10/23
午後に佐倉から、音声データが届いた。
いつものように、怪盗団の会議の盗聴音声のようだった。
今日の議題は、新島の姉という情報源を失った今、どうやって警察や黒い仮面の男の動きをつかむかと言った事だった。
候補に上がったのは二つ。
一つは、警察関係者と接触し情報を得る。
二つは、明智吾郎を学園祭に呼び、そこから情報を得る。
両方とも無謀に思えるが、警察関係者との縁は父親が不審死した事もあり、奥村が矢面に立ち情報を集める。
明智に関しては、何故か雨宮が連絡先を知っているらしく明智がオファーを受けてくれれば、という事らしい。
相変わらず、意味のわからない人脈だが本人なのは確かだそうだ。
俺としては、後ろにいる俺との繋がりを知られる可能性を下げたい為、奥村にはあまり警察には接触して欲しくない。
逆に明智を学園祭に呼ぶことは、教師や生徒からの俺の評価に繋がるため手離しで歓迎できる。
今日の会議では、結局どうするかは決まらなかったようなので、佐倉に明智を呼ぶようにプッシュを掛けさせることにした。
『明智を学校に呼ぶように誘導しろ。返信不要』
佐倉と会話すると、知らない所で情報を抜かれそうな為、あまり会話をしないように心がける。
逆らえはしないだろうが、無駄な情報を与えないに越したことはない。
同じようなメールを奥村にも送っておく。
そういえば佐倉に関しても、奥村同様に何か強い恐怖を与えなければならないな。
奥村は爪を剥いだし、佐倉には指を折るみたいな事をやってみたいが、流石に骨折させると病院行きだろうしな。
何か簡単で、俺の嗜虐心を満たせる良い方法はないだろうか。
『殴って犯せば良い』
パレマクリアがお決まりのセリフを吐く。
確かにそれが一番手慣れた方法ではあるのだが。
あんまり顔を殴るわけにもいかないので、痛みの面で言えば微妙な気がする。
レイプに関しては例え佐倉が経験豊富のヤリマンビッチでもある程度の衝撃と恐怖は保証できそうだ。
ただ写真を撮って脅す訳にもいかないしな、アイツは情報戦のプロだし写真を流した後どんな目に遭うか分からん。
それで言えば、レイプは抑止力にはならないかもしれない。
人質を取っているとはいえ人間所詮、自分が一番可愛いもんだろうし、特に佐倉の場合は血が繋がっていない。
自分の命が脅かされる危険に比べたら、どれほどの効果があるのか不安だ。
俺はお前を殺せるんだぞ、という意思表示が一番の抑止力になるだろう。
その為にも、分かりやすい痛みや敗北を味合わせる必要がある。
痛みと敗北か、それも新島や奥村と違い学校での犯行は難しく、なかなか二人きりの状況を作れそうにない。
奥村に誘い出させるか?
しかし、犯行の場所がない。
奥村の家を使おうにも、警察が張っているかもしれないし、学校以外での繋がりを持っている事を出来るだけ知られたくない。
俺が怪盗団のメンバーや協力者と思われて、マークされる事になると面倒だ。
機会を伺うしかないか。
10/24
佐倉と奥村のプッシュもあってか、雨宮に学園祭のことで話があるから、朝に時間があるか、とチャットで聞かれた。
取り敢えず俺は、生徒会室を指定してそこで話をすることにし、詳細は会ってからに、と言うことになった。
一人先んじて生徒会室で雨宮を待ち構えていると、戸が開き雨宮が少し気まずそうな顔をして入って来た。
坂本や高巻も一緒かと思ったが、今日は一人のようだ。
おそらく気まずい顔の理由は、以前連絡先は知らないかと、冗談混じりに尋ねた所、連絡先を知っておきながら話さなかった事だろう。
「やあ、それで話って何かな」
「実は、明智の連絡先を知っている。できれば学園祭に呼んで欲しい」
雨宮は俺の対面に腰掛けながら、いきなり本題へと入った。
「それは、ビッグサプライズだね。君に限って騙されるってことは無いだろうけど、ホントに本物かい?」
「ああ、間違いない。本人から教えて貰ったアドレスだ」
どんなマジックを使ったら、大人気の探偵王子と番号を交換する仲になるんだろうか。
明智に怪盗団であることバレてるんじゃないか?
「分かったよ。こっちでオファーをして見よう。今年は色々あってゲストは呼ばないつもりだったし丁度良いかもね。君の方からも宜しく言っといてくれ」
雨宮から連絡先を送ってもらい、メールを送る。
ビジネスメールなんて生まれてこの方書いたことなんてなかった為、文面は不安だが、まあ、高校生だし多少の失礼は許されるだろう。
「それで、いきなり明智吾郎を呼ぼうって事になったのはどういう風の吹き回しだい。君、アンケートの集計の時ぐらいにはもう連絡先知ってたんだろう」
「黙っていたのは悪かった。事情が変わったんだ」
「そう。怪盗団関連だろうし、あまり深くは突っ込まないよ」
全部知ってるしな。
雨宮と少し雑談をしていると、早速明智から連絡が返ってきた。
忙しそうな割に、案外早いレスポンスだ。
返信を雨宮にも見えるように、携帯を机の上に置く。
「考えさせてくれ、だってさ。学園祭はもう直ぐ始まるってのに。とりあえず今日中に回答しろとは送っとくよ」
「すまない」
雨宮が座ったまま軽く頭を下げる。
「別に良いさ。ダメで元々だしね。それに、もし学園に呼べたら大手柄だよ。きっと新島さんが帰ってくる頃には生徒会長は変わってるだろうね」
雨宮は俺の冗談に軽く笑って見せた。
高巻よりは余裕があるらしい。
この日はそれで解散となり、雨宮は生徒会室から出て行き、俺も教室に戻ることにした。
今日、オファーして、明後日登壇という、頼むにしては随分と急な話だが、明智は来るのだろうか。
最悪情報だけでも聞き出せると良いが。