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放課後、例の如く花壇の世話をしている奥村を見つけたので、話しかけてみる。
「おい」
「え?、あっ、ひっ」
俺の顔を見るなり、顔を青くして尻餅をついたまま後ずさる奥村。
嫌われたもんだ。
「屋上」
それだけ言うと、奥村は意味を理解したようで、震える足で立ち上がり歩き出した。
屋上に入ると、この前の事が想起されたのか奥村は泣き出しながら、
「許してください...、お願いします...」
と何度も繰り返している。
今日は犯すとは別に試したいことがあったので、パレマクリアに能力を使う準備をしてもらう。
試したいこととは、川上にしたような思い込ませる能力の実験だ。
幾つか自販機で飲み物を買ってきており、その飲み物の味の認識を変えることが出来るのかの実験だ。
「俺の目を見ろ」
そう言って目を合わせる。
奥村は黙って怯えた瞳で目を合わせてくる。
頼むぞ。
飲み物を全てコーヒーと認識させてくれ。
『了解した』
数秒経って、パレマクリアから完了の合図を貰う。
「次は目を閉じて、少し上を向いて口を開けろ。目を開けたらこの間より酷い目に合わせるぞ」
奥村にそう命令する。
少し疑問げにしていたが、何かを言って俺の機嫌を損ねたくないのか、これも黙って従った。
雛鳥の様な状態になった奥村に先ずは水を飲ませる。
「ん!」
いきなり口の中に水を注がれたため少しびっくりしていたが、吐き出すことなく口の中に入れることができた。
「飲んでも吐き出してもいいが、目を開けるな」
そういうと、少し悩んだ様だが地面に水を吐き出した。
まあ、俺も同じ状況だったら吐き出す。
「なんの味がした?」
「コッ、コーヒーですか?」
奥村が不安げに答える。
「ブラックか微糖かどっちだった?」
「ブラックだと思います」
「香りもコーヒーだったか」
「はい」
成功だ。
ここまでは想定通り。
次は味のついた物の場合を試す。
「次行くぞ。上を向け」
奥村の口にオレンジジュースを含ませる。
声をかけると再び吐き出す。
「なんの味がした?」
「さっ、さっきと一緒です」
次だ。
炭酸のあるものを含ませた時の反応を見る。
コーラのプルタブを下ろし、封を開ける。
「上を向け」
コーラを注いでいく。
注がれる奥村の口から炭酸の弾ける音が聞こえてくる。
再び吐き出させ、同じことを尋ねる。
「これもコーヒーです」
「炭酸は感じなかったか」
「は、はい」
素晴らしい。
味覚や嗅覚までもを変えることができた。
炭酸を感じなかったと言うことは、触覚すら騙されているのかもしれない。
次はさっきの水にわさびとタバスコを溶かしたものを用意する。
これを口に含んで問題なければ、味覚、嗅覚、触覚を操れる事が証明される。
川上の件も合わせれば、人の五感のうち、視覚、嗅覚、味覚、触覚を支配できると言うことだ。
わさびタバスコ水を作っていると、奥村から話しかけられる。
「これは、何をしているんですか?私は何を飲まされているんですか?」
かなり不安そうだ。
無理もないだろう。
レイプ魔に命令され、目を閉じたまま謎のコーヒーの様な物を飲ませられるなんて、こんな経験をしているのは世界でも奥村だけだろう。
「お前には関係ない。質問にだけ答えてろ」
だからと言って答える義理はない。
なにもわからない状況で飲ませる事に意味がある。
「上を向いて、口を開けろ」
奥村の口に特製のわさびとタバスコをブレンドした水を注ぐ。
奥村はしばらく口に含ませたあと、吐き出させる。
「味は?」
「コーヒーです」
これもクリアだ。
「口内や鼻に刺激は感じないか?」
「は、はい。何を飲ませたんですか?」
奥村は怯えている。
分量が足りなかった可能性も考えて、俺もこの水を口に含んでみる。
「ゴホッ、ゴホッ、ゲホッ」
飲めたもんじゃねぇ。汗が噴き出てくる。
奥村が痛みを感じない特殊体質でなければ、完全に触覚を変化させている。
「な、なにがあったんですか?さっきのはコーヒーじゃないんですか」
奥村が俺のむせた声を聞き、騒ぎ立てる。
無視して、次の実験に移ることにした、
「目を開けろ」
そういうと、奥村は目を見開いてあたりを見渡す。
「お前が飲んでいたのはこれだ」
そういって、わさびタバスコ水を渡す。
「これは、コーヒーですか?」
奥村にはこのわさびとタバスコで濁った水がコーヒーに見えるらしい。
俺の目から見るとコーヒー要素は皆無だ。
「飲んでみろ」
奥村に命令する。
奥村はおずおずとペットボトルの飲み口を、口に含み傾けて行く。
中から濁った水が、奥村の口へと流れ込むが、本人に変わった様子はない。
「それには、俺のションベンが入っている」
ブバァっ。
奥村はそんな音を出しながら、口に含んだ物を勢いよく噴射した。
「オエッ、ウェッ、なんてものを、飲ますんですか」
奥村はえずきながら、恨み言をこぼす。
「ふっ、ふふふっ、冗談だよ」
奥村が余りにも見事に吹き出すモノだから思わず笑ってしまう。
芸人顔負けのリアクション芸だ。
動画を撮っておくんだったな。
どうやら、飲み物がコーヒーに感じるといっても、異物が入っていると分かった時の嫌悪感は消せないらしい。
次にやるのはもっと抽象的なものだったらどうなるかだ。
前までは、恋人の記憶を植え付けたり、俺を裸だと思わせたり、水やジュースをコーヒーだと思わせたりなどの具体的なものだった。
例えば、奥村は俺の事を現在殺したいほど憎んでいるはずだが、俺の事を好意的に見せたり、もしくは魅力的に見せたりすることは出来るのかどうか。
ある程度の自由意志を持たせての思い込ませ。
恋人でもなく、友人でもなく、敵でもない。
ただなんとなくいい感じがする。
その様な状態にできるかどうか。
出来るのだとしたら大いに役立つ事だろう。
この能力は半日で消える。
しかし、その時の記憶は残り続ける。
なんとなく、あの人いい人だったな、と言う記憶を持たせる事で次に会う時もきっと悪印象にはならないはずだ。
そしてもう一度能力をかけることで、記憶や印象を補強していき、関係を深めて行く。
そうすれば、能力を使わずとも恋人にでも、親友にでもなんだってなれるはずだろう。
『やってみる価値はあるだろう。怪盗団のメンバーにそれをかける事ができれば優位に立ち回れる』
問題は奥村でテストするにあたって、どの様なものが適切かだ。
抽象的ゆえに、違いや反応が分かりにくい。
なんとなく好意的に見せることが成功したとして、同時に加害者の俺を憎んでいることだろう。
すぐにも、反応が出てくるとは考えにくい。
『そうだな、さっき吹き出したあの水を欲しくなるようにするのはどうだ』
なるほど、なかなか良いかもしれない。
たまには良いことを言うじゃないか。
だが、あれを飲むのは少し抵抗感が出るかもしれない。
そこまで強制力のある認識の変化ではないため、嫌悪感が勝ち能力が効いていても選ばない可能性がある。
本当に冗談なのだが、まだションベンが入っているんじゃないかと疑っているんではないだろうか?
コーヒーと思い込ませる能力を解除すると濁った水になるし、難しいだろう。
それを踏まえると、テストするために買った飲み物を並べて、なんとなくあの飲み物が飲みたくなるとか、気になる、のような感情を抱かせるのが
わかりやすい方法な気がする。
よし。
先ずは、コーヒーの認識を戻してもらう。
「目を見ろ」
奥村と目を合わせる。
数秒後、パレマクリアから完了の合図を受ける。
内容は、コーラが気になり、飲みたくなる。
コーラにした理由は、なんかお嬢様ってコーラとか飲まなそうだから。
完全なる偏見だ。
「この中にある飲み物から好きなものを選べ」
濁った水、コーラ、オレンジジュース、コーヒー、紅茶と並べていく。
「な、なぜ」
まあ、こうなるだろうな。
流石に警戒される。
「いいから、飲みたいと思ったものを選べ」
無理矢理選ばせる。
コーラとオレンジジュースは封が空いている。
流石に認識を植え付けたといえ、抵抗感が勝つだろうか?
「じゃ、じゃあ、これを」
そういって奥村が手に取ったのはコーラだった。
おそらく成功だろう。
もう少し何かで試したいとこだが、今日のところはこれくらいにしよう。
「なぜ、コーラにした。それは封が切られているものだろう?」
一応理由を聞いてみる。
「え、特に、理由は、ないです...」
奥村は何かまずいことをしたと思ったのか、声が尻すぼみになって行く。
今日の成果は十分だろう。
こんな事になるなら、死ぬ前に丸喜にどんな能力か聞いておくんだった。
達成感を胸に、奥村を犯すため体に手を伸ばした。