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放課後、前回は坂本に種を撒くことに成功したので、今回は高巻を狙うことにする。
もう一度、坂本に接触して印象を補強することも考えたが、仲間内で俺の話題が上がり、能力をかけずとも勝手に悪くない評価を得られる可能性を鑑みて、新しい人物に狙いを定めることにした。
今の怪盗団メンバーは猫を入れて、五人のはずだ。
そのうち二人が俺に好印象なら他のメンバーからの当たりも幾分か柔らかくなるだろう。
二年の教室に向かうと丁度、雨宮、坂本、高巻の三人がたむろして談笑している様だった。
談笑してるにしては深刻な表情をしていたが、やはり新島の件だろうか。
とりあえず、声をかける。
「やあ、坂本君、それに雨宮君に、高巻さん」
「あっ、副会長。例の話っすか?」
坂本の表情からは初めて会った時のような敵意が見えない。
おそらく、良い第一印象を与えることが成功したのだろう。
「ああ、そのつもりなんだけど。雨宮君か高巻さんに話を聞きたいんだけど」
高巻に絞るつもりだったが、しょうがない。
良いふうに考えれば、リーダーに良い印象を与えることが出来ればかなり大きな前進だ。
まあ、効くかどうかは分からんが。
「ほら、この間話したろ。安心しろって、生徒会長より話のわかる人だからさ」
仲間内に先の事は共有されているらしい。
口ぶりからするに、新島よりは高評価みたいだ。
「じゃ、じゃあ私が行く」
高巻がおずおずと手を挙げる。
ラッキーだ。
「いいのか?」
「蓮は聞き込みやっといて、副会長さんには私が話すから」
どうやら高巻でまとまりそうだ。
「何か予定があったなら出直すけど、良いのかい?」
「ええ、大丈夫です」
高巻を連れて生徒会室へと入る。
レイプすることも考えたが、俺に呼び出された次の日から明らかに様子がおかしければ、疑いの目は自ずと俺に向くことだろう。
「好きに掛けてくれ。今飲み物を出そう。緑茶、コーヒー、紅茶があるけどどれが良い?」
「じゃ、じゃあ紅茶で」
高巻は幾分か緊張しているらしい。
高巻に紅茶を差し出すと会釈をしながら受け取り、口をつける。
「じゃあいきなりだけど、本題に入ろうか」
「はい」
「君達は怪盗団に関係しているのかい?」
さて、どう反応するか。
「そ、そんなわけないじゃないですか〜」
高巻は誤魔化した様に微笑み、答える、
「じゃあ、怪盗団についてはどう思ってるんだい?」
「志帆の、私の友人の仇を取ってくれた様なものなので悪い存在とは考えていません」
悪い存在とは、か。
少し含みのある言い方だな。
坂本の場合は、完全な正義と考えていた。高巻は違うのだろうか。
何か仲違いの芽があるかもしれないな。
「鈴井さんの事は、生徒会の責任でもある。彼女には悪い事をした。勿論、君にもだ。すまなかった」
特に悪いとも思っていないが、とりあえず頭を下げておこう。
「いいんです。もう、決着がついたことですから」
高巻は俺の形ばかりの謝罪に、少し微妙な顔をしていた。
その後、意を決した表情で俺に質問をしてきた。
「校長先生が、鴨志田の件を揉み消していたって本当なんですか?」
どう答えるか。
校長を庇うと俺の評価も危うくなるが、ここで全てを話すと次のターゲットが校長になりかねない。
校長を操る黒幕との直接対決はまだ早いだろう。
俺の準備が整っていない。
「そうだね、口ぶりからすると体罰やセクハラについて知っていた可能性は高いだろう」
悩んだ結果、聞かれた部分だけ答えることにした。
なにも話さないよりは誠実だろう
「それを知りながら、どうして校長先生に協力しているんですか」
高巻はこちらを真っ直ぐに見つめ、非難するような目つきで視線を合わせてくる。
チャンスだな。
やってくれ。
『いいだろう』
俺は高巻と視線を合わせ、能力がかかるまでの時間稼ぎとして、聞かれた事に答える。
「こちらにも事情ってのがあるのさ。好きで協力してるわけでもないさ」
「それでも、悪い大人に良いように使われて悔しくないんですか」
鴨志田に搾取されるだけだった人間がよく言うな。
いや、だからこそか。
「勿論、黙って服従しているわけじゃないよ。怪盗団がもし見つかったとして、報告するもしないも僕の手にかかっているんだからね、せいぜい利用させてもらうさ」
あの小心者の校長ぐらい出し抜いてやろう。
なにせ、こっちは管理者やら神様やらを屈させようとしているんだから。
『成功したぞ』
そんな事を考えていると、完了の合図を受ける。
「あっ、すいません。失礼なこと言っちゃって」
能力のせいか、高巻が先程の発言を詫びてきた。
「別に構わないよ。他にも気になることがあるなら聞いてくれ」
「ありがとうございます。じゃあ、少し気になってたんですけど、会長の新島さんとは一緒に調査をしないんですか?」
痛いところをついてくる。
確かに、二人とも怪盗団を追っており、同じ組織に属しているのに別行動なのは少し違和感があるだろう。
「まあ、あまり仲が良くないからね」
適当に誤魔化しておく。
仲が悪いと言えば、それ程強く突っ込んで聞いてはこないだろう。
「そうなんですね。なんかごめんなさい、変なこと聞いて」
高巻は思惑通り、少し気まずそうな顔をして、それ以上の追求をしては来なかった。
「気になることがあれば聞けって言ったのは、僕だし構わないさ」
それから少し雑談をして、高巻を解放した。
印象付けは、恐らく成功しているだろう。
残るは、雨宮と喜多川とかいう男だ。
雨宮は同じ学校だからまだしも、喜多川はウチの生徒ではない。
喜多川を誘い出す手段も何か考えておくか。