思考の中から復帰し、新島に視線を戻す。
「な、なにかありましたか」
「いや、なんでもない」
コイツに俺の考えを伝えるべきか?
いや、相手が統制の神側の人間だったとして、怪盗団に倒されるにしろ、逆に撃退するにしろ、両方の陣営にとって大きな隙になることだろう。
確定したわけではないしな。
もう少し情報を集めたい。
それに俺が考えつくことだ、コイツや佐倉がその内勘付くだろう。
「他のメンバーの性格なんかについても教えてくれ」
佐倉をどうにかする為の下準備として、誰が一番与し易いか知っておきたいためだ。
一呼吸置いて、新島が話し始める。
「先ずは、蓮から。知っていると思いますが、暴行事件の前歴があります。しかし実際の所は男に絡まれている女性を助けようとした結果、男に傷害の濡れ衣を着せられたそうです」
いかにもな正義漢だな。
「その後に学園へ編入して今に至ります。性格は無口ですが、我が強くマイペースといった所です」
見た目の雰囲気としてはなんとなく一致している。
流石に取り入るにしても最初からリーダーは無理だろうし、調略相手からは除外だ。
「次に、竜司。陸上部のエースでしたが、一時、顧問が鴨志田に変わった時に無理な練習をさせられ足を負傷、その後鴨志田と事件を起こし陸上部を退部しています」
周りから避けられていたのはその事件のせいか。
根っからの不良というわけではないらしい。
「性格は、直情的で曲がったことを嫌う素直な性格です」
何度か話したが同じような印象を受けた。
頭が足りないため騙しやすそうだが、足りない故の突飛な行動に足元を掬われる恐れがある。
鴨志田とも一応決着がついていることもマイナスだ。
「次は杏。日本人らしかぬ容姿のせいで周囲から距離を置かれがちでしたが、そういった物にとらわれずに自分と親しくしてくれた鈴井さんの事をとても大事にしているようです」
鈴井とはそういう出会いがあって親友と呼べるような仲になったわけか。
「性格は、天真爛漫といった感じで、感情や情緒を察する能力が高い印象です」
高巻も何度か会話の機会があったが、その時感じた印象は一度信頼を勝ち取ることが出来れば、致命的な失敗を犯さない限りは騙しやすい印象を受けた。
しかし、新島の言う通り人の感情を読み取ることに長けているのであれば、俺が思っているよりも難しいかもしれない。
「次は、祐介です。これは前に話しましたが、斑目一流斎の門下生であり、天涯孤独である彼は斑目を親代わりに育ちました」
あの長身のイケメンか。
「性格は、天才肌故か天然でマイペース。空気を読まない発言や行動が多いです。しかし、芸術に対しては真摯で、情に厚い一面もあります」
親と慕っていた人物を失い、しかもその親も実際のところ尊敬のできる行いはしていなかった。
心の傷はきっと深いことだろう。
付け入る隙はありそうだが、天才というのが気になるな。
天才の直感で何かしら、まずい局面に陥るかもしれない。
「最後にモルガナ。蓮の連れている猫です。」
そういえばいたな。
流石に会話する機会はなさそうだ。
「見た目は猫ですが本人は人であり、自分は猫ではないと否定しています。また、普通の人間はモルガナの声は聞くことが出来ず、猫の鳴き声として聞こえます。その理由は分かりませんが、パレスに入ってモルガナが喋るところを目撃した人間は現実世界でもモルガナと会話ができるようになります」
何気に重大な情報だ。
これに気づかず、モルガナの話し声に反応すれば俺は怪盗団から追求を受けることだろう。
まさかそんな罠があるとは、危なかった。
「蓮達がペルソナに目覚める前から、あの異世界について知っていたらしく先輩風をふかしていますが、仲間想いであり異世界のナビゲートをこなしています」
いつか、あの化け猫をパレマクリアが先導役と言っていたが、その通りの事をやっているらしい。
「これで全員です」
さて、誰が一番与し易いか。
今のところ、高巻、喜多川が有力だがどうするかな。
高巻はコミュニケーション能力が高そうだし、佐倉との繋がりも期待できるか?
しかし、聞いていた感じ大分キャラクターが違うしな。
取り敢えず喜多川と接触してみて考えるか。
「喜多川がよく行く所や、最近の予定は知っているか?」
「そうですね、駅で人間観察をしているとか聞いたことがあります。それと絵を公募展に応募したそうで、その絵がどこかの美術館で展示されるみたいなのでそれを見に行くと言っていました」
展示されるのは大抵入選した作品だろうから作者の名前も公表されるはずだ、東京で開催されている美術展をチェックしておくか。
喜多川祐介と同姓同名の人物が、同時に絵を応募して同時に入選するなんて事はあり得ないだろうし、調べればそのうち見つかるだろう。
「わかった、もう行っていいぞ」
新島にそう言って、今後の計画に思考を巡らす。
問題点は二つ。
美術館を特定できたとして、喜多川がいつ来るかは不明な点。
俺に芸術の素養が全くない事が二つ目だ。
前者は閉館まで張っていれば最悪大丈夫だろうが、後者は解決するのが難しい。
絵の批評なんてやったことが無いし、無知を曝け出して見当違いの批評をすれば、関心を引くどころじゃなくなる可能性がある。
かと言って、一朝一夕で養えるものでもなし、有名な絵であればネットから適当にパクることが出来たかもしれないが、喜多川の最新作な為それも叶わない。
絵を見ないことには感想を考えることも出来ないし、取り敢えず見に行くしかないか。
意外と喜多川が一番の難敵かもしれないな。
後は校長をどうするかを決めておかねばならないし、佐倉に、喜多川に、校長とより取り見取りだ。
全員爆発して消えてくれれば良いんだが。
現実はそうはいかない。
パレマクリアから見て校長の背後にいる人間は、統制の神陣営である可能性はどれくらいなのだろうか?
『背後の人物がそうかはまだ分からんが、少なくとも統制の神に選ばれた人間と繋がっているのは間違いないであろう』
やっぱりそうなのか。
『あの異世界に入れるのは特殊な能力をもった人間だけだ。廃人化とやらが異世界を通じて行われているのなら、確実に関与している』
校長の裏のさらに裏に雨宮みたいなのがいるって事か、校長を脅して情報が得れるかは微妙なとこだな。
問題もやるべき事も山積みだ。
夏休みももう終わるってのに、何でこんなに必死こいてやんなきゃならないんだか。
溜め息を呑み込みながら、学校を後にした。