※この作品はR-18です。

ペルソナ5R(レイプ)   作:しあっと

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93話

佐倉をコマした後、帰宅し明日の事へ考えを巡らした。

明智がどう動いてくるか分からない以上、俺の方からアクションを起こす必要があるが、接触できるタイミングが明日以降訪れるかが不明だ。

その為、安全策を取るなら明日中のいつかのタイミングになるが、なかなか落ち着いて話せる時間を確保するのは難しい。

 

俺としては今の段階で明智と敵対するわけには行かない。

怪盗団に敵対する仲間とまでは行かないまでも、利害を共通する敵の敵としての関係を築き、土壇場で背中を刺すのが理想だ。

 

そもそも明智は何の為に廃人化事件を起こしているのだろうか。

そこが分かれば距離を詰めやすくなるのだが。

佐倉の母親に、オクムラフーズの競合、電車の運転手、など被害者は三者三様、多種多様で繋がりは見られない。

となると、誰かに依頼されているのか?

 

誰だ?

特殊な能力を持った人間を飼い慣らせるようなヤツはそうそういないだろう。

それとも金やらを対価に複数人から請け負っているのか?

 

時系列的には廃人化事件が起き始めたのは、佐倉の母親が被害にあった時からだ。

パレスやメメントスに関係しているらしい認知訶学とやらの研究に深く関わっていたことも偶然ではないのだろう。

 

仮に最初の被害者を佐倉の母親と仮定すれば、その件で一番得をした人間が怪しい。

複数人から殺しの依頼を受けるにしろ、名が売れる前には当然顔を繋ぐ人間が必要だろう。

明智の年齢は詐称していないのなら、高校三年生なので17〜18。

最初の事件は詳しい年代は知らないが、2〜3年ほど前だったはずだ。

高校生か中学生そこらの人間に権力者とのパイプなど普通はあり得ない。

 

明智が売り込んだにしろ、誰かがプロデュースしたにしろ、明智に指図した人間がいる可能性はかなり高いんではないだろうか。

それも明智が接触できた、もしくは見初められた事から、初めから面識があったはずだ。

 

一番の有力候補は校長に裏から指示をしていたであろう人物。

怪盗団の存在にいち早く気づいていたのは、明智というサンプルがいたためだとすると納得がいく。

 

問題はなぜ明智がソイツに従っているかだ。

人質か、金か、もしくはやり甲斐でも感じているのか。

納得のいく理由が思い浮かばないので、コレばかりは接触して見極めていくしかないだろう。

 

明日は接触できるタイミングが計れないので、いつでも行動に移せるよう準備だけはしておくか。

手のひらサイズのメモ帳を取り出し、文章を書き加えて行く。

 

『俺はお前のことを知っているぞ

廃人化事件も奥村邦和を殺したのも犯人はお前なんだろう?

あの日怪盗団を襲ったのは俺だ。お互い話し合いの場が必要だとは思わないか?』

 

紙に書いた文字であれば、講演中などの声を出せない時でも明智に見せることができ、処分が容易だ。

チャットで残して、明智が怪盗団に内容を見せでもしたら面倒だし、こんな時に紙媒体は便利だ。

 

 

10/26

学園祭二日目。

講演前に明智と軽く打ち合わせを行う。

 

「今日はよろしくお願いします。明智さん」

 

「ええ、こちらこそ」

 

明智は爽やかな笑みを浮かべて俺に応じる。

それが貼り付けた笑みだと思うとここで正体をバラして化けの皮を剥がしてやろうかと思ったが、この後に講演会が控えておりそれが開催できなくなると色々不味いので、今はタイミングを伺うことにした。

 

それから此方からする質問の内容や進行について打ち合わせを終え、マイクやイスなどの本格的な準備に移って行った。

明智が廃人化事件を起こしている目的を考えながらステージ上から体育館を行き交う人を眺めているとやがて準備も終わり、講演の時間がやってくる。

 

生徒が望んだ人物が登壇していることもあり、今年は盛り上がりもひとしおだ。

 

「それでは只今より講演会を始めます。本日のゲスト明智吾郎さんです」

 

「なんだかすいません。こんなに集まってもらってるのに。歌手の方とか、マスコットとかの方が皆さん嬉しかったですよね」

 

懐に入れたメモ帳を感じながら、打ち合わせ通りの進行を始める。

 

「今日は昨今話題の怪盗団について、その捜査過程での経験などをお話頂ければと思っています」

 

「尋問される側には慣れていないんでお手柔らかに」

 

明智が喋る度に生徒からは歓声が上がる。

本人はその事に対して何でもないように振る舞っていた。

流石はタレントだけあって手慣れてるな。

 

「ではまず、怪盗団の捜査状況について。この学校にも警察が聴取に来ましたが実際のところ、犯行の手口や犯人像などは掴めているんでしょうか」

 

「いきなり核心ついてきますね。話せる範囲ですと、テレビやネットにでてるのが、全部です。足取りも掴めていませんし、手口も判然としていません」

 

まあ、気が触れていなかったら異世界の存在など調査などしないだろうしな。

警察に限って言えばそんなもんだろう。

 

「ありがとうございます。明智さんは怪盗団と殺人の関連を否定的に見ているそうですが、なぜそう思うのでしょうか?」

 

「これまで怪盗団に改心された面々は奥村も含め、いずれも劣らぬ悪党です。なら、なぜ奥村だけが殺されなければならなかったのか。その理由は僕には見つけられなかった。だからこの件は怪盗団とは別件だと考えるべきだと思うんです」

 

ここで怪盗団の関与を肯定しようが否定しようが、どちらにせよ明智には得は少なそうだ。

ならば何故、わざわざ怪盗団に味方しようとしているのか。

 

「それに、もしもの話です。僕の知る彼らなら殺しをするなんてあり得ない」

 

味方する理由。

それは恐らく怪盗団に取り入ろうとしているからだ。

怪盗団に警察や検察の動きに繋がる情報源は存在しない事を知っているのだろう。

それをエサに何かしらの致命的な罠を仕掛けるつもりなんではないだろうか。

もしくは、純粋に怪盗団に助けてもらいたいとかな。

 

「明智さんは怪盗団の正体を掴んでいるんですか?」

 

「はい。実は目星がついてるんです、怪盗団の正体」

 

おい、台本に無いこと言ってんじゃねーぞ。

打ち合わせでは、正体は分からないって事になってただろ。

何か思惑があるのか?

 

「...。目星というのは、具体的には?」

 

明智は薄く笑い、続けて語り始めた。

 

「今日、皆さんはマスコミや警察より先に真実を聞くことになるかもしれない。怪盗団の正体...それは、皆さんもよくご存知の人たちだ」

 

核心に触れようとした直後、明智の方からピロピロと携帯の着信音が鳴り響いた。

 

「僕のだ、すいません。関わっている立場上、携帯切れなくて。ちょっと、10分ほど、いいですか?」

 

「では、一旦休憩とします。明智さんが戻り次第再開します」

 

「マナー悪いぞ明智!とか、ネットで叩かないでくださいね」

 

明智はステージで一礼し、マイクで声が拾えなくなる距離まで下がるとこちらに話しかけてきた。

 

「どこか、借りられます?機密性が高い話かもしれないので」

 

「体育教官室なら空いていると思います。案内しましょうか?」

 

怪盗団の核心に迫った時に都合よく入った電話。

何か裏があるんじゃないか?

 

「いえ、昨日の下見でなんとなく場所は分かってるので」

 

明智はそう言って、ステージから去っていった。

怪しいな。

明智の行動について考えられる可能性は3つ。

1つは、本当に偶然電話が入った。

2つは、明智が何か不味いことを言おうとして、上から止められた。

3つは、電話は仕組まれており、このタイミングで怪盗団に接触するため。

 

どれも有り得そうだが、俺にとって一番影響が大きいのは怪盗団に接触されることだろう。

対策ぐらいはしておくか。

 

俺は携帯を開くと佐倉にチャットを送った。

 

『明智吾郎が接触してきたなら返信しろ』

 

するとすぐに、

 

『明智に呼び出された』

 

と返信が返ってきた。

これで確定だな。

明智は怪盗団の正体を人質にしながら、何かしらの策を成そうとしている。

内容自体はあとで、奥村、佐倉から聞き出そう。

 

俺の動きどころは、ここら辺りか。

昨日書いたメモを手帳から切り離していつでも目の前に出せるよう、準備を整えた。

 

それから少し経ってから、明智は無事にステージの上へと戻って来て、講演会が再開された。

 

「急に、すいませんでした。急ぎの仕事が入っちゃって。それで申し訳ないんですけど、今日はこの辺で終わりに...」

 

明智はいかにも申し訳なさそうな顔をして、聴衆に事情を説明した。

目的は果たせたからさっさと帰るわけか。

受けた仕事は最後まで果たせってんだ。

 

「怪盗団の捜査、詳しいことは言えないんですけど、また近々大きな動きがあると思うんで。ぜひ、今後も注目して下さい」

 

締めに入った明智に少し近づいて、ステージの下からは見えないようにしながらメモ帳を演説台に載せる。

明智はカンペか何かと思ったのか、特に疑うことも無くメモに書いてある文章を目で追っていった。

 

「...!」

 

内容を理解したのか明智が驚いたようにこちらに視線を上げたのを確認して、俺はメモを手に取りクシャクシャにしてから懐へとしまう。

 

「それではここで講演会は終了とさせていただきます。本日のゲスト明智吾郎さんでした」

 

俺が締めの挨拶をしてしまえば、自分で終わりと言った手前、明智は帰らざるを得ない。

明智は苛立たしげな目で俺を一瞥した後、拍手に見送られながら舞台袖の方へ歩いて行った。

 

明智との初戦は俺の勝利と言って良いだろう。

奴のハナを明かせて、気分が良い。

昨日の事を含めて、高校三年間で一番思い出に残る学園祭だった。

 

 

 

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