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夜、御船に念書へ署名させるため、新宿へ向かう。
まだあそこでやっていれば良いが。
そう思いながら歩いて行くと、御船を見つける。
相変わらず同じ所でやっているらしい。
「よう、御船」
気さくに声を掛けて、対面の椅子に座る。
「あっ、あなたは... あなたに占う事なんかありませんよ」
「そんな事で来たんじゃない」
御船に念書を見せる。
『念書
私は、ホーリーパワー・トータルコミュニケーションズ、通称HPTC社らと共謀し、私の顧客に対して、聖なる力のある石と偽り高額な商品を購入させ又、買わなければ不幸になるなどと脅迫し商品を購入する様に迫り、詐欺及び恐喝を行った事をここに証言します』
「なんですかコレ...」
「コレに署名、捺印をしてくれ」
法的な拘束力なんてものはないが、コレを書かせて俺が保管しておくとなれば俺に対する反抗心もある程度折ることができるだろう。
何しろ嘘は書いていないからな。
「い、嫌です!私はもう福来さんとは何も関係ありません!」
「関係があったのは事実だろう?」
未来は変えられるかもしれないが、過去は決して覆らない。
しがらみからは逃れることはできないだろう。
「そ、それは...」
「じゃあ、選択肢をやろう。署名できないのであれば今日もお前を犯すし、撮影した写真もばら撒く。そして霊感商法についても告発する」
こういえば、署名せざるを得ないはずだ。
「関係を切ったのなら尚更、今後の事を考えるとケジメをつけた方が良いんじゃないか。HPTCは一般に詐欺会社だとは認知されていない、この署名が流出した所で大した被害はないだろう」
更に追撃をかける。
HPTCの会長はこれから自首させるつもりだが。
「う、うーん」
「ただ名前を書いて、ハンコを押すだけで良い。それで今日受けるはずの苦しみから解放されるのなら安いもんだろう」
御船は揺れている。
裏がある事も重々承知だろうが、誰だって犯されたくはないだろう。
「わ、分かりました。その代わりあの写真を消してください」
生意気にも交換条件と来たか。
あの写真はかなり強力なカードだ。
裸の写真が顧客に流れれば、ブランドが傷つくことだろうし、持っているだけで御船に与える心理的な効果も大きい。
使い所はここではない。
「何を言ってるんだ。お前の立場を分かっているのか?俺に、いや、お前を信じた多くの人に詐欺商品を買わせておいて、その代わりだと?」
御船に凄む。
「お前は薄汚い詐欺師なんだよ。俺の機嫌一つでお前は前科がついて、二度と商売出来なくなるんだ。そこんとこ分かってんのか」
「あなただって私に乱暴したじゃないですか!」
御船は机を叩き、食ってかかる。
「じゃあ警察でもなんでも行けば良い、お前の被害者が優しく慰めてくれるだろうさ」
「そんなこと...」
御船は口籠る。
御船にも被害者に対して負い目があるらしい。
「この期に及んで、綺麗でいようと思ってるのか?詐欺を働いておいて、福来とも関係を切って、俺の事も無かったことにして、全部無かったことにして再スタートとか考えてんのか?」
御船に顔を近づけ、静かに恫喝する。
「そんな事、出来やしないんだよ。お前はもう汚れちまったんだ」
「くっ...」
御船は歯噛みする。
「だが、まあ安心しろ。お前には幾つか頼み事があるんだ。その頼み事を聞いてくれたら写真を消しても良い」
「ほ、本当ですか」
希望を見せてやると飛びついてくる。
その頃には、写真なんてどうでも良くなるくらいの弱みを握っている事だろうけどな。
「ああ、約束する。コレに署名をしてくれるんならな」
「は、はい。必ずですよ...」
「ああ、なんなら俺が念書を書いてやっても良い」
そう言うと、御船は渋々ながら念書に署名をした。
印鑑は持ち歩いていない様で、捺印は拇印で行った。
まあ、法的な拘束力がある様な書類じゃないし、自分で書かせ、こんな書類が俺によって保管されている事を印象付けられるのならそれで良い。
「頼みたい仕事については近いうちにまた連絡する」
「早くして下さいよ。私も暇じゃないんで」
明らかに暇そうだが、まあ良いだろう。
帰る道すがらに、どう御船を使うかを考える。
芳澤は精神的に参っているだろうし、貴方、誰かに脅されてますね、なんて言えばすぐに信じそうなものだ。
黄色の物を身につければ、脅してきた相手から貴方の身を守れます、とか適当な事を言わせて、俺が芳澤を犯す直前に何かしらの理由をつけて芳澤を解放すれば御船が信頼を勝ち取るのは簡単なはずだ。
問題はそこから、どうやって犯罪行為に繋げるか。
知らないうちに犯罪を犯しているのが理想だが、簡単なものがあるだろうか。
信頼を勝ち得ているのなら、名義貸しなんかが有効かもしれない。
書類なんかは捏造でも構わないが、サインをさせて書類を確保すれば違法行為が証明できる。
そこから御船のHPTCの繋がりを匂わせて、騙された事にすれば頼る相手もいなくなる。
信頼していた人間から裏切られたのだ、精神的なダメージは想像に難くない。
そこで俺が介入した風に見せかけ助け舟を出してやれば、縋るものがない芳澤は簡単に俺の駒になるだろう。
そこから更に犯罪を重ねさせるなり、周囲から孤立させるなりすれば、芳澤は俺に逆らえない。
そして、行動や選択を誘導し、芳澤にとって裏目に出させれば俺への依存を深めるはずだ。
もとより、姉への劣等感で自分への自身が無い人間だ。
依存までさせたら、全てを俺に委ねるのも時間の問題だろう。
先ずは新島の結果待ちだな。
上手くいくと良いが。