しかしまぁ……人生というのは首尾よく行くことは無いな。
あぶれ者の街へと移動し始めたのだが……残念極まりない事に道中で人間を視認した。
『あーあぁって感じねぇ、人間ってああも争うからアホだって思うわぁ』
片方は野盗、もう片方は身なりからして見て難民か……
それともコレ自身が罠の可能性もあるな……面倒事に間違いはない。
『どうするの?』
「……しょうがない、やるか」
『あら、どうして?関係ない人間よぉ?』
「後味が悪いし、罠でなかった場合、恩を売っておくのは後々に響いてくるかもしれん」
ドリーマーは好きにしたら?と言いたげに肩をすくめて黙った。
コッチは丸腰、向こうはしっかりと銃火器と刃物で武装している……
正直生身とかだったら勝ち目なんざ無いが……
――――戦闘モード起動
「『貴方達に悪夢を見せてあげるわぁ……クヒッ……』」
クラウチング姿勢、出力最大……!
フィールド出力安定、アクティブ防護オンライン。
今の"私"は最高のボディがある。負ける要素なんて一ミリたりとも無い。
「腕とかもいで遊ぼうぜ、コイツなにも持ってねーんだもんなぁ?」
「ひ、ヒィィィ……そんな、横暴……!」
弱いものイジメは楽しそうねぇ、見るからに愉悦に顔が歪んでいて……イライラする。
――――フォースフィールド、アクティブ
「――――ヘドが出るんだよォ!!ウォラァァァアッッ!!」
「へ?――――ごぱぇ」
攻防両立させるフィールドで拳を保護しつつ殴り潰す。
瞬間的にどれだけ速度が出たかは知らねぇけれども……しっかりと一発で潰すことは出来た。
まぁ難民の顔面が血みどろになったけれども……それはコラテラル・ダメージ。
「『ハァイ、盗賊の皆様方ぁ……こーんな所で何をやってるのかしらぁ?楽しそうじゃない……クヒッ』」
凄く良い気分、戦闘に入ってから気分がメチャクチャに高揚してたまらないの。
ぶっ倒していいヤツを見つけたから?それとも戦闘モード特有の物?
ドリーマーが味方になってくれたからかしらぁ?分からないけれど……とっても良い気分なのは間違いないッ!
あぁ堪んないわぁ……その化け物を見るような目ェ……そうそう、そうでなくちゃねぇ……!
「『ちょっと手合が強くなったら尻込みィ?甘ったれてんじゃないわよ、あ"ぁ?』」
「コイツ……機械人形だ!」
「おいおい何だよこの人形、意匠的に鉄血だが、こんなのデータにないぞ!!」
ようやく豆鉄砲をぶっ放し始めて……クヒッ……足掻き始めたけど、そんなのねぇッ!
フィールド出力ちょっと上げればイイ訳だしぃ……
「な、なんだ……?」
「……下がってなさいよ、死にたくなかったらね?」
「あ、あぁ……ありがとう!」
「フン」
暇潰しには丁度いいわ、ぶち殺し確定♥
あはぁっ♥イイわねぇ……ゆーっくりと近づいてやると面白いぐらいに怯えて……
グリフィン人形程度ならこんな豆鉄砲でも全然殺せるんでしょうけどぉ……
「『そぉれ、ひとーつ♥』」
そんな希望なんて無いわぁ、プチっと潰してお終いィ!!
恨むんだったら私の眼の前でヤッた己の運の無さを呪いなさいな!!
後方で指示を出していた男は生け捕りにするとして……ほかは全部ぶっ殺す。
――――戦闘モード終了、システム通常モードへ移行。
ハイになっていた頭が一気に冷え込んでいく。
私……オレは、ドリーマーになっていたのか?
忌避感無く人間を叩き潰して嘲笑っていた……あれは、オレなのか?
『紛れもなく貴方よ、戦闘モードで私というサブプログラムも取り込んで暴れ回っていただけ……なんて思わないことよ?』
そうか……あまり、濫りに使うものじゃないな、オレとドリーマーの境目が無くなりかねない。
オレはオレ、ドリーマーはドリーマーだ。そこは守っていかねぇと……
殺人を楽しむつもりもないし、ドリーマーを取り込んでしまうつもりもない。
『あら、それはどうしてかしら?取り込んでしまったほうが良いかも知れないわよ、この身体の隅々まで実権を握れるも同然だけどぉ?』
……オレは物を大切にしていきたいヤツだし、ここまで感情豊かな人形はあまり見てきてない。
出来のいい人形とお近づきにすらなれなかった男なんだよ。
あー、つまりだな、この身体もだが……
『あーいい、もう良いから、分かった、伝わってるからもう考えるな、バカ』
……一目惚れしたってだけでも十分な理由だろーが、わりぃか?
『悪くないから、良いから、とにかく黙って』
……あ、ぷっつりと切れたな、向こうから接続を切ったのか。
サブプログラムとして抱えてる状態だが、あっちも結構実権握れてきてるんじゃないか?
あぁ、でもこの血の臭いは酷いな……何処かでクリーニングしたい。
「あ、あの……」
「おや、もう何処かへ行ったかと思っていたが……何か?」
襲われていた難民が話しかけてきた。
デザインとかからも鉄血の機械人形だってのは分かってるだろうに……
自分たちが襲われないと思っているのか……それとも、確かめにきてるのか。
「あっ……む、胸元を直してください!」
「……?あ、これは失敬」
大いに殴って蹴ってと暴れたせいで胸元が大変酷い事になっていた。
結局落ち着いて話してみればオレに身の安全を守って欲しい、移動先は決まっているからそこまで守って欲しいということだ。
エラーを吐いて襲っているならばもう賊同様に肉塊に変えられている。
守る意味なぞある訳がないだろう?それは分かっている、君は守ってくれる、だろう?
……そういって見せてきたのは鉄血工造とつながりが深いスヴァローグ重工のID。
なるほど……鉄血の造反であぶれていたということか。
顔写真なども一致する、確かに……オレの身の潔白も証言する。
もしダメだったとしても一般人形用のネットIDなどを発行しよう……と約束してきた。
「申し出は嬉しいが、それをして君の職が危うくならないか?やることは偽造みたいなものだぞ?」
「貴重な非エラーモデルだ、やる価値は十分にあるよ。もしよければ解析も……」
「それは……悪いが考えさせてくれ」
解析なんてされたらどうなるか……正直IDだけで済ませたい。
正直、罠の可能性がどうしても脳裏をよぎる。
また戦闘モードに入ったらオレはどうなるのか正直……分からん。
「AIがかなり特殊みたいだな、I.O.Pに連絡したら専門家が来るかもしれない」
「……まぁ、そうだな」
連絡だけでもしてもらおうか。
『すぐにでも逃げられるようにルートデータは演算しておくわ』
……助かる。
やっぱりと言うべきか、嫌な予感がしていたが本当に罠にハメるつもりだったようだ。
スタンさせようと高圧スタンバトンをぶっ刺された。
……だが、鉄血工造の採算度外視ロマン躯体……一発じゃ何とも無くてだな。
「悪く思うなよ、クソ野郎共……」
『見事にクソ人間って感じねぇ……鹵獲してお手柄って思ってたみたいだけど』
「……IDとかはコイツのがあるな、これでネットに接続はできるかもしれんな」
『ちょっと工作したらオッケーだと思うわ、任せて』
結局、愉快な死体がさらに増えたという……血みどろ地獄だ。
IDを奪取し死体はフィールドパンチで念入りにつぶして死体を詳しく認識出来ないようにした。
あとは……多分、動物がなんとかしてくれるだろう。
『……あ、そうだったわ、私としたことが……この辺りELIDの出没範囲だわ』
ELID……データが提示されてきた……低濃度崩落液に被爆した生物の成れの果て。
時間を置けばどんどんと大型化していき最終的には人間の原型を留めない化け物へと変わる。
この付近に出没するのは植物型や蟲型のELID……その特徴は驚異的な繁殖欲で……
「……おいおいおい、この身体で遭遇したら」
『十中八九レイプされるわよ、頑張ってねマスター♥』
「ふざけんな」
男の自意識で犯されるとか尊厳破壊も良い所だ……
……正直、この身体になった時は自分の理想形そのままとも言える美少女になれたと喜んだもんだが……
『ストップ、アンタの美的センスがマトモなのは嬉しいけれど……カットするわぁ』
……照れてるのか?
まぁ良い、ともかく逃げ延びる他無い。
違法者ならば違法者が流れ着く先……スラムにな……
自衛手段はしっかり持って、エネルギー切れにも注意だ……行き倒れ人形になったらどうなるか……
さっきのドクズ同様捕まえてバラして……か、OSをイジられて奴隷扱いが精々か……
徒手空拳でなんとかなる相手ばかりとは思えんし銃火器が欲しい所だな。
……もう、殺すのに躊躇は無く成ってきてる。
……電脳化の影響なのか……それとも……
『私と一緒の価値観になってくれたらそれはそれで嬉しいわねぇ……くふ♪』
オレは……どうなっていくんだ?
ちょっと一風変わった風味が出てると思います。
でもまだエロはなーい、次あるよ♥