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学園祭当日。
スタンガンはスクールバッグに収納し登校する。
最近色々あったとはいえ、生徒まで持ち物検査をする事にはならないだろう。
何より生徒会役員だし、目をつけられることもないはずだ。
学校に到着すると、先ずは屋上の鍵を取りに行く。
浮かれたカップル共に、あそこを長時間占領させる訳には行かないので、カギを俺が預かりその時まで誰も立ち入れさせないようにするためだ。
一応、屋上にも入って学園祭に使用しそうな物が一時置きされていないかのチェックをした後、学園祭を適当に見てまわることにした。
怪盗団を監視しておきたい所だが、バレると何かと面倒だし、生徒会の巡回という事で適当にブラついていると、キャーキャーと黄色い声援が耳に入った。
何やら、誰かを中心として円ができている。
今日は誰も芸能人を呼んでいないはずだが、なんだろうか。
疑問に思い、うるさい野次馬を掻き分けながら進んでいく。
今がスタンガンの使いどきのような気もするが、没収されるのも嫌なので乱暴に一人ずつ手でどかしていきながら、やっとの事で円の中心に辿り着くことができた。
円の中心にいたのは、なんと明日の予定で呼んだはずの明智吾郎だった。
確かに予定は明日と言ったはずだが、下見か?
それなら変装するなりしてこいよ、探偵と言うぐらいだから頭良いんだろうが。
「明智さん、生徒会の者ですが。講演の予定は明日のはずでは?」
「ああ、ちょうど良かった。下見にきたんだけど囲まれちゃってね。どうにかできるかい?」
傍迷惑なやつめ。
芸能人というのはこんなのばっかりなのか。
心の中でため息を吐きつつ、生徒に解散するように命じる。
俺が言ったところで、興奮冷めやらぬ生徒たちは命令に従うはずもなく、結局騒ぎを聞きつけた教師によって解散命令が改めて下された。
渋々と場を後にする生徒たちに混じって、明智を人通りの少ないところまで連れて行く。
「いやー、助かったよ。君が連絡をくれた副会長さん?」
「ええ、そうです。連絡をくれれば案内ぐらいはしましたが」
『おい、此奴、ペルソナ使いだ。それもアメミヤと同じ特別製のな』
は?
パレマクリアから衝撃の報告を受ける。
明智がペルソナ使いだと、それも特別製の?
となると、コイツが廃人化事件の犯人、黒い仮面の男か。
「?どうかしたかい?」
「いえ、大丈夫です。それでは、僕はこれで」
何かを勘付かれる前に足早にその場を離れる。
雨宮は、メジエドの時と言い、オクムラフーズの時と言い不思議な運を持っていた。
まるで、重要な鍵を握る人物が転がり込むように、雨宮の周囲に引き寄せられている。
まるで、主人公じゃないか。
特別な力を得て、仲間を増やし、同じような力を持った悪と戦う。
だとしたら、俺は倒される運命にあるかもな。
パレマクリア、明智がペルソナ使いで、雨宮と同じタイプなのは間違い無いんだな。
『ああ、特別なのは確かだ。他のペルソナ使いとは気配が異なる』
明智が急なオファーなのにも関わらず、学園祭で講演する話を受けたのは怪盗団に接触するためか?
しかし、何のために今更会う必要があるんだ。
おそらく、明智は怪盗団のメンバー全員を知っているはずだ、人相を確認する必要なんてないだろう。
怪盗団に潜り込むつもりか?
ペルソナ能力を持っているのなら、怪盗団と問題なく行動を共にできる。
しかし、黒い仮面の男本人がそんな危険を犯す必要はあるのか?
ペルソナ発言時の仮面で疑われる可能性は十分あるのではないだろうか。
しかし、俺は正体を掴むことができた。
流れは俺に向いているはずだ。
アイツの目的がわかるまでしばらく泳がせておこう。
午後になり、学園祭一日目が終わりを迎える。
奥村からの連絡が来るまでの間、屋上のドアの前で時間を潰す事にした。
ぼんやりと明智の目的について考えていると、奥村から連絡が届いた。
『今向かいます』
いよいよだ。
俺にとって、学園祭一番の楽しみが始まる。
数分後、階下から二人分の足音と話し声が聞こえてきた。
奥村は少し元気がなく、佐倉はなぜここに連れて来られたのか不審がっているようだ。
階段を登ってきた二人の前に立つと、奥村は俺の存在に、佐倉は急に現れた俺に少し驚いたようだった。
奥村はキチンと俺への恐怖を刻まれているようで、安心した。
「ハ、ハル。誰だこの人は?」
「この学校の副会長さ、少し聞きたいことが会ってね連れてきてもらったんだ。さあ、行くよ」
奥村が答える前に俺が返事をし、屋上へと急かす。
佐倉はコレが処刑台への階段だとも知らずに、急かされるまま早足で階段を登って行った。
屋上の鍵を開け、二人を向かい入れる。
全員が入った後、後ろ手で内鍵を閉めると、佐倉は少し不思議そうにこちらを見た。
「奥村は、ドアの前に立っていろ」
「はい」
奥村は従順に、しかし、佐倉や俺からは目線をそらしながら、命令に従い、ドアの前へと陣取った。
「わ、私に、な、なんのようだ」
佐倉は俺の口調の変化や、奥村の様子に異変を感じ取ったのか、少し吃りながら、俺から距離を取る。
「まあ、そんなに警戒するなよ。雨宮くんから聞いてないか、俺のこと」
「明智を呼ぶのに協力してくれたり、信頼できるって聞いてる」
俺への雨宮の評価はわりかし高いらしい。
信頼できるか、案外節穴だな。
「他には?」
スクールバックのチャックを開け、肩にかけながら、佐倉に段々と近づいていく。
「あ、杏も、前に何か相談に乗ってもらったって」
「そんな事もあったね。だから、そんなに警戒しなくても良いよ。俺は怪盗団の協力者なんだからさ」
「ほ、ほんとか」
もう少しで絆せそうだな。
「雨宮くん、君たちのリーダーが信頼できるって言ってるんだから、もう少し警戒を解いてくれたって良いんじゃない」
「わ、分かった。それで、なんのようだ」
佐倉の身長は150cmほど、体つきから鍛えている感じはしない。
飛びつかれてもなんとかなるか。
「見せたいものがあってね。黒い仮面の男に近づく決定的な証拠だ」
そう言いながら、カバンの中を探り、スタンガンを掴む。
中のものを探しているフリをしながら安全装置を解除すると、佐倉の方から近寄ってくる。
「決定的な証拠ってなんなんだ」
横目で佐倉の位置を確認する。
あと三歩、二歩、一歩。
今。
スタンガンを勢いよく取り出し、佐倉の腹部へと当ててボタンを押す。
咄嗟のことに、佐倉は反応することが出来なかった。
瞬間、バチっと弾けるような音がし佐倉悲鳴をあげながら崩れ落ちる。
「あぐっ、がっ、いっ、た」
電撃を浴びた佐倉は、腹を抑えてうずくまり、屋上の地面の上で胎児のような格好に丸まって痛みに喘いでいる。
そんな佐倉の背中にもう一発当てると、今度は衝撃で海老反りになりながら仰け反った。
「いぎっ、あがっ、ぐ、がっ」
「それ、凄いだろ。立ってられないぐらい痛いんだよな。俺も昨日自分で試したんだけど、とんでもなかったわ」
技術の進歩ってのは凄いよな。
パレマクリアからのバックアップがあるはずなのにクソ痛かったもん。
体の表面が硬くても、神経をなぞるような電撃には敵わないらしい。
「な、なん、で...」
痛みに呼吸を乱されながら、意味がわからないというような顔で此方を地面から見上げてきた。
俺はそれに電撃で答えると、佐倉は悲鳴を上げて返事をした。
お楽しみはまだ始まったばかりなのだ、体力は取っておいてくれよ。
三人しかいない屋上に、ただただ佐倉の苦痛の喘ぎ声が満ちていった。