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朝起床し、キッチンのほうへと出ると新島が座り込んでいたためぎょっとした。
そういえば俺が連れてきたんだった。
「お、おはようございます」
こんな時にも挨拶をしてくるのか、まじめを通りこしてアホなんじゃないか。
「俺は朝まで立っておけと言ったはずだが」
新島の髪をつかみ上げ、引きずり倒す。
「す、すいません」
「俺が学校から帰るまでの間そこに立っておけ、罰として今日は水と食事なしだ」
俺が支度している間も新島はジッと立ちすくんでいた。
学校に行く前に奥村に連絡しておく。
待ち合わせはいつもの屋上だ。
学校に到着し、屋上でしばらく待っていると奥村が現れた。
当たり前だが、表情は暗い。
そのうえ、いつにもまして俺に対して怯えた態度を見せている。
何か感じるものがあるのかもしれない。
「何の用ですか」
「お前の父親の改心は無事終わったのか?」
実際のところ少し気になっていた。
成功してようが失敗してようがどちらでも構わないが、俺の怪盗団への対応も情報があれば少しやりやすくなる。
「なんで、あなたがそのことを...」
「そりゃあ、お前のペルソナを奪ったのは俺だからな」
「ど、どういうこと」
奥村は動揺して、俺の言葉が吞み込めていないらしい。
「だから、お前や佐倉のペルソナを奪ったのも、新島がどこかへと消えたのも、俺がやったことなんだよ」
バッグからあの時のマスクを取り出し、目の前でひらひらとさせる。
奥村は震え、絶句している。
俺はそんな奥村の肩に手を置いて語りかける。
「わかるだろう。お前はもう俺に逆らえない」
「...」
奥村は震えるばかりで、言葉を発せないでいる。
「まあ、安心しろよ、新島は死んじゃいない」
「ほ、ほんとですか」
出会ってから大してたっていないが、絆は育まれていたらしい。
さすがは怪盗団、陽の気が溢れている。
「そんなに新島が心配なら、わかってるだろう。お前にやってもらうことがある」
「何をやればいいんですか...」
よし、奥村も問題なく奴隷に変えられそうだ。
「怪盗団のスパイだよ。怪盗団の情報を流してもらう」
「...わかりました」
奥村は暗い表情だが、了承した。
まずは、奥村父の改心の成否だ。
「それで、お前の父親の改心はどうなったんだ」
「私は初めてなのでよくわかりませんが、オタカラは盗めたみたいなので成功だろうとほかのみんなは言っています」
とりあえずは成功したらしい。
これで奥村父の口から黒幕、黒い仮面の男の正体について言及があればそいつにすべて擦り付けて逃げ切る。
「そうか。佐倉の様子はどうだ」
「気を落としているようですが、怪盗団の集まりには顔を出しています」
それなら接触する機会はあるか。
「怪盗団はどこに集まってるんだ」
「双葉の叔父さんが経営してる喫茶店の二階に集まっています」
そこは前から変わっていないらしい。
それなら何とか接触できそうだ。
「今日のところはもういい、行っていいぞ」
「はい...」
佐倉との接触はできるだけ早いほうが良いが、奥村父のパレスを攻略した今集まる機会は少ないかもしれない。
放課後帰り支度を整えていると、三年の教室にわざわざやってきた雨宮に話しかけられる。
「新島は来ているか?」
「いや、今日は来ていないようだけど。新島さんに何か用かい?」
新島の生存確認か。
雨宮の様子から俺がやった事だとは勘づいていなそうだ。
「それだけわかれば大丈夫だ」
「そうかい。じゃあ僕は帰るよ、じゃあね」
「ああ」
教室を後にして、帰路につく。
佐倉とどうやって接触するか。
一番簡単なのは怪盗団が集合しているときに、喫茶店に押しかけるのが一番だが、集合がいつになるかは分からない。
二階に集合を使っているそうだし、始めから喫茶店にいないといけないので、突発的な号令だとしたら難しい。
何か良い手段はないだろうか。
対面しなくても、大丈夫だったりしないのだろうか?
それなら、奥村から連絡先を手に入れれば良い。
『叛逆の意志が無くなった人間だ、それで事足りる可能性は高いだろう』
しかし、逆に手がかりを与えてしまう可能性もある。
奥村の場合はマスクを見せつけ、ある程度俺が犯人であると確証が持てる状態だった。
ビデオ通話ならどうだろう。
マスクと喪服の姿で通話すれば犯人だと分かるはずだ。
よし、それで行こう。
自宅に到着すると、新島は朝から全く同じ所へ立っていた。
カメラで確認していたので分かっていたことだが。
一日飲まず食わずで立っていたため、新島の顔には消耗がみえる。
足の方も負担がかかり、かなりむくんでいる。
適当に命令したが、抵抗出来なくするために一日中立たせるのはかなり有効な策かもしれない。
ペルソナを奪ったため大丈夫だろうが、念の為逃げ出せない状態にしておきたい。
叛逆心は無いかもしれないが、恐怖やら何かしらの感情の動きで逃げられると困る。
「座っていいぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
この後はどうするかな。
ずっと立たせておくと骨折とかするのだろうか。
そんな事を考えていると新島がおずおずと、喋り始めた。
「す、すいません。お手洗いに...」
そういえば、朝から動いていないからトイレも行けてないな。
漏らされると困るし、しょうがない。
それに風呂やらも入れないといけないか。
「許可しよう。それとシャワーも浴びてこい。ただし、脱衣の時間を含めて15分だけだ」
「あ、ありがとうございます...」
新島が脱衣所に入ったところから携帯のタイマーで測定を始める。
刑務所の入浴時間は15分らしいし、ろくに体は洗えないだろうな。
タイムオーバーで何か適当な罰を与えよう。
結局新島が出てきたのは、18分くらいした後だった。
「3分のタイムオーバーだ」
「すいません」
新島は髪から水をしたらせ頭を下げる。
罰は何が良いかな。
「蹲踞の姿勢って分かるか。剣道とか相撲とかでやる奴」
「はい...」
「3分のタイムオーバーだから、3時間その姿勢を維持しておけ」
新島は爪先立ちでしゃがみ蹲踞の姿勢をとる。
俺はそんな新島を背に部屋へと戻っていった。