GPSなどは使えず、各種戦術ネットワークなどからも遮断されている。
イヤ、遮断せざる得ないというのが正しいか……
オレはサクマ……奇妙な運命のめぐり合わせの結果目が醒めるような美少女のボディに叩き込まれた元人間だ。
ボディは機械人形でしかも……絶賛人類に反乱中の企業の物。
そしてオレの脳みそには同居人が一人……名はドリーマー。
かなりの毒舌家で声こそかなり可愛らしくいつまでも聞いていたいくらいの声なんだがな……
現在は製造工場から逃げ出して潜伏中で……ようやく一晩を過ごす最中だ。
ジェネレーターのハード的なリミッターがあってフルパワーは使えないが……スゴイ躯体で逃げるには十分だった。
本当に何でも出来るっていうのコンセプトだが……これでも正規軍の中隊には及ばないらしい。
小隊規模なら一方的に蹂躙出来るとか。
ここが大まかにどこなのかがまるで分からんが……人っ子一人居ない廃墟手がかりらしい手がかりは無いな。
鉄血工造の中でも生産拠点だった一つの区域を現在占領していて……ここが部品等のパーツセンターの一つだったらしい。
結構デカい所だが……人っ子一人いない。頭脳内部の資料にドリーマーの資料を読み漁って把握した。
……問題はオレは完全にネットワークに接続できないことだ。
このあたりにネットワーク機器も無さそうだがな。
活きた情報がまるで入手出来ないし……人間側のネットワークに入ろう物ならプロトコルで絶対に誤魔化しきれん。
識別をどうごまかすか……それがキモになるがオレは残念ながら分からん。
つまるところオレ個人で取れる択はもう手詰まり。とりあえず生きていく食料供給と隠れ家を確保しなきゃならん。
『ちょっと、良いかしら?』
同居人のドリーマーだ、いや、この身体の本来の持ち主だ。
何事だろうか……うん、これは何だ……データの束か?
『近頃グリフィンのゴミ人形がイキっててねぇ……データ上じゃ負ける要素がないのに負けるのよ……人間の指揮官が居るってだけで』
「ほう、それで?」
『アンタ、元人間なわけでしょ?ちょっとボードゲーム感覚でやってみなさいよ』
「……オッケーわかった」
データ展開、全部読み込んでいこう……
『オイ』
「……なんだ?」
『少しは疑うことを覚えたら?ホント、頭ん中身がワッフルみたいね?』
「……忠告は覚えておこう」
思い切り呆れた声だったが……少しは敵対心を殺してくれたと考えたほうが良いか。
データの中身読み込みとシミュレーションソフトの起動……これまた電脳化の良い所だな。
これで時間を費やせば朝になっているだろうか?
目を閉じてデータの方に意識を向ければ……よし、良いな。
物量的にはこちら有利で消耗戦に持ち込めたらほぼ確定勝利が見込める。
相手側の戦闘能力、作戦行動等は全て記録されていて……オレの指示次第で別演算になったりするってデータか。
……サンプルデータは小規模な基地局防衛から……なんだこのバカでかい大砲は?
それらの制御の奪い合いだったり……小隊の確保・殺害作戦とか……
「暇にはならなそうだな……」
さて、ドリーマーのおメガネに適う事はできるかな……
細やかな作戦指揮は出来ないものだったが……サクマ青年の考えから導き出された解は大なり小なり……戦果が変わっていた。
それもドリーマーの"読み通り"に鉄血側にプラスになる戦果が多かった。
ドリーマーの考えでは非常に腹立たしいものだったが、鉄血側が敗走を続ける……追い込まれて行っている背景には一つあると仮定していた。
鉄血側に無くて、グリフィンの劣等種にある物……指揮官という人間の存在。
解析能力等はAIである鉄血側にかなりのアドバンテージはあるのだが……さて、思考の柔軟性……
想定されたもの以外の要素を叩き込む意外性、それらの複合判断能力というのは人間のアドバンテージ。
また矛盾を抱えていたとしてもそれを合理的に処理することも可能なのも非常に優れた点だった。
ドリーマーは欲していたのだ、クズと罵るグリフィンの劣等人形につく優秀な頭脳……指揮官を。
自分を預けるにふさわしい"マスター"の存在を、エリザではない……人間のマスターを。
奇しくも同じ身体に押し込められたサクマ青年は正しく降って湧いたマスター近似値というものだったのだ。
あまり我が強い感じではないのも相余って……初手の対応も喧嘩腰ではなかったのもドリーマーの気を引く。
エリザ達を始めとする鉄血のネットワークからハズレたのもあって独自進化を始めていたのもある。
青年の人格とドリーマーはベストとは言えないものの……相性はイイものであったのだ。
――――演算終了
「ふー……中々頭を使う内容だったな、気疲れしてるよ」
『そ、おつかれ……まぁ悪くないデータだったわ』
……何か声のトーンが優しかったな。
おメガネには適ったのか、それとも……まぁなんでも良い。
良い暇潰しにはなったし……間接的にだが色々と知れたのは収穫だ。
鉄血はPMCと良くやり合っている様子で各方面で展開しつつも押し、押されを繰り返している。
戦術データとの照らし合わせからも現在地点が少し割り出せた……
「あぁ、ドリーマー……キミのお陰で現在位置もある程度絞れたよ、ありがとう」
『そう?それは良かったわね』
……えらい変わりようだな、協力的になってくれたんだろうか?
そうだったら良いんだがな……
さて……どうしたものか、人間が入っていると言って信じる人は居ないだろうし……
鉄血製の人形=反逆者と思われているだろうから都市部に入ることは不可能だろう。
生活して行こうと思えばアンダーグラウンドに潜るほか無いな。
正規ルートで保護してもらえるとは思えん……
『何を悩んでるのよ』
「ん……何処に逃げたものかとな……」
『データ共有は出来るかしら……ちょっとリソースくれるかしらぁ?』
……権限周りをどうにかイジれないものか。
オレの方からも色々探っていかないとだな。
電脳の設定というかOSの設定を全部見ていかないとだな……とりあえずリクエストは許可してと。
『……頭がおめでたいわねぇ、疑うことを覚えろって言ったでしょぉ?』
「……そう忠告する位なら乗っ取るつもりはもう無いんだろう?」
『フン……どうかしらねぇ』
ツンデレ気質なんだろうか、最初はおっかないと思ってたが……やっぱりコイツ、可愛いな。
自己顕示欲もあるみたいだし、ホント……イイ性格してやがる。
数分の格闘の間にドリーマーが一つのプラグインを組み上げてきた。
オレとドリーマーの思考相互通信と……データ共有許可プラグインだ。
即座に導入、アクティブにしてみると……おや、これは。
『ハァイ、アンタの視界にオーバーレイする形で出てこれたわぁ……クフ、どう?』
なるほど、オレにしか見えない電子の妖精って所か……こりゃ良い。
表情含めて本当に……美少女だな。
『……お世辞は良いから、マップ情報とか更新したわよ、とりあえずココ向かいなさい』
思考が筒抜けなのか……の、割には向こうの感情はぼんやり……まぁ良いか、悪くは思われてないみたいだし。
ホログラム状に映るドリーマーは中々どうして顔色を年頃の少女みたく変えていく。
カタログデータと見比べて明らかに胸が大きい気がするが……これが理想だったりするのか?
『本当なら今アンタが使ってる身体のデータでやりたかったんだけどぉ?』
おや、これは怒気があるな……胸の事は禁句か、覚えておこう。
さて……ドリーマーが整理してくれたんだろうデータから出てきたのはどの街からも少し遠い……荒れ地だ。
スカベンジャー等が出没する正直危ない所が一つ、色欲に狂った人間が多い無法地帯の街が一つ……
『どっちを取っても良いわよ、身体はもう良いわ、アンタにあげるから』
「!?おい、それは……」
『どうあがいて、どう生き延びるか……それを直ぐ側で見せてもらうわ、気が変わったの……何、悪い?』
どういう腹積もりかは図ることは出来ないが……そう、だな……
身体は後に回し当面生き延びるのであれば……後者が都合は良いだろう。
この身体は間違いなくそういった輩にはウケは良い。
だが簡単に明け渡すつもりもない、釣って、伸してしまえば良かろう。
出来うる限りはこの身体を汚すワケにゃ行かない……ドリーマーの大事な身体だ。
『今はアンタの身体よ、そしてアンタの名前もドリーマー・カオス……よぉくその辺自覚しなさいよ』
……視点を下に向ければ未だに慣れない胸の大壁が立ちふさがる。
オレがサクマだと言い切れるのは……まだ、慣れていないからか?
慣れきってしまった時には……オレは何か、変わっているんだろうか……?
少し顔をあげるとこちらを覗き込むドリーマーの顔があった……
『ま、大事にして頂戴よ……貴重な交渉手段にもなるんだから』
一時身を潜める先……ペッティング・ワンクストリートに向かう事にした。
潜り込み、住居とネット上の偽装IDさえなんとかなれば……どうにでも出来る筈だ。
エロがまだだって?もうちょい待てい