9/7
修学旅行当日。
上手く怪盗団と接触できれば良いが、引率のあれやこれがある為なかなか難しいかもしれない。
そういえば、海外にもペルソナ使いっているのだろうか。
『居てもおかしくはないだろうな』
まあ、居たとしても別に何かするつもりはないのだが。
そんな事を考えながら、搭乗口に向かう。
9/8
いつのまにか眠っていたため、あっという間にハワイへと到着した。
二年生たちの引率を手伝い、後は自由時間となるが一通り仕事が終わった後には雨宮達の姿は見えなかった。
大人しく観光することにするか。
9/9
今日も雨宮達を発見することが出来なかったので、せっかくハワイまで来たのだしビーチの方まで行くことにした。
泳ぐつもりはなかったので、砂浜の方を歩いていると日陰のベンチに見知った顔を見つけた。
奥村だ。
どうやら意外にも奥村も引率としてハワイに来ていたらしい。
そこまで歩いて行き、隣へ腰を落とし話しかける。
「やあ、奥村さん。君も来てたんだね」
「えっ。ッ!」
奥村は驚いたように、俺の方へ顔を向ける。
「残念だな。せっかく海外に来たのに俺と顔を会わせるなんて」
「...」
奥村は無言で立ち上がり逃げようとしたが、そこに何人かが近づいてきた。
「あれ、副会長じゃん。じゃあ隣の人は」
「やあ、坂本くんに雨宮くん。それに喜多川くんもいるのかい。なんで?」
いや、ホントに。
わざわざハワイまで呼び寄せたのか。
班目の弟子ならなんとなく金は持っていそうだが。
「ああ、祐介はアメリカ本土に修学旅行予定だったんだけど、嵐で飛行機が着陸できなくなったとかでここに来てるんす。それよりももしかして俺たちお邪魔だった?」
奥村と話していたため余計な勘違いをさせたようだ。
「そんなのじゃないさ。ただの知り合いだよ、そろそろ自由時間も終わりだよ」
「じゃ、じゃあ私は...」
「アレッ、副会長じゃん」
去っていく奥村と入れ替わりで、新島と高巻がやってきた。
せっかく接触できたというのに自由時間ももう終わりだ。
しかし、坂本や高巻の反応を見るに雨宮は正体がバレたかもしれない事を誰にも話してはいないらしい。
新島からの報告も特に受けていない。
「じゃあ、僕はもう行くよ。遅れないようにね」
あまり長居するのも怪しまれるかと思ったので早々に退散する事にした。
修学旅行についてきたのは失敗だったか?
あまり接触できるタイミングがない。
9/10
川上からチャットが入っていた。
なんでもビーチに行かないかと言うお誘いだった。
行くのも面倒だが、行かないともっと面倒な事になりそうだ。
取り敢えず、誘いに乗ることにした。
「先生」
ビーチに向かうと、ベンチで川上が待っていたので声を掛ける。
「あっ、来たね。じゃあそこら辺散歩でもしよっか」
川上と辺りを散策する。
そこで異国の料理を食べながらビーチを眺めて雑談に興じたりなどを日が暮れるまで付き合った。
「何年ぶりだろ、こういうの綺麗って思えたの」
ベンチに二人寄り添って座り、沈んでいくハワイの夕陽を眺める。
「ハワイって初めて来たけど、良いね。今度、二人で来ようよ」
「そうですね」
川上に適当な返事を返しながらも、頭の中にあるのは怪盗団の事だった。
そういえば、佐倉のペルソナについて情報がないな。
「これ、あげる」
そういって、川上はハワイアンレイの指輪を渡してきた。
「今日の記念にね。どう?」
「綺麗ですね。嬉しいです」
川上は何か問題を抱えているっぽかった。
それが他人由来のものならば、怪盗団に改心を頼み佐倉のペルソナの情報を集めれるのではないか。
「そろそろ暗くなりそう。戻ろうか」
「先生。先生は何かお金に困るような事があったんですか?」
「え?どういうこと」
川上は少し驚いたような顔をして聞き返す。
「水族館に行った日、電話の内容聞こえちゃったんです。時給がどうとかって。教員プラスアルバイトをしなきゃいけないぐらい困ってるんですか?」
「大丈夫よ!貴方が心配することなんて何もないわ」
川上は明るく振る舞っているが、何か問題があるのは明らかだった。
この問答に時間を掛けるのも面倒だったので丸喜の能力を使う事にする。
目を合わせ能力を掛ける。
「本当のことを言って下さい」
「実は、昔担任してた子が亡くなっちゃって。その子ね、ご両親が亡くなってから親戚に引き取られたんだけど、生活費は出してもらえなかったみたいで、生活費のためにずーとバイトしてて、中々学校に来れなかったの。」
川上はポツポツと話し出した。
「でも勉強する気はあったみたいで、私その子の為に個人授業をする事にしたの。プリントとか作って、何度か授業して、そしたらその子の成績も上がってきたんだ」
「でもね、特定の個人に肩入れするのはおかしいって。それで変な噂が立って校長室へ呼び出し。このまま個人授業を続けるなら辞めてもらうって言われたの」
「それで、どうしたんですか」
「それで私、個人授業の約束の日、ドタキャンしたんだ。そしたらあの子は配達のバイト入れててさ。よりにもよって忙しない年の瀬。しかもその日は夕方から大雨で。あの子交通事故に巻き込まれてなくなっちゃった」
それを出汁に脅されたのか。
「電話で断り入れたときね、すっごい落ち込んでた。でも急なシフト頼まれたなんて私に気を遣ってくれて。もし私が約束を守っていたら...事故当時、彼は相当疲れてたんだ。きついバイトに、個人授業」
「それを見抜けなかった私の管理能力不足。彼の保護者にはそう言われたわ。教育委員会やマスコミに訴えるぞって。それで謝礼金って形で保護者の方に訴えをやめてもらったの」
それが今でも続いているという訳か。
「先生はそれで納得しているんですか」
「それが私にできる唯一の償いだから」
「僕の親だって、生活費ぐらいは振り込んでくれますよ。高校生に無理をさせて生活費を稼がせて、死んだら強請に利用する。きっとその保護者なんて彼の事なんとも思っていないんじゃないんですか」
実際そういうことだろう。
そいつらが死ぬまでタカられ続けるだけだ。
怪盗団の目的にも合致する。
「だとしても、悪いのは逃げた私」
「その人の名前を教えて下さい」
「何?怪盗団にでも頼もうっての。義父の方が鷹瀬敏夫さん。義母の方が秀美さんよ」
川上は呆れたような、諦めたような笑いを浮かべながら答えた。
名前は手に入った、後は怪盗団を利用するだけだ。
いつ伝えるのが都合が良いかな。
そんな事を考えながらビーチを後にした。