6/14
朝、生徒会室に向かうと、言いつけ通り新島が中で待っていた、
「死んでなくて良かったよ」
いや、本当に。
新島は暑くなってきたと言うのに、首元が隠れるシャツを着ていることから跡が残ったのだろう。
「っ、どの口が...」
「昨日みたいにしてやっても良いんだぞ。やめてー、殺さないでーってな」
俺が一歩近づくと、新島は一歩下がる。
昨日の恐怖はまだ尾を引いているらしい。
やがて、教室の隅まで新島を追い詰めると、首を掴み顔を新島に寄せる。
「ひっ」
「目を見ろ」
そういうと、半泣きの怯えた目でこちらを見つめ返す。
頼むぞ、パレマクリア。
内容は、俺にレイプされた事を忘れる事が一つ。
生徒達が被害に遭っている闇バイトの元締めを改心させる依頼を怪盗団に出そうとしていたことに置き換える事が二つ。
数秒後、パレマクリアより、完了の合図を受け取る。
「な、なに。近いわよ」
新島は怪訝そうな顔でこちらを見てくる。
「いや、服に虫がついていた様な気がしたが気のせいだった。」
「そ、そう。ならいいんだけど」
新島はそう言って足早に去っていった。
これで上手く行けば良いが。
放課後になり、新島を尾行する。
向かった先は屋上だった。
鍵を開けていたことから、中にはまだ誰もいないのだろう。
屋上の階段付近に隠れ、誰か登って行く生徒がいないか監視する。
数分経った後、雨宮、坂本、高巻の三人が屋上へ登って行くのを発見した。
三人が屋上に入ったのを確認して、屋上の扉の前で聞き耳を立てる。
ハッキリとは聞き取れないが、なにかしらの会話をしている様だ。
断片的に聞き取れた会話から鑑みるに、俺に繋がる様な情報は出てきていない。
後は今後、新島と怪盗団がどう動くかだ。
怪盗団の方は大丈夫だろうが、新島のかけた能力が解けた際にどんな行動に出るだろうか?
明日あたりに、もう一度脅しを入れよう。
能力が解ける、夜にチャットでまた、朝に生徒会室で待つ様にと入れることにする。
6/15
日が明けて翌日、生徒会室には新島が待っていた。
その様子はひどく怯えたように見える。
「あ、あなた、私に、なにをしたの?」
おそらく記憶が戻ったことで俺が何らかの力で、新島の記憶を操ったと思っているのだろう。
正解だが。
「なにをしたと思う?」
逆に質問してみる。
「人の記憶を操作できるなんてそんな事、あり得るはずが」
「怪盗団なんて集団がいるのにか?」
「あなた、やっぱり怪盗団と関係が...」
無きにしも非ずだが、少し遠いな。
さて、どう黙らせるか。
「俺は人の記憶を操作できる。お前にやったようにな」
俺はどうでも良さそげな雰囲気を出しながら、生徒会室の机に腰掛ける。
「そんな非科学的なことが、あるわけ」
ここに至って、新島はまだ常識を捨てきれていない。
「なら、お前に起こったことはどう説明する」
「それは...」
俺は新島を抱き寄せ、囁く。
「お前が今持っている記憶も俺が作ったものだったりしてな」
新島は、体を震わせ手を跳ね除ける。
その顔は、迷子の子供のように、縋るものを失った人の顔をしていた。
「俺は、いつでもお前の記憶を書き換え殺すことができる。ずっと見ているからな」
俺はそう言って、部屋から出て行く。
あの表情から見て、当分は反抗することができないだろう。
時は巡って、放課後。
かねてより、計画していた怪盗団への接触を試みることにした。
最初のターゲットに選んだのは、坂本竜司。
理由はなんとなくバカそうだから。
そう言うタイプなら何かヘマしても、あまり怪しまれる事もないだろう。
坂本のクラスに行くと、ちょうどバッグを持って教室から出て行く所だった。
「坂本君、少し良いかな?」
声をかける。
怪訝そうな顔をされたので生徒会だと伝えると、納得した様な感じを出した後、睨みつけられた。
新島関連だろうな。
「生徒会の副会長さんが俺になんの用で?こっちは忙しいんだけど」
新島から依頼された件で忙しいのだろう。
「時間は取らせないさ、鴨志田事件について少し話を聞きたくてね」
そういって、坂本を生徒会室に連れ込むことに成功した。
「まあ、適当に掛けてよ、今、お茶を入れよう」
「別にいっすよ。長居する気もねーんで」
嫌われた物である。
新島が闇バイトの元締めを改心させなければ警察や学校にバラすとでも言ったんだろう。
手口が不明のため立件はできなさそうだが。
「生徒会長様に命令でもされたのか?俺らがちゃんと働いているか見とけってな」
「?、君は彼女に何か頼まれてるのかい?」
しらばっくれておく。
「え!じゃあ、俺らがかいと、いや、な、なんでもないっす」
良かった。
見た目通りのバカみたいだ。
ほぼ言いかけたぞ。
「彼女と何かあったのかい?まあ、僕も彼女も怪盗団を追っているし聞き込み相手が被ることもあるだろう」
「先輩達はなんで怪盗団を追ってるんすか?」
新島とは別だと聞いて態度が少し軟化したようだ。
「校長からお達しを受けてね。怪盗団が鴨志田先生に何かやったに違いない、調べて来いってな風に」
「それで、先輩は怪盗団を見つけたら、校長に突き出すんすか?」
少し話を聞く気になってきたみたいだ。
「さあね、僕自体は怪盗団に結構肯定的だからね。その時の状況次第さ」
「やっぱり、怪盗団がやってる事は正義っすよね!さすが副会長は話が分かる!」
分かりやすいなコイツ。
今ならいけるだろう。
パレマクリア、頼む。
『了解した』
「そのことなんだけどね。君は怪盗団についてどう思う?」
坂本とじっと目を合わせながら、喋りかける。
怪盗団に対して好意的な事を知って坂本は饒舌に喋り始めた。
「そりゃあ、勿論正義の味方っすよ。表では良いツラして、裏では人を喰いもんにする、そんな悪人を懲らしめる正義の味方」
パレマクリアから完了の合図をもらう。
これで種を撒くことは出来ただろう。
「そうなんだ。端的に言うとね、今日君に声をかけたのはね、君は怪盗団に関係あるんじゃないかって思っているからなんだ」
そう言うと、坂本は少し目を逸らす。
「そ、そんな事、な、ないっすよ。全く全然無関係っすから」
「そりゃあ、残念だ。その内、雨宮君や高巻さんにも話を聞くと思うからよろしく言っておいてね」
二人の名前を出すと、ピクリと反応する。
分かりやすいなコイツ。
「それじゃあ、今日はこの辺で。参考になったよ、ありがとう」
「は、はい。じゃあ俺、用事あるんで!」
坂本は早足で、去っていった。
効果の確認がイマイチ取れなかったが、まあ大丈夫だろう。
次は高巻だな。
雨宮は怖いし。