準備した物を携え、屋上へ向かう。
ドアを開けると、不安そうな面持ちで奥村が待っていた。
「待たせたな」
「いえ...」
俺は、準備してきたものを放置された机へと並べていく。
結束バンド、タオル数枚、小型のマイナスドライバー、ラジオペンチ、アルコールタオル、ガーゼ。
「な、なんですかそれ...」
並べていくものに、不穏なものを感じたのか奥村は、怯えたように俺に尋ねてくる。
しかし俺は、それを無視して作業を進めることにした。
その方が、恐怖を煽れるだろう。
「手を後ろで組め」
手を結束バンドで縛ろうとすると、奥村はさらに怯え始めた。
「な、何をするんですか?や、やめて下さい」
本能的に何かとてつもなく嫌な事が起こることを察したのか、奥村は俺の手を振り解こうと少し抵抗する。
業を煮やした俺は、ちょうど良い方法に思い至る。
『ティモリス』
思えば、遺産のこともコレで解決できたような気がするが、まあ良い。
今後のことを考えれば必要なことだ。
効果は絶大で、奥村は生まれたての子鹿のように足を震わせながら、地面へ尻をつけた。
瞳からは涙がこぼれ、震えは足から全身へと伝播していった。
手を後ろ手に縛り、自由を奪った俺は、次に奥村の口に丸めたタオルを詰め込んだ。
その上から更にタオルをマスクのように巻いていく。
コレで、悲鳴も多少マシになるだろう。
次は、奥村の靴とタイツを脱がせていく。
箱入り娘だけあって、真っ白で綺麗な足が露わになった。
マイナスドライバーを手に取って、一応アルコールタオルで気持ちだけの消毒をしておく。
その後、座った状態で片足だけを立て、奥村の左足を俺の膝の上に載せる。
緊張と恐怖のせいか奥村は細かく震え、足は汗でじっとりと湿っていた。
「どこの指が良い?」
「んー、んー」
奥村の足の甲を手で抑えながらそう問いかけると、コレから起こることを察したのか奥村は顔を青くして首を激しく横に振り、足をジタバタとさせた。
このまま暴れられると、やりにくいため体勢を変え、奥村の右足に座り込んで体重をかけ、左足は俺が足で上から押さえ込んで固定する。
「じゃあ、やりやすそうだし親指から行くか」
「んーっ!んーっ!」
尚も体を捩るが、手も使えず、足も固定されたため大した意味はなかった。
ゆっくりと、左足の親指の爪と肉の間にドライバーを差し込んでいく。
最初はやや抵抗があったが、一度隙間へ入り込むと魚の切り身に包丁を入れるような柔らかい感触の後、ドライバーの先端が爪に接触した。
「んーっ、んっー」
相当な痛みがあるのか、奥村は唯一自由な頭を振り乱し、声にならない悲鳴を上げている。
ドライバーを更に奥へと差し込むと、爪と肉が剥離しボコボコと爪に隆起の後を付けていく。
剥離された肉からは鮮血が溢れ、内側から奥村の爪をマニキュアのように真っ赤に染め上げ、ドライバーを伝い俺の手へと滴った。
「んんっー!んーっ!」
ドライバーはやがて爪の根本、白い半円がある所まで到達した。
もうドライバーから手を離しても爪から離れず、ブラブラと揺れて、血液を滴らせていた。
「どうだ、株を手放す気になったか?」
そう問いかけると、汗と涙を撒き散らしながらブンブンと首を縦に振った。
「俺に服従するか?なんでも俺の指図を聞くか?」
奥村は、先程と同じように激しく首を上下させた。
汗、涙、苦痛でぐちゃぐちゃになった顔からは、俺への恐怖が伺えた。
「じゃあ、一枚剥ぐだけで勘弁してやるよ」
「んーっ!んー」
そういうと、約束が違うとばかりに激しく身を捩らせた。
ドライバーが刺さったままの、足を持ち上げて俺の膝へと乗せる。
足を動かすと、ドライバーが爪の内側で動き回り痛いのか、足に関してはあまり抵抗がなかった。
「ほら、あんまり暴れると全部の指から剥がすぞ」
そう言って、刺さったドライバーを爪を浮かすように、徐々に徐々に下へと下げていく。
ベリベリと爪と肉が剥離し、溢れ出す鮮血の量と奥村の悲鳴だけが増えていった。
やがて、爪の先端が5ミリ程浮いた所で、バキッという音と共にドライバーが爪を貫通した。
剥がし切る前に爪の方が限界を迎えたようだ。
ドライバーは奥村の爪の中心辺りに穴を開け、そこからドライバーが顔を覗かせていた。
「見ろよ、お前の爪。面白いことになってるぞ」
奥村は痛みに喘ぐだけで、大した反応を返すことはなかった。
抵抗する気力も無いようで、グッタリとして呻いているばかりだった。
これ幸いと、奥村をそのままの状態にして、机の上からラジオペンチをとって、アルコールで消毒する。
爪を貫通したままのドライバーを使って、爪の間にペンチを入れ込む隙間を作り、そこに噛み込ませた。
「そら、行くぞ」
ペンチに力をこめ、爪を捲り上げるようにして剥がしていく。
ベキベキとペンチに噛み込んだ爪が砕ける音がして、奥村の爪はドライバーの時とは比較にならないぐらい浮き上がった。
「んーっ!!、っー!」
「ほら、ひっひっふー、だ、ひっひっふー」
爪が1センチ近く浮き上がった所で、ベキっという音と共に完全に肉と剥離し、根元のあたりから90度折れ曲がった。
折れ曲がった爪を、なかなか取れないコンセントのように、ペンチで掴み上げ上下に揺らしながら引っ張ると、音もなく分離した。
「見てみろ、初めてにしては綺麗に取れたと思わないか?」
ペンチで掴んだ爪を、奥村の目の前で誇るようにヒラヒラとさせると、奥村は呆然とした目でそれを追った。
それはただただ、目の前にあるものを反射として追っているだけで意思があるようには思えなかった。
「爪を剥ぐのって案外難しいもんだな。一枚剥ぐのだけでも結構時間がかかった」
誰に聞かせるでもなく、そう独りごち、奥村の拘束を解いていき、工具類の血を拭き取り回収していく。
そのうちに、奥村は正気を取り戻したようで、また嗚咽の声をあげていた。
「ガーゼとアルコールタオルは用意してやったから適当に手当てして帰れ。血はそのタオルで拭いて持って帰って捨てろ。後は、そうだな、爪の事は重いものを落としたとでも言い訳しとけ」
爪を剥がした後の奥村に興味を失った俺は、泣きじゃくる奥村にそう言葉をかけながら、必要なものを投げつけ屋上を後にした。
これで、奥村は俺に対して従順になるだろう。
爪を剥がせて、ストレス発散にもなったし今日は良く眠れそうだ。