ポケダン世界でもできる! ポケモントレーナー生活のすゝめ 作:透孔
みんなが村というこの場所には、不釣り合いな商店が一つある。
ブティック『ルージュラ・ザ・ビューティー』だ。
この店はポケモンが何百匹もいるような場所にこそ建つべき店であり、こんな開拓中のいまだポケモンの数が少なめな村に構えていい店ではない。
しかし……何を思ったのか、オーナーのマダム・ルージュラは村の様子を見てこう言った。
『閃いたわ! ここに支店を建てましょう!』
一体何を見ればそんなことを思いつけるのか。
この村にどんな需要があるというのだろうか。
明らかに稼げるわけでもない、辺鄙な田舎に建てる理由は当時の従業員の誰もが分からないまま、建築作業は行われていき──
村に初めてのブティック『ルージュラ・ザ・ビューティー』が開店したのだった。
そしてそんな場所の従業員に選ばれたのが……ほかでもない、この私。
ジャノビーのツビー。自分で言うのもアレだけど、結構美しいという自覚がある。
言われたときはビックリしたと同時に、私の人生の袋小路を示されたも同然だと思って目の前を真っ暗にされていたわ。……無理もないでしょう?
ポケモンたちにとって、大都会暮らしなんて夢のような生き方なのだもの。それに、『ルージュラ・ザ・ビューティー』と言ったら大金持ちの大企業よ!
そんな大企業の、都市部にある大型店舗の従業員に血の汗が滲むぐらいの努力をしてようやく就職して──私のキャリアはここからよ──なんて、思っていた矢先のコレよ。
落ち込まないほうが無理があるわ。
いざ着いてみても、気持ちが戻ることはなかったわ。
見渡す限り森の中で、ちょっとした広場と住宅街だけの村で、どう利益を求めればいいのか──そんなことを頭によぎらせながら、私は島流しに遭った気分でフラフラと村を見て回っていって……
『だ、だいじょうぶですか?』
『…? はい、どうしました──』
『ずいぶん、フラフラだけど……かぜとかひいてない?』
──私はその日、店長がこの村に支店を建てた理由を知ったのです。
この世界でも類を見ないニンゲンの子、オレっちの子供とは思えない指揮捌きであっという間に開店準備が整って──
オレっちと彼の友達のポケモンたちが協力して、広告を周りの村にまいてくれたお陰で、店の収益は都会ほどとはいかなくとも黒字をキープできるほどで。
もう…何から何までオレっちがいないとやってけない~って感じだったよ。
オレっち様様~~~!!
マジ感謝の極みでしょ、コレって!
もう、オレっちがいなくっちゃ、私どうなっていたことかわからなかった!!
マダムからのお褒めの言葉も来なかっただろうし、給料アップもなかったと思う!!
マジのマッジで……ッ、ありがとう!!
………
えっと、さ。
お礼って、言ってはアレだけど~……
……ちょっと、近場の村に美味しい団子屋さんがあるみたいだからさ?
一緒に食べに行かない?
あ、『あーん』なんか、しちゃったりしてさ! ね!?
……いいの??
マジで!??
やったぁぁぁぁ!!!
オレっち、マジで私のことわかってくれてるじゃん!!!
ふへぇ~。
これはもう、私とオレっちは────…………
「──んあっ。……夢かー」
……でも、悪い夢じゃなかったわね……って、何を考えているのよ私は! 仕事中なのよ、今の時間は!
幸いにも客は誰も来ていなかったとはいえ、こんなだらしない姿、みんなに見せるわけにはいかないっしょね…!
特に、オレっちにはっ! でしょ?
「って、何考えてんの、私!?」
私の恥ずかしい姿なんて、見られたくない……できる女の、私だけ見ていてほしいのよ…♡
──なーんて、そんなこと思っていながら、心の中ではオレっちにどっぷり甘えたい卑しいメスポケモンなのよ~♡
「違う違う! オレっちとはそんな変な関係じゃないからぁっ!!」
ダメダメダメっ!
オレっちはニンゲン! 私はポケモン!
そこは違うのよ、ツビー!! 良識を持って!!
──って、なんで私は頭の中の私と喧嘩をしているのよ…!?
私、いったいどうしてそんなことを……??
さっき夢を見ていたせいで、起きている間も夢の光景が目に映るようになっちゃったのかしら?
そうだとすると…これはいったいどんなお薬を使えば治るのかしら…?
そう思うのは勝手だけどさー?
早いとこオレっちに好きだって伝えないと、手遅れになるよー??
だだだだ黙ってくれるかしら!!?
私にしか聞こえてない癖に好き勝手言ってくれて──一体あなたは何者なのよ!!
私は……そう、エッチなツビー。
村に流れ始めたエッチな空気によって目覚めた、
「よ、欲望の天使……???」
っていうか……エッチなツビーってどういうことよ!!?
なんでオレっちと…そういう関係になろうとする想いだけで、エッチな私なんかが生まれるのよ!! おかしいでしょ!!?
だいぶ自覚してそうなんだけどなー……
まあ私のことなんてどうでもいいんだよ。
本題は──ツビー、もうそろそろ動かないと、危ないよ?
「はい、えっ??」
オレっちの周りにメスポケモンが集まり始めた。
もうオレっちはあなただけのオスではない。オレっちはあなただけに靡かない。
どこからか聞こえてくる声は、深刻そうな口調で、意味不明な言葉を告げてくる。そのせいで私の頭は固まってしまった。
一体、何を言っているのか……口からは声にもならない吐息が漏れていく。
わかっているはずだ。
知ってるはずだよ。
ツビーは見て見ぬふりをしているだけに過ぎないんだよ。
「あ……うぅ……」
大丈夫、自信を持って。
自覚したなら、もう突き進めばいいんだよ。
立ち止まってセクシーポーズをするマネキン人形ごっこでオレっちの興味はもう惹けない。──なら、ヤるべきことはわかるよね?
「──ヤるべき、こと……」
おかしくなりそうなぐらいに私の視界がグニャグニャ捻じ曲がっていく。
謎の声は、変な反響を重ねて気持ち悪いハーモニーで私の耳に響き渡る。
耳を閉じていても聞こえるその声に、私は────
忘れないで。もう、時間はないんだよ……
「──はっっ!!!」
そうして、視界が明るくなって身体が動くようになり──飛び跳ねて、あたりを見渡して、呼吸を焦らせながら周囲を確認するとそこはベッドルームだった。
さっきのも夢だったのだろうか。
それにしては、だいぶ不気味というか……
「あ……フシギバナさんから借りた安眠ボトルが……」
ベッドのそばの棚を見ると、いつも安眠を見せてくれるフシギバナさんの作ってくれたいい香りのするアロマボトルが倒れていた。
奇妙なことに、棚の中で倒れていながら高いところから落ちたかのように割れていて、いくつかのガラスの欠片になってしまっていた。
アロマの液が棚を濡らしている姿を見ながら……私は、夢の中で見た光景を思い出していた。
エッチなツビーが言った言葉。
このままだと、私は危ない……、オレっちは、すでにポケモンと関係を──??
え、本当に??
だってオレっちだよ??
ニンゲンだよ??
ポケモンとエッチなことをするんでしょ???
できるの????
以前不可抗力でオレっちと一緒に水浴びをしたことがあったけど……その時に見てしまったオレっちのおちんちんはだいぶ大きかった記憶があるわ。
あんなに大きなものが股間からぶら下げられている光景は今でも記憶から消えない。だからこそわかる。あんなものが私の下の穴に入るわけがない。
つまりほかのポケモンにも入らない!
なーんだ、やっぱりそういうことじゃん!
オレっちは──ポケモンとそんなことはシないしできないんだから!!
さっきのアレは変な夢!! それで終わりのお話!!
「あははははっ、驚いて損したー……ってヤバヤバ! 早くしないと開店時間になっちゃう~!」
まったくもー。
こんな変なこと、どうして考えちゃうかなー……
「まー、朝早くから店を開けてもそんなに賑わうわけじゃないんスけどねえ……」
だってここ、田舎ですし。
一応お客さんは来るには来ますけど、朝っぱらから並んで買いに来るようなガチなお客さんはここにはいない。
ブランド品の中でも比較的安価なものを並べているから客足が悪いというわけではないが、良いということもない。それでも値が張るから、ちょっと美容に贅沢をしたいポケモン向けの商品になっている。
常連の客だとしても、訪れるのは週に1回か2回程度。それ以外で訪れる場合は大抵話し相手という感じだ。
そして、常連のお客さんのほとんどが昨日来店して商品を買っていった。
つまり、今日はそんなにお客さんは来ないということでもある。
「こうなると暇だなー。呼び込みなんかしてもムダだしー……どーしよー」
話し相手としてのお客さんを待つのもあれだし、何かしらこの暇な時間をつぶしてくれそうなのはないかなあ……
「……オレっち、今何してんだろ」
そういえば、オレっちと最後に会ったのはもう1週間も前になる気がする。
いつもは数日に1回は必ず会ってくれるのに、声をかけてくれるのに……この1週間はそんなことはなかった。
いざ考え始めると頭の中からオレっちの姿が消えなくなる。
オレっちの存在が、今の私を作ってくれたといっても良い。それだけの大恩人なのだ。
だからこそ──オレっちと会っていないことを自覚して、私は身を震わせる。
「……まさか、私を捨てた?? いやいや、まっさかー……この村を開拓したいとか言ってたヒトが、そんなことするはずないって──あははは、はは……」
乾いた笑い声が店内にこだまする。
笑っても笑ってもすっきりしない晴れない曇り空な気分。
何時まで経ってもすっきりしなくって、いつにも増して変な気分になっていく。
そして思い出す、夢の中で聞こえた言葉。
「まさか……ヤってるの? オレっち……ポケモンと?」
エッチなことを??
ホントに??
だって、あのサイズだよ??
入るわけないじゃん、私だってギリギリだよ??
あんなの入れられるわけないし、入れても痛いだけでしょ??
ホントに、ホントに……あんなので、気持ちよくなったりするわけないじゃん……──
でも、頭の中ではその考えが変な光景を構築していく。
ピンク色のライトで照らされたベッドルーム。
そこでお尻を向けて、小さなメスの穴を濡らし広げて待ち構えるメスポケモン。
そして、オスの象徴を大きく伸ばし固めて、メスの穴へと突き刺す全裸のオレっちの姿。
1人と1匹は濃厚な、まるで根っこのように絡み合いながら愛情にまみれたエッチを──
「ありえないありえないありえない……」
口でどれだけ否定しても、頭の中の妄想は消えることはなくて。
常識的に考えろ、私……いくらオレっちがそんなにエッチでスケベだったとしても!
オレっちのことを受け入れてくれるポケモンなんてそうそういるはずが──
「こんにちわー! ここがアクセのお店なんだよねー?」
「うひゃあ!!?」
「うひゃあ?」
「あ、あー、いえいえ、いらっしゃいませ!」
びっくりしたあ……
まさかこの時間に来店してくれるお客さんがいるとは。
しかも見る限り新顔──というかこの子、常連のガルーラさんの娘さん?
見る限りまだ子供よね……お使い、というわけではないのかしら?
美容品とアクセサリーの棚を行ったり来たりしながら、商品を選んでいるけど……見ている商品はガルーラさんがいつも買っていく化粧品ではないことを私は知っている。
まさかこの子……自分のための化粧品を買うって言うの?
なんてマセガキ。子供も美容を気にする時代か!?
「ねえねえ、ジャノビーさん!」
「なんですか?」
「この化粧水と、あの化粧水とでどんな違いがあるの?」
「ああ、それはですね──」
しかもそれでいてきちんと効能を把握しながら選んでいるし……だいぶガチろうとしてるな?
私は戦々恐々なびっくり状態になりながら、この子に商品の説明をしていく。
だいぶ真剣に商品を見定めている。そこまでして美容に気を掛けんでも子供なんだからまだ大丈夫でしょうに、と言いたくなった言葉をしまいながら、丁寧に説明を続けていく。
そうして、ある程度商品を見定めて、買い物かごの中身をちょっとだけ詰め込ませた状態になって、ガルーラさんの娘さんは私に商品の会計をお願いする。
結果として買った化粧品は素肌を滑らかにする保湿系と軟膏系、それと香水を何点か、それとアクセが割と多めだった。ファッションのお年頃だったか……
この村では類を見ないレベルの買い物で、忘れかけていた複雑な計算に少々に手こずりながら会計を進めていく。
「──うん、これだけあれば、オレもうれしがるよね! 絶対!」
「…………」
──途中で聞こえた、自信に溢れた呟き声を私は、聞き逃せなかった。
「ありがとうございましたー!」
「またのご来店をお待ちしておりますー! …………は、はは……」
乾いた笑い声が私の口から零れ出る。
いつもツヤのある唇が渇いていくのを感じる。
まさか、まさか……あんな子供と???
オレっち、ヤったったっていうの???
だってロリだよ!? お子様ボディーだよ!??
さすがに信じられない。
そうだ、そんなことはないだろう。
あれは──プレゼントだ。オレっちへのプレゼント。そうに決まっている。
この店は女性用品を多く取り扱っているが男性が使えないわけじゃない。
確かオレっちはガルーラさんの義理の息子ということになっていたはずだ──って、そうなるとあの子とヤっていた場合義理ではあるものの姉弟でヤったっていうこと──?
そんなのは置いといて!
つまりオレっちとあの子は同じ屋根の下で暮らしているわけで──いろいろと感謝したいことがあるだろうから、そのお礼の品としてこの店で買い物した! そういうことだよ、絶対。
絶対……だよね??
「うう……あんまりにも信じられなくて、やってきちゃった……」
日が暮れてきているとはいえ、まだ店は開いている時間なのに……ううっ、知られたら大変なことになっちゃう~……でも、知りたいという思いが消えない。
理由はわかっている。それに気が付いてないふりをしながら私はあの子の住むおうち──ガルーラさんの経営する宿屋を目の前にする。
あの子の部屋は、いったい……
「っ、っ、~~~!」
「……この、声は……」
ダメ。
この声のもとに近づいてはいけない!
頭の中に鳴り渡る警鐘を無視して、まるでそこに導かれるかのように微かな声の漏れ出た場所へと近寄っていく。
そこは宿屋の奥、以前立ち寄った時には客として入ることのできなかった場所。
おそらく彼女のおうちとしてのリビングなのだろう。
鼓動が大きくなる。
足が震える。
今すぐにでも逃げてしまったほうがいい。
そうでもしないと、私は後悔してしまう気がする。
「──でも、私は……」
私は、知りたい。
オレっちが──ヤったのか、どうか。
そして安心したい。オレっちがまだ清潔なんだって。
お願い──オレっち──!
「あっ、あぁっ♡ オレ! どうかな、この私♡」
「くっそ! ガキのくせしてこうすいまでつかっておめかしなんかしやがって! ひゃくねんはやいんだよッこのッ!!」
「んあああっ♡ オレぇっ♡ 激しくしても大丈夫だから♡」
「なんこうはそのためか!? じゅんびのいいメスだなこいつ!! そんなにオレとヤりたかったのか!!?」
「うんっ♡ 私、オレとセックスするの、だーいすき♡♡」
「………………ははっ」
──私の理想、崩壊したった。
わかっていた、はずなのになあ。
「──…………うん、そうだよね」
呆然とエッチをする声を聴きながら、私は──覚悟を決める。
今、心はだいぶつらい。でも──それでも、私は膝を曲げられなかった。
砕け散りそうな心なのに──なぜか、燃え上がろうとしている心があった。
いや、燃え上がろうとしているって言うのは語弊があるかな?
正確には木々が一気に成長するような、
不思議な感じだ。
でも……当然だと思っている私がいた。
「私が今、心に急所なダメージをうけてヤバいのは……オレっちに私の思いを伝えられなかったから……だったら、今から伝えればいい……!」
夢の中の私、エッチなツビー。
あなたの言っていたことは正しかった。認める。私は遅かった。
でも、それがオレっちへの思いを止める理由にはならないんだよね。でしょ?
オレっちがこの村で私のことを支えてくれたから、今の元気な私がいる。
こんな村でオレっちと一緒に頑張れたから、お店をまだ続けられてるんだ。
たっくさんの恩を貰った。
それだけ──私もたくさんの思いが増えていった。
今になってわかる。
私はオレっちのことが好きだ。大好きだ。
もう自分に嘘はつけない。
嘘をつけばつくだけ、出遅れるなら──もう嘘つきにならない。
ようやっとわかった。
自分に嘘をついて、常識で物事を考えちゃってて、私の想いに蓋をしていた私の存在に。
今朝の夢は、そのことを伝えに来てくれたんだね。
だからもう誤魔化さない。私は……私の想いを裏切らないと誓うよ。
ありがとう、エッチな私。
だからこそ、私にはそんな嘘をもうつかないという証明が必要だ。
オレっちを愛するという、自分をごまかさない
「──ちょうどいいの、あんじゃん」
目の前で聞こえる喘ぎ声。
ちょうど、あの子がオレっちのおちんちんでイったのだろうか、さっきよりも大きめの喘ぎ声が聞こえてきていた。
──これだね。私のこの身を以て、オレっちへの愛を証明する。
オレっちのことが大好きだと、セックスで示して見せる。
その結果がどうなろうとも、私は受け入れる。きっとボコボコにされるだろーなー……まあ、いっか。
オレっちに大好きだって伝えられれば、それでも別に。
その行為こそが大事だからさ。ね?
でも……この身体でできるかな、私?
不安はある。私の下の穴はオレっちのおちんちんを入れられる自信がない。
それでも、ヤる。
私の想いを、成就させるために。
オレっちに私の想いを伝えるために。
常識なんて知ったことか。
こっからは
できる限りの準備をしよう。
エッチなお薬がフシギバナさんのところで売られていたはずだから、それを使って────
「──あははっ、待ってて。オレっち──必ず、君を満足できるエッチをしてあげるから♡」
見せたげる。
本気の、覚悟きまった私は──最強に激ヤバだってこと!
闇落ちかと思った?
そんなことはありませんでした。