1時間ほどファミレスで時間を潰した後、約束を果たすため御船の元へ蜻蛉返りする。
「おい、御船。回収しにきたぞ」
「あ、はい。これです」
御船は書類を手渡してくる。
これで、必要なものが揃ったな。
「あの後、アイツは来たか?」
「いえ、来てません。あの後どうしたんですか?」
芳澤は真っ直ぐに家へと帰ったのだろう。
俺の警戒しすぎだったか。
「家に帰るように言った、お前の所に問い詰めに行ったのかと思ったが違うみたいだな」
「そうですか。それで写真なんですけど...」
御船はこちらを伺いながら尋ねてくる。
「ああ、消してやるが、その前に俺の言う通りに念書を書いてくれ」
「またですか。分かりました、書いたらすぐに消してくださいよ」
俺はメモ用紙を一枚破って御船に渡す。
御船を縛り、芳澤を完璧に騙すために必要なモノだ。
「準備できたな。最初に事実関係証明書と書け」
「はい」
そんな事を書いたところで公正証書にはならないが心理的な圧力を加えられるだろう。
「次に、本文だ。私は、芳澤すみれに金銭を搾取する目的で接触し詐欺を働き、芳澤すみれからの金銭の受け取り及び、私文書偽造の幇助をさせた事をここに証明します。8/13 御船千早 印鑑は無いだろうから拇印にしろ」
日付を明日にしたのは、別れてすぐに取り返しに行ったより、日を改めて行った方が自然かと考えたためだ。
「これ、どうするつもりですか」
「お前が大人しくしているなら芳澤以外には公開しないさ。早く書けよ」
文字に残る犯罪の証拠よりも、自分の裸の写真が人の手にあると言う女としての尊厳を優先したのか、それ以上は何も言わずに指示通りに記入していく。
「書けましたよ」
「じゃあ、写真を消してやるよ」
御船の目の前で携帯を開き、消去するところを見せてやる。
バックアップをとっても良かったが、万が一バレた時に刺し違えることを覚悟で告発されるのを防ぐため、普通に消すことにした。
「コピーとかしてないですよね」
「してねえよ。証明のしようはないがな」
「...信じてますよ」
散々利用されておいて、信じているとはバカなことだ。
まあ、暫くは何かやらせる事はないだろう。
「分かっているとは思うが、一連のことを他言すると、お前の前書いた念書やあの申込書類も同時に警察なり顧客なりに渡すからな」
「分かっています...」
御船は少し悔しそうに返事を返す。
御船と別れ帰路につく。
後は明後日、芳澤にこれらの書類を見せるだけだ。
8/14
生徒会室へと向かうと、芳澤がすでに教室の前へ立っていた。
なにか行動しないと、落ち着かなかったのだろう。
これは、もう少し待たせた方が効果的だったか。
来ていたものはしょうがないし、挨拶もそこそこに鍵を開けて中に入る。
「あの件はどうなりましたか...」
「取り返してきてやったよ、ほら」
書類を芳澤に見せてやる。
芳澤は本当に返って来るとは思っていなかったのか、少し驚いた様な顔で書類を確認する。
「それとコレも」
「事実関係証明書?」
前に御船に書かせた、書面を見せる。
「御船の犯罪の証明だ。これでもうお前に関わることはないだろう」
「あ、ありがとうございます」
芳澤は頭を下げる。
「かなり苦労したんだからな。お前のせいで御船をHPTC繋がりで通報できなくなった。生徒会の信頼は失墜するばかりだよ」
「すいません、私、どうすれば...」
ここからが今日の勝負所だ。
俺に服従する選択は芳澤自身が選び取った風に見せかけないとならない。強制させたものだと効果も半減するだろう。
「お前が考えろよ。お前が招いたことだ」
全て俺が仕組んだのだが。
「私が、生徒会の信頼を回復できるように...」
「また、勝手な行動をするのか?その結果が今日だろうに」
望んだ選択をするまで、考えを否定して行く。
勝手な行動というのを、強調し責め立てて思考を誘導する。
「先輩の役に立てるように...」
「お前が何か役に立つのか?お前の余計な行動のせいで俺は迷惑を被ったわけだ」
芳澤の出した案を否定するたびに、泣きそうな顔を浮かべる。
許してもらうためではなく、早く助かるための思考に切り替わっていることだろう。
「全て先輩に決めてもらうようにします」
「つまり、お前は今後勝手な事をしないように、全てを俺に委ねると言うんだな」
あとひと押しだ。
ここで言い切らせる。
「はい、私は先輩の言葉に全て従います」
「分かった。良いだろう」
そういうと、芳澤はホッとしたような表情を浮かべた。
自分が全面的な服従を選んでおきながら、恐ろしい選択をしたとは全く思っていない様だった。
精神的な支配は確立された。
「俺に身を委ねるんだ」
「はい」
一応、口だけではないか試しておくか。
肩に腕を回し、かがみ込む様に顔を寄せる。
芳澤は特に抵抗せず、目を閉じた。