶するまで交わりあったせいで、後始末が大変な事になったけど…………何とか、リコにかかっていた魔法の一つは解くことが出来た。
だからだろうか、何というか凄く晴れ晴れした気持ちだ。
…………まあ、昨日のリコが凄すぎたからちょっと身体が痛いし、色んなとこに跡がついてるけど、まあそれはリコはそれだけ私を好きって事で。
「みらいー! リコー!」
「モフー!」
そんな事を考えていると、反対方向からはーちゃんと箒に乗ったモフルンがやってきた。
どうやら、迎えに来たらしい。
つまり、二人きりの時間はこれで終わりの様だ。
その時ふと、この最後の時間に言っておきたい事が思い浮かんだ。
「…………ねぇ、リコ」
「何かしら、みらい?」
「また、昨日みたいな事があっても…………皆で一緒に、歩いていこうね」
「…………ええ。皆で…………少しずつ、歩いていきましょう」
昨日の事を思い返しながら、リコの手をそっと握る。
私達は、ずっと一緒だ。
混沌でも、刻の魔獣でも、他の誰でも、もうこの繋がりを離れさせない。
もし仮に、また新しい困難が現れても、皆で打ち破る。
改めて決意しながら、はーちゃん達の元に向かう。
すると、待ちきれなくなったのかモフルンが私達の元に飛び込んできた。
「リコ!」
「みらい!」
飛び込んでくるモフルンに二人顔を見合わせ、笑う。
もう、怖いものは無かった。
キュアップ・ラパパ! ピンクダイヤ!
ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!
まほプリイベント当選したので行きます