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事態が動いたのは夏休み中の登校日。
珍しく新島の方から呼び出しがかかる。
なんでもメジエドについて進捗があったらしい。
解決の糸口が見えたのだろうか。
生徒会室のドアを開けて中に入ると新島がこちらに気づく。
「何があった」
「はい、メジエドの対処について進展があったので...」
名前がわかったとかか?
いや、それなら名前が特定できたと報告すれば良いだけだ。
何か改心とは違うアプローチで撃退する事にでもしたのか?
「メジエドに対抗するハッカーでも雇ったのか?」
「なっ、なぜそれを...」
新島は驚いた様に目を見開く。
当たってるのかよ。
軽い冗談のつもりだったんだが。
冗談でしたと言える雰囲気じゃないぞ。
「詳細は知らん。あったことを話せ」
取り敢えず誤魔化し、何があったのかを話させる。
「始まりは、蓮の携帯のチャットアプリにアリババを名乗る人物が接触してきたことからです。アリババは佐倉双葉という人物を改心させることを条件にメジエドを倒すと交渉を仕掛けてきました」
ボロを出すといけないので、黙って先を促す。
「佐倉双葉を調査した結果、蓮の下宿先である喫茶ルブランの店主、佐倉惣治郎の自宅で同居している義理の娘であることが判明します。そして佐倉双葉に接触を試みた結果、佐倉双葉がアリババを名乗る人物であると共に、パレスを持っていることが分かりました」
新島は続ける。
「そして、当初の条件通り、佐倉双葉を改心させその後に、佐倉双葉のハッキング能力を駆使してメジエドを叩く事になりました。これが今日までの進捗です」
なんだ下宿先の義理の娘が凄腕のハッカーて。
一風変わったラブコメみたいな展開だな。
これが管理者に選ばれた人間の天運か。
「佐倉双葉が改心について知っていたのは何故だ」
「それは、佐倉双葉がルブラン内に盗聴器を仕掛けていたみたいで、メンバーが集まった際にしていた会話を聞かれていました」
倫理観のかけらもないな。
俺が言えたことじゃないが。
義理の親とはいえ、自分の親が経営している店に盗聴器を仕掛けるという思考になった経緯が分からん。
なんかそういう病気なんじゃないか。
というか、ハッキングとか言ってたし以前の通話なども盗聴されてるんじゃないだろうな。
「盗聴されていたのはルブランだけか」
「いえ、そこまでは...」
大丈夫だろうな。
駄目だったとしても、今更対策を講じた所で手遅れ感がある。
殺すか?
幸いパレスがある。一人で出来るか分からんがそこで本人のシャドウを殺せば現実世界の本人も死ぬらしい。
しかし、そうなると怪盗団は確実に誰かの関与によって殺されたと疑うだろう。
カネシロの名前を特定し、今回は佐倉双葉を手にしようとしている怪盗団の調査能力や運を侮ることはできない。
「確認しましょうか」
「いや、良い」
素直に口を割るとは思わないし、していないとしても佐倉双葉に要らない疑念を抱かせるかもしれない。
どうするか。
とりあえず長時間二人でいるのも怪しまれるし、とっとと新島を帰らそう。
「戻って良いぞ」
そういうと、新島は生徒会室を出ていった。
悩みは増えるばかりだ。
他の女の様にレイプして口を塞ぐか?
相手は凄腕のハッカーらしいし、反撃が怖いな。
そうなってくると佐倉双葉には手が出しにくい。
面倒なカードを手に入れたもんだな怪盗団。
パレスで殺すにしろ、怪盗団より先んじなければならない。
執着している場所は新島に聞けばなんとかなるだろうが、怪盗団はパレスを見つけたのなら今日にでも攻略を開始するはずだ。
パレスの攻略に関しては怪盗団の方が経験もあり出し抜くのは容易ではないように思う。
手詰まりだ。
結局、赤の他人の携帯を盗聴やハッキングして盗み見しないだろうという佐倉双葉の僅かながらの倫理観に賭けるしかないのか。
女を何人もレイプしている人間が、その女一人黙らす事が出来ないなんてなんとも情けない話だ。
俺との会話や関係がバレたのならまず新島が、なんらかの攻撃なり監禁なりを受けるはずだ。
俺にはパレスが無いそうなので、現実的な手段としては警察になるか。
怪盗団が内々に処理をしようとするのなら、俺がやったようにメメントスに連れていってそこで戦闘になるだろう。
バレればまず新島の俺に接する態度なり連絡頻度なりが変わることだろう。
新島は俺にとっての炭鉱のカナリアと言うわけだ。
取り敢えずは続報が来るまでは待ちだな。
カナリアが続報を喋らなくなったのなら、そういうことだろう。