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いよいよ、警察からの事情聴取が始まる。
出席番号順に教師に促され、警察が待つ空き教室に向かっては帰って来てを繰り返し、徐々に俺の番へと近づいてくる。
一人一人の行って、帰ってきての時間を測ってみると、平均でだいたい5分程だった。
全校生徒の聴取をする訳だから、そこまで時間はかけられないか。
とはいえ、5分ほどの聴取で何かわかるのだろうか。
それとも、既に怪盗団に目星はつけているとか、はたまた、警察すらこんな事をやっても無駄だと思っているのか。
そんな事を考えていると俺の番が来たようで、警察が待つ教室に向かう。
ドアを開け、中に入ると二人の警官がいた。
一人は、温和な顔立ち、もう一人は、少し強面の警官で対照的な二人だった。
温和な顔をした警官は椅子に座り、机の上にノートを広げており、記録を付ける係なのだと伺える。
強面の方は、生徒用に出された椅子の斜め後ろ辺りに仁王立ちしている。
プレッシャーを与える係なのだろうか。
「悪いね、すぐ済むから。君は、生徒会の副会長をやってるんだってね」
警官に促されるままに、椅子に座るといよいよ聴取が始まった。
口ぶりからして生徒の情報は既に手に入れているらしい。
「同じ生徒会の新島さんとは仲が良いのかな?」
「特別仲が良いわけじゃないですよ。生徒会のメンバーというだけですね」
警察は新島の事をどう思っているんだ。
ただの家出か、怪盗団関連か。
「彼女、最近学校に来ていませんけど、何か怪盗団に関係があるんですか?」
思い切って質問してみた。
誤魔化されるのが関の山だろうが、少しでも情報が欲しい。
「残念だけど、それは答えられないことになってるんだ。プライバシーとかあるしね」
丸喜の能力でも使うか?
いや、相手は二人だ、リスクが大きい。
「そうですか。すいません」
「いや、良いんだよ。気になるのは当然さ」
それから、幾つか質問をされ、それに答えただけで終わりの流れとなった。
質問も新島の失踪に関わる事は聞かれず、特に取り繕う必要もなかった。
なんとも拍子抜けだ。
「じゃあ、最後に一つ。怪盗団はこの学園の関係者だと思う?」
「鴨志田先生や校長先生の件もありますし、そうなんじゃないでしょうか」
警察は怪盗団を捕まえるつもりはあるのだろうか。
取り敢えずは、俺は容疑者から外れてそうな気がするし、後は奥村や佐倉から聞き出せば良いか。
どうせ、この後情報共有で集まるだろうし。
「ありがとう、参考になったよ。じゃあ、次の人呼んできてくれるかな」
新島のことは心残りだが、山場は超えた。
山場というほどのものでもなかったが。
日も暮れ、外から街灯の明かりが部屋に入ってくるようになった頃、佐倉から、音声データが送られてきた。
それを、再生してみると、怪盗団の会議の音声だった。
聞いていくと、やはり今日の話題に上がったのは、警察からの事情聴取の件だった。
各々、質問の内容を共有していく。
そこで驚いたのは、雨宮達の校内の交友関係だけではなく、喜多川についても警察は掴んでいたらしい。
明らかに、雨宮達は疑われている。
そうなると、新島も怪盗団関係と思われているだろう。
俺も気が抜けないな。
その後は、より一層気をつけて行動するように、とまとめられ解散となった。
新島をいっそ殺した方が楽かもしれないな、パレスやメメントスで殺すにしろ外へ連れ出さなければならない。
監視カメラに捕捉されれば、当然、隣には俺が写ってしまう。
そうなると、殺すのは現実的ではないか。
などと、物騒なことを考えていると、今度は奥村からチャットが届いた。
今日の議事録だろうな。
佐倉の盗聴データと食い違いがないか、確かめておく。
そこで、高巻の事を思い出す。
そういえば、あの後立ち直れたのだろうか。
佐倉の音声データでは、普段通りと言った感じだったが、奥村の意見も聞いておこう。
『高巻の様子はどうだ』
『杏ですか?そういえば、最近少し、何かに悩んでいるようでしたが』
『今日の様子は?』
『普段の杏に戻ったという感じでしたが』
普段に戻ったか、どうとでも取れそうだな。
やはり、自分で確認するしかないか。
明日にでも、接触して状態を確認しておこう。
高巻が折れているようなら、怪盗団はここで潰して雨宮からペルソナを奪う。
折れていないようなら、影から怪盗団に協力してやり黒い仮面の男を見つけ出し、ペルソナを奪う。
ついでに、オクムラフーズについても聞いておくか。
『オクムラフーズはどうするつもりだ』
『まだ、決めかねてます』
株価は少し落ちているが、社長が怪盗団に暗殺された事が影響して、致命傷にはなっていない。
今、株を全て手放せば、一生遊んで暮らせるだろうにそれをしないのは、オクムラフーズに未練があるからか、それとも金に興味がないのか。
『早く答えを出せ、お前にはその内やってもらうことがある』
俺と簡単に接触できて、かつ俺と話しをしててもあまり怪しまれない内通者は貴重だ。
今後も重用するだろう。
そのためにも、出来れば株は手放してオクムラフーズとは関係を切ってもらいたい所だ。
『分かっています』
本当にわかっているのか?
警察も迫っている、そして黒い仮面の男とも決戦が近いだろう。
明らかに、身動きが取りにくい状況なはずだ。
それは、怪盗団にとっても内通している俺にとっても弱点だ。
答えを出さないようなら、近々無理矢理にでも株を手放さそう。
奥村は今、失いたくない肉親がおらず追い詰めすぎると、自殺でもするのではないかと思い、余り追い込むようなことはしなかったが状況が状況だ。
今月中には、決めさせよう。