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放課後、高巻を見つけ生徒会室に連れ出す。
高巻の方も、以前の相談繋がりだろうと納得したのか、特に理由は聞かれなった。
二人向かい合って座り、話を切り出す。
「鈴井さんには会えたかい?」
「はい、あの後病院に行って、志帆に会いに行きました。でも...、直接は話せませんでした。私、自分が情けなくって...」
「それはどうして?」
話の流れ的に立ち直ってるっぽいな。
それだけ分かれば、もう十分なんだがな。
どうせ、リハビリしてる親友の様子に心が奮い立った的なアレだろう。
「ちょうど、リバビリをしてたんです。志帆、汗だくになりながら、歯を食いしばって、一歩踏み出すのすら辛そうだった」
やっぱりそういう系か。
「そんな志帆を見てたら、立ち止まってる私が恥ずかしくて、顔も合わせず出て行っちゃいました。志帆だって、辛くても前に進んでる。なら私だって、何があっても前に進まなくちゃ、そうじゃなきゃ、志帆の親友なんて名乗れない」
「心は決まったわけだ」
「はい!」
だいぶマシな顔付きになった。
きっと、高巻も怪盗団も暫くは大丈夫だろう。
これで、こちらも腹を決めれた、俺は黒い仮面の男を叩き潰す。
「副会長、ありがとうございました。あの日、背中を押してくれなきゃまだウジウジ悩んでたと思います」
高巻は、椅子から立ち上がり俺の方へ深く頭を下げた。
本気で感謝しているらしい、哀れなことだ。
勝つか負けるかの指標に使われただけなのに。
「別にいいさ。何せ、新島さんが戻るまでは僕が生徒会のトップだ。生徒の相談を聞くのなんて、お安いごようさ。新島さんがそうしたようにね」
「真は私達が必ず連れ戻します。戻ってきたら、一緒にお祝いしましょう。復帰記念って事で」
「引き継ぎもなしに、何処かへ行くなんて小言の一つでも言おうと思ってたけど、それもいいね」
そう言って、高巻を生徒会室から送り出した後、次は奥村へと連絡する。
相続問題にケリをつけさせよう。
『生徒会室へ来るように』
そうチャットを送った5分後くらいに、奥村は生徒会室へと現れた。
「何か用ですか?」
なんだか、久しぶりに顔を合わせたような気がするな。
忌引きで休んでいたし、しょうがないことだが。
俺は奥村を立たせたまま、尋問を始めた。
「お前の相続について、答えを出させようと思ってな。どうだ、どうするかは決まったか?」
「私は...」
奥村の様子から、まだ迷っていることが伺える。
しょうがない、無理矢理決めさせるか。
「じゃあ、俺が決めてやる。株を会社に買い取らせろ、良いな」
「無理です...、いきなり、そんな...」
「お前が早く決めないからだろう」
「もう少し、時間をください...」
会社の経営権を放棄するも、しないもそこまで思い悩むことだろうか。
コイツが経営権を持っていても、会社に良いことなんてないだろう。
何か別の問題があるのか?
「なんで、そこまで悩む必要があるんだ。父親の後をついで、社長にでもなりたいのか?」
「会社にとって、私にとって何が一番良い選択なのか分からなくなって...弁護士さんや会社の役員の人に相談しても、皆んなお金を見てるだけで私を騙そうとしてるんじゃないかって思えて、信じられないんです」
人間不信の一端は俺にも責任があるような気もするが、本当にそれだけか?
人が信じられないなら、適当に売っ払って無関係になれば良い、他の事情があるんじゃないか。
「本当にそれだけか?それなら俺が指示してやるよ。全部売れってな」
「...。婚約者がいるんです...」
本当に俺のような庶民とは住む世界が違うんだろうな。
高校生で婚約者って、少女漫画の主人公かよ。
「お父様が、政界に入るための関係作りとして縁談が進められていました。相手はある議員の子息で、こちらは政界入りのため、あちらは資金援助を求めてのいわゆる政略結婚です」
まだあるもんなんだな、そういうの。
黙って続きを促す。
「お父様と向こうの間で契約書が交わされていたらしく、向こうが言うには、破談すると莫大な賠償を請求されると、それに、会社としても政治家との繋がりを持つのは喜ばれるようで、役員の何人かに結婚を急かされています」
なるほどな。
株を手放すと、自分の立場が弱くなってその議員にも全く対抗できなくなるのか。
当然、そこそこの規模の会社なので派閥があるだろう。
株を手放せば、政治家の介入を良く思わない派閥や対抗する派閥に対しての影響力を失う、そうなると、奥村は口調からして望んでない結婚を強いられるわけだ。
大人しく結婚しとけよ、めんどくさいなぁ。
レイプされてんだから、今更別にいいだろ。
だいたい、契約書にそこまでの効力はあるのか?
本人以外が交わした、婚約の契約書なんて成立するのだろうか。
確かに契約者が未成年の場合、保護者が法定代理人として契約することもあるだろうが、勝手な婚姻を進めるのは明らかに親権の濫用だ。
「その契約書の写しなり、原本はあるのか?」
「分かりません。契約書があるとは言われたのですが、書面までは...」
少し怪しいな。
子供だと舐められているんじゃないのか。
「書類にサインした覚えは?それから、縁談があったのはいつだ?」
「サインはしていないはずです...。紹介を受けたのは、確か高2の冬ごろだったと思います」
ずいぶん最近だな。
ただ、自分のサインがないなら無効にできるんじゃないか。
「お前、多分騙されてるぞ。さっさと、株を手放せ」
「貴方になんで、そんな事が分かるんですか?何も知らないのに...」
「じゃあ、そいつに写しでもなんでも良いから契約書を持って来させろ。それを弁護士でも公証人でも、法律家に判断してもらえ」
結婚を強制させるのは無理だろうが、婚約の強制となると、どうなるんだろうか。
まあ、本当に有効だったとしても、俺の知るところではないが。
「そもそも、契約書は万能じゃない。結婚を強制するような人権を無視したことはできんさ。いいから俺の言うとおりにしろ」
「それでも...」
あと一押しな気がするが、意外と粘るな。
新島より従順さが足りないような気がする。
気のせいか?
『叛逆の精神を奪っただけ故、お前に心から屈服したわけでは無い。ペルソナを元より持っていない人間も同じであろう』
心からの屈服、ね。
そういえば、確かに新島とは直接対決したし、ペルソナが喰われる様子もしっかりと見ていた。
一度、心を折る必要があるのか。
『言わば、奥村はペルソナを失いただの人間になった訳だ。お前も官憲や教師に偉そうに上からモノを言われれば、多少なりとも腹が立ち文句の一つも言いたくなるだろう。これが、今の奥村の状況だ。奥村にとってお前は悪徳な官憲のようなモノというわけだな』
ふむ。
逆らえば、絶大な不利益が待っているため逆らわない。
しかし、従った事で負うことになる不利益と競合すれば、ある程度の抵抗があるわけか。
『翻って、新島はお前を完全に恐怖の象徴として見ている。直接手を下し、心を折ったことは勿論だが、意にそぐわぬことをすれば、命の危険や、家族への攻撃が待っていると認識しているからだ。奥村にとって官憲なら、新島にとっては機嫌を損ねれば殺される凶賊と言った所であろう』
新島にとっては逆らったら、家族揃って即殺害の可能性があるため逆らえない。
奥村にとっては、多少逆らう余地があるわけか。
どうすれば良い?
『恐怖を刻みつければ良い。体にも心にもな』
拷問でもしろって事か。
実は前から少し興味はあったんだよな。
家で新島にする訳には行かなかったし、ちょうど良い。
「屋上へ行くぞ」
「へっ?」
さっきまで、黙り込んでいた俺が突拍子もない事を言ったため奥村はキョトンとした顔をしていた。
「いいから、早く行け。俺は少し準備がある、先に行け」
「は、はい...」
奥村は少し不思議そうにしながらも、部屋の外へ出て行った。
さて、さっさと準備を済ませますか。
さっき迄の、面倒な問答で鬱屈としていた心は何処かへ飛び去り、俺は遠足前の子供のようにワクワクしていた。