授業が終わり、昼休みに携帯を覗いてみると、明智から先の件について返信があった。
答えは、了承。
正直あまり期待はしていなかったが、どうやら学園に来てくれるらしい。
コレも雨宮の人徳の成せる技なのだろうか。
結果を怪盗団に知らせるべく、雨宮にメッセージを送り、放課後に再度生徒会室で話をすることになった。
明智を呼ぶという大きなハードルは超えたが、問題はその先だ。
明智からどの様にして情報を聞き出すか、おそらく司会は俺になることだろうから、その相談もかねて、雨宮と話し合わなければならない。
放課後になり、生徒会室で雨宮と落ち合う。
「明智くん、来てくれるそうだよ」
椅子に腰掛けながら、雨宮にチャットで送った通りの報告をする。
雨宮もあまり期待はしていなかったのか、いつもより少し表情が明るい気がする。
「助かった」
「それで、当日の事だけど。おそらく司会進行は僕がやることになるだろう。そこで、明智くんに質問しときたいこととかあるかい」
本人が直接聞き出すつもりなら、適当に、彼女だの、好きなタイプだのの俗っぽい質問でお茶を濁すが。
「捜査の進展や明智が怪盗団についてどこまで掴んでいるかを聞いて欲しい。講演の後、俺も直接話すつもりでいるが、一応頼む」
そうなると、あんまし一般生徒が面白がるような話題には持って行きにくいかもしれない。
まあ、いいか。
明智を呼び出せた事、自体が俺の大きな手柄になってることだし。
「そういえば、他の怪盗団のメンバー、確か喜多川くんだっけ、彼も二日とも来るのかい?」
「その予定だが、どうかしたか?」
やはり、学校が違うメンバーも来るのか。
という事は、佐倉も来る可能性が高い。
コレは、チャンスだな。
「ああ、やっぱり、彼も怪盗団だったんだ」
とりあえず、誤魔化しておく。
雨宮視点、俺が怪盗団のメンバーを全員把握しているとは思っていないはずだ。
佐倉の名前を出すわけには行かなかったし、興味本意で聞いた風な空気を出しておく。
「...謀ったな」
雨宮は一瞬、しまったという風な顔をした跡、恨みがましげに此方を睨みつけてきた。
「ごめん、ごめん。ちょっと気になってさ。明智くんを呼び出せた事でチャラにしてくれ」
雨宮の視線に、手をヒラつかせて答える。
「じゃあ、後は当日だね。次は君たちの仕事だ。武運を祈ってるよ」
「任せておけ」
雨宮は少しニヤリと笑って返した。
リーダーはこんな状況でもブレていないようだ。
心強いことだよ、全く。
雨宮が去った跡、佐倉をどうするかについて思考を巡らす。
精神にダメージを与えるのには、レイプはありとして、恐怖を与えるための痛みをどうするかだ。
痕が残りにくく、尚且つかなりの痛みを与えることができるもの。
打撃は駄目となると、首を絞めるか?
痕も残るかもしれないし、痛みはないな。
腹とかに、根性焼きでもするか?
それもな、一箇所ならともかく複数箇所にあると、ふとした瞬間に痕が見えて大騒ぎになるかもしれん。
かといって、一回では大した痛みではないしな。
電気はどうだろう。
スタンガンとか、何かしら体に通電させるもの。
コレなら、火傷の痕は残るだろうが、根性焼きよりは目立たないものになるだろう。
スタンガンか、普通に売ってるのかな。
アキバ辺りに行けばありそうな気がするが、とりあえず行ってみるか。
なかったら諦めよう、ビリビリペン程度じゃ意味がないだろうし。
秋葉原を散策していると、取り扱っている店は思ったより簡単に見つかった。
どうやら、防犯グッズなどを専門とする店のようだ。
ずいぶんニッチな商売だが、儲かるのだろうか。
中を回ってみると、スタンガンどころか、防刃ベストや警棒など誰が買うんだというような物や、手錠やメリケンサックなどの防犯される側が使いそうな物まで置いてある。
スタンガンのコーナーに戻り、商品を見渡すと俺が思っていたよりもずっと形や性能が様々で、スタンガンと聞いて一般的に想像であろう、ハンディタイプや、実用的なペン型の物、果ては護身用として持ち歩くのには、およそ適さないであろう、バトン型と呼ばれる警棒のような見た目をしている大型の物があった。
電圧などを比較していくと、バトンタイプの物がこの店では一番威力が高いらしい。
やはり、大型だとその分性能が上げやすいのだろうか。
普段から携帯するつもりもないし、威圧感が与えやすいバトンタイプは俺の用途に合っているかもしれない。
後なんか、ハンディタイプよりカッコいいし。
俺だって男の子なんだ、こういう武器に憧れる少年の心は持っている。
俺は検討を重ねた結果、バトンタイプの一番電圧が高いものを買うことにした。
電圧は130万V、なんだか恐ろしい数字だが市販されているものだし、ちょっと当てただけで死ぬことはないだろう。
電流については書いていなかったが、店内のPOP曰く、3〜5mA程らしいのでコレについもまあ、安心できる。
三万以上したが、後悔はしないはずだ。きっと、だってカッコいいし。
家に帰ったら後、新島の餌やりなどの、諸々の事を終えると、まずはスタンガンの威力を自分で試してみる事にした。
新島に使わなかったのは配慮からではなく、実際に当てられるとどんなものなのか、興味があったからだ。
スタンガンに電池を入れ、先ずは自分に当てず、その場で放電させてみる。
安全装置を外し、スイッチを押した瞬間に先端にある発生装置から、バチバチバチっという激しい音と青白いスパークの光がスタンガンから広がる。
こ、怖っ。
思った何倍も、音も光も激しくそれだけで俺の興味を押しのけ二の足を踏ませるのに充分な衝撃だった。
しかし、暫くすると、使ってみたいという欲と威力を知りたいという欲がまたムクムクと湧いてくる。
覚悟を決めた俺は、正座をし、両手でスタンガンを握って切腹する武士のような体勢で腹に服の上からスタンガンを当てた。
行くぞ。
息を整え、目を瞑り、一息に力をこめてボタンを押す。
瞬間、バチっという音と共に腹部に正しく電流が走ったというような衝撃が訪れた。
「あぎっ、ぐっ」
あまりの痛みに俺はスタンガンを握っておくことも出来ず、正座の体勢のまま、崩れ落ちた。
筋肉が引き攣り、体が言うことをきかず、数秒の間無様な体勢のまま痛みに喘いでいた。
『阿呆なのか』
うるせぇよ。
息を整え、起き上がる。
素晴らしい性能だな。
コレは使える。
性能テストが済んだところで、奥村にチャットを送る。
『学園祭一日目の終わり、解散になったタイミングで佐倉を連れて屋上へ来い』
コイツを人に使う時が楽しみだ。