※この作品はR-18です。

グレーゾーン   作:ヤン・デ・レェ

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今日、レヴィは彼を襲う R18

今日、レヴィは彼を襲う。

 

この日のために、全てを完璧に準備してきた。

 

あらゆる他の女との接触に干渉し、外食の機会を潰して、自慰の機会も与えず、精のつくものを食べさせて、弱いと知りながらビールをたらふく飲ませた。

 

二十歳の誕生日に、なんでも一つ、レヴィの願いを叶えると彼は言った。確かに言った。彼は約束を守る男だ。

 

だから、今日はその約束を果たしてもらう。

 

レヴィを傷つけることだけは絶対に叶えられない。ふと、そう断った時の、彼のクソ真面目な顔が脳裏に浮かんだ。

 

「ふふ…」

 

きっと彼は、そこまで想像が辿り着かなかったのか、もしくは当時のレヴィの薄い身体を見た上で、念を押したつもりだったのだろう。間違っても傷つけることがない様に、と。

 

だが、端から血が流れるはずも無かった。

 

流れてくれた方がよかったのか、でも、彼が気にするタチだとは思わなかった。

 

レヴィは彼に愛されていると確信している。誰よりも愛されていると。彼と心と体を繋げている、他のどの女よりもずっとずっと愛されていると確信している。

 

それでも、安心したいという欲求はとどまるところを知らなかった。

 

あらゆるものを与えられても、あらゆるものを許されても。あらゆることを赦されても。それでも、もっともっとと欲した。

 

確実な繋がりが欲しかった。願わくば、この身の奥にこびりついてしまった、穢れを上書きして欲しかった。

 

その為なら、今の関係性を壊すことさえ厭わない。

 

あの時、レヴィは引き金を引かなかった。勇気が出なかったからだ。まだ、何かを期待していたからだ。

 

けれど、その期待はなにも返してはくれなかった。勇気がなかったがために、レヴィは今も、父親が自分を迎えに来ることを恐れていた。

 

そうだ、淡い期待は、彼との心地よい日常を破壊する恐怖へと変貌した。

 

レヴィは怖かった。あり得ない。あり得ないとしても、それでもまだ父親が生きていて、自分と彼の前に現れて、もしも自分が、望んでもいないはずの道を、それでも選び取ってしまったら、と。父親を選ぶようなことが起こりうる可能性が、一条でも残っていることが怖くて怖くてしかたなかった。

 

あり得ないと言い切ることは簡単だ。けれど、疑念の果実は実るのも、腐るのも早い。あっという間にレヴィの思考を蝕んだ。体の奥、目には見えない、消えない傷跡が再び膿んでいた。

 

万が一にも自分が彼以外に執われてしまうことが、レヴィは許せなかった。

 

だから、レヴィは彼を襲う。襲うことにして、すぐさま計画を練った。決して彼が断れないように。決して彼が自分のことを拒めないように。負い目を感じて、流されて、溺れてしまうように。

 

幸いなことに、彼はレヴィに甘かった。

 

なんで、どうして、とはまだ聞けていない。返ってくる答えがどんなものなのか、それを聞いて自分がなんて思うのか、そのことすら恐ろしかったから。

 

レヴィは臆病だった。だが、今日でそれもおしまいだ。

 

彼を襲う。今度こそ、レヴィは引き金を引いた。

 

 

 

 

暗い部屋の中で、男と女がいた。

 

テレビはつけっぱなし、明るい画面が点滅して、立て続けにド派手な銃声が鳴る。画面の向こうではジョン・ウェインが敵を次々に撃ち殺していた。

 

ベッドの上では、素っ裸に剥かれた彼が仰向けに寝そべり、ぼんやりと天井を見上げていた。

 

ビールを飲むといつもこうだ。ウィスキーやブランデーならこうはいかない。ベロベロに酔っている。時折、鼻を啜る音が聞こえた。

 

「やっぱりこうなったか…計画通り、だけど。ちょっと飲ませすぎたか?」

 

レヴィは手際よく服を脱ぎ捨てると、色気もへったくれもないスポーティなブラとショーツを晒した。室内は冬だというのに暑いくらいだが、これから汗をかく運動をするのだ。部屋の温度を下げたら汗が乾いてから風邪をひくかもしれなかった。レヴィは暖房機の温度はそのままにした。視線は穏やかに上下する彼の胸元に釘付けたまま、這い寄るネコのように、ピットリと肌を触れ合わせた。

 

ピクッと彼が体を震わせるが、それがレヴィだと気づくと安心したように目を閉じた。

 

コイツ、寝るつもりだな。

 

「そうはさせねぇ…」

 

するするとヘビのように這い上がっていき、あっという間に、目と鼻の先に彼の顔がきた。あの頃とは違う、豊かに実った胸を彼に押し付けてやる。心臓の音が共鳴すればいいのに。そうすれば、想いまで共有できるはず、なんて。レヴィは、ふっと息を吹いて彼の鼻先をくすぐった。タバコの匂いはしない。歯磨きは済ませてあるから、ミントの爽やかな香りがしたことだろう。

 

パチリと彼の目が開いた。何をしているのだと言いたげな瞳は、それでも今にも瞼が落ちてきて閉じてしまいそうだった。

 

レヴィは更に胸を押し付ける。そろそろ気づけよ、とばかりに。その想いが届いたのか、彼の顔がサッと蒼くなる。してやったり。

 

彼は身を起こして逃げようとする。だが、機先を制してレヴィが彼に覆い被さった。肌を密着させて、思い切り体重をかけてやる。柔らかい肌肉と、熱い体温がじわじわと彼の男の部分を蝕んでいった。

 

「あっ…」

 

レヴィの臍に、かたいものが当たっていた。じっとりとした熱を帯びていて、酷く獰猛なペニスが、まるで凶器のように彼女の腹に突き付けられていた。

 

「起きたか、寝坊助…なぁ、もういいだろ?」

 

身を縮こまらせた彼には、いつもの貫禄というものがまるでなかった。まだ混乱しているようだった。むしろ好都合。今のうちに畳み掛ける。レヴィはブラとショーツを外した。ブルリと震えながら、完璧な形を保つ乳房がまろびでた。ピンク色の綺麗な乳輪の上には、丁度良い大きさの乳首があった。

 

胸に、乳首に、彼の視線が突き刺さった。レヴィの色白な肌が火照って赤みを帯び、乳首が一目でわかるほど固くしこった。彼が生唾を飲む音が聞こえて、レヴィの口元がいやらしく歪んだ。

 

腰の曲線美を強調するまでもなく、敢えてワンサイズ小さなものにしたショーツを、ところどころ、むっちりとした太ももの肉に食い込ませながら脱いで見せれば、彼のペニスに今度こそ熱い芯が通ったのを臍ごしに感じていた。彼の視線が、明らかに熱っぽくなるのがわかった。

 

「逃さねえかんな。ハッキリ言ってやるよ…」

 

あとひと推し。レヴィは自身の直感に従い、彼にわかりやすいゴールを用意してやる。逃げ込む先を用意してやる。

 

「アンタは、これから、あたしと、セックスするんだ」

 

「もう逃げられっこないって、ホントは理解してるんだよな」

 

「イイぜ。そのまま流されちまえ。溺れてイイんだ」

 

レヴィはそう言ってカラダを倒した。覆い被さり、彼の半開きの口を吸う。夢にまで見た触感に、レヴィの鼻にかかった喘ぎが漏れた。目を見開く彼に、婀娜っぽく微笑んで見せれば、彼の腕が彼女の背中に回った。ガッチリと、まるで逃さないとでも言うように。

 

 

 

 

彼に手を引かれて、途中タクシーに乗り換えながら、辿り着いた場所はホテルだった。

 

そこから二人の暮らしが始まった。

 

もう夜だったし、何よりレヴィは腹ペコだった。だから先に夜ご飯を済ませてしまって、それから入浴した。風呂にお湯を溜めている間、レヴィは彼から部屋の使い方について一つ一つ教えられていた。それにはルームサービスの使い方から、なんだったら自分を呼ぶために使える電話番号まで含まれていた。

 

そうこうしているうちに風呂が沸いた。

 

どうぞ、と言われるままに風呂に入り、身体中の垢をすった。それから泡で綺麗に磨いて、少し熱めの湯船に肩まで浸かった。

 

「はぁ〜〜…」

 

気の抜けた声が漏れて、思考が少しずつ回り出した。

 

風呂から上がった後のことを考えて、レヴィは少し憂鬱になった。多分、彼も自分を抱くだろう、と。

 

だから、服も着なかったし、水気も拭かずに風呂を上がった。あれだ、この時の気持ちは、まるで水揚げされたばかりの魚だった。覚悟はしていた。だから、血相を変えた彼が風呂場に入ったかと思えば、持ってきたバスタオルでレヴィの全身を優しく包んで、目を逸らすこともなく、淡々と体から水気を拭き取ってくれた事実が、上手く飲み込めなかった。

 

「アンタ、濡れてない方がよかったのか、痛がってるの見るのが好きなのか」

 

レヴィは混乱して、変なことを口走った。今度は彼が驚く番だった。言葉を噛み砕く前に、数秒顔を覆った彼は、顔を上げるとレヴィに向き合った。

 

そういうのは、また今度ね。

 

難しい顔で、嗜めるように、でも決してレヴィを否定しないようにと考えての言葉だった。

 

胸の奥にあった黒いシミみたいなものが、モヤモヤが晴れていくように感じて、それでもイイのかと思って、だからレヴィは素直に頷いた。

 

何もせずに済むならそれが一番楽だ。だから、まだこの時のレヴィは将来自分がこの男を全ての価値観の中心に据えることを、夢にも思っていなかった。

 

体の水気を拭き取り、新品の服に着替えてから、二人は食卓を囲んだ。食卓といってもホテルのサイドテーブルだが。ともかく、二人はそこで夕飯を一緒に食べた。メニューはルームサービスで適当に選んだものだった。彼は寝る前だというのにハンバーガーを二つと瓶のコーラを平らげていた。レヴィは手当たり次第に頼んで、結局、彼と同じハンバーガーだけを食べてさっさと寝た。

 

久しぶりにお腹いっぱいに食べたな、だとか。ぼんやりと、取り止めのないことが浮かんでは消えて、思考がグルグルするうちに、気がつけば眠りに落ちていった。

 

おやすみなさい。そう言うと、頭に温かいものが…彼の手がずっしりと乗って、壊れ物を扱うように撫でるのでくすぐったかった。レヴィは無闇矢鱈と、泣いてしまいそうになった。欠伸をして誤魔化すと、彼にあくびが感染って、二人で「ふふふ」と笑った。初めて二人で笑ったのはこの時だった。

 

 

 

 

 

しばらくキスをした。舌を絡ませて、唾液を啜りあって、舌の汚れを相手の歯に引っ掛けてこそぎ落とすみたいに、とにかく息継ぎをする間もなく、互いの吐息と舌を絡ませあった。

 

「オラッ!黙って、乳揉んでろッ…」

 

キスをしている間も、彼は時々興醒めするようなことを言った。理性が戻ってきているのだと気づくと、レヴィはすぐに手を打った。

 

「へへ…柔らかいだろ?弾力も、相当な、もんッ!だろ?な?」

 

レヴィは一際強く、深く口づけてから、音を立てて啜った。

 

「ズゾゾッ!…ちゅ…ジュル…れる…ゴクン…」

 

ドロドロに蕩けてどちらのものかわからなくなった唾液を、根こそぎ奪って飲み干した。

 

「フーッ…フーッ…も、もう、わかったろ?後戻りなんか、できるわけないってッ!のッ!」

 

そして、互いに弄りあって、ぐずぐずの身体を、彼の興奮を煽るように叩きつけた。シミ一つない程よく血の通った尻の肉が揺れて、彼の両腿に叩きつけられた。べちんと湿った音が鳴り、汗が飛び散った。

 

まだ、一つになんかなっちゃいなかった。それでも、もうすっかりその気になったレヴィは…いやレヴィも、そんなことは気にならなかった。二人とも挿れることよりも、互いを今までになく一番近く、一番深く、一番強く感じられることに夢中だった。

 

「もっと、もっと近くに、もっと深くッぅ…もっと!もっとこっちにこいよ!」

 

レヴィが叫んだ。気がつけば手を絡めていた。どこにも行かないように、繋ぎ止めるために絡めた手の平も、汗でびしょびしょだった。膣には何も入っていないのに、彼女は緩く腰を振って、彼を誘惑した。

 

「ハッ!理性が強すぎるのも大変だよなぁ!だって、こんなに、頼んでんのに!自分が納得できないせいで、自分でダメだって決めつけちまったせいで、今、そのせいで、あたしと一つになれないんだもんな?」

 

レヴィは熱った体を、ベッタリと密着させた。胸を押し潰して、太ももと脚を絡めて、耳元でぽしょぽしょと囁いた。

 

「負けちゃえよ、挿れちゃえ、そうすりゃあとは全部あたしがやってやるよ…全部全部。だから、何の心配もいらねぇよ…それとも、先に、このデッカい乳で弄んでやろっか?アンタ、乳デカい女も好きだもんな…な?」

 

気づかれていないと思っていたことを、レヴィに知られていたことに、彼はショックを受けているようだった。彼女の尻に指を食い込ませ、時に優しく捏ねていた彼の動きが止まった。ハッとして、また顔が蒼くなる。レヴィは愉快そうに言った。犬歯を見せた、凶暴な笑みだった。

 

「アンタ、ホンッットに女にモテるよな…それもわっる〜い女ばっか…バッカじゃねぇの?気がつくに決まってんだろ?十年間ずっとずっと、一緒に暮らしてきたじゃねぇかよ、え?それで、なにか?気がつかないとでも思ってたのか?」

 

レヴィは全てを見ていた。どこからともなく拾ってきたメイドとケダモノのように激しく交わることもあれば、掃除屋の女に奉仕させている姿も見たことがあった。それだけじゃない、彼が外出する時は必ず女の匂いがするのだ。別の女。他の女。危ない女。イカれた女女女女。

 

危険な女だけを惹きつける、彼にはそういう魅力があるらしい。言ってみればただそれだけだが、レヴィにとっては大問題だった。

 

彼は情が深い。情に厚いんじゃない。深いのだ。一度生まれた繋がりを、第三者のレヴィが切り離すことなんか不可能だ。そんなことは今までの経験から嫌というほど味わってきていた。彼に執着する女と、女に情が深くなるばかりの彼。関係はどこまでも泥沼だった。

 

だから、自分だけがその場にいないことに強い焦燥感が募っていた。一刻も早く、あの舞台に立たなければ。同じ立場に立たなければ、と。

 

彼にとってレヴィは特別だ。そんなことは一目瞭然だった。でも、それでも、レヴィはどっちも欲しかった。だから強請ることをやめない。このまま、最後まで彼との情を交わすのだ。レヴィは頑なだった。脳裏にこびりついた、彼と他の女とのセックスの光景が彼女の脳を炙るのだ。

 

狂ってしまいそう。いっそ狂ってしまいたい。彼と同じ世界を見たい。彼に同じ執着を抱かれたい。そういう願望が、ついに爆発した。

 

「挿れるぜ…アンタはそこで、黙って見てろ…」

 

レヴィは切れかけていた息を整えると、腰を上げてハッキリと彼と自分が繋がる瞬間が見えるようにと、ガニ股で彼の腰に跨った。腹に手を置き、ゆっくりと腰を落としていくと、蜜でドロドロになった彼女の大切な場所に、彼の大事なものの先端が触れた。

 

「いくぜ…もう、仲間外れはヤだかんな…」

 

肉棒がプチュプチュと膣肉をかき分けながら、奥へ奥へと迎え入れられていき、コツンと子宮の入り口まで辿り着いた。

 

「フッ…フッ…はーッ…はーッ…は、はいったぁ」

 

息も絶え絶えのレヴィが不敵な笑みを浮かべた。まるでまだまだ余裕だぜ、とでもいうかのように。彼がムッとして、少し乱暴に腰を振るかもと期待したが、当の彼は心配そうな表情でレヴィを見上げるばかり。レヴィは俯いた。すると、彼が人が変わったように慌て出す。全てをほっぽり出すみたいに、腹筋だけで起き上がり、跳ね上がってレヴィを対面座位で抱きしめた。顔を覗き込むこともなく、けれど顔が上がるのをじっと待っていた。

 

レヴィはそれが無性に嬉しくて、嬉しさのあまり絶頂していた。小さく体を震わせたのを、寒いからだと勘違いした彼がひしっと抱きついた。股間は勃ったまま、レヴィの中でビクビク震えていたが、上半身は別物のようによく動いた。レヴィはアンバランスな彼に笑みが溢れた。

 

「くくく…過保護すぎかよ…ホントに、経験豊富なのか、ったく、疑わしいぜ」

 

顔を上げたレヴィは泣いてはいなかった。満面の笑みで、格好いい笑みを浮かべていた。頬の赤みだけは誤魔化せなくて、それが彼には堪らなく魅力的に映った。ポケーっとレヴィを見守る彼に対して、彼女は依然として積極的に責め立てていく。

 

「どうだぁ?レヴィ様の腹ン中の具合はよ…?」

 

ぐちゅぐちゅと、膣の中で咀嚼するような音が響いた。水っぽい、淫靡な音で、彼は顔を赤らめながらも、徐々に彼女のリズムに合わせて腰を引いて、押し出してを繰り返していた。すると今度は肉を打つ音に変わってくる。

 

ベチッ…ベチッ…ベチッ…

 

「ふふッ…そうだ、それでいいぜ、その調子だ…どんどん、きもちよく、なれよ〜?…溺れろ…もっと…」

 

パンッパンッパンッパンッ…

 

一定の間隔で肉が打ち合うようになっていった。肉付きがよく柔らかい臀部が、彼の腰が下から突き上げられる度にむにっと歪んだ。余った肉は彼の下腹とぴっちり混じり合って、ひんやりとした脂肪とは別に、引き締まった筋肉の熱が感じられた。みっちりと詰まった肉に狂わされるように、彼の手つき、腰つきに容赦がなくなってくると、また鳴り響く音が変わった。

 

バチッバチッバチッバチッ…

 

「あむ…ンッ…んんッ!ん、あ、いぃ…もっと、もっと!好きにしろっ…あたしのこと、好きにしろッ!アンタのモノにッ…もっと深く!」

 

もう二人とも夢中だった。ついさっきまで彼は仰向けで寝そべっていたのに、今や二人ともベッドの上で向かい合って身体を繋げあっていた。激しく跳ねるように、彼がレヴィを突き上げ、レヴィは彼の肩に噛みつきながら必死に、トんで行ってしまわないように必死だった。

 

…と、その時、ぴたりと彼の動きが止まった。

 

「ふっ…ふっ…ふっ…へ?な、なんで、止めんだよ」

 

昇りつめる間際、レヴィは梯子を外されたような気持ちだった。問い詰めれば、彼がバツの悪い顔で避妊していないと言った。

 

レヴィは激怒した。他の女には堂々と吐き出すくせに、自分には一滴たりとも恵んでくれないのか、と。思い出を重ねて、禁忌を共有し、運命を混ぜ合わせる。その最高峰を今からするんじゃないのか、と。

 

許さない。赦せない。

 

レヴィは彼を押し倒すと、勢いよく腰を振り始めた。

 

「誰のッ!ためにッ!こんなッ!エロいッ!声ッ!出してッ!やってっと!思ってんだッ!よッ!」

 

「出せよ!なぁ!出せ!ぜんぶ!あたしの中にッ!」

 

パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

筋肉と脂肪がぶつかり合って、たわむ。たわわな肉が歪み、撓む瞬間が、目に毒だった。

 

堪えられない。彼が歯を食いしばる。一際熱い吐息が喉から迫り上がって。うぁ、なんて喘鳴と共に、レヴィの一番奥に彼の熱い精液が迸った。

 

ビュルルルル…ゴビュ…ビュブ…

 

聴こえるはずもない音に耳を澄ませながら、レヴィは達成感に身を震わせた。

 

「……ふふ、やってやった…これであたしも、アンタの女だ…アンタは情が深いからさ…あーあ、これからが楽しみだぜ」

 

彼は放心状態から戻ると、苦笑して、それから愛おしげにレヴィの髪を手櫛で梳かした。丁寧に丁寧に。それから二人はキスをした。甘やかすように、舌も入れず、ほんの唇に触れるだけの優しいやつを。

 

「今抜くな?…よっと…うーわ、随分出したなぁ…」

 

少し落ち着いてから、レヴィが腰を浮かせると、ドロッとした体液が膣口から溢れ出した。溢れた精液はベッドのシミになる前に、さっさと拭いてしまう。レヴィも、彼も、こういうもの自体に思い入れは薄かった。

 

それよりも…心ここに在らずといった様子の彼に、レヴィはあえて甘い声音で囁いた。まるでそれが愛を証明するかのように。

 

「…安心しろよ。アンタが恐れてることは起きねえよ」

 

「あたし、ガキに嫉妬しちまうかもしれねえし」

 

そう言い切るレヴィの表情は晴れやかだった。

 

「あーあ…明日は筋肉痛かな…なぁ、どうする?明日もするか?」

 

そう問いかけるレヴィの体は美しかった。テレビの光を背後に、薄暗い部屋の中で彼女の完璧なプロポーションが浮かび上がっていた。

 

体型を維持しつつ豊かに実った胸と臀部。キュッと引き締まったしなやかな手脚。腰のくびれと腹筋の薄っすらとした割れ目。くすみひとつない女性器に至っては生まれつき毛が薄いらしく、ささやかな茂みを除いて全身は向き卵のような肌理の細かさだ。

 

彼に拾われて、女を自覚して以来、長い手間暇をかけて手入れをした甲斐があったというモノだった。

 

そんな身体を、彼は今日味わった。

 

レヴィが感じているのと同じくらい、暗い優越感と、背徳感、そして漠然と深く満たされる感覚をしっかりと噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテル暮らしがしばらく続いてから、彼はレヴィを連れて日本に引っ越した。引越しの理由には安全な環境で暮らしてほしい、という彼の切なる願いがあった。

 

彼は日本に引っ越す直前まで、つきっきりでレヴィに日本語を教えた。日本語のみならず、基礎的な義務教育の範囲内を、最低限。その上で、引っ越す直前に彼はレヴィに尋ねた。

 

ほんとうに一緒に来てくれるのか?と。

 

レヴィは即答した。

 

「連れてってくれ。アンタと一緒にいたいんだ」

 

それだけで、もう、彼の中にはレヴィという存在が刻み込まれていた。深くまで。

 

そして、レヴィは努力した。生まれてこの方、初めて経験する類の努力を経験した。盗みの技術や、人を騙す方法などではなくて、学問に打ち込んだ。

 

三ヶ月後、最低限の日本語の日常会話をマスターすると同時に、義務教育を修了したとして、彼から認定を受けた。

 

そこからの彼の動きは早かった。レヴィの将来を見越した分も含めて、安全に利用できる身分保証書類、各種証明書一式を伝手を総動員して一週間で偽造してまで用意すると、レヴィのための専用の口座を用意した上で、アメリカを発つ便に二人で乗り込んだ。

 

日本への引っ越しも順調に進み、新学期に合わせてレヴィは中学に入り直した。

 

中学での彼女の人気は凄まじく、それは高校に上がっても変わらなかった。美しい容姿に、成績優秀者に乗るほどの秀才、おまけに身体能力だって男子顔負けに優秀だった。

 

この頃になると、レヴィはすっかり日本での生活にも馴染んでいた。何より、彼女にとって喜ばしかったのは、永遠に続くように思われた彼との一軒家での暮らし、日常生活そのものだった。

 

この穏やかな空間を守るためなら死んでもいいと夢想するほどに、彼女は彼との二人きりの空間に傾倒していった。互いにベタベタするわけでもなかった。けれど、たまに肩に乗せられる労いの手の温度が、褒められて頭を撫でられる時の優しい手つきが、些細な折々で繰り返されるしっかりとした抱擁が、その全てがレヴィをゆっくりと壊して、再生して、異化していった。レヴィは狂っていく自分のことを、どうしようもなく愛おしく思った。

 

高校卒業までに受けた告白は数知れず、その度に呼び出された場所に出向いてやっては、不機嫌さを隠しもせずにキッパリと断っていた。

 

「胸ばっか見てんじゃねぇ、ぶっ殺すぞ」だとか。

 

「エロガキが、3秒以内にあたしの視界から失せな」とか。

 

毒舌すぎて、罵られたい人でファンクラブが出来てしまうほど人気だった。

 

だが、本人からしてみればなんということもない。連中は何にもわかっちゃいないんだ、という反感のようなものの方が強かった。そうした態度が出ていたのか、表立ってこそ言わなかったものの、彼女に対するアンチも少なからずいた。いじめにまで発展することはなかったが、結局、卒業まで友達は誰一人できなかった。

 

代わりと言ってはなんだが、パシリが一人いた。彼の名前は岡島緑郎と言い、何かと気がきく人物だったが、いかんせん家が厳しかったらしく、高校卒業後は大学に進んだようである。

 

では、レヴィは卒業後、何をしているのだろうか。

 

正解はニートであった。

 

バイトも仕事も、別にしなくていいよという彼からの申し出にありがたく乗っかったのだ。単に人付き合いが面倒くさいというのもあり、また、彼のことを四六時中監視できるという利点もあった。

 

ともかく、今のレヴィは歴としたニートだった。

 

 

 

 

 

レヴィがニート生活を謳歌しているように、彼もまた時たま入る依頼以外の時は呑気に暮らしていた。音楽を聴いたり、依頼を整理したり、靴磨きをしてみたりと。

 

そして時折、特別な外出をした。定期的に一人で外出しては別の女の匂いを纏って帰宅するのだ。

 

レヴィは次第に危機感を募らせていった。

 

何もしなくても、彼は自分を大切にしてくれる。そのことは十年近い月日が証明しているではないか。

 

けれども、それが明日、明後日と続く保証はどこにあるのか、と。

 

レヴィは自分磨きを始めた。だが、そもそも多趣味でもないので、彼女の活動は必然、如何に彼を振り向かせるかに集中した。彼の愛情をどうすれば、これからも特別なものとし続けられるのか、悩み抜いた彼女は二十歳の誕生日に暴挙に出ることにした。

 

果たして、彼女の試みは成功した。

 

新たな参加者の登場により、彼をめぐる女性関係はより一層の混迷の時代に突入するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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