「司令官、意見具申よろしいでしょうか。」
みすぼらしいテーブルの上、空の缶詰一個を前にして少女が口を開いた。
「なんだ、朝潮。」
「食料確保のための出撃を提案します。今は一食を減らしていますがこれは時間稼ぎにしかなりません。まだ食料がある内に行動を起こすべきです。」
はっきりと上官を見つける少女とは対照的に、男は目をそらして壁を眺めていた。
「外が危険であることは十分理解しています。しかし、ここと同じように緊急時の補給物資を保管している場所は他にもあります。丁度近い所に一箇所ありますので、そこを目指せば…司令官?」
男は目をそらしたまま、指で神経質にテーブルを小突いていた。少女への反応はない。
「…やはり、朝潮が戻らない可能性を懸念されているのでしょうか。」
男の目線が少女へと吸い付く。肯定するようにゆっくりと瞬きをした後で口を開いた。
「…そうだ。君の妹達のように、帰ってこない事があれば。そう考えてしまってな。頭にあるのはそればかりだ。」
「姉妹達はきっと生きています!いえ、必ず…司令官や朝潮と同じように隠れて生きています!その捜索も兼ねて、お願いします!」
少女は勢いよく立ち上がり、男へ頭を下げる。少女の提案は至極当然のもので、男が却下する理由などなかった。それでも、男は眼前の少女が失われることへの恐怖に取り憑かれている。
「生きていたとして、どうやって連れ帰るんだ。艤装がなかったらどうする?」
「救助はお手の物です!以前、大潮も助けた事もあります!姉妹達を見つけた時は必ず、必ず生きて連れ帰るとお約束します!」
男は深く、長い逡巡の末に、少女へと出撃許可を出した。前日までの嵐が嘘のように消え去り、暖かい陽気が降り注ぐ朝だった。
「駆逐艦朝潮、出撃します!」
フル装備の少女を見たのは何ヶ月ぶりだったろうか。男はそんな事を考えながら青い海へと溶け込んでいく少女を見送った。
一抹の不安を抱えながら歩哨に戻った男。木箱に腰掛け、少女の事に頭を巡らせる。ジリジリと注ぐ日差しに耐えながら、少女の裸体を思い浮かべる。
二時間ほど経った頃、唐突に草木の擦れる音がした。この無人島にそこまで大きな音を鳴らせる野生動物はいない。
少女が戻ってくるのは八時間後の予定だった。それに少女であれば、草むらを掻き分けずとも正しい道で防空壕に戻ってくるはずだ。
男は物陰に隠れようとしたが、木々の間に見覚えのある黒い制服が見えた。
緑が掻き分けられ、男の前に少女が再び姿を現す。枝でそこら中を擦りむき、髪はボサボサに跳ね上がっている。急いできた様子で息を荒くしながら男を見つめていた。
「朝潮…?どうしたんだ?何があった?」
少女は悲しそうな目で男を見つけた。何かを諦めるように、何かに傷ついたように。涙を流しながら男の問に答える。
「司令官、申し訳ありません。見つかってしまいました…。」
「…敵の数は?」
「はっきりとはわかりません。大部隊ではあると思います。電探を使用していたので逆探知された可能性が高いです。ここもきっと捜索対象になります。」
男は、ついに終わりが来たことを理解した。少女の艦娘としての練度は高いが駆逐艦でしかない。深海棲艦の大部隊と戦えば何も出来ずに沈むだろう。
少女に担いでもらってこの島を離れるという選択肢もあるだろうが、例え艦娘でも人一人抱えれば速度は目に見えて落ちる。むざむざ死ににいくようなものだ。
そう考えるのは少女も同じだった。棒立ちの男の腕を取り、防空壕へと駆け込む。
「朝潮?」
「隠れましょう!幸か不幸か、ここの物資は尽きかけです。隠れれば、逃げたと思われてやり過ごせるかもしれません!」
「ああ…そうだな、わかった。」
少女と男は、自分たちの直近の痕跡を消しつつ、防空壕内で隠れられる場所を探した。
しかし防空壕の中にそんな簡単に身を隠せる場所など無かった。防空壕は榴弾や爆弾から隠れるためのものであって、乗り込んできた敵に対して隠れる場所ではない。
結局、二人が隠れられそうなのは倉庫に置いてあった空の木箱ぐらいしかなかった。大きくはあるが、成人男性が身を縮めてようやく入り込める程度。同じ木箱に入った少女はぴったりと男に体をくっつけて、その身を震わせていた。
見つかっていないで欲しい、ここに来ないで欲しい。必死にそう願う少女だったが、コンクリートの床に響く足音にその願いは砕かれる。
艤装も捨て、身一つで震える少女。男の両腕に抱かれてもその震えが止まることはなかった。木箱越しにボソボソと聞こえる侵入者達の会話は、少女にも男にも聞こえなかった。聞く気がなかったというのが正しいかもしれない。
足音は二つ、コンクリートの床を歩き、階段を上り下りし、時折ドアが軋む。足音が段々近づいてくる。
倉庫のドアが開かれる音がした。広い部屋の中をカツカツと歩き回る音がする。少女は青白い顔をしながら震え続ける。
足音が木箱の前で鳴り止んだ。暗闇の中の二人に光が差し込む。
「…あんた達、こんな所で何してんの?」
少女と男は扉を開けた存在を見上げる。そこにいたのは二人がよく知る艦娘だった。少女と同じ制服に身を包み、同じ艤装を背負い、同じ砲と魚雷を身に着けた朝潮型駆逐艦三番艦、満潮。
「満潮…?生きてたのか…?」
予想外の侵入者に驚きつつも、男は満潮の名を呼びながら木箱から這い出る。少女は木箱の中でへたり込んだままだった。
「それはこっちの台詞よ!あんた達が何でこんな所にいるのよ!?どこまで私達を心配させれば済むワケ!?さっさと帰るわよ、ほら荒潮、あんたも!」
「荒潮?荒潮も生きてるのか!?」
「はぁ?あんた何言って―」
半開きになっていた倉庫のドアが大きく開け放たれる。二人目の侵入者が姿を現した。
「あああーっ!提督!ようやく見つけましたよ!?どこに行ってたんですか?」
満潮に続いて出てきたのは、同じく朝潮型二番艦大潮。勢いよく助走をつけた大潮は男へと駆け寄り、そのままタックルを決める。
「待て大潮、状況を説明…うおおおおっ!?」
二人は空箱の山に突っ込んで埃を撒き散らした。
「よかったぁ~~~!二人が居なくなったときはどうしようかと思いました!朝潮姉に続いて二人まで居なくなったら大潮は、大潮はぁ…!」
涙を零しながらも男の胸元に顔を埋める大潮。男の意識はタックルをかけられたことにも、大潮が泣いている事にも向いていなかった。根本的な違和感。心にひっかかるもの。
「荒潮は…、荒潮は今…、どこにいる?」
男は震える声で絞り出す。答え合わせをする時が来たと運命が告げている。
「はい?提督は今まで荒潮と一緒に居たんじゃないんですか?現に今一緒に居ますし。」
男は遅れて木箱から這い出た少女に目を向ける。少女は震え続け、その目には涙を浮かべている。
「司令、官、朝潮は、朝潮は…」
壊れた機械のように呟く少女。その様子を見た大潮と満潮は言葉を詰まらせる。
「朝潮は、朝潮はここに居ます、だから…」
自らに残った力を振り絞って、台詞を紡ぎ出す少女。その長い茶髪は所々跳ね上がっている。荒く息をするのに合わせて、スカートのフリルがゆらゆらと揺れる。男に向かってゆっくり進むその足で、落ちていた大発動艇を蹴飛ばした。
「荒潮…?」
少女の瞳を見ながら男が呟く。男が口にしたのは朝潮型四番艦荒潮の名。朝潮の妹の名。
その名前を聞いて少女は崩れ落ちた。両手で口を押さえてもその嗚咽は部屋の中に響き渡る。悲しみの中にどこか喜びが混じったその声は男の脳を強く強く揺さぶった。
男、大潮、満潮。三人が少女を見据えて動かない。少女はボロボロと涙を流しながら呟いた。
「その名前で…ずっと呼ばれたかったのに…どうして…どうしてこんなに…悲しいの…」
少女…荒潮は顔を床に伏せ、涙と声が枯れるまで泣き続けた。
横須賀鎮守府、取調室。無機質なテーブルを挟んで二人の艦娘が顔を合わせている。もう一人、別の少女が壁に向きながら何かを書き取っていた。
「私にも話してもらえませんか?荒潮さん。」
テーブルを挟んで少女に語りかけたのは練習巡洋艦鹿島。その腕には警務と記された腕章が光っている。
「ごめんなさい。」
問いかけられた少女、荒潮はそう答えた。先程から鹿島の質問に対する答えは全てこの一語だった。
鹿島は返ってきたものが謝罪であることに頭を痛めた。目の前で位置消沈した少女は謝罪ばかりを繰り返しており、その度に彼女の良心は削られていく。
「霞ちゃん、任せるわ。私は…外の空気を吸ってきます。」
鹿島は同じ腕章をつけたもう一人の少女に声をかけると部屋から出ていった。空いたパイプ椅子にその少女が座り直す。
「久しぶり、荒潮。…元気だった?」
もう一人の少女は霞。朝潮型十番艦、荒潮の妹で姉妹達の末の妹である。
「…わからないわ。霞ちゃんは…元気そうね。よかった。」
ようやく口を聞いた荒潮にため息をつく霞。
「私に口を利いてくれるなら鹿島さんにも同じ様にしてくれていいんじゃないの?あれ、結構傷ついてるわよ。」
「ごめんなさい。でもやっぱり話しづらくて。」
霞は先程まで自分が座っていた机から調書とペンを持ち出して荒潮の前に置いた。そのまま続きをすらすらと書き始める。
「ここで聞いた事は黙っててあげる。調書には色々書くけど、あんたが書いてほしくないのは書かない。それでいいでしょ?」
「うふふっ。手慣れてるのね、霞ちゃん。その腕章も似合ってるわ。」
「そりゃ…暇だからよ。深海棲艦との戦いが終わって、もうやること無いんだからこうやって警務隊に異動したの。」
「そう…ね。終結宣言からそろそろ一年かしら?」
「ええ、一年。あんた達が行方不明になってからは半年。ずっと…探してたんだから。」
荒潮は霞の目を見た。提督や同僚達に向けて厳しい目を向けていたかつての目は、今は優しく荒潮を見つめ返している。ほんの僅かにだが、その目には涙が浮かんでいるように見えた。
「ごめんなさい。責任、あるわよね?」
「…多分、あんたには無いわ。あのク、…司令官は自分の責任だと主張してる。あんたは命令に従っただけ。上もそれでいいと考えるでしょう。」
「違う、違うの…。私が、私が…朝潮姉さんについていけば。あの日、提督の家に行かなければ…」
荒潮は自分の拳をテーブルに力なく叩きつける。よく磨き上げられたそのテーブルには、荒潮自身の顔が映っていいた。
「落ち着いて荒潮。少なくとも…朝潮姉さんが沈んだことにあんたの責任はない。誰にだって無いわ。司令官にも、あんたにも。姉さんが沈んだのが誰かのせいなら、私がすぐに飛んでいってそいつをぶん殴ってる。」
荒潮は答えない。それが正論であったとしても慰めにはならなかった。しかし妹の優しさが荒潮に冷静さを取り戻させる。ゆっくりと息を吸い、そして吐いた。
「姉さんが沈んだ経緯も聞いてる。台風に紛れて行われた深海棲艦の最終攻勢の最中で司令船との通信が途絶。第八駆のうち大潮、満潮、荒潮は本隊との合流を優先。旗艦の朝潮のみ司令船救援に向かって…そこで沈んだ。司令船の目と鼻の先で。」
霞はそう言って目を伏せた。お互いによく知る事実。どうしようもない事実。
「…私は、朝潮姉さんが別れた後で沈んだって聞いて、悲しかった。悲しかったけど、受け入れたわ。いつかこうなる日が来るって、どこかで思ってたから。冷淡かもしれないけど…艦娘としてはそれが自然なのかもしれないわね。」
「司令官の様子は?」
「提督は…提督も当然悲しんでたわ。自分を助けにきた艦娘が自分の目の前で沈んだんだから当然よね。でも、なんとか受け入れてた。当時はそう見えたわ。」
「様子がおかしくなったのはいつ頃?」
「終結宣言のしばらく後よ。提督は…戦いが終わってほしくないように見えたわ。」
「それは何故だか知ってる?」
「直接聞いたことはないわ。聞くのが怖かったから。でも…提督は自分の伝手で直近の邂逅記録を漁っているようだったから…きっと、朝潮姉さんにまた会おうとしたんだと思う。」
「沈んだ艦娘に?」
「多分…ね。ほら、あの人、自分でも諦めが悪いって言っていたじゃない?深海棲艦が浄化されて艦娘になるだとか、艦娘が沈んで深海棲艦になるとか、そんな噂を信じていたんじゃないかしら。」
「…どっちの現象も確認されてはいるけど、それこそ1%にも満たない例外中の例外よ。両方起きるなんてまずありえない。」
「ええ。提督も知っていたと思う。でも私も…信じたかった。戦い続ければまた姉さんに会えるって、信じてた。終結宣言が出されるまでは。」
「その後の司令官は?」
「警務で記録は持っているんじゃないの?とにかく色々。ずっと不眠で働き詰めよ。もう働く事なんて何もなかったのに。体調を崩して、精神面の問題だと判断されて、長期休暇を取らされた。それからはずっと自宅で療養中。」
「あんたが失踪した日の事はもう調べてある。司令官の自宅の最寄り駅まで利用記録があったわ。司令官の自宅に行ったのね?」
「ええ、そうよ。」
「当日は台風のようだったけど、なんでそんな日に?」
「提督に泊めてもらうためよ。」
「…はぁ?」
「私ね、嵐の日はずっとあの日を思い出しちゃうの。姉さんと約束を交わして別れた日。あの日の記憶がずっと抜けないの。多分、提督も同じだと思う。」
「司令官が自殺でもするかと思った?」
「ううん、そこまでは。でも…心配してたのは事実よ。提督、朝潮姉さんの事が大好きだったし。私も…姉さんと提督が一緒にいて、そこに私がいれば、それで満足だった。」
霞は荒潮の目線を辿る。にこやかな表情で、懐かしく語るもどこか寂しさを漂わせていた彼女の目は、自らの左手に向いていた。
「指輪もきっと、姉さんに贈られるものだと思ってたわ。私もちょっとは、欲しかったけど…」
そこで荒潮は語るのをやめた。小さなため息を吐いて、元の話を続ける。
「駅から出て、傘も差さずに提督を訪ねたわ。姉さんに似て奥手だったけれど、ずぶ濡れの女の子を返すほど薄情な人でもなかったし。濡れた甲斐もあって上げてくれたわ。」
「自宅での様子は?」
「…かなり荒れてるみたいだったわ。下戸のくせにお酒の空き瓶が転がってて、部屋はゴミだらけで真っ暗なまま。外が台風でなければ無理矢理引っ張り出したかも。」
「それで?」
「ええ、それでね…」
荒潮は続けることなく固まった。目を伏せ、両手を握り震えだす。
「荒潮?」
「…提督がね、私の後ろ姿を見て、朝潮、って呟いたの。雨に濡れて髪がべちゃっとなってたし、部屋も暗かったから、本当に、単純に、見間違えただけなんだと思う。」
冷たいテーブルにポタポタを雫が滴り落ちる。荒潮の目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。
「出来心だったの。少しからかうつもりで、提督に元気になってもらえたらとか、そんな…そんな軽い気持ちで答えたの。朝潮をお呼びでしょうか、司令官!って。」
霞はペンを握る手を止め、ゆっくり荒潮の手を包んだ。
「その時の司令官の顔は忘れないわ、ううん、ずっと前から知ってた顔だった。朝潮姉さんだけにする笑顔。それが私に向けられてた。正直、もうその後の事は覚えてない。台風の中提督と一緒に逃げて、ボートを盗んで、あの島まで逃げたわ。何から逃げたのかは…私もわからない。」
「…大潮と満潮から聞いたわ、司令官があんたを朝潮として扱ってたって。どうしてそんなのを受け入れたの?」
「私も…受け入れたかったから。朝潮姉さんが生きていればってずっと思ってた。提督もそうだと分かって、嬉しかった。だから…提督を受け入れたわ。」
「司令官は…ずっと気がづかなかったの?」
「わからないわ。でも、私は朝潮姉さんの隣にずっと居たから、姉さんならなんて言うか、姉さんならどうするかはすぐに解った。姉さんの横で、提督を見る姉さんをずっと見ていた。提督の自宅を知ってたのだって、朝潮姉さんのために私が調べてあげたの。」
「朝潮姉さんが?なんで?」
「あら?霞ちゃん案外鈍いのね?朝潮姉さん、両思いだったのよ。ふたりとも自分でそれに気がついてるくせに、奥手同士、生真面目同士で中々くっつかないんだもの。じれったいわよね?」
「えっ、いや、それは知ってたけど、あんた何でそんなに―」
「私は朝潮姉さんが大好き。提督も大好き。それじゃ答えにならない?」
「…それであんたは良かったの?満足だったの?」
「…本当は、私だって提督に元に戻って貰いたかった。でも今戻れば、提督はもっと壊れてしまうかもしれない。それが怖くて、ずっとあの島に引きこもってたわ。通信設備に細工して、外部と連絡が取れないようにしたのも私。あの島でずっと、提督が元に戻るまで、そばに居てあげたかった。」
「あいつは…元に戻れたと思う?」
「…きっと元通りにはなれないと思うわ。私だってそうだし。結局、提督のためとか言いながら、私自身提督とあの島でずっと一緒に居たかった想いもある。いつか朝潮姉さんじゃなくて、私を見てくれる。そういう日が来るのを望んでいたけど、望んでもいなかった。」
「そんなのおかしいわ。意味わかんない。」
「おかしくはないわ。私は…提督にずっと朝潮姉さんとして愛されたかったし、荒潮としても愛されたかった。…少し我儘かしら?ふふっ。」
霞は答えなかった。荒潮程でないにせよ、あの男には好感を抱いていたし、朝潮に対しても当然親愛の情を抱いている。血を分けた姉の矛盾した心。頭では理解できずとも、直感的に理解はしていた。
「提督は…どうなるの?」
「…誰の目から見ても正気でやった事ではないというのが明らかだし、情状酌量の余地はあると思うわ。でも、海軍には残れないと思う。」
「…そう。私は?」
「謹慎や減給は食らうと思うわ。今のあんたには屁でもないでしょうけど。」
「私は残れるのね?」
「多分ね。でも残ってどうするの?あんたが居なかった半年間でもイ級どころか死骸すら発見されてないのよ。戦いは終わったまま、することは何もないわ。」
「それはこの半年間に出なかっただけの話でしょう?」
「そうだけど…あんたまさか…」
「うふふ。私、しつこい女だから。」
泣き腫らした目で、少女は笑った。
雨がコンクリートを叩く音。それに混じって階段を登る音が聞こえる。目的の階にたどり着いたその足音は階段から床へと移り、鼻歌と共にリズムを刻んでいる。
マンションの廊下で雨は入ってこないはずだったが、少女は黒地に赤と白のラインが入った傘を差したままくるくると回し、微笑みながらインターホンを鳴らす。
インターホンから聞こえる物音で留守でないことを確認した少女は自らの名前を告げた。
「こんにちは提督。荒潮よ~。入っていいかしら?」
微かに聞こえた肯定の声を聞き、鍵が開けられる。傘を畳んでから部屋へと入る少女。外ではまだ雨が降り注いでいた。
「あら、結構片付いてるのね?掃除用具いくつか買ってきたけど要らないみたい。」
少女、荒潮は男の部屋を見ながら率直な感想を漏らした。以前来た時は半ばゴミ屋敷のような惨状になっていたが今は違う。ゴミは全て取り除かれ、床は磨かれ、壁紙は張り替えられている。
「大潮ちゃんと満潮ちゃんが掃除したって聞いてたけど…あとでお礼言わなくちゃ。」
家具もすっかり綺麗になっていたが、逆に綺麗すぎて生活感はなかった。まるで新築の家がそのまま放置されているような光景だった。
唯一、生活感があると言えるのはテーブルの上に無造作に置かれたスーパーやコンビニの袋。中には弁当の空箱が入っていたが、全く手を付けられていないものも多い。
「お酒は飲まないの?まあ、無理して飲んでたんでしょうけど。」
荒潮はソファにぐったりと座る男を見た。あの島で見た以上に無気力で暗い顔をしている男。目だけが荒潮を僅かに捉え、再び虚空を見つめる。
「君にした事は…すまなかった。巻き込むつもりはなかったんだが…どうも。おかしくなってしまって。」
「いいの。私だって共犯者みたいなものだし。提督の気持ちも…わかるから。」
「俺はもう提督じゃないぞ。軍属ですらない。」
「私にとっては今でも提督よ?そう呼ばれるのが嫌なら…そうねぇ、名字…は私が嫌かしら。なんか他人行儀に聞こえるのよねぇ。下の名前でもいい?」
「わかった。提督でいい。」
觀念した男を見て、荒潮は目を細めてくすくすと笑う。男をからかうのは彼女の趣味だった。
ぼすん、と大きな音を立てて隣に座る荒潮。その表情には微笑みが張り付いて心の奥底まで読むことは出来ない。
「それで?何しに来たんだ?」
「あら、遊びに来た女の子に対してそういう言葉遣いはないんじゃない?」
「…すまない。」
乙女心を理解できない不器用な男は黙ってしまった。沈黙を破るように荒潮は続ける。
「私、まだ艦娘は辞めないわ。可能性は物凄く薄いけど…朝潮姉さんが戻って来ないと決まったわけじゃないもの。」
驚いたように男が顔を向ける。生気の無い顔に、ほんの少しだけ色が戻ったように見えた。
「そうか。その…頑張ってくれ。私にはもう何も出来ないが。」
「うふふ、ありがとう♪でも…決意表明とは別にもう一つあるの。」
荒潮は男の手を握った。さり気なく、そして優しく。
「ねえ提督、朝潮姉さんとはした事あるのかしら?」
「何を―」
「セックス、よ。」
男は目を伏せて荒潮の顔を見ないようにした。手も振りほどこうとしたが、自分にそんな権利は無いことを思い出し、握られるまま力を抜く。
「したことはない。そういう欲求があった事は否定しないが…私と朝潮の性格は知ってるだろう?」
「うふふ。そうねえ。私がせっかくこのお家の事を朝潮姉さんに教えても全然動かなかったし。昇進祝いっていう理由をこじつけてここに来させるの、大変だったのよ?」
「そうか、あの日か。通りで…駅前でばったり会うなんておかしいと思ってたよ。」
「うふふ。プレゼント、喜んでくれた?」
「ああ…素直に嬉しかったよ。朝潮がバラの花束なんてくれるとは思っていなかったが…むしろ君のくれたハンカチの方がずっと朝潮らしいと思っていた。」
「それは正解ね。あのハンカチ、本当は姉さんが選んだものだから。」
「…ならなんで、そのハンカチを君が?」
「だって面白くないじゃない?普通好きな人に渡すって言ったらお花に決まってるわ。私が姉さんに言って、代わりにバラをプレゼントするように言ったの。」
再びくすくすと笑う荒潮。からかいの対象には姉も含まれていた。
荒潮は目を細めて笑い、視界が揺れるのを感じた。視界が潤み、男に乗せた手からじわりと汗が吹き出る。
「それでね、提督…もしよかったら…私を抱いて欲しいの。」
荒潮にもわかる程に、男の手が驚きでびくりと揺れた。少女の手と同じように、その肌がじわりと湿り気を帯びていく。
「姉さんとはしたことないんだから、私が初めてよね?だからまあ、不倫、っていうことにはならないと思うわ。」
「私は…いや荒潮、君はそれでいいのか?私にとっては朝潮が、その―」
「私も、一番好きなのは朝潮姉さんよ?提督は二番目。だから譲ったの。」
男が動かないのをいいことに、荒潮は男の腕に自分の手を絡め始める。指同士を絡め、肘を自分の体に擦りつけ、髪を揺らしてふわりと風を吹かせる。
「提督は、荒潮の事嫌いかしら?」
男は答えかねていた。どのような答えを返すべきなのか、そもそも自分に答える権利はあるのか。そうやって黙って考え込んでいると、肩が熱くなるのを感じた。
横に顔を向けると、少女の橙に燃える瞳から熱い涙がボロボロと溢れ、男の肩を濡らしていた。
「あっ…ごめんなさい。格好…つかないわね。うふふ。」
自嘲地味に笑う少女。男がこれを見たのはたった二度だけだった。あの島で荒潮の名前を呼んだ日と、そして今。普段は笑みを湛えて真意を隠していた少女が、その仮面を剥がして男と向き合っている。少なくとも、答えないという選択肢は潰えた。
「朝潮を探すんだろう?なら何で私に近づく?」
「朝潮姉さんは諦めないし、提督の事も諦めないわ。私、しつこい女なの。」
そう答える荒潮だったが、腕は震えていた。縋り付くようにしても男はまだ動かない。
口ぶりとは裏腹に少女は恐れていた。拒絶されることへの恐怖、自分の想いが一方通行であったことへの恐怖、今までの行いに対する男の反応。どれもまだ未熟な少女には耐えられない。
絡み付いた手から力が抜け、引き離そうとした瞬間、荒潮の腕を男が掴む。
「わかった。荒潮の気持ちは…理解できる。私も同じだ。それで埋め合わせになるなら構わない。」
荒潮の震えが止まった。しかし縋り付く腕は離れない。むしろ更につよくなり、指が男の腕へ沈んでいく。
「あら~?さっきも言ったわよね?それが女の子に対する口の利き方かしら~?愛の告白に『構わない』ってちょっと失礼じゃない?」
荒潮は男の腕をギリギリと締め上げながら、力強く笑っていた。
「ああ、悪かった!ちゃんと言う!言うからやめてくれ!」
「うふふ♡」
男は大きく息を吐いて荒潮に向き直る。その顔には生気が戻っており、僅かに赤くなっていた。
「朝潮が一番なのは変わらない。だからもし、朝潮が戻ってきたらどうなるかはわからない。ただ、私も同じように荒潮の事を想ってる。それでよければ、側に居て欲しい。」
そう言い終えた瞬間、荒潮が飛び上がって男を押し倒した。
「うふふふふ…ふふっ♪うふふふふふふふ…♡」
涙で濡らした頬を男の頭に擦りつけながら笑う少女。心からの笑みだった。それから暫くの間、少女は笑い続けた。
「う~ん…このベッドじゃ二人で寝るのはキツそうねぇ。」
「泊まるつもりで来たのか?」
「ううん。今後の話よ。それに…するんでしょ?」
そう言いながら荒潮はするすると慣れた手付きで服を脱いでいく。男にはその光景に見覚えがあったものの、それが正しい記憶であったのかはわからない。
「…なあ、あの島であった事は本当なんだよな?」
「ええ。それがどうかしたの?」
「あの…やり方は、朝潮を真似てたのか?」
「うふふ。どうかしら?真面目な姉さんに出来たかは微妙だけれど…私の姉さんだから。」
ブラとショーツを脱ぎ捨て一糸まとわぬ姿になった荒潮が、まだ脱ぎ始めたばかりの男の前に立つ。
「私、悪い子だから。朝潮姉さんも悪い子だったかもしれないわね。」
少女は上半身裸の男にすがりつき、その胸板をチロチロと舐め始める。男はその光景に目を奪われた。無人島での朝潮の姿に、今の荒潮が重なっていく。
男は何も考えないことにした。荒潮の顔を掴み上を向かせると、その唇に食らいつく。
荒潮は男の望むままに蹂躙され続けた。空いた手で男のズボンに手を差し込み、器用に脱がしていく。
蹂躙されている間、荒潮は男を見つめ続けた。男もまた同じくその橙の瞳に目を奪われている。
上から覆いかぶさった男へ何かを強請るように舌で突き上げ、唾液を交換する。栗毛色の髪がその度にふわりと揺れ、甘い香りを男に届けている。
荒潮はパンツまで脱がせた後、男の勃起したペニスに手を伸ばした。ゆっくりと何かを塗り込むように手を滑らせる。亀頭には触れず、男の先走りだけがダラダラと床に流れていく。
男はようやく少女の頭を離した。口から二人の唾液がとろりと糸を引く。
「んぷ……ふぅ…♡うふふ、元気出た?」
荒潮は眼前のそびえ立ったペニスに目を向ける。それに手を伸ばし、口で大きく咥えようとした瞬間、男に抱きかかえられる。
「あら?あらあら?」
そのまま、ベッドへと放り投げられる。
「きゃっ!ちょっと、もっと優しくしてもいいんじゃないの?」
荒潮は抗議の目で見つめるが、男にもう少女を気遣う余裕はなかった。息を荒くしてじっくりと少女を舐め回すように見下ろす。無人島で見た獣の姿だ。
「ふふっ…来て♡」
わざとらしくベッドの上で服従のポーズを取る荒潮。それに当てられた男はベッドへと飲み込み、少女を組み伏せて自らを挿入した。
「んんっ…ふうううっ…♡」
前戯もなく、まだ濡れていなかったヴァギナに暴力的にペニスが突き立てられる。荒潮の体はペニスを拒み、大きく締め付ける。
荒潮が感じているのも快楽ではなく苦痛だった。しかし、力任せに挿入されても何故か少女の心は満たされている。
「うふふっ♡『荒潮』とするのは…初めてよね?」
今までは朝潮として男と交わっていた。その事実は少なからず少女の心を傷つけており、肉欲は満たされても、心は満たされなかった。
今は逆の現象が起きている。どれだけ痛くとも、姉の朝潮としてではなく、荒潮としての処女を捧げられた事が少女の心を満たしている。
「荒潮、すまない。動くぞ…」
男は脂汗を浮かばせた少女の頬を撫でながら、強引に前後運動を始める。少女の足が弱々しく男の腰に絡み、時折快感ではなく痛みで震える。
少女の膣内はいつになく熱かった。男は偽りの記憶の中にあった朝潮との初夜を思い出す。最初は無理をしすぎて血が出てしまっていたが、今日の締りはそれに近いものだった。
やけにおとなしい荒潮を見下ろすと、少女は無造作にベッドの上に投げ捨てられていた毛布を掴み、痛みに耐えていた。
男の匂いが染み付いた毛布を咥え、歯ぎしりをしながらふうふうと静かに息を立てている。
荒潮の胸に男の手が伸びた。少女がペニスにしたように、何かを撫でるような動作で小さな膨らみを撫でる。手のひらで掃除するように行ったり来たり。爪で乳首を擦るのも忘れない。
「ふぅっ♡ううううぅ…♡」
少女の呻き声に嬌声が混じり始める。声と共に涎が溢れだし、噛んだ毛布を湿らせていく。
男は大きく動くのをやめ、ゆっくりとペニスを奥底まで進める。ゆっくりと、少女が痛みを感じないように。
そして少女が男のペニスを全て飲み込んだ。その事実が、目の前の少女が処女ではなく開発済みの女であることを示している。
男は少女から毛布を剥ぎ取り、再びそれをつかもうとする少女の両手を掴んだ。
「んっ、毛布、返して…」
「私のだぞ。」
「今は私のなの。返して。」
「ダメだ。」
「どうしてかしら?」
「荒潮の声をもっと聞きたい。」
「う…」
荒潮は顔を真赤にして目を反らした。あそこまで情熱的で、蠱惑的だった少女が。
そのまま黙り込んでしまった少女の両手を目一杯引き寄せて、代わりに腰を前に出す。
「うっ……んんんんんん…♡」
少女に腰を密着させたまま、今度は左右に、上下に、繋がったまま腰を動かす。
「やぁっ…♡かき回さないで…♡うぅ…♡」
「そこまで恥ずかしがるような事か?今までもしてきただろう。」
「それは…そうだけど。嫌なの。恥ずかしいの。」
きっぱりと拒絶の意思を示す荒潮。これまで男を誘ってきていた数々の言動よりも、男の前で見せる本当の自分に羞恥を覚えていた。
あるいは、今まで男と姉をいいように手球に取ってきた少女にとって、フィクサーを気取っていた少女にとって、女としての本能をさらけ出すのはプライドが許さないのだろう。
その荒潮の複雑な心境を知ってか知らずか、男は再びミリ単位の微細な動きで少女を突いた。
「ひっ♡」
その度に少女のヴァギナから蜜が溢れ出す。乾いた粘膜に染み込み、摩擦を緩やかなものにしていく。
男は掴んだ少女の両手を引っ張り、少女自身の下腹部に当てさせた。
「提督?なにを―」
男はまた小さく小突く。ほんの少し、ほんの少しベッドが揺れただけだが、荒潮はぴくりと体を震えさせた。
もう一度、もう一度。男がヴァギナを、膣を小突く度に少女の腰が跳ね上がる。
「なに…これ、お腹、きゅっとして…」
再びペニスが打ち付けられる。今度は少し距離をとって、一気に。
少女の子宮口へ亀頭が軽くキスをする。その衝撃と、摩擦と、快感。それが下腹部をピリピリと揺らしていた。
「えっ…私の体、こんなに反応してるの?」
普段は無意識的にしか受け取っていない快楽。それを少女は自らの手のひらで感じ取っている。どれだけ自分の体が淫らで、どれだけ敏感なのか。どれだけ男に開発されていたのかを。
「て、提督?ちょっと待ってもらってもいいかしら?荒潮、心の準…びぃっ!?」
男は少女の言うことなど聞かず、腰を振り始めた。たっぷり分泌された愛液がキツめのヴァギナを濡らしており、先程のような痛みはもうない。
「やぁっ♡やだっ♡提督っ♡とめっ…うぅん♡」
男は少女の小さな手を下腹部に押し付けたまま遠慮なくペニスで子宮を責め続ける。少女の神経と指先の感触が少女の脳へと快感を伝えている。
「あっ♡あっ♡やだぁっ♡わたし、おなか、ふるえて…♡」
何度も何度も子宮口をノックされ、震え続ける荒潮。熱くもがくような、強烈な感覚に襲われ続ける。
「あつぃ♡あついわぁ♡それに、かゆ…あぁっ!」
両手を拘束され何も出来ない荒潮。何も出来ずに快感を享受するだけの拷問に耐えかね、必死で指先を動かした。気を紛らわせるために行った行動だが、それは自らの下腹部をひっかくだけの行為に終わっている。
吹き出た汗と、打ち付けられた愛液によって指は滑り、表皮をコリコリと掻き立てるだけ。その刺激は男のペニスと、少女自身の子宮にも伝わっている。それが悪循環を生むとも知らずにひっかき続ける。
「あっ♡荒潮っ♡いっ♡いっちゃ…うぅっ♡」
「荒潮…荒潮…荒潮…っ!」
男が再び荒潮の手を引き、腰を深く打ち付ける。引き寄せられた少女の蠢く指が、クリトリスを捉えた。
「ッ!~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
結合部から水しぶきがあがる。絶頂を迎えた荒潮は愛液のシャワーを撒き散らし、代わりにヴァギナで男のザーメンを飲み込む。
少女の手のひらにも二人の絶頂が伝わっていた。お互いの粘膜を痙攣させ、愛液とザーメンを送り出している。少女は快感に耐えられず仰け反り、自らのヴァギナがビクビクと震える様を見ることは出来なかったが、肌でそれを感じ取っていた。
「はぁ…♡ああ…♡もう…めちゃくちゃじゃない…♡」
肩をベッドに深く落とし、余韻に浸る少女。男もまだ余韻に浸っていはいたが、少女の姿を見てすぐに硬さを取り戻していた。
「あぁ…すまない荒潮、まだ続きを―」
荒潮は素早く起き上がり、再び腰を動かそうとした男を後ろに突き飛ばす。男の体がベッドに沈み、繋がったままのペニスが少女の粘膜を擦る。
「んふぅっ♡ふぅ…♡ふぅ…。今度はぁ…こっちの番よね?」
少女は男と繋がったまま、その柔らかな体で体勢を整える。しなやかな足を誘惑するかのように回して男の上に座る。
気がつけば、荒潮は仰向けに寝そべる男の上で騎乗位の姿勢を取っていた。ペニスが刺さったままのヴァギナからは、時折ザーメンが漏れ出している。
少女は両手を男の腹に当て、自分の体重を支える。その手のひらをゆっくり上へと妖しく動かしながら男の乾いた肌を擦っていく。
「うふふ…♡逃さないわぁ…。」
少女は両手足に力を込めて体を持ち上げた。ヴァギナからペニスが引き抜かれる。小陰唇はぴったりとペニスに吸い付くが、少女の未発達なヒダはすぐにペニスを逃してしまう。
愛液、ザーメン、先走りの白濁液が少女の割れ目から流れ出す。シーツの白は、既に淫猥な白濁で塗りつぶされていた。
「ふふふ…ふぅっ…ぅぅぅぅ…♡」
荒潮がゆっくりと腰を下ろし、ペニスが再び少女の中へと入っていく。全てを飲み込んだ後もしつこく腰を揺らし、前後左右の膣壁に擦りつける。
そそり立つ肉棒を中心にいやらしく腰が回っていく。一回転、二回転、三回転。笑みを浮かべながら遊ぶように男を拐かす。たまらなくなった男は少女の腰を両手で掴んだ。
「待って提督、私にもリードさせ…んっ♡」
男は荒潮を持ち上げてペニスを引き抜き、そのまま腰を上に打ち付けた。少女の広げた両足が震え、逃げ出そうと腰を浮かせる。しかし男はそれに構わずその小さな骨盤を掴み、力のまま下に引き込んだ。
「んんぅ………♡」
ヴァギナを精液と肉棒でシェイクされ、甘い声を上げる荒潮。快感のまま首を振り上げ天井を見上げながら、その口から声と蒸気を溢れさせている。
「荒潮っ…荒潮っ…!」
男は寝転んだまま、少女を突き上げ始める。ベッドがギシギシと揺れると共に、少女の体もぐらぐらと前後に揺れる。
部屋に響く乾いた音と、男の上で揺れる少女。まるで合いの手にあわせて少女が踊っているようだった。髪と嬌声を振り乱し、何かに酔ったように、男の動きに合わせて妖しく揺れる。
「やだ…私…だってぇ…♡」
荒潮は体重を支えるために後ろに手をやった瞬間、あることを思いついた。悪戯っぽい笑みを男を見下ろすと、両手を自らの尻に向かわせる。
そこにあったのは少女自身の尻ではなく、男の睾丸だった。少女のヴァギナから出た液体で滑ったその玉を少女は握る。
「おい待て、何を―」
「うふふ。大丈夫よ?潰したりしないから。」
そう言って荒潮は男の睾丸を両手で揉み始める。出来るだけ優しくしながらも、うねるように激しく。時折爪で引っ借りてみたり、自らの尻にも擦り付ける。
「うふ…うふふふふ♡私の中にあるのはギンギンに固くなってるのに…こっちは柔らかいのってなんだか可愛らしいわね?」
荒潮の見え透いた挑発に男は腰で答える。荒潮は突かれる度に艶やかな息を吐き、涎を垂らすが男に向ける笑みは変わらなかった。
揺れる頭と揺れる口。少女の口元をよく見ると、声は出ていないのに唇だけが動いている。
『もっとシて』『わたしをあいして』『わたしをみて』
乙女としてのプライドが許さないのか、あるいは相手を惑わすためのセリフなのかはわからない。しかし男は少女がそう言っているように見えたし、少女が声に出す光景も想像出来た。
その瞬間、男の導火線に火がついた。言わせてみたい。口に出させたい。そんな邪な欲望が男を突き動かす。
「~~~っぁぁ♡はぁ……♡」
少女の肩が小刻みに揺れ動く。下から突き上げられるがまま、か細い声をあげている。
赤く腫れ上がった少女のヴァギナからは泡立った先走りと愛液がトロトロと流れ落ち、男と少女の間に水たまりを作っている。
漏れ出た体液達は男の睾丸にまで流れ着き、荒潮の手によってそのまま塗りたくられる。ベッドの上でしているとは思えないほどに激しい水音だった。
「ていとく…♡んんっ…んんんん…♡♡♡」
先に根を上げたのは荒潮だった。体をぶるりと震わせたかと思うと、ヴァギナから愛液を吹き出した。しかし男はそれに構わず、締付けの強くなったヴァギナを愉しみながら腰を打ち付ける。結果、荒潮は男の上で上下に揺れながら潮を撒き散らした。
「あっ♡やだっ!これじゃっ!漏らした…みたいっ♡じゃない…♡」
男が突き上げる度にぴゅうぴゅうと潮を吹く荒潮。先程までの余裕はなく、表情は崩れ、睾丸を揉むのも忘れ、だらしない顔で男を見下ろしていた。
されるがままの少女の腰を男の手が掴み、腰に勢いよく下ろした。深く大きい音と共に、ベッドが大きく軋む。トランポリンのように増幅された少女の自重が、膣壁でペニスを擦り上げる。
「荒っ…潮っ…!」
「きゃあっ!あっ…ああああああぁぁぁぁ…♡」
二人の接合部がベッドに奥深く沈んだ瞬間、少女の中にザーメンが放たれる。粘り気の強い白い液体が少女の小さな蜜壺を溢れさせ、そのまま外へと漏れ出ていく。
荒潮はそんな感触を味わいながら、快楽に身を震わせ、そのまま男へと前のめりに倒れ込んだ。
「…うおっ?」
「ふぅ…ふぅ…うぅ…♡提督、ごめんなさい。もうちょっと、胸を貸して…。」
男と荒潮はそのまま、お互いの胸を重ねてただ息をしていた。男の荒い鼻息が少女の髪を撫で、少女のか細くも熱い吐息が男の胸を焦がす。
しばらくそうしていると、荒潮は再び動き出した。両手をベッドにつき、起き上がるのかとおもいきや、自らの小さな胸を男の体に擦り付ける。
「荒潮?」
「まだ…まだよ…私、まだやれる…」
荒潮は熱くうねる下を見せつけるかのように口から垂らし、そのまま男の胸に這わせ始める。男の浮き出た汗を舐め取り、自らの唾液でコーティングしていく。
「大丈夫なのか?」
荒潮は答えず、男の体を舐めながら前後運動を始めた。男の体に全身を這わせ、自分を慰めるかのように。
「まだ…もっとしたいの…姉さんとはもっとしたじゃない…私を…荒潮を…もっと抱いて…」
幼さの残るその顔には涙が浮かんでいた。どのような涙かはわからないが、そこに涙がある事実だけは揺らがない。少女の吐息が、唾液が、涙が、男に再び熱を与える。
「んっ…ふふふ…♡まだできそうね?」
少女に入りっぱなしの男のペニスが再び硬さを取り戻す。少女はヴァギナでそれを感じ取った。
体力の限界をとうに超えていた荒潮は、男に張り付きながら両手を伸ばした。ナメクジのように男の胸を這いずりながら、男の乳首をつまむ。
「おい、男の乳首なんて弄ってどうするんだ。」
「うふふ。お返しよ、お返し♡」
荒潮はずるずると前後運動を繰り返しながら男の乳首へ奉仕を始めた。はじめは赤子のように音を立てて吸い付き、しゃぶる。止めたかと思えば今度は自らの口を大きく開けたまま、舌先でペロペロと乳頭を刺激する。
男はくすぐったいと感じる程度で、乳首で快感を得ることはなかった。しかし目の前の光景は男の感覚を狂わせるには十分なものだった。胸から体へ、体からペニスへ、快感と熱狂が伝播していく。
気がつけば男は荒潮を抱きしめていた。栗毛色の柔らかな髪でもって少女を包み、自らへと抱き寄せる。
「提督…♡てい…とく…♡」
男に包まれた荒潮はそのまま舌と唇を男へ突き出した。目の前の男の唇目掛けて伸ばしたものの、体格差故に届くことはない。
少女は名残惜しそうに涎を垂らしてお預けを喰らいながら、そのまま体とヴァギナを使って男の体とペニスを愛撫している。
ふと思いついた男は、少女の前に自らの指を持ってきた。顔の前でひらひらさせると少女はそれに食らいつく。男の無骨な手に唇でもって噛みつき、優しく咀嚼する。
目線だけは男の瞳を向きながら奉仕する。歯で、舌で、喉奥で。口内も、そして表情も崩れきった少女が口に手を咥えたまま、男を呼び続けた。
「んちゅっ…♡ていとく…♡んんぅ…てい…とく…♡提督…♡んじゅるっ…♡」
どれほどそうやって荒潮と交わる続けただろうか。少女のゆるやかで大きい動きはいつの間にか激しく、そして細かいものになっている。
「じゅるっ…♡んちゅっ…、んん…♡ぷぅ…♡」
涎塗れの手を吐き出す少女。口が空いたというのに少女は何も話さず、ただ男と見つめ合っていた。しばらくの沈黙の後、口を開いたのは少女だった。
「提督…あなたの事…愛してるわ。」
男と、そして荒潮の脳内に甘い感覚が走る。電撃のように流れる快楽ではなく、麻薬のようにとろける何か。
「あっ…♡出てる…♡」
「荒潮…ああっ!あああ…ぁぁ…」
体中に広まった甘い感覚が男の体を狂わせ、ペニスからザーメンを溢れ出させる。静かに漏出されたそれは三回目の射精にも関わらず、べっとりと少女のヴァギナを濡らし、汚し、膣壁へと張り付いていく。
情けない声を上げて絶頂した男のもとへ、少女が這い寄る。ずっと繋がっていた結合部からすっかり柔らかくなったペニスがずるりと抜ける。少女のヴァギナからは三回分のザーメンが水のように勢いよく溢れ出て、男とベッドを濡らしていく。
男の胸の上を這いつくばり、男の唇へと達した荒潮。お互いの体液に塗れた両手で顔を掴むと、そっと男に口づけをした。
「…ありがとう、提督。」
「忘れ物は無いか?」
「ええ、大丈夫よ。それよりも提督、また部屋を散らかしたままにするのはダメよ?女の子が来る部屋ならいつも綺麗にしてなくちゃ。うふふ。」
「…まあ、好きにしてくれ。掃除はしておく。」
「あ、でも今度来る時は大潮ちゃんと満潮ちゃんも呼ぼうかしら?えっちはお預けね。」
荒潮は人差し指を自分の口に当てながら、わざとらしくゆらゆら揺れて男の顔を観察し始めた。
男はその表情を見ながら、微笑んで答える。
「それは…残念だ。」
「うふふふふふ♪そうよねぇ~♪じゃあ次の次までお・あ・ず・け♪」
満面の笑みだった。その目尻に赤く泣きはらした痕はもう見えない。
笑顔のまま振り返り、マンションのドアを開ける少女。雨はもう止んでおり、眩しい太陽がコンクリートの水たまりと、木々の葉や鉢植えの花弁に残った水滴を照らしている。
「傘、持って帰らないのか?」
「そうねぇ…必要ないし置いてくわ。」
傘立てに置かれた少女の傘。黒地に赤と白のラインが入った、姉と同じ姿をした傘。
その傘を見た荒潮は思い出したように微笑み、男へ向き直る。
「あの傘、今度取りに来るから。ずっと…持っていてね。」
「約束よ。提督。」