10/16
午後に佐倉からチャットが入った。
怪盗団で集まって情報交換した際の音声データだった。
おそらく盗聴したのだろう。
後に、奥村からも何が話し合われたかの詳細がメッセージで届き、それと照らし合わせた結果、大した差異はなかったため信用できる情報のはずだ。
掻い摘んでまとめると、お願いランキングを調べた結果、不正に票が操作された形跡が見られた。
更には、不正アクセスの犯人が使ったコードは佐倉が撃退したメジエドメンバーが使用していたコードとクセが似ており、同一人物の可能性が高い。
そして、そのコードは他からの切り貼りが多く、一貫性がないため、クラッキングの専門家ではなく、正式なメジエドではない可能性が高い。
以上のことを報告したらしい。
その結果、怪盗団は概ね俺と同じ結論を出したようだ。
すなわち、メジエドを名乗る人物は何者かに指示をされており、その目的は怪盗団の注目度を上げること。
その後、お願いランキングを操作し、奥村邦和を改心するように仕向けた。
そして奥村邦和は、記者会見中に殺され、怪盗団の名声を落とすことに利用された。
なお、やはり黒い仮面の男は二人いるのではないか、という話も議題に上がっていた。
佐倉の母親、そして奥村邦和を殺したのが、黒い仮面の男、ペルソナを奪い、新島を誘拐したのが、もう一人の黒い仮面の男とされている。
今のところは、共謀している説、お互いの事を知らなかった説、実は二人いると思わせるのが狙いで実際は一人説、など色々な予想が立てられており俺に辿り着きそうな動きは見られない。
結局のところ、怪盗団はこの会議で反撃を加える有効な手段は考え付かなかった。
俺も手詰まり、怪盗団も手詰まりとくれば、相手の動きを待つしかないのか。
10/17
今日から期末試験だ。
だというのに、生徒会の仕事はまだ残っている。
教師から学園祭の中止や日程変更もありえる、と言われながらも、可能性の段階で仕事を止める訳にはいかず、メンバーのモチベーションも上がらないまま、ダラダラとやってきたため、いまだに手付かずの仕事が残っている。
その際たるものが、学園祭に呼んでほしい人のアンケートだった。
すでに、投票用紙は回収しているが、集計が終わっていない。
集計が終わったところで、中止や日程変更があり得る段階でオファーなどできるはずもなく、散々後回しにされていたが、そろそろやっておかなければならない。
他の生徒会メンバーはテスト期間中なので普通に帰宅しており、できるのは俺一人だった。
新島だったら、こうはならなかったんだろうな、と思いつつ生徒会室にきたがどうにもやる気が出ない。
別のことを考えよう。
考えるのは当然、怪盗団のことになる。
雨宮にそろそろ接触しておかなければ、怪しまれるか?
雨宮が怪盗なのは知っているし、奥村邦和が死んだ件に関してと、新島が学校に来ていない件の事情を聞いておかなければいけない。
大して新しい情報もないだろうが、やっておくか。
まだ教室に残っていると良いが。
雨宮の教室に向かうと、運良くまだ例の三人で話し込んでいた。
雨宮一人の方が都合が良いがまあしょうがない。
「雨宮君、今時間あるかい?」
教室に入り、雨宮に声をかける。
いきなり声をかけたせいか、三人は少し驚いたようだった。
色々敏感になっているんだろう。
「ああ、大丈夫だ」
三人で顔を見合わせて、何言か交わした後了承の返事がかえってきた。
「それなら良かったよ。生徒会室に行こう」
雨宮を生徒会室に入れ、わかりきった尋問を始める。
「奥村社長の件、怪盗団がやったのかい?」
「無実だ。怪盗団は人を殺さない」
雨宮は短く、はっきりと返す。
俺が新島を誘拐したことや、ペルソナを奪ったこと、怪盗団メンバーやその他の人間をレイプした事を告白しても殺さないでくれるのだろうか。
「まあ、そうだろうね。最近新島さんが学校に来ていないけど、それとの関連は?」
「ただの風邪じゃないか?」
そこは誤魔化してくるか。
まあ、行方不定とはなかなか言いづらいだろうな。
『扉の外、ペルソナ使いの反応がある』
パレマクリアが、ペルソナ使いの反応を感じ取った。
おそらく、坂本と高巻だろう。
気になって聞き耳でも立てているんだろう。
「本当にそうかな?君は新島さんが学校に来なくなった初日から僕に、新島さんが学校に来ているか聞いてきたね。何か事情があるんじゃない?」
「それは...」
「隠す必要なんてないのに。大方、怪盗団関連の何かに巻き込まれたんだろう。それで、生きてるの?」
「ああ、生きてる」
それも嘘だろう。
確証なんてないはずだ。
「まあ、生きてるんだったらこれ以上は訊かないよ」
「心配する必要はない。必ず戻ってくる」
雨宮は自分に言い聞かせるように、力強く答えた。
「ところで、今生徒会は新島さんの開けた穴をなんとか塞ごうと努力してるんだけど、どうにも難しくてね」
喋りながら、扉の前まで移動する。
「ボランティアを募集しているんだけど、どうかな」
「悪いが、今は...」
扉に手をかけ、勢いよく開く。
そこにはやはり聞き耳を立てる、坂本と高巻がいた。
「やあ、聞き耳は感心しないな、お二人さん。生徒会に何かようかい、ボランティアなら歓迎するよ」
「あ、あはは」
こうして、俺は都合の良い労働力を確保することに成功した。