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芳澤からの連絡があったのはあれからしばらく経ってからだった。
自分から誘い出すことに抵抗があったのか、それとも勇気が足りなかったのかは分からないが連絡があるまで時間がかかった為、あわや失敗かと思っていた所にこの連絡であった。
なんとか今回も成功したようだ。
問題は芳澤がどう出てくるかだ。
ただ、呼び出して雑談をするわけじゃないだろうし、ボイスレコーダーや他の人間を連れてくる事も考えられる。
下手な事は言えないな。
取り敢えず、いつもの様に生徒会室で待つ。
事前に調べてみた所、レコーダーやカメラなどは発見できなかったため、部屋自体には問題はなさそうだ。
しばらく経った後に、芳澤が部屋へと入ってくる。
「お前から呼び出すなんて、珍しいじゃないか。何の用だ」
「...」
芳澤は答えない。
表情は俯いていて伺えないが、足は少し震えている事から、緊張しているのだろう。
なにも答えない芳澤を観察していると、それまで俯いていた顔をガバッと起き上がらせ、何かを決心した表情でズンズンと近づいてきた。
「な、なんだ」
「はぁー!」
戸惑っている俺の顔に、芳澤の張り手が直撃した。
べチンッと良い音を奏でながら、俺の顔の肉が衝撃で震える。
いきなりの事に面食らっている内に、脱兎のごとく芳澤は部屋から逃げ去っていった。
後には、バタバタと芳澤が廊下を駆け抜けていく足音が残されるばかりだった。
「なんだったんだ...」
幸いにも、緊張からか腰が入っていない一撃だったためなのか、パレマクリアの強化のお陰なのか特に痛みはない。
あるのは困惑だけだった。
俺は芳澤を追い詰めすぎたのかもしれない。
大会の結果も振るわないと言うし、ストレスと夏の暑さで頭がやられてしまったのだろう。
だがまあ、これは芳澤にとって自分を乗り越えた大きな出来事になるだろう。
ここで俺がなんの反応も示さなかったら、芳澤は占いの効果だと思うはずだ。
そうなれば、今日も御船に会いに行くに違いない。
午後になり、吉沢より先に御船に会いに行く。
すると、何やら御船が占いを構えている周辺で揉め事が起こっているらしい。
近づいて聞いてみると、
「HPTCが解散ってホントなんですか?」
「私達はどうすれば良いんですか?」
「わ、私はなにも知りません」
男と女数人が、御船を取り囲みHTPCの件について問い詰めていた。
意外と信者がいたんだな。
コイツらを退かさないと、今日の打ち合わせが出来ないため割って入ることにした。
「何事ですか?」
「君は誰だ!」
男の一人が食ってかかる。
「福来さんの知り合いですよ。それで、貴方たちは?」
取り敢えず、福来の名前を出せば大人しく話を聞く気になるだろう。
「会長は誰かに騙されたんですよね!HPTCが解散するはずないです!」
全然話を聞いてくれない。
まあ、誰でも良いか。
しかし、どうやって収めようか。
「皆さん、あの石はお持ちですか?」
やるだけやってみるか。
「あ、ああ。それがどうしたんだ」
男は懐から、ホーリーストーンを出す。
「これはね、福来さんからのメッセージなんですよ」
最近、でまかせが息をするかの如く出てくる様になってきた。
「メッセージ?」
「貴方たちはもう、そんなものに頼らなくても自分の望む未来を手に入れることができる。自分の足で歩いていける。いわば、福来先生からの貴方たちへ免許皆伝。今回のHPTC解散はそんなメッセージがあるのです」
ホーリーストーンを取り出した男に近づき、石ごしに手を握って目を合わせる。
掛ける内容は、全能感を得る。
「なんだか、なんでもできる気がしませんか?貴方はもう不安に思う事はなにもないのですよ」
男の目はギラギラと輝き、活気に満ち溢れていた。
「あ、ああ。今なら怪盗団にだって勝てそうだ」
是非やってくれ。
男はそのまま石を放っぽり出して上機嫌に走り去っていった。
「さあ、あなた方も」
各々石を取り出す。
さっきの男と同じ様に、手を握り、能力を掛ける。
教祖にでもなった気分だな。
『良いではないか。我を祀り上げさせよ』
最悪のカルト宗教だな。
ひとまず、御船の周りにいた詐欺被害者達はどこかへと行った。
能力が切れたらどうなるか分からんが。
「おい、お前の客ぐらい自分でなんとかしろよ」
「す、すいません」
御船は殊勝な態度で頭を下げる。
犯罪の片棒を担いでいる人間が真面目なことだ。
「まあいい、いつものアレについてだ。用紙は書いてきたな」
「はい...」
御船が書いた用紙を確認する。
御船が書いたことが分かればそれで十分だ。
クレカは知らないが、銀行口座は本人確認ができるものがいるだろうし、
書類だけでは意味がない。
「近いうちにまたアイツがくる。その時にこれを書かせろ。間違っても持ち帰らすなよ」
親なんかに見られて不審がられると困るし、違法性を調べられると面倒だ。
「それと、今回は翌日も来るように誘え。その時にこの石を売りつけろ」
御船と福来のカモたちが置いて行った、石を取り出す。
「私はもう福来さんとは関係ありません。そんなモノ売りたくないです...」
その方が都合が良かったのだがしょうがない。
「なら、五十万くらい吹っかけて、風俗の仕事を紹介しろ。仕事は架空のもので良い。それでお前の仕事は終わりだ」
「それで、写真を消してくれるんですね」
名義借りという、犯罪の証拠が手に入るんだ、今更写真なんてどうでも良い。
「ああ、約束しよう」
そういって、いつものように芳澤が網にかかるまで待つのだった。